――ありがとうございました。初回生産限定盤につくBlu-rayには、「Parade」のMVと共に、先ほどお話に挙がった「Yuki Kajiura LIVE vol.#16~Sing a Song Tour~」が収録されます。
梶浦そうなんです。贅沢でしょう? 本当に贅沢だと思いますよ。ファンクラブの方からもライブを映像作品としてリリース欲しいというリクエストが多かったので、その意味でもすごく嬉しいですね。
――それこそ、『elemental』を冠したツアーの『Yuki Kajiura LIVE vol.#11』以来のリリースになります。
梶浦何より、ライブは私たちの「パレード」そのものなので。「これがパレードです」という答え合わせとして見ていただけるということは、このアルバムのおまけとしてすごくふさわしいと思います。
――あらためてアルバム全体の話に戻りますが、とてもやわらかな印象を受けるアルバムだと感じました。
梶浦根本的な問題として、タイアップ曲が少ないので全体的にテンポの速い曲があまりないですよね。それに、最近はテンポの速い曲を多く書いていたので、テンポ疲れしたところはあるかもしれません(笑)。でも、FJなのでテンポの速い曲を無理して入れる必要もないし。むしろやわらかいといいますか、テンポがゆったりとしたアルバムを皆さんがどう聴いてくださるのか、そこは楽しみですね。1曲でも2曲でも「あ、これ好きだな」と思ってもらえたら、もう最高です。
――曲のテンポがゆっくりならば当然かもしれませんが、歌詞もやわらかめだと感じました。
梶浦それはそうかもしれないですね。私が書いた歌詞は数としては圧倒的にKalafinaが多いんですけど、Kalafinaはスタイルを統一しようとしていたところがあって、曲に合わせて歌詞も攻撃的というか、少し強い言葉を敢えて使っていたものも多かったです。だから、聴く人の心に何か投げかけるような、投げる石の粒が少し大き目な、といったところは意識していました。でも、FictionJunctionに関しては無理に大きな石を投げる必要はないので、そういう言葉選びになっているかもしれないですね。あとは、今の時代のほうが案外、何年か前よりも言葉が痛い時代ではないかもしれません。
――個人的には、「八月のオルガン」はとても澄み切ったタイトルで印象に残りました。
梶浦あの曲はメロディを先行して作ったとき、ふと思いついた言葉で仮歌を自分で録ったんですけど、歌ってみたらすごくメロディと相性の良い言葉でしたし、絵的に綺麗だと思ったんですね。8月の空にオルガンの音が昇っていく感覚と、LINO LEIAさんに歌っていただく曲の全体的なイメージがマッチすると思ったので、8月の空に昇るオルガンの音というところだけを残し、歌詞を考えていきました。だからストーリーというよりは、その絵のために歌詞を書いた感覚ですね。
――最初に出ましたが、今回のアルバムは期せずしてFictionJunction 30周年記念作品にもなります。梶浦さんとしては「30周年」で意識される部分はありますか?
梶浦正直、本当に何もないです(笑)。
――ですよね(笑)。
梶浦先ほどもお話しましたけど、昔を振り返ることがないので。昔の曲を聴かないし、忘れるし。まぁ、いつか仕事を辞めて、縁側で猫と暮らし始めたら感慨深い感じになるのかもしれないですけど、今は明日のことで手一杯ですからとてもとても。なので、30周年に対しても思うところはないんです。でも例えば、『鬼滅の刃』のおかげで賞をいただいたとき、自分では分不相応だと感じたり、作品に恵まれたからであって私が喜ぶのは違うだろうと正直思ったりしていても、ファンの方がすごく喜んで下さっていて……。そこに「いやいや」と自分から否定することはとても失礼だとものすごく反省したんです。みんなが聞いてくれたから今の自分がある訳で、「ファンだ」と言ってくださる方にちゃんと、「俺たちが支えたから」って思ってもらいたいじゃないですか? 実際ファンクラブを立ち上げて、ファンの方に支えてもらっている感覚は強いので、そういったお祝いごとはちゃんと「みんなのお陰だよありがとうイェイッ!」と喜ぶべきだろうと思いました。だから今年は、ファンの皆さんに会いに行き、今までやらなかったサイン会もやって、ファンクラブで歌姫たちとトークして……、といったことをできるだけたくさんやろうと思っています。結局、何で返せるかといったら音楽で返すしかないんですけど、でもそこからもう少しだけ踏み込んで、一人ひとりの方に「ありがとう」の気持ちを伝える機会をなるべく増やしたい。「30周年おめでとう!」の言葉をちゃんと精一杯喜んで受け止めて「30年聞いてくれてありがとう!」と一つひとつ打ち返せる年にしたいなと思っています。
――その一つとして、『Kaji Fes.2023』が日本武道館にて12月8日(金)、9日(土)の二日間で開催されます。
梶浦正直言いますと武道館は私にとってキャパが大きすぎる箱なんですよ。でも、「30周年だから頑張って武道館でライブ」というのもなんかいいじゃないですか? 40周年のときはもっと落ち着いた感じになるでしょうし、「わぁ、武道館ライブだ♪」ってできるのもこれが最初で最後のチャンスなので。思いっきりはしゃごうと思っています。
――武道館は梶浦さんにとってどのようなイメージの存在ですか?
