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INTERVIEW

2023.04.22

FictionJunctionの最新アルバム『PARADE』をリリース!様々なコラボが実現した本作とこれからについて、活動30周年を迎えた梶浦由記に聞く

FictionJunctionの最新アルバム『PARADE』をリリース!様々なコラボが実現した本作とこれからについて、活動30周年を迎えた梶浦由記に聞く

<梶浦由記による『PARADE』全曲紹介>

01. Prologue
アルバムの色々なメロディーを散りばめてみた導入曲です。

02. ことのほかやわらかい
気になる言葉を見つけたときに書き留めておくファイルがあるんですが、「ことのほかやわらかい」は何かの広告で出会った言葉だったと思います。「やだ、なんて素敵な言葉!」ってキュンキュンしてすぐ書き留めました(笑)。その言葉をタイトルにして生まれた曲です。あとは、最後にこの曲を作る前、アルバム全体を見渡したら思ったよりもFictionJunctionのど真ん中を攻めていないと感じたんですね。それほど外してはいないけれども少し脇を掘っているような。なので、最後にど真ん中を掘ろうと思い、「Prologue」と「ことのほかやわらかい」をワンセットとして作ったんです。「Prologue」は「ことのほかやわらかい」の長いイントロみたいな感覚ですね。「Parade」で終わって1曲目に戻ったらまだパレードが続いているような、そういう流れを意識しています。曲調はタイトルを少し裏切ったつもりだったんですが、曲順とタイトルだけを発表したとき、気になってエゴサをしたら、梶浦さんのことだから「ことのほかやわらかい」なんてタイトルだけどあまりやわらかくない曲が来るはず、と予想している方が多くて、「わかりやすくてすみません」と反省しました(笑)。

03. 夜光塗料 feat. ASCA
ASCAさんとお付き合いさせていただいて、彼女の声はバンドと相性がいいなあと思っていました。バンドの紅一点みたいなポジションですよね。ハスキーだけどキラキラしている声がすごく素敵なので、ゆったり系の大人可愛いオルタナティブバンドみたいな曲が絶対合うと思っていたところに、チャンスをいただいたのでそういう曲を目指しました。なので、完全にASCAさんの声合わせで書いてみた曲ですね。楽しかったです。

04. Beginning
「櫂」は私も「いつか出せたら」と思っていましたけど、「Beginning」は少し記憶の遠くのほうにありました(笑)。でも、『Yuki Kajiura LIVE vol.#16 ~Sing a Song Tour~』のとき、「この曲を4人でやってみたら?」と森さんから提案され、聴いてみたらたしかに「なるほど」と思えたんです。FictionJunctionでは意識して歌い手さんにソロパートを作るようなことはあまりしないのですが、この曲に関してはミュージカルの自己紹介のように1人ずつ現れては曲を歌い、最後は全員で……、という絵が合う曲だと感じました。なので、原曲にはなかった最後の「La La La…」を付け加えて盛り上げるなど、ライブをかなり意識しながらリアレンジしました。実際、一人ひとりが順番に歌うというのをライブのオープニングでやってみたらすごく良かったんですよね。そのライブ感も含めて今回アルバムに収録したいと思っていました。

05. もう君のことを見たくない feat. rito
この曲は、タイトルと、こんな感じかなという歌詞と、歌い出しのメロディだけ、少し前に作ってあったんです。だけどそのとき、このメロディは「男性」だと感じていて。もう少しテンポが速く、男子がアコギ1本で歌うようなイメージだったんです。だから、もしも男性に歌ってもらう機会があれば、と思いながらそのままにしておいたんです。ところが、ritoさんの声を聴かせていただいたら、ちょっと芯がありつつも寂しさも明るさも含んでいて、しかも、可愛くて女性的ではあるけれども中性的な香りもしました。それは若さかもしれないんですけど、どこかしら初々しさみたいなものを感じたんです。それに、彼女の声を初めて聴いてもらうとしたらバラードがいいと思いました。それでこの曲を思い出し、頭の中でシミュレーションしたら感触が良かったので、歌ってもらうことにしました。歌詞も少しリアルにしています。今のFictionJunctionの中にそこに彼女の初々しい声が入るのが、またすごくフレッシュで良かったですね。

06. 櫂 feat. Aimer
なにぶん昔に作った曲なのでシンプルすぎて。歌の音数は多すぎても難しいですが、少なすぎてもやはり難しい。ポップスより歌曲(リート)寄りな曲作りですね。声の響きが頼りな曲なので憂いは必要だけれども、効かせすぎるとベタになる、歌い手さんをすごく選ぶ曲なので寝かせていました。それが今回、アルバムにAimerさんに参加していただけることが決まったとき、(プロデューサーの)森さんと「もしかして……いや絶対いい!」という話になりお願いしました。こういうテンポ感の曲はどうしたって呼吸が大事ですので、レコーディングはピアノと同録で行いました。チェロだけはあとで合わせましたけど。Aimerさんと出会うために眠っていた曲だったのかと思うくらい、素晴らしい歌をいただきました。テンポ決めや練習も含めて4回くらい歌っていただき、スタッフも含めみんなで「Aimerさん、素敵です……」と言うだけで終わったレコーディングでした。

