INTERVIEW
2023.06.27
“Under149cm”の小さなアイドルたちの物語を描くTVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」(以下、「U149」)。その第10話で初オンエアされたのが、第3芸能課に所属する9人のアイドルたちが歌うEDテーマ「グッデイ・グッナイ」だ。今回は同楽曲の作詞・作曲・編曲を手がけたヒゲドライバーに、その制作エピソードやこれまでの提供楽曲、「アイドルマスター シンデレラガールズ」シリーズへの思い入れについて語ってもらった。
【特集】TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」が彩る夢のステージを紐解く!
INTERVIEW &TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
――まずはヒゲドライバーさんと「アイドルマスター シンデレラガールズ」との関わりについてお伺いさせてください。最初に楽曲提供されたのは「あんきら!?狂騒曲」(2017年発売)でしたが、その時点でコンテンツ自体にはどんな印象をお持ちでしたか?
ヒゲドライバー 自分と近しい場所にいるクリエイターの方が多く参加されていたので、チェックの意味合いも兼ねて楽曲を聴いていたのですが、「良い曲がたくさんあるなあ」という印象でした。特に「メッセージ」や「GOIN’!!!」といった王道のアイドルソングの完成度の高さ。普通のアイドルソングのようでいて、コード進行や転調の仕方にすごくこだわりが感じられて感心していました。
――その意味では「あんきら!?狂騒曲」でも、ご自身の音楽的なこだわりを存分に発揮することができたのではないでしょうか?
ヒゲドライバー そうですね。ほかではなかなかできない遊び心を入れることができました。実は僕の中で「あんきら!?狂騒曲」のような楽曲を制作するのは、当時としては初めての試みだったんです。コロコロ曲調が変わっていく、いわゆる電波ソングっぽい作り方を、それまではあまりしてこなかったので。
――あれ?そうだったんですか?
ヒゲドライバー 早口系の楽曲はアニソンで結構作っていましたけど、早口系と電波ソングはまたちょっと違うものなので。セリフ入りで曲調がコロコロ変わる感じは初挑戦だったので、かなり試行錯誤しながら作りましたね。
――しかも歌うのは双葉杏(CV:五十嵐裕美)と諸星きらり(CV:松嵜麗)という、シリーズきっての個性派コンビですし。
ヒゲドライバー その意味では最初から「ぶっ飛んだ楽曲にしたい」というオーダーだったので、自分も「やってやるぞ!」という気持ちがあって。なので2番以降はガラッと世界観が変わる、2段構えの色んな展開を用意しました。
――1番ではわちゃわちゃしていたのが、2番で急にケンカし始めてすぐに仲直りするっていう。
ヒゲドライバー あの2人の関係性があるからこそ、良い話になると余計にグッとくるんですよね。僕は昔からそういうのが好きで。例えば『クレヨンしんちゃん』みたいに、普段はハチャメチャなギャグテイストだけど、その中にたまにホロっとするような話があるのがすごく好きなんです。そういう自分の趣味とも上手く合致した曲にできたと思います。
――それも含めての「狂騒曲」ですよね。ほかにも「アイドルマスター シンデレラガールズ」には様々な楽曲を作られているので、それらの制作エピソードも伺いたく。続いて提供された「Snow*Love」(2018年発売)は、TVアニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ劇場』(以下、『しんげき』)の12月度EDテーマでした。
ヒゲドライバー これは柏谷(智浩/日本コロムビアの音楽プロデューサー)さんから「ヒゲさんに合うと思うのでぜひ」ということでお話をいただいて。ただ、テーマは「冬」「雪」だけど明るいパッション系の楽曲という、なかなか難しいオーダーだったので、ちょっと苦労しました(苦笑)。曲調としては明るいけど、歌詞はちょっと切ない内容を意識しながら作って。
