初のオリジナル曲「愚痴り合い」は総再生回数1200万回超え。TikTokフォロワー68万人の女の子担当・りみーとYouTubeフォロワー35万人の男の子担当・とくみくすからなるASOBI同盟がシングル「誰も彼も何処も何も知らない」をリリースした。CDとして作品をリリースするのは本作が初となる。
TVアニメ『天国大魔境』エンディングを彩る「誰も彼も何処も何も知らない」。聴けば聴くほど『天国大魔境』の世界を感じさせる歌詞に、中毒性の高いメロディ、一筋縄ではいかない遊び心に溢れた構成で、随所にそのセンスを発揮している。結成してわずか半年でタイアップを掴んだ新星ユニットの楽曲はいかにして生まれているのか、その創作意欲の源とは何か。彼らの辿ってきた足跡を追いながらASOBI同盟の実像に迫る。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
──ASOBI同盟は文字通り遊びから始まったユニットだそうですね。その道のりをお伺いさせていただけますか?
とくみくす 最初は僕の片思いから始まったんです。Twitterで初めて歌っているところをたまたま見かけて。「この子の声、めちゃくちゃ良いな!」って。声に特徴があって、かわいいけれど芳醇でスモーキーな雰囲気がある。しかも事務所も一緒。それで「いつか一緒に音楽をしたいな」と思っていました。
──その後、無事に両思いになった……ということで大丈夫ですか?
とくみくす 今も片思いですよ(笑)。ずっと手のひらの上で転がされていますね。
──(笑)。でも、一緒にやろうと誘われたときはふたつ返事で?
りみー 先輩だったので、断るのも……(笑)。
とくみくす 嫌々かい!(笑)。
りみー そこから遊びでコラボをしていて「そろそろユニットを組む?」という話になりました。
──りみーさんの中で、とくみくすさんのお人柄や音楽の印象はどんなものだったのでしょうか?
りみー 実は元々学校も一緒だったんですよ。学年はまったく違うので学校で会ったことはなかったんですけど、さらに事務所も一緒と接点が多くて。しかも優しいんですよね。だから最初から「優しいお兄ちゃん」という感じで親しみがありました。
──りみーさんは元々音楽をやられていたんですよね?
りみー はい。でもYouTubeを始めるきっかけをくれたのは相方でした。
とくみくす 学生時代に音源/映像編集の勉強をしていたので、最初はYouTubeコラボのお誘いをしました。でも今では妹(りみー)に引っ張ってもらっている状態ですね(笑)。
──お二人の音楽的なバックボーンについてもぜひ教えてください。
りみー 私は物心ついた頃からダンスをやっていて。ダンスから音楽に入って、「音楽が好きだな、歌が好きだな」って思って音楽が身近にあるのが当たり前の生活になっていました。そのあと、もっと色んな音楽をやってみたくて、吹奏楽を始めたりもしました。
──でも音楽にまつわることをずっとやられていたのですね。
りみー そうですね。シンガーになりたいとはずっと思っていました。
──「音楽が好き」と気づいたきっかけはなんだったんでしょうか。
りみー お母さんと一緒にカラオケに行ったときに、お母さんが「歌、上手いね」と言ってくれたんです。そう言ってもらえたのが、純粋に嬉しかったのを今でもすごく覚えていて、それが音楽を好きになったきっかけだったと思います。
──ではとくみくすさんの音楽遍歴についても教えてください。
とくみくす 僕は幼い頃からドラムを習っていました。でもあまり上手くならなくて。にそれからしばらく経って、父にコブクロのライブDVDを買ってもらったんです。そのときに、小渕(健太郎)さんの姿を見て「ギターを弾いてみたい!」と思いました。でも、正直体感的に「始めるのが遅いな」と感じていて。ここからギターのプロになるとしたらめちゃくちゃ努力しなきゃ、と思ってたくさん練習をしていましたね。
──とくみくすさんのプロフィールには「アコースティックロックシンガー」とありますが、当時はどのような音楽性だったのですか?