梶浦正直、昔はめちゃめちゃ音がひどかったんですよ。比喩ではなく、本当にスネアの音が2発聴こえましたから。音楽を楽しむどころではなかったです。色々な音響技術が進歩し、今では本当にいいホールになりましたけど。ただ、そうは言っても、トップスターにだけ許された場所、ではありましたよね。今より大きなホールも少なかったですし。だから私もバンドメンバーも、「ついに武道館」という世代ではあるんです。私たちの世代ならではの、武道館の大切さみたいなものも感じているので、そこは素直に大喜びをして、二日間に分けて楽しいライブをやりたいと思っています。
――10年ぶり2度目となる『Kaji Fes.』の開催ですから。
梶浦でも、10年前と根本的な感覚は変わらないですね。今回も「2日で1本」なんですよ。バンドメンバーへの負担を考えて日程を分けただけで。1曲もかぶらないライブにします。
――では、両日参加してもらわないと真価が楽しめませんね。
梶浦だからファンクラブの方にも「一生に1回のことなので来てね」とは言っています。普段は「来たい人だけが来ればいいよ」というスタンスなんですけど、せっかくの武道館なのでね(笑)。とは言っても「同じ曲をやらない」というだけの独立したライブなので、1日だけでも無論普通に楽しんでいただけますよ。むしろあまりマニアックな選曲をしない「梶浦曲ベスト」がコンセプトのライブなので、はじめましての方にはよりお勧めかもしれません。是非お越しくださいね!
●リリース情報
FictionJunction ALBUM
『PARADE』
4月19日発売
配信はリンクはこちら
【初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】
価格:¥6,600(税込)
品番:VVCL 2147~2148
【通常盤(CD)】
価格:¥3,300(税込)
品番:VVCL 2149
<CD>
01. Prologue
02. ことのほかやわらかい
03. 夜光塗料 feat. ASCA
04. Beginning
05. もう君のことを見たくない feat. rito
06. 櫂 feat. Aimer
07. 蒼穹のファンファーレ feat. 藍井エイル& ASCA & ReoNa
(アニメ「ソードアート・オンライン」10周年記念テーマソング)
08. 八月のオルガン feat. LINO LEIA
09. それは小さな光のような feat. KEIKO
10. from the edge feat. LiSA
(テレビアニメ「鬼滅の刃」竈門炭治郎 立志編エンディングテーマ )
11. moonlight melody
12. 世界の果て feat. 結城アイラ
13. Parade
M 01,02,04,11,13 feat. KAORI/KEIKO/YURIKO KAIDA/Joelle
<Blu-ray>
・「Parade」Music Video
・「Yuki Kajiura LIVE vol.#16~Sing a Song Tour~」
01. overture
02. Beginning
03. 記憶の森
04. Distance
05. Fields of hope
06. 宝石
07. 凱歌
08. moonlight melody
09. ひとりごと
10. 約束
11. 花の唄
12. I beg you
13. wonderland
14. 春はゆく
15. eternal blue
16. stone cold
17. ユメノツバサ
18. 目覚め
19. zodiacal sign
20. maybe tomorrow
●ライブ情報
30th Anniversary / Yuki Kajiura LIVE vol.#19
「Kaji Fes. 2023」
DAY1:12月8日(金)日本武道館
開場/開演:17:00/18:00
DAY2:12月9日(土)日本武道館
開場/開演:15:00/16:00
出演
Vocal:KAORI、KEIKO、YURIKO KAIDA、Joelle / rito、LINO LEIA
MUSICIAN -FRONT BAND MEMBERS-
Guitar:是永巧一、Drums:佐藤強一、Bass:高橋“Jr.”知治、
Percussion:中島オバヲ
今野Strings:[Violin:今野均、藤堂昌彦、Viola:小林知弘、Cello:奥泉貴圭]
Flute:赤木りえ、Accordion:佐藤芳明、Uilleann pipes:中原直生
Manipulator:大平佳男
GUEST ARTIST
【DAY1】Aimer / 笠原由里 / Revo(Sound Horizon / Linked Horizon) / Remi
【DAY2】ASCA /伊東えり / 戸丸華江 / JUNNA / Hikaru / 結城アイラ
梶浦由記 LIVE
30th Anniversary
Yuki Kajiura LIVE vol.#18 ~The PARADE goes on~
7月22日(土) 埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール(Open 17:00 / Start 18:00)
8月15日(火) 東京・LINE CUBE SHIBUYA(Open 17:30 / Start 18:30)
8月16日(水) 東京・LINE CUBE SHIBUYA(Open 17:30 / Start 18:30)
8月19日(土) 大阪・NHK大阪ホール(Open 17:00 / Start 18:00)
8月20日(日) 大阪・NHK大阪ホール(Open 15:00 / Start 16:00)
出演
梶浦由記(Piano/Chorus)
Vocal:KAORI・KEIKO・YURIKO KAIDA・Joelle・rito・LINO LEIA
MUSICIAN:FRONT BAND MEMBERS(是永巧一 (Guitar)、佐藤強一 (Drums)、高橋“Jr.”知治 (Bass)、今野 均 (Violin)、 赤木りえ(Flute)、 中島オバヲ (Percussion)、大平佳男 (Manipulator))
料金
全席指定:¥8,800(税込) ※未就学児入場不可
梶浦由記オフィシャルサイト
https://fictionjunction.com/
「PARADE」特設サイト
https://www.fictionjunction-parade.com/
「Kaji Fes.2023」特設サイト
https://fictionjunction.com/kajifes2023
「30周年記念サイト」
https://fictionjunction.com/yk30th
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