――冬らしい透明感もありつつ、多幸感溢れるサウンドが印象的です。
ヒゲドライバー コード進行や歌詞を追うと割と切ない系なので、多分ピアノアレンジでカバーするとしっとりした雰囲気の曲になると思うんですけど、そこにオケの賑やかさとアイドルの元気さでパッション要素を加えているイメージですね。絶妙なバランスの良い曲に仕上がったなと思います。P(※「アイマス」シリーズのファンの呼称/プロデューサーの略称)の方からの反応も意外と良くて。
――さらに五十嵐響子(CV:種﨑敦美)の2曲目となるソロ曲「アツアツ♪マカロニグラタン」(2018年発売)を担当されて。
ヒゲドライバー これに関しては柏谷さんが僕に楽曲を作らせてくれた感じですね。というのも、僕が「あんきら!?狂騒曲」をきっかけにゲーム(「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」)を始めたとき、初めて自分で引いたSSRが五十嵐響子ちゃんで、そのときにすごく感動したんです。そのことを、たしかリミックスアルバム(『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS TO D@NCE TO』)のブックレット用のクリエイター対談で話したら、柏谷さんが「じゃあ今度、ヒゲさんに楽曲を作ってもらおうかな」ということをおっしゃってくれて。そうしたら本当に後日お話をいただいたので、担当Pとしてこんな展開があるとは思わなかったです(笑)。
――響子の最初のソロ曲「恋のHamburg♪」(2016年発売)も踏まえての制作だったのでしょうか?
ヒゲドライバー 「恋のHamburg♪」がすでに完成された楽曲だったので、その路線、料理の楽曲にしたい気持ちもありつつ、自分ならではのテイストを入れ込むようにしました。例えば“Fu Fu Fu”といった掛け声が入るところは、ライブ映えする要素として、1つのアクセントになるようにこだわって入れましたね。
――荒木比奈(CV:田辺留依)、神谷奈緒(CV:松井恵理子)、安部菜々(CV:三宅麻理恵)による「オタク is LOVE!」(2020年発売)はハイテンションな楽曲で、方向性はやや違えど「あんきら!?狂騒曲」と似たタイプの楽曲なのかなと。
ヒゲドライバー 僕は楽曲を制作するとき、曲先で作ることが多いんですけど、この楽曲に関しては歌詞を先に書いたんです。というのも、これも「あんきら!?狂騒曲」みたいな掛け合い曲がいいだろうなと想像していたので、まずはアイドルたちのセリフを台本を書くような感覚でバーッと書いて、そこにメロディや展開を付けていく作り方でした。やりなれていない作り方だったので時間は結構かかりましたが、セリフが上手いこと掛け合いのテンポ感に反映できるので、良いやり方だなあと思いましたね。
――そのように色んなアイドルに色んなタイプの楽曲を提供していくなかで、コンテンツ自体の印象に変化はありましたか?
ヒゲドライバー 変わりましたね。それまでは代表的な楽曲しか聴いていなかったけど、「あんきら!?狂騒曲」きっかけでゲームもやり始めたら、それぞれのソロ曲の作り込まれ方、アイドルをしっかりと楽曲に落とし込んでいるところに感心しまして。あと、アイドルに対する愛着がこんなにも沸くものなんだなっていうことをすごく感じたんですよね。SSRを引いたときの喜びもあるし、絵柄もすごく良いんですよね。これは浮気になっちゃうんですけど(笑)、響子ちゃんの少しあとにフレちゃん(宮本フレデリカ)のSSRを引いたんですけど、その美しさにビックリしてしまって。
――アハハ(笑)。でも、わかります。
ヒゲドライバー 僕は二次元の絵に対してそこまでトキメキを抱くことはなかったはずなんですけど、「これはちょっと、すごいな……!」と感動すら覚えるトキメキがあって。「いやあ、これはたしかにみんな夢中になるよなあ」と感心したのを覚えています(笑)。アイドルとイラストと声と楽曲、そのすべてが1つになっているところのすごさを感じましたね。
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