【北川勝利・藤村鼓乃美 ボーダーズの“音の場” season3】＃1 大門～汐留編

ボーダー柄の服をトレードマークに、ユルくマジメに音楽と向き合うコンビ――。“ボーダーズ”こと北川勝利と藤村鼓乃美が、山手線の各駅をそぞろ歩いたseason2。引き続き始まるseason3も鉄道沿線を歩きます。今回のテーマは都営地下鉄大江戸線。その名の通り東京が江戸と呼ばれていたころの旧市街を環状で結ぶ地下鉄です。season2ではサイコロを振って行く先の駅を決めていましたが、今回は隣の駅まで歩いて環状線27.8kmを1周しようという試みになります。第1回目は大門から汐留まで。山手線の浜松町と新橋の近接駅であり、以前にもおふたりは散策していますが、あれから数年を経てどんな風景をみるのでしょうか？

PHOTOGRAPHY BY 山本マオ　INTERVIEW & TEXT BY 田中尚道

――こともなげにseason3が始まりました。

北川勝利　冗談で次はどこ周ろうかと言っていたのが、本当になるなんて。丸い路線って何かあるかな、ってことで大江戸線になったわけですが、大分深く潜りましたね。大江戸線ってどの駅も深くてまだ上るまだ上るという感じで。リスアニ！編集部に行くときも、六本木から外に出るのに、僕毎回チャレンジで階段で上っていたんです。

藤村鼓乃美　楽器持って。

北川　そうそう。本誌で連載していた「ボーダーズ　特訓中」では毎回ギターが必要だったので、ギター背負って最下層のホームから階段で上っていました。

藤村　私は、いつも北川さんと駅で待ち合わせしているので、ギターを背負って上ってくる北川さんを上から見ていました。

北川　そんな大江戸線編の最初の駅が大門と。

――ここから反時計回り、北東に向かって歩いていきます。

北川　順番に回って行くんだね。今日行った大門は初めて降りました。

藤村　私は大門に吹き替えのスタジオがあって、そこに行くのに使っていました。あと昔、ワンリルキスをやっていたときに、ダンスのスタジオあってレッスンしていました。

北川　初めての駅だから歩いても歩いても知らない場所で。あ、でも途中で前に行った神社（新橋回　日比谷神社）に出て、ここに繋がるのかと。今回は何を見たんだっけ？

藤村　イタリアと切腹ですよ。

――あとは旧芝離宮恩賜庭園と福沢・近藤両翁学塾跡も見ました。慶應義塾の前身ですね。

北川　なんで大門っていうんですか？

――芝増上寺の大門がそばにあるからです。season2の浜松町の回で、実は大門を通っています。徳川の菩提寺で、お地蔵さんがたくさんあったところです。

藤村　あー、懐かしい。ボーダーズで周ったところを地図にして外国人の観光客にあげたら喜ばれるんじゃないですか？

――問題なのは、ほぼ日本語の説明しかないのと、藤村さん以上に「忠臣蔵」とかを知らない方たちだと思いますので……。

北川　season2の最初の頃とかって、ライブハウス周っているだけだし。今回は、公園行ったよね。桜のいい写真が撮れた。

――旧芝離宮恩賜公園ですね。

北川　桜の時期から外れていたけど、品種によっては満開で。

――大島桜は咲いていましたね。

藤村　あそこのそばに浜松町の回で行った公園もあるんですよね。

――浜離宮恩賜公園ですね。

藤村　池の中に島があって橋渡った。

――浜離宮は徳川家の庭園で、芝離宮は大久保家の治めていた小田原藩の庭園です。徳川の屋敷の隣に譜代と言って、昔から徳川家に仕える大久保家の上屋敷の屋敷と庭園があったわけです。本当はもっと大きかったそうですが、旧国鉄（現JR）の浜松町駅ができてしまって大分小さくなったのと、もとは海に面していたんですが、それも埋め立てられてしまったので浜離宮に比べるとこじんまりしています。

北川　すごい歴史の勉強になる。

――ーー江戸時代、各藩の江戸屋敷は幕府から借りていたので、明治維新で全部返してしまいます。そのうちのいくつかは公園として整備されています。もっというと恩賜公園というのは、天皇の御料地（皇室の財産）だったものが下賜されたものです。売却ではなく、恩によって下賜されたので恩賜公園というわけですね。

藤村　みんなそんなに歴史って知っているものですか？　学校で教えてもらった歴史だとそんな話はしないですよね。だから面白くなくて。

北川　だからマンガやドラマを観ないと。幕末の例えば坂本龍馬を入り口にして見ていると、ペリーが日本に来たのが何年で、それが最初で色々あったのか、というのが繋がる。年号だけで誰がどうした、だと記号でしかないから覚えないけど、ストーリーを踏まえると、最初の事件から何年でこの事件が起きるのかとか。近代でも自分が生まれた年から考えて、親の生まれた年を考えると第二次世界大戦とかも最近の話じゃないかと思ったりするわけ。ちょうど100年前の映像とかを見ると、身近な事柄から見てみれば100年ってそれしか経ってないのかと。そこから歴史で聞いたことのある事柄が繋がって俄然興味がわく。それで調べているうちに大きなストーリーが見えてきて覚えるというか。

藤村　たしかに、私も「ベルサイユのばら」でフランス革命は一瞬そうなりました。

北川　マンガがスタートで、教科書にブロックで書かれていたことが何巻にもなっているわけで、それで興味を持ったりとかね。

藤村　全部がそうなっていれば面白いですよね。

――そうすると歴史の教科書が膨大になってしまうので……。

北川　歴史って興味ない人はさっぱりわからないけど、好きな人はめちゃめちゃ詳しいじゃない。高校の頃とか歴史に興味ないから全然テストで点数をとれないんだけど、クラスメイトで歴史好きの人がいて、その人はテストが全問正解で100点超えてたからね。

――先生は多分減点式で考えていたんでしょうね。

北川　自分から興味を持たないとなかなかね。

藤村　前回（season2.5「高輪ゲートウェイ編）、私がまったく知らなくて驚かれた「忠臣蔵」も、ゲームとかアニメになっていたらいけそうな気がする。47人を全部イケメンにして。

――でもすごい爺さんとかいますよ。

藤村　大丈夫です！枯れ専もいますから。

北川　でも、このseason3はずっとこういう話になるよね。

――そうですね。何せ大江戸線ですから。森下から両国の間に吉良邸があるので、「忠臣蔵」はまた話題に上りますね。