5月21日、声優・伊藤美来が東京国際フォーラム ホールAにて“伊藤美来 Live Tour 2023「Every Day is a Gift」”の東京公演を開催。本公演は、今年2月リリースの4thアルバム『This One’s for You』を引っ提げたツアーのファイナルを飾ったもの。アルバム収録曲を中心に、楽曲に込められた想いが観客へと1つ1つ大事に届けられたような公演となり、観客もその歌やパフォーマンスに自然と惹き込まれていた。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
客入れBGMの多くを占めていたビッグバンド・ジャズのナンバーやステージセットの雰囲気が、開演前から「どんなショーになるのか?」というワクワクを高めてくれるなか、暗転とともにそのBGMに合わせて観客のクラップが大きく起こると、ステージの2階に伊藤が登場。まずは『This One’s for You』のリード曲「Gift」での、笑顔のステージングでライブスタートだ。2番に入ると中2階部分へ降りて、左右に動きながらの歌唱で大観衆・場内全体へご挨拶。間奏部分のダンスにもしっかりキュートさを織り込んだりと、まずは1人でステージの幕開けを堂々と飾ってみせる。続く「100年前に会いましょう」では、シャッフルのリズムに乗りながら楽曲途中から登場したダンサーとともにパフォーマンスを繰り広げると、ステージにはさらにショー感が。それを、楽曲に乗せた観客のクラップがさらに増幅させれば、最後はダンサー4人に囲まれた伊藤がバッチリポーズを決めて曲を締め括る。さらに、「TickTack Invitation」ではクラップとともに「HEY!HEY!」のコールが上がり、場内はさらなる盛り上がりへ。その光景の実現に嬉しさも湧いたのだろうか、伊藤の笑顔もさらにきらめきを増していく。歌声の面でも、キュートさ成分強めな地声を中心としながら、高音部ではファルセットを美しく絡めて歌声の面でもしっかりと曲を彩っていった。
3曲歌唱してからのこの日最初のMCパートでは、まずは伊藤の挨拶に客席から大歓声が。そして無事ツアーファイナルを迎えられた感謝を改めて口にしつつ、初めて自分のライブに来た人がいるかどうかも問いかけ、「どうでしょう?生の私は!」とさらに返すなど、東京でのワンマンライブとしては久々となる声を用いてのコミュニケーションも図っていた。そして今回のツアーについて「皆さんが少しでも、日々や自分のことを好きになれる瞬間を見つけられるようなコンサートにしたい」と意気込みを改めて語って、「laid back」からは3曲続けてメロウな雰囲気のナンバーを歌唱していく。この曲もまたキュンとくるファルセットという、伊藤の歌声の中でも特に最近より磨きのかかってきた要素で観客を虜にするのと同時に、拍に合わせて踏むちょっぴり慎ましやかなステップにはかわいらしさが滲む。また、続く「No Color」は落ちサビでは一瞬儚さを滲ませたかと思えば、直後の大サビでは逆ににわかに強さも感じさせ、歌声のメリハリを活かして切ない1曲を表現してみせる。さらに「ユニットバス」では、地声で出る音域であえて用いられたファルセットがどれもこれも効果的で、楽曲自体の切なさと結びついてキュンとさせられる。終盤での何かを振り切るようなスキャットでの強さも相まって、1人の人間の心情を浮かばせる巧みな表現を、この1曲を通じて味わわせてくれた。
曲明けには、4thアルバムを引っ提げてのものとなったツアーについて、「自分の中にも新曲がツアーを通じて染みていっている感じがする」という率直な感想を述べる伊藤。また、ツアーファイナルということで衣装についてもじっくり語り、そのままステージ上で記念写真撮影。ポーズを取るごとに歓声が起これば、さすがに「なんて気分が良いんだ!」と超上機嫌に。さらには「ツアーを通じて、(ファンの)声なしでライブができない体に戻った」と、自身も声出しOKのライブを楽しんでいることも伝えていた。
そんなコミュニケーションを経て、続いては「日々の生活の中で、堪えなければならないことや自分で自分を鼓舞しなければいけないときもある。そんな皆さんへのエールを込めて……」と、エールという形で3曲を歌い、届けていくことに。
まず「気づかない?気づきたくない?」では、少々けだるめに歌われていくAメロでの歌声が、音源同様曲調ともマッチしてなかなかに印象的。さらに2コーラス目に入ってからのラップでは要所要所でエッジも立たせてスタイリッシュさを前面に出し、ダンスも滑らかかつ美しく披露することで、まさに“鼓舞する”姿で魅せ・聴かせていく。そのままラストのスキャットまでクールに決めて、フリーソウル調のダンサブルなナンバー「Oh my heart」へ。ここからさらに、歌声には力強さがぐいぐいと増していく。加えてBメロではダンサーとのコンビネーションで斜めのフォーメーションを取ったり、サビでは脚さばきも細かく美しく魅せていくなど、強さと視覚面での魅せ方という2つのポイントを持つ曲として届けていった。そして「Born Fighter」では「フォーラム!アゲていくよー!」とシャウトし観客を煽ると、このロックナンバーを自らもアツく歌唱。観客からの大歓声に包まれる伊藤の歌声にはへたりのようなものはなく、改めて彼女の歌声がさらに強度を増したという印象を刻みつけるもの。間奏では伊藤が突き上げた拳に合わせて自然と歓声が沸き起こり、大サビでは2階ステージに花火が噴き出すなど、視覚的にもアツいステージが形作られるなか、最後まで力強くカッコいい姿で、力強く背中を押す楽曲揃いのブロックを締め括ってみせたのだった。
ここで伊藤は一旦降壇し、ダンサーがフィーチャーされてのダンスタイムがスタート。ステージ上方に赤いカーテンのセットが提げられるなど、再びショーのような空気が作り出されていくと、衣装チェンジを終えた伊藤が2階ステージ上に再登場。キラキラなドレスに身を包み、ダンスに加わりラストを飾ると、「みんなで一緒に踊りましょう!」と声をかけて「恋はMovie」からライブを再開する。その呼びかけや曲調もあって、本公演の中で特にダンスをフィーチャーしながら魅せていったのがこのナンバー。サビでは振付を覚えていたファンがダンスをなぞるなどさらなる一体感を生むと、自身のパフォーマンスにはこれでもかというくらいのキュートさを詰め込んで、ハートを撃ち抜きにくる。すると今度は、同じくブラスがフィーチャーされながらも強さとカッコ良さをみせるキラーチューン「Shocking Blue」で、違った角度から心をとらえに来る伊藤。イントロが流れた瞬間に歓声が起こり、その大きさに負けずに力強く響かせる歌声をもって、ここまでのアツさを塗り替え更新してみせる。視覚の面でも、Bメロの指差しポイントなどキメになる箇所ではビシッと決めつつ、ラストのロングトーンが尻上がり気味になるぐらい力いっぱい、最後の最後まで力いっぱい振り絞って歌いきっていった。
曲明けには2着目の衣装に触れ、全身キラキラのドレスについて「ステージがすごくショーっぽいキラキラなものなので、それに負けないように」という意図が含まれていると説明していた。ちなみにその説明中、言葉通りステージを虹色に輝かせたPAに、ほかの公演同様「赤!」や「青!」と色を指定したところアドリブで即対応。「えー!すごい!」と感動しつつ「前回は無茶振りをしてすみませんでした!」とのお詫びも。
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