REPORT
2023.05.19
今年5月30日からデビュー5周年イヤーに突入するhalcaが、最新アルバム『nolca solca』を引っ提げ、初のフルバンド編成による初の東名阪ワンマンツアー<LAWSON presents halca first tour 2023“nolca solca culca”>を完走した。3年ぶりに“声出し”が解禁された本ツアー。ファンとhalcaの“念願”が詰め込まれ、ハッピーに包まれた5月6日の東京ファイナル公演、Spotify O-WESTのステージを詳細レポート!
TEXT BY 阿部美香
PHOTOGRAPHY BY 中村ユタカ
“念願の!”という言葉がこれほどまでに良く似合い、集まったすべての人が想いの丈をぶつけたライブがあっただろうか。取材でライブの話になるたびに「早くツアーをリベンジしたいんです!」と語っていたhalca。2020年春に予定していた1stツアー“トリプルトリップ”はコロナ禍で全公演が開催中止に。その後は、東京をホームとして、デビューから毎年続けている“Help Me!!!!!”シリーズ、新感覚のアコースティックセッションに挑戦した“live playground”シリーズ、そして昨年は、彼女にとって最もチャレンジャブルだったマンスリーライブ“[playgood]”シリーズなど、数々の趣向を凝らしたワンマンライブにチャレンジし、アーティストとして目を見張る成長を遂げてきた。
しかし、彼女の心には、“みんなに来てもらうのじゃなく、私が会いに行って、halca成長したね!と感じてもらえるツアーがしたい”という想いは、常にあったに違いない。その気持ちはファンとて同じだ。
そんなhalcaとhalcaファンの想いが、ついに<“nolca solca culca”>ツアーで実現した。4月29日の大阪・Shangri-La公演を終えたhalcaは、Twitterで「やっと会えて嬉しかった!!声もクラップも一体感すごかった!!」と約3年ぶりの声出しライブへの感動を伝え、翌30日の愛知・SPADE BOX終演後は「熱かったし暑かった!!会場めっちゃ揺れてたね!!」とオーディエンスの勢いに感激していた。
そんな2会場でのファンの熱量を受け取ってのファイナル公演。会場は、渋谷のSpotify O-WESTだ。halcaにとっては、2020年10月に“LAWSON presents halca 5th LIVE Help Me!!!!! we/st & live playground #001”を行った思い出の残るライブハウスでもある。開場時間を待ちきれないように、入口の階段下には多くのファンが集まり、会場に吸い込まれていく。徐々に埋まっていくフロアは早くも熱気に満ちている。
ステージの後ろに飾られているのは、いつもと同じ天使の羽が生えたピンクの“halcaロゴ”。だがステージの上の風景は、いつものワンマンとはまったく違っている。普段ならhalcaが軽やかにダンスし、駆け回るステージに置かれているのは、ベース、ギター、ドラム、キーボードの楽器とアンプ類。halcaワンマンでは初めてのフルバンドでのライブが楽しめるんだ!というワクワクが、それを見た瞬間に、改めて湧き上がってくる。
開演の18時。暗転する会場。ポップなBGMにのせて点滅するライトと手拍子の中を、このツアーのために結成されたnolca solca yalcaバンドの4人が、声援に応えて拳を挙げながらステージに登場する。バンマスの川口圭太(g)、浅倉高昭(b)、白井アキト(key)、早川誠一郎(ds)がポジションに着いて軽くセッションが始まる。一旦のブレイク。ステージ下手から華やかな衣装に身を包んだhalcaが駆け込んでくると、フロアから大歓声が巻き起こり、スタートしたのは「時としてバイオレンス」だ。軽快なバンドサウンドに合わせて再び大きな手拍子が湧き、巻き起こる掛け声。halcaも客席に手を振りながらキュートな歌声を響かせ、ニコニコ笑い、ぴょんぴょん飛び跳ねる。その勢いのまま、手拍子を煽って「FIRST DROP」へ。魅力的なハイトーン、軽やかなミドルテンポのポップチューンから始まったオープニングからは、初めてバンドを背負ってライブするhalcaの嬉しさ、楽しさが客席にもじつにフレッシュに伝わってくる。
「改めましてこんばんは!halcaでーす!私の初めてのツアーへようこそー!」
ライブハウス全体を揺るがす大歓声に「嬉しい、嬉しいです!」と笑顔で応えるhalca。
「初めてのツアーなので、皆さんに聴いてほしい曲をいっぱいいっぱい……もういっぱいありすぎて詰め込めきれないくらいだったけど、頑張って選んでセットリストを考えましたので、どんどん歌っていきたいと思います!」