とくみくす ELLEGARDEN、BUMP OF CHICKEN、RADWIMPS、SiMなど、いわゆる邦ロック系を好んで聴いていたので、音楽性的にはそういった雰囲気だったと思います。その後はディープ・パープルやレッド・ホット・チリ・ペッパーズ 、グリーン・デイなど洋楽に行き「やっぱり弾き語りがいい!」となって。相方を見つけて今という感じです。
──大学が一緒というお話がありましたけども、専攻も一緒だったんでしょうか?
とくみくす これも偶然なんですけど、2人とも同じ専攻だったんですよ。
りみー 私の場合は海外にずっと興味があって、留学をしたかったんです。でもコロナ禍になってしまって。
とくみくす ああ、そうかあ。僕は大学生活を楽しんでいましたけど、りみーのときは大学生活がずっとコロナ禍になってしまったもんね。
りみー でもコロナ禍になったことでYouTubeを始められたので。コロナ禍になっていなかったら、海外に留学していたかもしれません。そういう意味では、本当に何があるかわからないなと……。
──最初はぎこちなかったというお話がありましたが、でも現在まで同盟が続いているということは歯車が合ったということですよね?
とくみくす りみーがめちゃくちゃしっかりしているんです。僕は音楽活動以外、何もできないんですよ。LINEの返事も遅いですし、SNSも得意じゃないですし。でもりみーはそのへんもしっかりしてて。
りみー ASOBI同盟の曲作り担当(とくみくす)で、私は運営担当ですね(笑)。
──ユニットではなく、同盟と名乗るのは何か理由が?
とくみくす 先ほどお話ししたとおり、元々僕らはそれぞれ別のユニットを組んでいて、お互いにソロになったあとにASOBI同盟を組んでいます。ユニットになると固くなってしまって上手くいかないんじゃないかって話していて。じゃあ遊びで、同盟くらいの軽さが良いんじゃないか、と。
りみー ユニットだといつか解散しちゃうかもしれないじゃないですか。お互いに解散歴があるから、バツイチなんですよ(笑)。バツ2にはなりたくないしなぁ、と。ソロもやりつつ、同盟くらいであれば、離婚の危機はないんじゃないかなって(笑)。
──気軽な気持ちで。
りみー そうですね。遊び心を忘れずに2人で楽しくやっていこう、と。
──でも音楽には真剣に向き合っている。そのバランス感覚ってどういうものなのかなと。
りみー 気持ちに変化があったような気がするんですよね。軽い気持ちでコラボしたところから始まった、いざASOBI同盟がスタートしたら、ものすごく愛着が湧いてしまって、ASOBI同盟が大好きになってしまって。そのタイミングで『天国大魔境』のお話をいただいたんです。結成して半年いかないくらいの時だったんですよね。最初はドッキリだと思っていたんです(笑)。そしたら現実で……本当に嬉しいなと。そこで初めて、ASOBI同盟に初めて夢ができて。やればやるほど大事になっていったという感じです。
とくみくす 一言一句同じ気持ちです。最初は成り行き任せの気持ちでスタートしたんですけど、時間が経ってきて「大事にしたい」と思うようになりました。また『天国大魔境』は元々すごく大好きな作品でファンだったんですよ。だからすごくテンションが上がって、自分たちのモチベーションにも繋がりました。特にりみーはマンガをすごく読むんですよ。
りみー ジャンル関係なくマンガが大好きで。元々「月刊アフターヌーン」(『天国大魔境』の原作が連載されている)も買って読んでいたのですごく嬉しいです。
──『天国大魔境』EDテーマの「誰も彼も何処も何も知らない」は1年前から温められていた曲だそうですね。
とくみくす そうです。お話をいただいてテンションが高まっていたので、その勢いのまま12曲、作ったんです。その中からいちばん良いものを選んで渡しました。そしたらOKをいただいて。
レーベルスタッフ メロディはその時にいただいたものからほぼ変わっていないですね。
──じゃあ本当にCDにも収録されている“ファーストテイクver.”のような形だったんですか?
