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INTERVIEW

2023.05.10

PENGUIN RESEARCH、約3年半ぶりのオリジナルアルバムが到着!メンバー全員が本作に込めた熱い想いを語る

PENGUIN RESEARCH、約3年半ぶりのオリジナルアルバムが到着!メンバー全員が本作に込めた熱い想いを語る

PENGUIN RESEARCHからニューアルバム『逆光備忘録』が届けられた。前作『それでも闘う者達へ』から3 年半ぶりのフルアルバムとなる本作には、「変幻自在」(TVアニメ『アルスの巨獣』OP テーマ)、「HATENA」(TVアニメ『ガンダムビルドダイバーズ Re:RISE 2nd Season』OP テーマ)、「キリフダ」(TVアニメ『シャドウバース』OP テーマ)などのアニメ主題歌に加え、リードトラック「Crier」、スマホゲーム「バンドやろうぜ!」でPENGUIN RESEARCHが音楽を担当した劇中バンド・BLASTの「YATSUATARI」も収録。「バンドをやれていることの喜びにフォーカスして制作していた」(堀江晶太/b)という本作について、メンバー自身の言葉で語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之

3年半という月日で重ねた経験をこのアルバムに

――3年半ぶりのフルアルバム『逆光備忘録』が完成しました。ロックバンドとしての熱量、音楽的な広がりを両立させた作品だと思いますが、皆さんの手ごたえはどうですか?

堀江晶太 前作からかなり時間が経って、色んな経験を重ねるなかで、自分の中で原点回帰した感じがあって。バンドをやれていることの純粋な喜びだったり、バンドをやっている自分たちの像に対して、「いいもんだな」と改めて思えるようになったんですよね。制作に関しても、面白いことをやろうとか、刺激なものを作らなきゃみたいなことよりも、もっとフラットな気持ちで「このバンドでこういう曲をやったらかっこいいだろうな」という感覚が強くて。今回のアルバムも下心なく、音楽を楽しみながら制作できたと思っているし、すごく満足してます。

生田鷹司 「3年半も経ったのか」という感じもありますね。2019年にツアーが終わって、(コロナの影響で)活動がほぼ止まっていた時期があって。「HATENA」「キリフダ」もそうですけど、楽曲自体はコンスタントに出していたけど、アルバムはかなり久々なので。新曲もかなり入っているんですが、熱量を込めて「暴れるぞ!」みたいな曲というより、ちょっと大人っぽい曲が多いのかなと。フラットな目線でやりたいことができましたし、背伸びしてない感じというか。

神田ジョン アルバム全体の印象については晶太くん、鷹司くんと一緒なんだけど、俺は「子供のままだな」みたいな感覚なんですよ。自分のギターのプレイもそうだけど、ここ数年で蓄積してしまった雑味や雑念みたいなものを取っ払えたというか。バンドをやるって、そもそも童心じゃないですか(笑)。

堀江 確かに。

神田 曲の印象としては大人っぽいものもあるけど、気持ちとしては14~15歳のときと変わらないんですよね。

柴﨑洋輔 うん。ゴリゴリに攻めるだけではなく、色んな表現があって。純粋に音楽に向き合えたし、しっかり突き詰めることができたアルバムだと思います。

新保恵大 前作からの3年半の間に、各々が色んなことを感じてきただろうし、成長した部分もあると思っていて。それが如実に出たアルバムになりましたね。僕自身もコロナ渦以降、自分を見つめ直す時期があって。「HATENA」「キリフダ」は2020年2月くらいに録ったんですけど、アルバムの新曲に比べると別人だなっていう感覚があるんですよ。

――アルバムタイトルの“逆光備忘録”については?

堀江 たしかメンバー同士で話すタイミングがあったんですよね。あのときって「FORCE LIGHT」のデモはあったんだっけ?

神田 あった。リハスタでアルバムの新曲のデモを聴いてたんですよ。そのときに晶太くんから“光”というワードが出て。

堀江 そうか。アルバム1曲目の「FORCE LIGHT」のデモを作ったときに、「これは光の曲だな」と思ったんですよね。それがずっと頭の中にあり、「光って何だろう?」とぼんやり考えている時期があって。僕はみんなとワイワイ盛り上がる人ではないし、“光か影か?”と言われたら、影だろうなという自覚があるんです。影に美しさを見出せる性質があるし、それはおそらくメンバーもそうじゃないのかなと。もっと言えば、PENGUIN RESEARCHのファンもそういう人が多いような気がしていて。「暗いところにいる人間だからこそ望める光がある」というイメージから派生して、「ライブハウスの光がきれいなのは、真っ暗な場所だからだよな」とか色んな想像をしているなかで、“逆光”という言葉に辿り着いたんです。それと同時にスタッフの方と「アルバムって、どうして作るんだっけ?」みたいな根本的な話もしていて。“忘れられないようにする”というのもそうだし、写真のアルバムみたいに思い出を記すためだったり。僕自身も、自分の人生や生活のセーブポイントみたいな感覚で曲を作ることがあるんですよ。「何かあったら、またここに戻ってくればいい」っていう。そんなことを考えてるなかで“備忘録”というワードが出てきて、2つを繋げたんですよね。

――「逆光備忘録」は今のバンドを表す言葉でもあり、メンバーの思いとも繋がっているんですね。では、収録曲について聞かせてください。今話に出ていた「FORCE LIGHT」は、アルバムを象徴する楽曲なんでしょうか?

