INTERVIEW
2023.05.03
――「Shine In The Sky☆」の制作にあたり、作品サイドからはどのような要望があったのでしょうか。
俊龍 やはりアニメのOPテーマになりますので、柏谷さんからは「明るくてテンション高めな曲調」といったオファーをいただきました。最初に「こういう感じはどうですか?」というデモ曲を作ったのですが、「ドレミファクトリー!」とメロディは全然違うものの、音像が少し寄りすぎているというお話になって。エッセンスは残しつつ、一度すべて作り直したんです。
――そうだったんですね。
俊龍 そこから制作の方々が思うイメージと自分のイメージになるべく寄り添う感じにしていきました。あとは、各アイドルや応援しているプロデューサーの方々にも各々にヒストリーがあるので、感動するような要素も入れつつ、その一方で今回のBメロ部分みたいに、ワチャワチャ感も出したかったので、その両方の要素をどうやって入れるか。そこは色々と試行錯誤しました。
――アニメ主題歌ならではの苦労や工夫はありましたか?
俊龍 苦労というわけではないのですが、これまで(「アイドルマスター シンデレラガールズ」で)制作してきた楽曲は、基本、まずゲームサイズで楽曲をご提案していたのですが、今回はアニメサイズの89秒が肝になるので、アニメを観ている人の気持ちが盛り上がることを意識して作りました。例えば、楽曲のスピードが速すぎるのも良くないかなと思って、BPMを整えた結果、色んな要素を全部詰め込むのは難しいと感じたので、イントロは少し短くしたりして。それと最初は歌で始まるのですが、そこのメロディをサビ始まりのものにすると尺が合わなかったので、肝となるサビ後半のメロディを持ってきました。
――歌始まりになっているのも、アニメ主題歌なりのインパクトを求めた結果でしょうか。
俊龍 そうですね。そこも色々試したのですが、やはりみんなの声で始まったほうがいいだろうと思いまして。
――メロディの展開についても聞きたいのですが、AメロからBメロで雰囲気が一気に切り替わるところも、アニメ主題歌らしさを感じました。
俊龍 そうですね。Aメロは、アイドルに成りたての心情といいますか、新鮮な気持ちでアイドルを始めたけど、担当プロデューサーがなかなか決まらない不安、でもみんなといると毎日が楽しい、という両方を入れたいなと思いながら作りました。かといって彼女たちは年齢的にも未来のある子ばかりなので、切なすぎるのもいけないなと思って。「私たちはどういうアイドルになるんだろう?」という期待もありつつ、「上手くできるのかな?」というニュアンスも入れたつもりです。で、Bメロはいきなりワチャワチャし始めるっていう(笑)。
――そのテンションの切り替えの早さもまた、年少組らしいですね(笑)。そしてサビは前半と後半の2段構成になっていて。
俊龍 サビは「ドレミファクトリー!」のようにガヤをふんだんに入れるのではなく、彼女たちがステージで「良い音楽だな」と感じながらパフォーマンスができるように意識して作りました。テンションが高めな楽曲ではあるのですが、音程が高いところばかりだと疲れてしまうので、一番最初の小節(“朝だよ おはよう!”)のところは上から始まりつつ少し低くして、だんだん上に上げていく構成になっています。自分のメロディの中では珍しいサビの始まりですね。
――サビ後半も“叶えるの 奇跡さえ”の箇所でメロディの音程が一旦落ちたあと、最後のフレーズ“Shine In The Sky☆”でファルセットを使わないと歌えないくらい高音になりますよね。あそこはまさに空を駆けあがるような景色がメロディからも浮かびました。
俊龍 今回は9人で歌唱されるので、思い切って高い音程も入れてみました。地声で歌える方は地声でもいいし、ファルセットで歌ってもいいし、それが重なることでいい感じになるのではないかと思って。
――だからこそ、シングルに収録されている9人それぞれのソロ・リミックス版では、各自の個性がより伝わるように思います。また、今回はMahiroさんが作詞を担当していますが、これはどのような経緯で?