りみー 本当にあんな感じでした。
とくみくす 「昨日作ったやつやってみようぜ」っていう感じで。
──12曲あったなかで「誰も彼も何処も何も知らない」に惹かれた理由というのはなんだったのでしょうか。
とくみくす いちばん作品とマッチしているように感じていたんですよね。
りみー あと歌っていていちばん楽しかったです。
とくみくす 展開が多いんですよ。どんどん未来に希望を持ってもらえるように、と思って作っていました。Aメロは少しだけ暗め、Bメロでふわっと広がって、サビで「旅に出ちゃうぜ」という感じの構成になっています。
──“どうして”のニュアンスもどんどん変わっていくような気がします。ロードムービーを見ているような気持ちになるというか、時間が経っていくような気がして。
とくみくす 嬉しいです。この曲は歩いていくイメージなんです。
──アニメサイドからリクエストはあったのですか?
レーベルスタッフ 発注の段階では今おっしゃっていたロードムービーといったワードや、絶望からの希望といった大枠の世界観はアニメサイドからはいただいていました。
りみー 『天国大魔境』は命のことに触れたり、時にはエグみのあるシーンもあったりする作品だからこそ、明るく終われたらいいよねって。
──歩いていくイメージとおっしゃっていましたが、曲調も歩くテンポですよね。
りみー そうですね。夜中コンビニに行く時に聴いてもらえたら嬉しいなと。それくらいのテンションで、楽しく聴いてもらえたら良いなと思って、あの雰囲気になりました。
──曲の制作はどのように?
とくみくす りみーがキーワードやパンチラインを出してくれるんです。そこからメロディをつけて、作詞をしてもらうってことが多いです。
──今回で言うとりみーさんからどんなアイデアが出ていたんですか?
りみー “どうして”のところやタイトルですね。「誰も彼も何処も何も知らない」。誰も彼も、ってワードはありますけどそれだと短いのでもう少し長くしたいなと思っていました。誰も彼も知らない天国に行きたい、誰も彼も知らない外の世界を見に行きたい……。登場人物たちはその場所もわからないわけじゃないですか。だから、“知らない”というワードを入れたいなと。それでこの言葉が生まれました。
──すごくリズミカルな言葉ですよね。
とくみくす その意味も面白いし、聴こえ方も面白いなと。僕らにとってベストな言葉だなと思っていました。
──りみーさんはいつもどんなところから、そのアイデアのインスピレーションを得るんですか?
りみー 座って作るというのが得意じゃなくて。帰り道の電車の中や、動画編集しながら、「あ、これ良いな」って。
──マルチタスクだ……!
とくみくす そう、りみーはマルチタスクなんですよ。少し話がそれてしまうんですけど、昨日、昼間に自分たちのYouTubeの撮影をしていたんですよ。で、そのあと別のお仕事の収録に行って、ご飯を食べて、本屋さんに寄って、アイスを買って、週末のフリーライブの練習をして……という僕らとしてはハードな1日だったんです。で、そしたら夜に昼間に撮影した動画が歌詞が全部入った状態でアップされていたんですね。
──えっ!
とくみくす いつその作業してたの!?と。もう僕はわからないです。りみーが2人いると思っています(笑)。
──実際どのタイミングで作業されていたんです?
りみー 内緒です(笑)。
とくみくす 僕はめちゃくちゃシングルタスクなんですよ。シャットダウンしないと作業ができないタイプだから、りみーとは真逆ですね。
──足りないところを補いながら、自分の能力を発揮しているって、最強の同盟じゃないですか!
りみー 私は曲作りはできないし、相方のようにギターは弾けないんですよね。けど、編集をしたり、イラストを書いたりするのは得意なので、足りないところを補いあえてるなって思います。
SHARE