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2023.06.07

眩しい先輩への憧れと仲間の信頼が、佐々木千枝を“アイドル”に変える。【TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」第3芸能課観察記録07】

眩しい先輩への憧れと仲間の信頼が、佐々木千枝を“アイドル”に変える。【TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」第3芸能課観察記録07】

TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」(以下、「U149」)の第8話「綺麗になるためにはくもの、なに?」が放送された。本コラムでは「U149」の物語や音楽、アイドルたちの魅力を追いかけていく。

【特集】TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」が彩る夢のステージを紐解く!

【特集】TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」が彩る夢のステージを紐解く!

TEXT BY 中里キリ

少女たちの憧れを形にしたような先輩・桐生つかさの登場。

第8話でメインとしてフォーカスされたのは佐々木千枝。奥ゆかしい彼女らしく後半戦になっての当番回だ。アバンタイトルでは第3芸能課で何気ない日常を過ごしながら、メンバーが散らかしたおもちゃや使いっぱなしのホワイトボードを片づけたり、年少の子たちの様子を見守ったりといった千枝らしい気配りが見て取れる。一方、小春が描いている服飾のデザイン画に興味があっても自分では手を出せなかったり、仁奈の大切な着ぐるみの修繕にも尻込みしたりと、千枝の引っ込み思案で自分に自信がない一面が今回のテーマになるようだ。

そんな千枝の日常に変化の風を吹き込んでくるのが、第8話のメインゲストたる桐生つかさ社長だ。アイドルでありカリスマインフルエンサーであり女子高生社長でもある彼女。プロデューサー&課長コンビとエレベーターに乗り合わせたファーストコンタクトから、課長を圧倒する圧倒的格上感とデキる女っぷりを見せつけてくれる。

今回のお仕事は、つかさがプロデュースするブランド“Kasa Blanca”の女の子向けファッションショーに千枝、小春、みりあがモデルとして出演すること。下調べでブランドの商品を見ている時点で、つかさが生み出して自ら着こなす“大人のお姉さん”のファッションが千枝の憧れの対象であることがわかる。ブランドの価格帯的には手に取りやすい、ティーン向けのブランドのようだ。モデル、ファッションショーという新しい挑戦に逡巡しながらも、みりあたちに背中を押されて「千枝も頑張ります」と決意したのは、それだけ桐生つかさという存在と彼女が生み出しているものが千枝の憧れに近いところにあるということだろう。

ファッションショーのバックヤードで千枝やプロデューサーたちが見たのは、準備の行き届いたプロの仕事だ。ケータリングに至るまでセンスが良い。お手伝いを願い出たみりあたちに適材適所の仕事を割り振ったつかさはちょっとした職業体験のつもりだったようだが、千枝の丁寧な仕事と作り手に対するリスペクトはつかさの眼鏡に叶った様子だ。信頼を込めて仕事を任せてくれるつかさに、千枝も信頼を深めていたのだが……。

休憩中に控室に響いた絹を裂くような悲鳴。駆け付けた千枝たちが見たのは、やらかす時にはやらかす女、桐生つかさが取り落としたコーヒーをファッションショーで使う衣装にぶちまけた姿だった。

憧れとみんなからの信頼が、小さな勇気に変わる。

コーヒーで汚れたステージ衣装、クリーニングは間に合わない。そんな逆境中の逆境で、つかさは震えながらも笑って自分はプロだからなんとかすると言い切ってみせる。その姿に、千枝はつかさも決して完璧な存在ではなく、自分たちと同じように不安も感じる少女であり、だからこそすごいのだと理解したのだろう。

頼りなくも真っ直ぐなプロデューサーの後押しを得て、自分もつかさのために何かがしたいと決意する千枝。コーヒーの汚れをカバーするリボンやアイテムのデザインを考えてアイデアを出すと、小春がスラスラとデザイン画に起こし、千枝が裁縫のスキルで形にしていく。さりげなく小春も自身の能力を発揮しているのがいい。

