4月9日、東京・TACHIKAWA STAGE GARDENで開催されたMyGO!!!!!のワンマンライブ“MyGO!!!!! 4th LIVE「前へ進む音の中で」”は、間違いなく彼女たちのターニングポイントとなる公演だった。“現実(リアル)”と“仮想(キャラクター)”が同期するバンドというコンセプトを掲げ、これまでキャストの情報を伏せて活動していた彼女たちが、初めて自分たちの素性を明かし、バンドとしての次の一歩を踏み出したのだ。しかもワンマンでは初の声出し解禁。演出面でも工夫が凝らされ、MyGO!!!!!の音楽性をこれまで以上にはっきりと打ち出した今回のライブは、きっと今後も何度となく振り返られることになるはず。その貴重な一夜の記録をここに残しておきたい。
TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
MyGO!!!!!は昨年4月に始動して以来、これまでに3回のワンマンライブを開催。また、「BanG Dream!(バンドリ!)」プロジェクトやブシロード主催のライブイベントでオープニングアクトを務めるなど、この1年間でバンドとしてかなりの経験を積んできた。今回の4th LIVEは、それらで培ってきたパフォーマンス力を存分に発揮するのみならず、MyGO!!!!!として届けたい音楽とその方向性をより如実に形にできていたように思う。そのことを特に象徴するのが、ステージの前面に張られた紗幕に映像を投影する演出だ。
紗幕は薄いため、ステージ上のメンバーたちの姿は透けて見えるのだが、そこに映像(主に楽曲のリリック)が投影されることによって、彼女たちが演奏する姿と映像が重なり合って、楽曲の世界観が聴覚だけでなく視覚を通しても体感できる仕組み。しかもMyGO!!!!!の楽曲はどれも言葉をとても大切にしている。ボーカルの燈が担当している歌詞は、孤独や疎外感を感じていたり、漠然とした不安や悩みを抱えている人、あらゆる迷い人の気持ちに寄り添うような強く温かい言葉に満ち溢れており、それらのリリックがMyGO!!!!!にとっても大きな意味を持つ。だからこそ、今回の映像を紗幕に投影するやり方は、彼女たちの音楽をステージで表現するうえでの最適解の1つと言えるはずだ。
ライブは暗闇と静寂のなか、燈が言葉を紡いでいくところからスタート。その言葉とは、MyGO!!!!!のオリジナル曲の歌詞から抜粋されたもので、燈がステージに立って歌う意味、そしてMyGO!!!!!として音楽を届けていきたいという想いが、ひしひしと伝わってくる。そして「前へ進む音の中で、顔を上げて、歌いたい」と告げると、1曲目「名無声(なもなき)」へ。彼女の澄んだ歌声とバンドの熱を孕んだ演奏が、紗幕に映し出された歌詞と共に観客の胸に飛び込んでくる。“Oh oh oh”と繰り返し歌うパートでは客席も大合唱。早くも会場は一体になる。
「名無声」のラスト、紗幕にバンドロゴが投影されてMyGO!!!!!の旗印が大きく誇示されると、燈が「皆さんこんにちは、MyGO!!!!!です。本日はよろしくお願いします」と挨拶してそのまま次曲「ティアドロップス」に雪崩れ込む。Poppin’Partyのカバーとなる本楽曲、彼女たちは1st LIVEの頃からレパートリーにしており、この日も情熱的に披露して会場のボルテージは一気に上昇。さらにMCを挿んで、彼女たちの楽曲の中でもとりわけアッパーなダンスロック「影色舞(シルエットダンス)」へ。ステージの前方に位置する、燈、リードギターの楽奈、サイドギターの愛音が、ステップを踏みながらパフォーマンスするのも愛らしく、この瞬間ばかりは悩みも不安も一切忘れて踊りたくなる。
ポエトリーリーディング調のパートとエモーショナルなサビの対比が特徴的な「潜在表明」では、ベースのそよ、ドラムの立希が織り成す重々しいグルーヴに乗せて、燈が心の叫びのように激しく言葉を紡いでいく。そして観る者全員に鮮烈な印象を与えたのが新曲の「無路矢(のろし)」。サウンド的にはブルージーなギターリフが牽引するヘビーなミディアムロックで、その曲調もMyGO!!!!!としては新鮮なものだが、何より驚かされたのは、燈と楽奈のツインボーカルによる楽曲だということ。しかもお互いが別々のメロディラインと歌詞を同時に歌う複雑な構成になっており、紗幕に歌詞が映し出されていたとはいえ、恐らく1回聴いただけで全体像を把握するのは難しかったことだろう。だが楽奈のホイッスルボイスを含め、その力強くもどこか懐かしさを感じさせる楽曲は、観客の心に深く残ったはずだ。
その後はカバー曲が続いたのだが、その選曲にもMyGO!!!!!らしさがしっかりと息づいている。DECO*27「二息歩行 (Reloaded)」でのアグレッシブな演奏からは、彼女たちの音楽性の源泉の1つであろうオルタナティブロックの精神性を感じ取ることができたし、初披露となったOrangestar「Henceforth」、一二三「猛独が襲う」のサウンド感やメッセージ性もMyGO!!!!!のオリジナル曲と共振するものだ(これらの3曲に共通する“ボカロ楽曲”という要素も、MyGO!!!!!の音楽に影響を与えているように思える)。また04 Limited Sazabys「swim」で聴かれるパンク~メロコア感もまた、後述の新曲「音一会(おといちえ)」に還元されている。
それらカバー曲を経て、燈の「迷子でも進めー!」という言葉を合図に披露されたのが、彼女たちの最初のオリジナル曲である「迷星叫(まよいうた)」。1st LIVEで初披露されて以来、MyGO!!!!!を象徴する楽曲として早くもアンセム化していることもあり、客席も大歓声で応える。燈の心に真っ直ぐ突き刺さるようなクリアボイス、メンバーたちの熱のこもった演奏、誰のためでもなく“僕のため”に生きることを後押しするメッセージ。そのすべてが胸に熱く押し寄せる。
そしてライブ本編の最後に歌われたのが、先日2ndシングルとしてリリースされたばかりの「音一会」だ。演奏前のMCで燈はこの楽曲の歌詞に込めた想いを語る。MyGO!!!!!として活動を始めて約1年、数々のステージに立ち、様々な景色を見ることができたのは、彼女たちの音楽を愛してくれるファンの応援があってこそ。そんな音楽を通じて出会うことができたみんなへの感謝の気持ちが、この楽曲には込められているのだという。メロコア直系の2ビートで激走するバンドサウンドに乗せて届けられるのは“「ありがとう」”という言葉。サビ、そして2番以降、燈だけでなくメンバー5人で歌を届けるパートが増え、彼女たちの強い想いが一体となって会場に降り注ぐ。ラストスパートは全員で“Oh-oh-oh…”と力強く声を合わせて歌い、最後は右手のコブシを突き上げて、ステージ上でお互いのほうを向き合って締め。迷いながらも走り続けてきた5人が、その先で見つけた最高の瞬間だ。
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