REVIEW&COLUMN
2023.04.12
現在のアニメ音楽シーンを語るうえで欠かせないアーティストが多数所属する音楽レーベル・SACRA MUSIC。その設立5周年を記念し、昨年11月26日・27日に幕張メッセ イベントホールで開催された音楽フェス“SACRA MUSIC FES.2022 -5th Anniversary-”の映像がついにパッケージ化。2日間にわたる祭典の中から全16組39曲のパフォーマンスを収めたBlu-rayが、4月12日にリリースされた。本稿ではその見どころをアーティストごとに紹介。レビューを通じてSACRA MUSICの特色と魅力に迫る。
TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
PHOTOGRAPHY BY 平野タカシ
2017年4月1日に発足したSACRA MUSICには、ベテランから若手まで様々なアーティストが所属。キャリアもジャンルも多種多様で、音楽的にボーダーレスなところが特徴となっている。そのなかでも随一のエモーショナルさを誇るのがPENGUIN RESEARCH。声優としても活躍する生田鷹司をボーカルに擁する5人組ロックバンドだ。コンポーザーでもある堀江晶太(Ba)をはじめメンバー全員がバンド外でも幅広く活動する凄腕のミュージシャンで(キーボードの柴﨑洋輔は“リスアニ!LIVE”のバンドメンバーでもある)、1番手を飾った今回のライブでは「決闘」「千夜祭」の熱量高い2曲を披露。特に公演当時の最新曲だった「千夜祭」での白熱ぶりは、メンバー全員が高め合いながらひとつの音楽を作り上げるバンド特有のマジックが感じられて熱くなること必至だ。
本公演が行われた2022年11月にデビュー5周年を迎えたシンガーのASCAは、共に人気アニメシリーズの関連曲であり、ライブの鉄板曲となっているアップナンバー「Howling」「RESISTER」の2曲をパワフルに歌唱。ミディアムバラードにおける聴き手を楽曲の世界観に引き込むような表現力も魅力の彼女だが、ここでは広いステージを目いっぱい使いながら会場を熱く盛り上げる、アグレッシブかつ華のある彼女の姿を楽しむことができる。
ちなみに今回のフェスでは、黒須克彦(Ba)、山本淳也(Dr)、白井アキト(Key)、三沢崇篤(Gt)、アンジェロ(Gt)から成るバックバンドが各アーティストのステージをサポート。生演奏だからこその熱気に満ちたパフォーマンス、そして楽曲によっては本公演ならではのアレンジが加えられているところもまた、今回の映像作品の注目ポイントと言えるだろう。
そんなフェスらしい魅力がギュっと詰まっていたのが、続いて登場したhalcaのステージ。代表曲「センチメンタルクライシス」では、キーボードのしっとりとした前奏が付け足され、ロマンチック度がいつもよりアップ。田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が提供したハイテンションなアップチューン「誰彼スクランブル」の笑顔と元気いっぱいな様も含め、彼女特有の天真爛漫さが堪能できる2曲だ。
楽曲やライブを通じて等身大の自分を表現している声優アーティストの斉藤朱夏は、今回はアニメタイアップ曲でもある「セカイノハテ」と「パパパ」の2曲を披露。爽快かつエモーショナルな歌声を届けた前者、軽快なグルーヴに乗りながら会場に笑顔を振りまく後者、いずれにも彼女らしいポジティブなメッセージが込められていて、その自由で楽しそうな立ち振る舞いを含め、映像を観たらきっと晴れ晴れとした気持ちになれるはずだ。
ボーカルの幹葉によるソロプロジェクトとなったスピラ・スピカは、彼女らしい天真爛漫なステージを展開。「イヤヨイヤヨモスキノウチ!」では自身の出身地・徳島県の伝統芸能である阿波踊りを行うようアピール。観客だけでなくキーボードの白井にも演奏を止めて踊るように呼びかけ、みんなで“踊る阿呆”になって盛り上がる。2022年を代表するアニソンの1つ「燦々デイズ」(TVアニメ『その着せ替え人形は恋をする』OPテーマ)もまさに燦々とした表情で披露し、こちらも思わず笑顔になってしまう。
SACRA MUSICには声優アーティストも複数人所属しているが、楠木ともりはシンガーソングライターとしても高い評価を得ている。自ら作詞したメジャーデビュー曲「ハミダシモノ」(TVアニメ『魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』EDテーマ)ではタイアップ作品に寄り添いながらもアーティストとしての強い意志を歌に乗せて届ける。作詞だけでなく作曲も手がけた「タルヒ」での、誰一人置いていくことのない優しい言葉と歌い口からは、彼女が音楽を通して表現したいことが伝わってくるはずだ。
そして斉藤壮馬もまた、声優とシンガーソングライターの2つの顔を持っているアーティスト。今回のフェスには独自のバンドを引き連れて乗り込み、自身もエレキギターを手にして自らの音世界を表現する。憂いを帯びたメロディと歌声にシューゲイザー調のバンドサウンドが激情を加えていく「埋み火」、ドラマチックな曲展開とバンドメンバーによるコーラスが高揚感を演出した「memento」と、ロックなステージングで観客を魅了。彼の声優としての一面しか知らないアニメファンには、ぜひその音楽的魅力も味わってほしい。
麻倉もも、雨宮 天、夏川椎菜によるユニット・TrySailは、何といっても声優でもある3人それぞれの魅力的な三声が折り重なることで生まれる、華やかな歌声のアンサンブルだろう。「ごまかし」でのクールでどこか神秘的な印象も与える表現、そして「はなれない距離」での賑やかな振付も含めたポップで明るいパフォーマンスと、今回はタイプの異なる2曲が収録されているので、彼女たちの多様な魅力に触れることができる。また、珍しく3人とも紫色で合わせた衣装も見どころだ。
フェス前半戦のトリを飾ったのは、2020年、SACRA MUSICにレーベル移籍し仲間入りを果たしたFLOW。アニメのタイアップ曲縛りでライブを行うことができるほど、数々の作品に関わってきた彼らだが、今回の収録曲は『NARUTO -ナルト-』シリーズ関連曲のみで構成。アッパーな「Sign」、沸々と燃え上がる「燈」、藍井エイルを呼び込んでスペシャルコラボで披露した「GO!!!」、そして彼ららしい疾走感と爆発力を備えた「GOLD」を畳みかける。デビュー20周年を感じさせるステージ巧者ぶりと、ベテランになっても変わらないエネルギッシュなパフォーマンスが胸を熱くさせてくれる。
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