堀江 そうですね。アルバムの入口はこれしかないなと思っていたし、この曲からスタートするライブをやりたいという気持ちもあったので。デモの段階からメンバーの賛同が得られた曲なんですけど、特に神田さんがイメージを推進してくれてた記憶があって。

神田 香港の九龍城の廃墟サイドのイメージが浮かんだんですよね。さっき晶太くんが「光と影だったら、影」みたいな話をしてたけど、九龍城にも歓楽街的な部分と、スラム街的な側面があって。「FORCE LIGHT」からは影のほうを強く感じたんですけど、ずっとそこにいるんじゃなくて、「だけど進んでやる」「生きてやる」という意思が伝わってきて。

生田 うん。最初に聴いたときは「疾走感があって、きれいな曲だな」という印象だったんですけど、歌詞が入ってイメージが変わって。まさに“暗い場所から光を見ている”という図が浮かびやすい曲だなと思います。ただ、悲壮感や重くなりすぎるのは嫌だったので、レコーディングの歌入れでは「ちゃんと希望もある」という感じを意識して歌ってました。

柴﨑 ピアノの演奏も、曲のイメージは意識してましたね。間奏のピアノのソロも、まさに“逆光”を思い浮かべながら表現して。

新保 ドラムは余計なことをしないというか、かなりシンプルに叩きましたね。もちろん曲の世界観も意識してましたけど、あまり考えすぎず、曲に導いてもらったというか。

“泣き虫”の歌、「Crier」

――2曲目はアルバムのリード曲「Crier」。

堀江 デモ自体はかなり前からあったんですけど、なかなか形にならなくて。でも、熱量を込めて作っていた曲なので、このタイミングでもう1回引っ張り出してきたんです。「Crier」は“泣く人”とか“泣き虫”みたいな意味ですね。同じようなテーマの曲はいっぱい作ってきたんですけど、自分との対話というか、「自分の心とどう折り合いをつけるか」みたいな曲が多くて。今回はそうじゃない“泣き虫”の曲を作ってみたいなと思ったんですよ。誰かと一緒にいたい、悲しみや虚しさも伝え合いたい、ちゃんと救われたいっていう……。それが今の僕ららしいなという気持ちもあったので。それは僕だけのことじゃなくて、メンバー全員の集合体のような人物像が独り歩きしている感覚もありました。

生田 サビの後半の“ただ 君が居てよかった”“ずっと 独りがよかった”という歌詞がすごく好きで。

堀江 鷹司くん、絶対好きだと思った。

生田 誰にも干渉されたくない、誰も俺に触らないでくれという気持ちになることもあるし、ふとした瞬間に「君が居てくれてよかった」とか「あの人がいなかったら、今の自分はいないんだろうな」と感じることもあって。二律背反というか、相反する自分がいるんですけど、どっちも本当なんですよ。この歌詞を見たときはハッとさせられたし、シンクロ率が高かったんですよね。僕らのことをずっと好きな人たちが求めているであろうゴリゴリ感もあるし、一緒に叫べそうなパートもあって。今の僕らが表現された楽曲だと思います。あと、キーが高くてレコーディングは大変でした(笑)。

神田 一番最初のデモの段階では、イントロがシンセだったんですよ。アレンジを直したらギターのイントロになって、「あ、俺が弾くんだ?」って(笑)。しかもデモに入っていたフレーズが明らかに“両手タッピング”だったんです。俺のプレイ的に両手タッピングはやらないから、どう表現するか考えたし、色んなやり方を試したですよ。たぶん12種類くらいやったかな(笑)。最終的には何とかなりましたけど……頑張りました。

堀江 ギターのイントロにしてよかったよ。

神田 難しかったけどね(笑)。あと、最近のPENGUIN RESEARCHのライブのスタンスが「なるべく人力でロックしようぜ」という感じだから、その流れもあったのかなと。

堀江 うん。ファンのなかには楽器をやってる人も多いから、「かっこいいところ見せようぜ」みたいな話をして。同期の音をなるべく使わず、シンプルにみんなで演奏するようになってきてますね。

柴﨑 ピアノにディレイをかけてるんですけど、それもこれまでのPENGUINの曲ではそれほどやってなくて。

新保 ドラムに関しては、ドラムテックの富安 徹さんの力が大きいですね。特にこの曲はドラムの音色だけではなくて、演奏のディレクションもやってもらったので。

――プレイヤーとしての新しい面も反映されているんですね。「フェアリーテイル」は、ファンクやフュージョンの要素が感じられる楽曲。これも新機軸では?