07. 蒼穹のファンファーレ feat. 藍井エイル& ASCA & ReoNa
本当に光栄なことに、『ソードアード・オンライン』の10周年記念ソングを書かせていただけることになり、しかもボーカルメンバーが豪華すぎて、「どういうこと?」と(笑)。こういった機会がなければ勢揃いしていただくのは難しい方々ですよね。「記念」の曲ですからまず初心に帰るために小説からじっくり読み直し、あらためて心揺さぶられつつ曲と歌詞を書きました。メロディ的には、BGMの中でも一番視聴者の記憶に染みついているだろう「swordland」を取り入れたい、というところが出発地点だったのと、ボーカルが3名いらっしゃるということで、声質や音域にすべてぴったり合わせた曲を書く、という策略が若干難しい所はありました。なので普段歌われないようなことをお願いした部分もあったかと思うのですが、有難いことに皆さん楽しそうに歌って下さり、また皆さんの声質が全然違うので3人重なったときの広がりがすごくて、レコーディングもとても楽しかったです。

08. 八月のオルガン feat. LINO LEIA
LINO LEIAさんは上(の音域)も下もすごく豊かな声を持っていらっしゃるんですけれど、FJとして歌う1曲目としてまず、彼女の高音が響く曲を作りたいと思いました。高音の張り詰めた感じが「大変な曲だね!」と、梶浦サウンドに慣れたバンドメンバーにさえ言われましたけど。「厳しい!」って(笑)。でも、彼女の高音が美味しいところで高らかに歌っていただき、その下にレギュラーメンバーが濃〜いコーラスをどしっと入れるというコンセプトでやりたかったんですよね。そんなことを考えながら作っていたら転調もたっぷりな長い曲に仕上がったんですが、思惑通り美しく歌っていただけて本当に心地よかったです。

09. それは小さな光のような feat. KEIKO
元々さユりさんに楽曲提供で書かせていただいた曲でした。歌ってくださったさユりさん、そして江口亮さんの編曲が超絶カッコ良く、絶対に自分には作れないようなサウンドでしたので、かえってこれはFictionJunction ver.を作ってみても面白いなと思いセルフカバーさせていただきました。昨年のツアーでも演奏していたのですが、KEIKOさんの情感溢れる声に毎回聞き惚れていました。今回収録出来て嬉しいです。

10. from the edge feat. LiSA
この曲以前にもLiSAさんのことは当然存じ上げていましたし、作品を通しての共演はあったんですが、LiSAさんは確固たる世界をお持ちですし、私の音楽は多分そこには合わない感覚があったので、一つの音楽を一緒に作り上げるようなお仕事をすることはないだろうと思っていました。でも、作品からのご縁で思いがけないチャンスとチャレンジの機会をいただけて嬉しかったです。曲を書いていたときのことはよく覚えていますね。どんな歌をうたっていただこうかとワクワクしていたところで、当時大流行していたQUEENの映画を見に行ったんです。フレディ・マーキュリーが自分の歌のグルーヴでバンドのリズムごと引っ張っていくようなシーンに惚れ惚れして、声に、強いパワーとパンチとグルーヴがなければできないことだな……あ、それってLiSAさんだ! と思ったんです。LiSAさんの歌でリズムを引っ張ってもらい、グルーヴと疾走感を作る、そんなイメージで書きました。

11. moonlight melody
『プリンセス・プリンシパル』の劇中歌で、いただいたご注文は「みんなが酒場で歌うような、作品世界の誰もが知っている名曲」だったので「ハードル高!」と思いながら作った曲でした(笑)。作品からの発注がないとなかなか書かないタイプの曲ですよね。たとえアルバムで好き勝手に書いてもいいと言われても、このミュージカル風味の方向には簡単には行かないと思います。でも、そんな曲が入ることで逆にFictionJunctionらしくなる、アルバムの幅も広がるし、その意外性がいいと思って入れました。これも作品との出会いのお陰ですね。ライブで歌姫たちがニコニコと歌ってくれる感じが、いつ演奏してもとても心地よい曲です。

12. 世界の果て feat. 結城アイラ
昔から気に入っていた曲で、結城アイラさんにYuki Kajiura LIVEに出ていただいたとき、ライブでカバーしていただく予定もあったんです。でも、時間がないなどのセットリストにおける色々な事情でそれが叶わなかったんです。結城アイラさんの明るくてピュアな声に合う曲だと思っていたので、「いつか」と思っていました。だから、ついに歌っていただくことができました、という気持ちでしたね。

13. Parade
タイトル先行で書き始めた曲だったのですが、今、自分たちの音楽がパレードのようだと思っているときに、「Parade」という曲を書くわけですから、書いてみたらまあ……思っていた以上に今の自分の立ち位置とか、こうありたいとか、改めてふと今の自分の足元を見つめて思うこと……のようなものが、入り込んだ歌詞になったなあという実感があります。生きていればそれは楽しいことばかりではないし、もう歩きたくないと思うこともあるし、パレードに加わってくれる人も離れていく人もいる。でも、コロナ禍があったので余計そうなのかもしれないんですけど、ここ数年、身に染みて「朗らかでいたい」と想うことがすごく増えました。私も根が明るいほうではないのでいつもは無理ですけど、そうありたいな、と。「朗らか」という言葉はすごくいいと思うんですね。無理して笑うわけではないけれども決してうつむかず、ふわっと朗らか。私もバンドメンバーたちもいい年なので、若い人たちと一緒に音楽をやることがありますけど、若い人たちは若い人たちの音楽を作っているから教えるようなことなんてないし。ただ、上の世代である私たちが朗らかに音楽をやっていることが伝われば、それが一番の勇気になる気はしました。アルバムの最後に、「まあ、なんだ、お互い色々大変だけどちょっとの間一緒に行かない?」のような曲が入るのはいいかなって。こういった曲はテンポ感が難しいですが、速くしたり遅くしたり、迷った末にこのテンポで。貴方には貴方の人生のテンポがあると思うけれど、この曲を聞いてる間、短い間だけれどちょっと歩みを緩めて一緒に一緒に行こうよ、そんなテンポです。

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