halcaの一言一言に、客席から「うぉー!」と声が上がる。「みんなの声、聞かせてー!」のシャウトに早川がドラムスティックでカウントを刻み、スタートしたのはキュートな「LOVEして」。サビではステップを踏みながら小さくフリをつけるhalcaに合わせるように、浅倉がベースのネックを上げ、白井が手を振る。そんなバンドとの連携プレイも生バンドならではだ。小粋でジャジーなアウトロから続いたのは、恋の終わりを描く「Fuzzy Rain」。halcaは大人っぽくシリアスな表情になり、切なさを歌う。だが、そんなしっとりとしたムードは、次の「あれこれドラスティック」で一変。アクセルを踏み込んだバンドを鼓舞するように手拍子が鳴り、halcaも激しく頭を振り、拳を振り上げながら、ハイスピードでハイテンションのこの曲を力強くドライブする。halcaの歌声に「Hi!Hi!」とオーディエンスが応え、川口の鋭いギターソロが炸裂。ラストにhalcaが高々とハイキックを決めると、フロアの興奮は早くも最高潮に達した。
息を弾ませながら「笑っちゃうくらい、しんどい~。今日はお天気もいいから、すごい暑くないですか?ビックリしました!」とhalcaはコロコロと笑い、改めて客席を見渡して、たくさんのファンが詰めかけてくれたことに感謝を伝える。続けてツアータイトルにかけてネーミングされたnolca solca yalcaバンドのメンバーを紹介。大阪、愛知の2公演を経て、朗らかなチームワークを築いてきたのだろう、ファンからもメンバー1人1人とhalcaとのフレンドリーな会話に、温かな応援の声が飛んでいた。そして改めて、今回のツアーに込めた気持ちをhalcaが語る。
「私にとっては3年越しのリベンジとなるツアーです。1stアルバム『Assortrip』をリリースした時に(ツアーを)計画してたんですけど、コロナ禍によって中止になってしまって、ご迷惑おかけしました。あの時はすごい悩んだんだけど、決断を下すのは早いほうがいいと思って。でもあの時の選択があったから、今日みんなとこうやって元気に会えてるなと思ったら、正解だったなって思います。長い間、お待たせしました」
halcaの想いを励ますように、湧き上がる拍手。そして3年前のリベンジを歌に込めて選ばれた次の曲は、その1stアルバムからの1曲「one another」と、最新アルバム『nolca solca』からの「weather through」だった。穏やかでまろやかなこの2曲は、どちらもhalcaを応援してくれる人への感謝を込め、ファンのことを思いながら作詞を手がけた楽曲だ。そんなhalcaの気持ちを汲み取るように、彼女を見守り、歌に聴き入るオーディエンスの温かさが、O-WESTに晴れやかな風を運んだ。
halcaのライブはいつも、ファンに向けて真っ直ぐな気持ちを伝えてきた。この日もMCの端々に、“初めてのツアー”ができた嬉しさを滲ませる。大阪、愛知公演を経て迎えたこの日についても、「そうだ!ツアーファイナルっていうのも人生で初めて経験してるんですよ!嬉しいなぁ、何もかにも初めてで、全部が新しくてずっとドキドキドキドキしています」と語り、このツアーを楽しそうに振り返る。大阪ではたこ焼きを食べたこと。名古屋で海老フライサンドを食べたこと。東京ファイナルのグッズのガチャガチャの当たりには、東京名物・もんじゃ焼きのイラストを描いたこと。でも、見た目が微妙なもんじゃ焼きを、美味しそうに描くのは難しい……というところで、halcaが「人間もそうですけど食べ物も見かけによらないですからね~、なんでだろうね?」と問いかけると、「なんで~?」とフロアがリアクション。「もんじゃ焼きってどうして美味しそうに見えないんだろう?」「食べたら美味しいのにね?」とhalcaが言うたびに、オーディエンスの「なんで~?」「なんで~?」の声が大きくなり、放たれた曲は、halcaのふわりとしたラップも楽しい渋谷系の香りを残すアーバンポップ「なんで?なんで?なんで?」。そんな楽しい掛け合いも、このツアーでファンと育ててきたものだ。もう1曲キュートな「告白バンジージャンプ」が続き、ステージの上手下手を行き来するhalcaのジャンプに合わせてフロアが跳ねる。この曲に限らず、今まで何度もライブで聴いてきたお馴染みの楽曲も、生バンドで演奏されると新鮮な驚きと新しい魅力が感じられて面白い。実はこの「告白バンジージャンプ」は、前半で披露された「Fuzzy Rain」と同じく、ツアー中の日替わり曲。「そうそうそう、またこのツアーで“初めて”のことを思い出しました。日替わり曲も初めてなのよ!嬉しい~」と喜んだhalca。そして「おそらく最後の、皆さんの心の安らぎポイントだと思うので、うっとりと聴いてもらえたらいいなと思います」と、静かに始まったのは昨年末に公開された映画『かぐや様は告らせたい ―ファーストキッスは終わらない―』挿入歌の「ロマンティックマニフェスト」。美しいミラーボールの光が客席に舞い降り、ドラマチックなこの曲を感動的に彩る。そしてもう1曲、白井のピアノとhalcaのボーカルから始まった「センチメンタルクライシス」。halcaのキャリアにおいても重要な作品の1つとなった『かぐや様は告らせたい』ナンバーの連なりに、名場面の数々を思い出した人も多かったに違いない。
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