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INTERVIEW

2023.06.02

fhánaの新しい“冒険”がここから始まる!レーベル移籍第1弾シングル「Runaway World」が示す新体制としての決意と未来

fhánaの新しい“冒険”がここから始まる!レーベル移籍第1弾シングル「Runaway World」が示す新体制としての決意と未来

2023年春、所属レーベルを日本コロムビアに移すことを発表したfhánaが、移籍第1弾シングル「Runaway World」を完成させた。表題曲は人気バラエティ番組を原案とするTVアニメ『逃走中 グレートミッション』のOPテーマで、熱く疾走感に満ちたサウンドと強い決意の滲む歌詞からは、新体制となったfhánaの決意と心意気が伝わってくる。激動の時代を越えて、今夏にはメジャーデビュー10周年を迎える彼らが、今、届けたい音楽とは?メンバー3人に話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

メンバー脱退、レーベル移籍という2つの大きな変化

──ニューシングルのお話に入る前に、fhánaに訪れた2つの大きな変化についてお伺いしたいです。まずは結成時からのオリジナルメンバーであるyuxuki wagaさんが、1月のライブをもって脱退されたこと。突然の発表だったのでビックリしました。

佐藤純一 実は結構前から、彼は別のことをやりたいんだろうな、という雰囲気は受け取っていたんです。なので昨年の夏頃に話す機会を設けたら、彼はアーティストとして表に出るよりも、サウンドプロデューサーといった裏方の道に行きたい気持ちがある、と打ち明けてくれて。それで元々出演する予定だった『Cipher』ツアー(“fhána Cipher Live Tour 2022”)の名古屋の振替公演を区切りにすることに決めたのですが、ただ、そうすると残されたライブはチケット販売済みのものだけになって、それはファンに申し訳ないので、1月26日にも渋谷でのライブを急遽組んで、その2公演を彼のラストライブとして送り出しました。

──皆さんはwagaさんが脱退することに対して、どのように感じましたか?

佐藤 まずファンが悲しむだろうなと思いましたね。自分も学生時代、好きだったバンドに対しては、初期メンバーというものに理屈ではない思い入れやロマンを感じていたので。とはいえ彼が決めたことでもあるので、お互い前を向いて進まなくてはいけないなと。

kevin mitsunaga  僕はバンド自体が生き物というか、常に変わっていくのが当然だと思っている節があって、むしろ固定のメンバーで長く続けていくことのほうが奇跡的だと思うんですね。だからこの10年近く、同じメンツでやれたのはすごいことだと思うんです。もちろん名残惜しい気持ちはありましたけど、そもそも永遠のものなんて無いので、心機一転頑張るぞ!っていう気持ちのほうが大きかったです。なのでくよくよしている感じは全然なくて。

towana 私たちも突然「辞めます」と言われたわけではなくて、そういう雰囲気は感じていたなかで決まっていったことなので、fhánaの物語はこういう風に進んでいくんだなあっていう受け止め方をしていて。やっぱり突然知らされるふぁなみりー(fhánaのファンの呼称)たちのことのほうが心配でした。でも、fhánaは大丈夫だし、それぞれの人生を進んでいくだけの話なので。そういうことを今年の2本のライブで見せたかったし、実際に見せられたと思っています。その気持ちを継いで新曲を作ったところもありますし。

──確かに今回のニューシングルからは、これからもfhánaの活動を続けていく決意表明というか、覚悟の深さのようなものを感じました。

towana 「続けていく」というよりも「進めていくしかないでしょ!」みたいな、ポジティブな気持ちですね。今年の夏にはメジャーデビュー10周年を迎えますし、「3人になっても前を向いてやっていくしかないよね!」っていう。

佐藤 それもあるし、退路を断たれて前に進むわけではなくて、もっと前向きに楽しくてワクワクしている感じですね、今は。

towana 新曲(「Runaway World」)の歌詞に“冒険の始まり”とか“新しいセカイへ”といった言葉が入っていますけど、私たちもどうなるのかわからない、未知の冒険がこれから始まるんだなっていう気持ちが強くて。

kevin 俺はメジャーデビューしたての頃の気持ちに近いかもしれない。「この先どんなことが待っているんだろう?」っていう。

──メジャーデビューのときも、towanaさんが正式メンバーに加わって、新しい体制でのfhánaの始まりだったわけですしね。そしてもう1つの大きな変化として、日本コロムビアへのレーベル移籍があります。これはどのようなご縁で?