俊龍 実は当初、自分が歌詞も書いていたんです。ただ、自分の中で「こういうメロディなので歌詞はこうしたい」と思っていたところと、作品サイドのイメージが合わなかったみたいで……(苦笑)。それで柏谷さんから「ごめんなさい、今回、歌詞はコンペにさせてください」というお話になって。最終的に出来上がったのがMahiroさんの歌詞なんです。
――その歌詞の印象はいかがでしたか?
俊龍 「U149」という作品を真っ直ぐに捉えている印象を受けました。自分はこの作品とは初対面ではなかったので、歌詞にも仕掛けを作って「ここは面白くしてやろう!」みたいな気持ちが強かったんです。でも、Mahiroさんの歌詞は、あの子たちの今のアニメの心持ちをすごく素直に表現されていて。純粋に夢を想う言葉や、「輝きたい」という気持ちがたくさん詰め込まれているので、本当にこの歌詞で良かったなと思います。
――ある種、今回のアニメで初めて「U149」という作品に触れる人により適した内容になっていると。
俊龍 そうだと思います。もしかしたら自分はコミックを読み込みすぎたのかもしれませんね(笑)。先のお話にも絡む要素を歌詞に入れ込もうとしていたのですが、今、考えるとネタバレになっちゃうかもなあと思うので。
――ただ、個人的には「ドレミファクトリー!」の歌詞と繋がる部分もあるように感じました。サビに“朝だよ おはよう!”とありますが、「ドレミファクトリー!」も“Hi! Good Morning!!”から始まる楽曲ですし。
俊龍 たしかに“はしゃごう!”の部分とかも含めて、自分も「ドレミファクトリー!」と繋がっている部分があるように感じました。そもそも楽曲を作っているときから「朝」と「夏」のイメージがいいと伺っていたんですよね。
――それはアレンジ面でも意識したことでしょうか?
俊龍 そうですね。「朝」や「夏」、そして爽やかなんだけど無邪気さや勢いが感じられるものを意識しました。
――Bメロでハモンドオルガンっぽい音色が使われたり、2番になるとベースの主張が強くなったりと、サウンドにも色々な工夫が入っているように感じました。
俊龍 鍵盤楽器にしても色んな音色を使うようにしていて。それとアニメサイズの1コーラス部分はスタンダードな爽やかさや楽しさを意識して、王道スタイルでアレンジしたのですが、2番以降はもう少し楽器が見えるようなアレンジにしましたね。
――キャストの皆さんのレコーディングには立ち会われましたか?
俊龍 全員ではなかったのですが、スケジュールが許す限りは立ち会わせていただきました。キャラクター感やテンション感に関しては、基本、柏谷さんが中心となってディレクションしていただいて、自分は「ここはあまり音程を気にせず、もう少し無邪気さを出してもいいんじゃないですか?」といったやり取りをさせていただきました。各自が色々な楽曲を歌ってきたうえでの今回のOPテーマなので、全体曲で年上のアイドルたちと一緒に歌うのとはまた違うし、ソロ曲の個性を思いきり入れた歌い方とも違う、第3芸能課のみんなで歌うからこそのテンション感を表現していただけたと思います。
――あと、今回の機会にぜひ聞いてみたかったのが、今回のアニメで中心になっている橘 ありす役の佐藤亜美菜さんとの関わりです。俊龍さんは佐藤さんがアイドルとして活動していた時代から、楽曲提供を通じて接点がありましたが、その後「アイドルマスター シンデレラガールズ」の現場でご一緒することになったんですよね。
俊龍 アイドル時代は直接お会いしたことがなかったのですが、そこから時を経て、「咲いてJewel」(2016年発売)のレコーディングのときに初めてお会いしました。その前、2015年の幕張公演で初めて「アイドルマスター シンデレラガールズ」のライブを現場で観させていただいたのですが(“THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 3rdLIVE シンデレラの舞踏会 – Power of Smile -”11月29日公演)、そのときにありすのソロ曲「in fact」を歌っているのを観てものすごく感動したんですよね。「in fact」は哀しみに近いような切なさが描かれている楽曲で、ライブ映えするテンションの高い曲だけでなく、そういう聴かせるタイプの楽曲でみんなと感動を共有し合える「シンデレラガールズ」は、すごいコンテンツなんだなと思いました。
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