INTERVIEW
2023.05.24
「アイドルマスター シンデレラガールズ」の登場アイドルたちの中でも、“Under149cm”の小さな女の子たちに焦点を当てたTVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」。この作品の第6話で、人気ユニット・LiPPSの新曲「Nightwear」が公開された。
本楽曲を手がけたのは、これまで速水 奏の「Hotel Moonside」などを筆頭に、「アイマス」シリーズの様々な楽曲を担当してきたTAKU INOUE。以前から「LiPPSの曲を書いてみたい」と言っていた彼ならではの、クールで華やかなダンスチューンに仕上げている。本稿では、過去の提供曲の思い出や今回の制作過程について、TAKU INOUEに話を聞いた。
【特集】TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」が彩る夢のステージを紐解く!
INTERVIEW & TEXT BY 杉山 仁
――TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」(以下、「U149」)には、TAKUさんがこれまで楽曲を提供してきたアイドルたちが多数出演されています。ご自身が「アイマス」シリーズで特に印象深い過去の楽曲といいますと?
TAKU INOUE まずはやはり、(LiPPSのメンバーでもある)速水 奏さんの「Hotel Moonside」ですね。この曲のオーダーをもらった時点では、奏さんの人柄がまだそこまで深く掘り下げられているわけではなかったと思うんですけど、資料を見ると「キス魔」という設定になっていて。当時のディレクターから参考曲として挙がってきたのも、ちょっとバラエティっぽい雰囲気のお色気路線が強いものでした。でも、「奏さんというキャラクターにとっては、もう少し深みを持たせたほうがいいんじゃないか?」と思い、最初は独断で「わかりやすいお色気のような方向性にはいかないようにしよう」と考えていた気がします。
――明るいお色気というよりも、余韻が感じられるようなものにしよう、と。そこで大胆に音楽性が変わったんですね。
TAKU そういう空気感を大切にして作ったのが「Hotel Moonside」でした。僕自身のことしかわからないので、ほかの方がどうだったかはわからないんですけど、当時ってその辺りの方向性は割と作家の裁量に任されていた感覚があって、僕も自分で考えながらやっていましたね。
――同じくLiPPSのメンバーでもある一ノ瀬志希・宮本フレデリカのユニット・レイジー・レイジーの「クレイジークレイジー」はどうですか?
TAKU この曲は、自分では「めちゃくちゃ攻めた曲だな」と思っています。2人の性格を考えると電波ソングっぽい曲でも似合ったとは思うんですけど、たしかオーダーとして「女性にも受ける曲にしてほしい」ということが書いてあって、シリアスにしてみようかな、と思って作りました。最初はあそこまでバラードっぽくなるとは思っていなかったですし、「アイマス」楽曲を提供してきたなかでも、一番受け入れられるかどうか心配だった曲でもあって。メロウでミディアムテンポな曲になったのは、結果的に良かったのかな、と思っています。
――この曲はフューチャーベースやジャージークラブの要素が入った曲でもありますね。
TAKU 覚えているのは、曲を作り始めたときに車でDJミックスを聴いていて、それがジャージークラブのものだったんです。「アイマス」に限らずですけど、僕の場合は自分のやりたいことも混ぜ込んで曲を作ることが多いので、大前提として彼女たちの雰囲気に合わせつつも、上モノのメロウな雰囲気に合うようなビートを合わせていきました。こういうサウンドなら、きっと女性受けもいいものに出来るのかな、と思ったので。
――当時ミックスでもよくあった、R&Bをベースにしたジャージークラブの雰囲気ですね。
TAKU そうですね。当時、そんなふうにR&Bをサンプリングした曲が結構あって。そういうものをポップソングと上手く1つにできれば良い曲になるのかな、と思っていました。
――「U149」にも物語の中心となる第3芸能課の一員として登場している、赤城みりあの楽曲「Romantic Now」はどうでしょう?
TAKU この曲は、歌詞だけではなく曲も含めて担当した初めての楽曲だったので、大変でした。
――内容としても、「小学生がラップをする」という楽曲で。
TAKU そうなんですよね。「そもそも、何で小学生がラップをするんだろう……?」というところから始まったんですけど、最初はもっとテンポがゆっくりのものを作ってみたら、「良い曲風過ぎる」と却下されてしまって。それで、「もっとはっちゃけたほうがいいのかな?」と試行錯誤しながら完成版のようになっていくんですけど、みりあちゃんって、年齢が小学5年生なんですよね。それで、「5年生って、実は周りが思っている以上に結構大人だよな」と思ったんです。自分自身や周りの子を思い出すと、大人になってからイメージする小学5年生とはちょっと違って、5年生でも実は色んなことを考えていたし、単に無邪気なだけでもなかったよな、と思って。そこで、「みんなはかわいい子供だと思ってるんだろうけど、それだけじゃないよ」という雰囲気を意識したような気がします。子供っぽい部分も入れながら、「いやいや、そんなことないぞ」という部分も入れていくというか。
――たしかに、それならラップであることも上手く活かせそうです。キャラクターたちのリアルを考えていった結果、方向性が定まっていったんですね。「Romantic Now」は今回、『U149』の第3話でも劇中のBGM&EDテーマとして流れていました。
TAKU 今年でちょうど10年経つわけですから……「すごいな」と思いますね。
――TAKUさんが作曲時に考える「アイマスらしさ」のようなものはありますか?
TAKU 1つに決まっているわけではなくて、場合によって変わったりしますけど、「ポップソングとして良いものをつくる」という気持ちは大前提としてありますね。それに加えて、「女性のアイドルたちが歌う」というところは考えています。あと、自分のところにオファーがくるということは、「きっと変なものが求められているんだろうな」と思うので(笑)。「アイマス」にたくさんの楽曲があるなかでも、僕の場合は少し捻ったものを出すというか、音楽が好きな人もニヤッとしてくれるような曲を作ろう、とは思っていますね。
――TAKUさんは元々そういう楽曲を作るのが上手い方だと思いますが、そうした音楽性を受け入れてくれるのも「アイマス」シリーズらしさかもしれません。
TAKU やっぱり、懐が広いですよね。そういった土壌を先輩たちがずっと作ってきてくれていて、僕よりあとに「アイマス」シリーズに参加した人たちもやりやすい環境にしてくれているんじゃないかな、と思います。もちろん、「こういう曲がほしい」と明確にオーダーをもらう場合もあるでしょうけど、元々音楽的な受け皿を広く取ってくれているというか。アイドルの数が多いぶん、それぞれの曲を尖らせる必要もあって、色々な曲を聴いても面白いなと思います。
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