佐藤 今お世話になっている日本コロムビアのスタッフの皆さんは、僕が伊藤美来さんに「閃きハートビート」(2019年)を楽曲提供させていただいたときからのお付き合いで。そこから親交を深めていくなかで、すごくいいチームだと感じていたんです。

──fhánaのYouTubeチャンネルに動画がアップされていましたけど、皆さん、日本コロムビアの法被を着ていましたね(笑)。

towana そうなんです!(笑)。佐藤さんは元々お仕事を通じて面識があるけど、私とkevinくんは、あの日が初顔合わせだったので、すごく緊張していたんですよ。日本コロムビアさんは歴史のあるレーベルですし、レーベルを移籍すること自体も初めてのことだから、不安に思いながら(日本コロムビアの社屋に)行ってみたら、法被を着た方々が迎えてくださって(笑)。あのとき、ドアを開けた瞬間、気が抜けたんですよね。

──そんなに緊張していたんですね(笑)。

towana すごく気を張っていたので(笑)。そうしたらすごく愉快に迎えてくださったので嬉しかったです。

kevin しかも案内していただいた部屋が、床全体が人工芝になっている「芝ルーム」で(笑)。和んだ空間で、初対面のときからすごく楽しかったですね。温かいなあと思いました。

佐藤 やっぱり人の縁は大切ですよね。

“新しい冒険”の幕を開ける、昂揚感と祝福に満ちた新曲

──新体制での第一弾となるニューシングル「Runaway World」は、TVアニメ『逃走中 グレートミッション』(以下、『逃走中』)のOPテーマ。こちらはタイアップのお話を受けて制作されたのでしょうか?

佐藤 はい。移籍のお話を進めさせていただいているなかで、タイアップのお話をいただいたので、ぜひやらせてくださいと。ただ、そうなるとすぐに制作しないといけない状況だったので、去年の年末から今年の年始めにかけて制作していました。元旦の朝9時にリテイクのメールが届く、みたいな(苦笑)。

──大変だったんですね(笑)。ということは、アニメ制作サイドからも楽曲に関する細かい要望があったのですか?

佐藤 『逃走中』なので疾走感はマストで、なおかつ緩急のある楽曲、fhánaの楽曲で例えると「divine intervention」みたいな曲調、というお話をいただいていました。なので“速いアニソンロック”系統の楽曲がいいんだろうなとは思ったのですが、人気バラエティ番組の「逃走中」がどういう形でアニメになるのか予想もつかなかったので、企画書や脚本といった資料をいただいて。ただ、絵がないと雰囲気が掴めないので、キャラクターデザインも手掛かりに制作を始めました。今回はfhánaとしても節目のタイミングの楽曲になるので、気合いを入れて作ったのですが、今までで一番リテイクが多かったですね。

──最初はどのような形だったのでしょうか?

佐藤 最初のバージョンは、サビがもっと明るい感じだったのですが、そのままだと爽やかすぎるのでもっと強い要素、『逃走中』なのでハンターからの脅威や絶体絶命的な危機感、何が何でも生き残る強い決意、それとバトル要素を加えてほしいということで、調整していきました。その結果、前向きでアメリカンロック的なコード進行の楽曲という、fhánaとしても新しいものができました。実際にアニメを観たときも、今の完成形のバージョンのほうがこの作品には合っていると感じたので、結果的に良かったなと思っています。

──『逃走中』のアニメも観させていただいていますが、結構予想外の展開があってすごい作品ですよね。

kevin 話の進み方やテンポ感がすごく早いですよね。ラストには引きもあって次回が気になる終わり方をしますし。「えっ!怪獣が出てくるの……!?」みたいな(笑)。

──渋谷が“怪獣都市”という設定なんですよね(笑)。

佐藤 ナレーションも本家の「逃走中」と同じ方(マーク・大喜多)なのがいいですよね。観ていると、画面に向かって思わずオウム返しにモノマネしてしまうんですよ(笑)。

──モノマネをしている佐藤さん、見てみたいです。

佐藤 実は今回のシングルのDVD付き限定盤に収録されるMVのメイキング映像に、そういうシーンが入っていまして……。

──あるんですか!?(笑)。

kevin レコーディングのときも、佐藤さんがボーカルを録音する際に、ブースの中で誰も録音も撮影もしていないのに1人でモノマネしていたんですよ(笑)。

──どんだけ気に入ってるんですか(笑)。towanaさんはアニメの印象はいかがですか?

towana アニメ自体も毎回面白く観ていますけど、ビックリしたのは、ファミリー向けの朝のアニメなので、オープニングアニメに歌詞のテロップが入るんですね。林(英樹)さんが作るfhánaの歌詞は、ちょっと文学的だったり哲学的なことを言っていることが多いんですけど、それをテロップとして見ると、すごくアニソンらしさが感じられて。より元気が出るし前向きな楽曲になっているように感じました。それこそ主人公の(トムラ)颯也くんの心情に寄り添う歌詞になっているなと思って、毎回新鮮な気持ちで観ています。

佐藤 『逃走中』は子供向けのアニメになるので、自分が子供の頃の夕方にアニメを観ていた感覚が甦ってきて懐かしかったですね。しかも『逃走中』自体も、観ていてポジティブになれる作品なんですよね。

──颯也くんは朝アニメの主人公らしい、すごく真っ直ぐな性格をしていますし。

towana そうそう、明朗な感じがいいですよね。

──そういう部分は今回の楽曲の歌詞にも感じられるところで。今までの楽曲に比べて、シンプルかつ力強い言葉がたくさん使われている印象を受けました。

佐藤 歌詞も結構大変で、林くんには『逃走中』の作品性と、fhánaの新しい旅立ちを表現してほしいとお願いしたのですが、作品サイドからかなり細かくリテイクが入って調整しました。ただ、その中でも“ここはシンセカイ 冒険の始まり”や“Revolution 光を胸に抱き”のように、作品だけでなくfhánaの節目を感じさせる言葉も入れることができて、良い感じにまとめることができました。