堀江 そうですね。これも無心というか、純粋にやりたいことをやったんですよね。「ロックバンドだから」とか「ギターロックってこうだよね」みたいなものを取っ払って。ちょっと大人っぽい音ですけど、こういう感じももともと好きだったんですよ。

生田 「フェアリーテイル」、めちゃくちゃ好きですね。ちょっとお洒落な感じというのかな。これまでの曲でいうと「Critical Hit」の系譜なんですけど、ファンの方も支持してくれていて、「Critical Hit」みたいな曲を作ってほしいという声も結構あって。僕も歌ってみたかった曲調だし、ファンの皆さんにも喜んでもらえるんじゃないかなと。

神田 俺は元々ブラックミュージックもガッツリ通っていて。こういうカッティングも、ロックギターと同じくらい得意なんですよ。アース・ウィンド・アンド・ファイアのアル・マッケイ、タワー・オブ・タワーのブルース・コンテなども大好きで、彼らのコスプレみたいな感じで弾きました(笑)。

柴﨑 僕も高校の頃から、日本のフュージョンバンドを聴いて育ってきた人間なんですよ。「フェアリーテイル」のデモを聴いたときも、16ビートのミドルテンポって最高だよねって思って(笑)。鍵盤に音色もDX7(シンセサイザー)的な音にしたり、シンセのソロも自由にやらせてもらって。

――新保さんはどうですか? フュージョンやブラックミュージックも通ってます?

新保 聴くのは好きなんですけど、あまりやったことがなくて、なので「フェアリーテイル」は一番苦戦しましたね。イメージとしては、フュージョンバンドのなかでマイク・マンジーニ(ドリーム・シアター)がドラムを叩いてる感じというか(笑)。

神田 ハハハハ(笑)。

新保 結果、ロックバンド然とした曲になってよかったです(笑)。

――「クジラに乗って」は、神田さんが作曲。

神田 はい。この曲をアルバムに入れることになったのは……いつ決まったんだっけ?

堀江 ちょっと前から「神田さんにも曲を書いてほしい」みたいな話はしていて。

神田 あ、そうだ。それで4曲くらいデモを作って。そのなかから1曲選んでもらって、晶太くんと色々話しながら作り始めたのがスタートですね。曲のイメージとしては、梅雨の終わりから夏になる直前くらいの時期で。学生の頃とかって、夏を前にすると「何かやらなきゃ」みたいな使命感があるじゃないですか。時限付きというか、夏の間に何かをやらなくちゃって――何をしたいのかもよくわからないのに――思ってしまう。そういうひたむきさ、一生懸命さを曲にしようと。

堀江 僕は曲の情景だけを聞いていたんですよ。そのイメージで歌詞を書かせてもらったんですけど、神田さんが思い描いていた方向性とも合っていて。

生田 最初に聴いたときに「すごくキレイだな」と思って。歌詞が乗っていない段階から“ベランダから友達と一緒に外を見て、入道雲と青空が見える”みたいな情景が浮かんだんですよね。レコ―ディングのときも、中学生、高校生の頃のひたむきに突き進む気持ち、無垢な感じを大事にして歌いました。

神田 最高だよ。

生田 ありがとう。

神田 ディレクションすると色々と口を出したくなるタイプなんですけど(笑)、「クジラに乗って」の歌録りのときは何も言うことがなくて。素晴らしかったです。

柴﨑 鍵盤のレコーディングはジョンさんの自宅スタジオでやったんですよ。ギターの音がシュワシュワしてて、サイダー飲みたくなってきて(笑)。

神田 レコーディング終わって、サイダー買ってあげました(笑)。

新保 ドラム録りもすごく突き詰めました。きれいに叩けばOKではなくて、“汚し”みたいなニュアンスも入れて。「この曲を一言で説明すると」みたいな話もしてましたね。なんだっけ?

神田 ポストシューゲイザーポップロックです。

堀江 ややこしい(笑)。

神田 最初はどちらかというとグランジのイメージだったんですけど、レコーディングを進めるうちに、UKのほうが近いなと思って。メンバーともしっかりイメージを共有できたし、楽しく制作できて。晶太くんとアレンジのやりとりをすることも初めてだったし。

堀江 うん。ベーシストとして「こういうフレーズどうかな?」みたいな提案させてもらって。神田さんが(作曲者として)クレジットされるのも初めてだし、今までと違う感じの曲になったし、すごくよかったですね。

次ページ:PENGUIN RESEARCHにとっての新たな名曲「祝祭にて」

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