――歌詞についてですが、過去の思い出を振り返って、後悔している感じなのか、何となく空虚な感じがしたのですが。
羽柴 後悔というよりは、何だろう……。例えば恋愛ならば、失恋して相手を恨むのではなく、それを許す覚悟もなしに付き合ったのか、みたいな感じというか。最初で主人公が眠りにつく風景があって、そこから回想して思い出に浸るような夢の音楽ではあるんですよね。そこは少し皮肉っているというか。アンチテーゼ的ではありますけど、今の人に少し伝えたい歌詞でもあるんです。
――今回ボーカルはシンガーのreinaさんを起用していますが、彼女の歌の魅力を教えてください。
羽柴 良いシンガーがいると紹介してもらったんですけど、まだ歌い始めて半年くらいの子で、アンダーグラウンドでR&Bをやっていたのが面白いなと思ったんです。自分はあまりかっちりとした音楽が好きではなく、アンニュイな感じが好きなので、すごく歌声がマッチしているなと思いました。歌い上げるというより風景に溶け込む感じで歌ってくれたので、少し前衛的でノスタルジックな感じにはなったのかな、と。あと、ファルセットがすごくきれいですね。
――前衛的で、J-POPともまた少し違う音楽ができたというのは、やはりアニメタイアップだからというのはあるのでしょうか。
羽柴 アニメというよりは、原案者であるJUNくんの意向や考え方なのかもしれないですね。どちらかというとアート寄りな音楽だと思うので、そういうものが好きな方に刺さってくれたら嬉しいなと思うんです。人って、若い頃に聴いていた音楽が自分の好みになって、大人になっていくじゃないですか。その枠を狭める必要ってないと思っていて。例えば、若い子がこういう音楽を聴いて、大人になって視野が広がったりしたら面白いのかなって思うし。僕の場合、車とか美容院とか美術館で聴きたい音楽を選ぶとき、洋楽に頼りがちになるんです。アート的な音楽を求めると、洋楽とかインストにいってしまう。それがちょっと悔しかったんですよね。自分は日本が好きで、J−POPのアーティストももちろん好きだからそこに否定的ではないんですけど、それとは別に、もっとこういう音楽があればいいんじゃないのかなっていう気持ちがあるんです。
――そういう意味では、アニメを通して世界はもちろん、若い世代に届くのは良いことですよね。そして、エンディングのアニメーションは本当に素晴らしかったですね。
羽柴 あのエンディングの絵はすごいですよね!まさにアートで、嬉しかった。僕自身は希望を伝えたわけではないので、恐らくJUNくんがオーダーを伝えたと思うんです。オタクヒーローがベッドで寝ているのも、ピンク・フロイドのMVがモチーフだったような気もしますし。でも、すごいアニメーションだなと思いました。
――カップリングのお話も聞きたいのですが、「Dream Walk」についてはタイトル曲に世界観も近いのかなと思いました。
羽柴 「Dream Walk」なので、こちらもノスタルジックでアンニュイな感じになっています。この曲も、何かをしながら曲を垂れ流してほしい感じなんです。だから、聴かずに楽しんでほしい。……変なことを言っている感じがしますけど(笑)、流しながら新聞読んだり、ベランダで日向ぼっこをしてほしいです。アニメ盤はアニメに寄り添ったサウンドで、期間生産限定盤のThe 13th tailor Remixは、ノイズとかもたくさん入っている感じになっています。
――ボーカルはどなたが?
羽柴 これは僕が歌っています。そもそもボーカルは自由な感じで、作品に合わせて変えていこうと思っているので。あと、この曲は元々劇伴で作っていた曲で、それをローファイアレンジにしたら面白いんじゃないか、ということでできた曲ですね。
――もう1曲、期間生産限定盤に「Atelier」というピアノの曲が入っています。
羽柴 これは僕がピアノを弾いているのですが、僕の心情を表している曲ですね。すごく暗かったと思うんですけど(笑)、スタジオで音楽にずっと向き合ってきたので、そこに楽しいという感情とかがなくて、それを音にしようと思いました。アトリエってスタジオという意味でもあるので、自分が作業をしているときの風景を音にした感じです。
――そこもアートなんですね。でも、ここから芸術が生み出されている雰囲気があります。
羽柴 芸術って、だからこそ生まれると思うんです。孤独でないと、寂しいという感情って生まれないし、独りが本当にイヤだから、誰かに振り向いてほしくてアートが生まれる。アートに関しては、お金がほしいからとかではないんですよね。そういう孤独な作業を音にする。誰も理解してくれないかもしれないけど、これを最初のシングルに入れられて良かったなと思っています。ここから始まった感じがするので。
――この作品から、The 13th tailorはどのように進んでいくのでしょうか?
羽柴 「流し聴き」っていうのはコンセプトにはしていきたいですね。そういう言い方はしなくても、今いるアーティストとは違うことをしていきたいなと思っているんです。やっぱり反発する人がいて新しいものって生まれるので。美術でいうと、ギュスターヴ・モローや、その教えを受けたマティスがやったように、写実主義をと決別してフォーヴィスムを表現したように、感じたままの色でやりたい!みたいな。既存のJ-POPをリスペクトしながら、自分はこういう表現をしたいと思うものをこれからも出していければいいのかなと思っています。
●リリース情報
The 13th tailor
「Gospelion in a classic love」
発売中
【期間生産限定盤】
価格:¥2,200(税込)
品番:BVCL-1315
<収録曲>
1 .Gospelion in a classic love
2.Gospelion in a classic love (TV Size)
3.Gospelion in a classic love (TV Size Instrumental)
4.Dream Walk
5.Gospelion in a classic love (JUN INAGAWA Remix)
【期間生産限定盤(CD+BD)】
価格:¥2,200(税込)
品番:BVCL-1313 ~ BVCL-1314
<収録曲>
1.Gospelion in a classic love
2.Gospelion in a classic love (Instrumental)
3.Dream Walk (The 13th tailor Remix)
4.Atelier
<BD>
1.Gospelion in a classic love
公式サイト
https://www.sonymusic.co.jp/artist/The13thtailor/
公式Twitter
https://twitter.com/The_13thtailor
公式Instagram
https://www.instagram.com/the13thtailor/
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