──タイトルの「Runaway World」という印象的な言葉も、1番のサビに盛り込まれていて。

佐藤 実は最初に1コーラスが出来上がったときは、その部分に2番のサビ頭の“Translation”というフレーズが入っていたんですよ。そのときはまだ曲名が決まっていなくて、仮タイトルで「New World」と付けていたのですが、その後に「Runaway World」というキャッチーなタイトルができたので、その言葉を1番のサビに入れ替えたりして。

towana そのサビの頭のフレーズを入れ替えたのは、確か私の発案だったと思うんですけど……。

佐藤 ……そうだったっけ?

towana 覚えてないんだ!?(笑)。

──kevinさんは歌詞からどんな印象を受けましたか?

kevin さっきお話したfhánaの新体制に対するワクワク感や、今の自分の感情にすごく合っているなと感じましたね。モロに“冒険の始まり”と歌っていますし。そんななかでもすごくいいなあと思ったのは……。

towana 私もある!

kevin 僕から先に言わせて。やっぱりサビの“僕ら絶対超えてみせる”ですね。

towana えー。

kevin そこじゃなかった(笑)。

towana 私は最後の“この身千切れても 立ち止まっていられない”。本当にそういう気持ちなんですよね。立ち止まっているヒマはないっていう。この部分も一度変更することになりそうだったんですけど、ここは譲れなくて、そのままにしてもらいました。

佐藤 あれ?どう変えられそうだったんだっけ。

towana 確か“この身千切れても 進み続ける”みたいな感じになりそうだったんですよ。でも“立ち止まっていられない”のほうが決意感が伝わると思って、そのままにしてもらいました。佐藤さん、本当に覚えてないんですね?(笑)。

佐藤 そうだねえ(苦笑)。

kevin 自分もその形がすごくいいと思う。それと“この身を使い切る覚悟があるよ”もいいですよね。

towana ここは林さんが、私が作詞した「ユーレカ」の歌詞(“何もかも全部感じたい この身体を使い切って”)から引用してくれたみたいで。この歌詞を見た瞬間、そこから引っ張ってきているんだろうなって思ったから、こないだ名古屋のライブで会ったときに直接聞いたら「そうです」って言ってました(笑)。

kevin なるほどね!

──めちゃエモい話じゃないですか。“この身千切れても”もそうですけど、すごく覚悟が感じられる楽曲ですよね。そこは今の3人の想いが反映されているんだろうなと。

佐藤 特に2番以降の歌詞というのは、作品側の監修がそれほど入るわけではないので、fhánaとしてのメッセージ性が強くなっていると思いますね。

──towanaさんの歌声からも、いつも以上の力強さとある種の開放感を感じました。

towana 作品に寄り添うのはもちろん、fhánaとしてもすごく重要なタイミングという気持ちが強くあったので、今まで以上にたくさん練習してレコーディングに臨みました。アニソンらしいインパクトやキャッチーさを乗せたいなと思って、色んな歌い方を試したうえで歌録りをして。「この部分はこう歌おう」というのを細かく決め込んで、今までの中で一番練習したかもしれません。

──サウンド的には、バンドサウンドとストリングスの融合がダイナミックな昂揚感を生み出しつつ、祝福するような雰囲気もありますよね。

佐藤 特に鐘の音は祝福感がありますよね。鐘の音量のバランスって難しいんですよ。僕はfhánaに限らず、こういう鐘の音を使いがちなんですけど、音程感が微妙なので、とあるスピーカーだとあまり聴こえないけど、別のスピーカーだとすごく大きく感じたりして、その音量の調節でいつも悩むんですよね。

kevin 倍音がすごいから。

佐藤 そう。なのでミックスの最後はいつも鐘の音の調整をするんです(笑)。エンジニアの高須(寛光)さんと「いやあ、俺たちのチューブラ(ーベル)の時間がきましたね」とか言いながら、0.1単位で細かく調整していて。

towana わかんないですよ、そんなの(笑)。

佐藤 あとはシネマティックなパーカッションのSEを後ろで鳴らしているんですけど、それは『逃走中』の世界観を意識したところで。それこそバラエティ番組の「逃走中」でも、ハリウッド映画の劇伴みたいな、メタリックなパーカッションが使われたりしているので、そういうイメージを踏まえて。

──なるほど。あとは佐藤さんのコーラスパートも多めに入っていますね。

佐藤 これはtowanaも言っていたんですけど、僕のコーラス部分はライブでお客さんに一緒に歌ってほしいなと。

towana 楽しそう!やっとライブでの声出しが解禁になったので、ぜひ佐藤さんパートをみんなで歌ってほしいです。

次ページ:メンバー総力戦!? fhánaの新たな可能性を示す「Spiral」

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