チームで衣装のリメイクに挑戦するシーンのBGMは、「Sing the Prologue♪」の桐生つかさ&佐々木千枝歌唱バージョン。「アイドルマスターシンデレラガールズ劇場 Extra Stage」のEDテーマという意表をつく選曲だが、“失敗は成功の伏線になるから アクティブなルートがドラマを作るよ”を千枝に歌わせることで、彼女の成長を言葉で表現してみせた。“準備はパパっとね フライングありじゃない? 前のめりの姿勢 さぁ位置について どんどん行こう!”のフレーズはつかさ社長感に溢れているし、まるでこのシーンに当て書きしたようなマッチングの妙だった。

精一杯の勇気と頑張りを見せた千枝に対するつかさの答は、「お前最高だよ」の心からの感謝と感動の言葉。自分にもできることがあると知り、つかさの、プロデューサーの、仲間たちの信頼の言葉を心の養分にした千枝は、今まで気後れしていた華やかな衣装、アイドルの世界へと初めて自分の意志で手を差し伸べた。

千枝の心の葛藤がクリアされて、アイドルとしての新しい世界であるファッションショーがスタートするのだが、ここの音楽の構成がすごかった。ランウェイを構成する音楽は、つかさが声を得るきっかけとなった楽曲である「Brand new!」をインストゥルメンタルで使うことでブランドの世界観を表現。みりあと小春に導かれた千枝が初めてのランウェイを見事に駆け抜けると、今度はモデルとしてのつかさのターン。ここではまさかのつかさの完全新ソロ曲「アタシガルール」を持ってきた。つかさらしさにあふれた楽曲は鶴﨑輝一が作詞作編曲を担当。「シンデレラガールズ」では「サマーサイダー」以来の起用となった。

本編ラストシーンでは、千枝を気に入ったつかさが彼女を本気で自分のチームに勧誘。千枝が断る際に「みんなとアイドルやりたいから」とはっきり自分の道と意志を示したのは、眩しいぐらいの成長の証だった。

EDテーマは「あこがれステッチ」。コミック「アイドルマスターシンデレラガールズU149」第6巻特別版の特典CDが初出となる佐々木千枝の最初の大切なソロ曲だ。成長中の少女のなりたい自分への憧れを、千枝らしい丁寧で着実な縫い目の1つ1つに織り込んだような楽曲だが、エンディング映像で描かれた千枝の姿(裁縫教室や仁奈の着ぐるみの繕いを真剣に行なう表情、輝くような笑顔)は、その憧れに一歩近づいたことを確かに感じさせる心暖まるものだった。


●作品情報
TV アニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」

原作:バンダイナムコエンターテインメント
原案:「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」 廾之(サイコミ連載)

【スタッフ】
監督:岡本学
副監督:高嶋宏之
シリーズ構成:村山沖
アニメーションキャラクターデザイン:井川典恵
コンセプトアート:大久保錦一
デザインワークス:
野田 猛 小田崎恵子 中村倫子 渡部尭皓 槙田路子
美術設定:曽野由大
高橋武之 金平和茂
美術監督:井上一宏
色彩設計:土居真紀子
3DCG:石川寛貢 榊正宗 神谷宣幸
撮影監督:関谷能弘
編集:三嶋章紀
音響監督:岡本学
音楽:宮崎誠 川田瑠夏 睦月周平
音楽制作:日本コロムビア
アニメーション制作:CygamesPictures

【キャスト】
橘ありす:佐藤亜美菜
櫻井桃華:照井春佳
赤城みりあ :黒沢ともよ
的場梨沙:集貝はな
結城晴:小市眞琴
佐々木千枝:今井麻夏
龍崎薫:春瀬なつみ
市原仁奈:久野美咲
古賀小春:小森結梨
プロデューサー:米内佑希

©Bandai Namco Entertainment Inc. /PROJECT U149

関連リンク

TV アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』
公式HP
https://cinderella-u149-anime.idolmaster-official.jp/

公式Twitter
https://twitter.com/u149_anime

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