『マクロスΔ』の“戦術音楽ユニット”ワルキューレのエースボーカリストとしても知られ、現在はソロデビュー5周年イヤー真っ只中のJUNNAが、3rdフルアルバム『Dear』をリリース。常に新しい自分の可能性に挑戦してきたフルアルバム3作目には、TVアニメ『海賊王女』OPテーマとなった「海と真珠」以降のシングルとともに多くの新曲を収録し、4月放送開始のTVアニメ『魔法使いの嫁 SEASON2』OPテーマ「Dear」もいち早く聴くことができる。疾走感あふれるロックチューンから超大作バラード、新境地となるラブソングまで、彼女の魅力がふんだんに盛り込まれた大ボリュームの内容となっている。その全貌をJUNNA自身の言葉で語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 仲上佳克
――まずはニューアルバムについてのお話の前に、今年1月29日にご出演された“リスアニ!LIVE 2023”SUNDAY STAGEの感想をお聞かせください。
JUNNA 素直に心から楽しめたライブだったなと思っています。今までは日本武道館という特別な場所に立たせていただくというので緊張や不安のほうが強かったんですけど、今回はいい緊張感もありつつ、楽しもうという気持ちのほうが大きかったですね。私は3回目の出演ということもあって今までよりもリラックスして挑めたライブだったので、バンドの皆さんとの一体感みたいなものも感じてもらえたんじゃないかなと思います。
――ワルキューレの楽曲「破滅の純情」を披露されたときは会場が沸きましたね。
JUNNA イントロで「この曲、何だ!?」ってなりましたよね(笑)。リスアニ!LIVEに出させてもらうときは「新しい自分で挑もう」というのを毎回目標にしていて、4曲とも過去に出演させていただいたリスアニ!LIVEでは歌ったことのない楽曲でセットリストを組みました。ワルキューレの楽曲では「いけないボーダーライン」を歌わせてもらう機会が多いんですけど、今回は「破滅の純情」を歌って、いい意味で期待を裏切る形でみんなには楽しんでもらえたのかなと思います。
――そして4月12日にはソロデビュー5周年記念となる3rdフルアルバム『Dear』がリリースされます。2ndフルアルバムの『20×20』からは約2年半ぶりとなりますが、今回はどのような思いをもって制作に臨まれましたか?
JUNNA 5周年ということで、今まで私を支えてくださった皆さんへの感謝を届けられたら、というのが一番大きなコンセプトとしてあって。楽曲を作るうえでは、今までのアルバムもそうだったんですけど、色んなジャンルの楽曲を歌いたいということは最初にお伝えさせてもらいました。
――アルバムのタイトルは表題曲の「Dear」がまずあって、そこから取られたんですか?
JUNNA 正直、最初は表題曲からそのままタイトルを取らなくてもいいかなと思っていたんですけど、5周年ということと「Dear」という言葉の親和性がすごく高くて、「Dear」の後ろには何も入っていませんが、私は“みんなへ”という意味での「Dear」だと思っています。みんな本当にありがとう、という気持ちが、このタイトルだけで伝わればいいなと思って。
――楽曲のほうの「Dear」はTVアニメ『魔法使いの嫁 SEASON2』のOPテーマとなります。2017年に放送された『魔法使いの嫁』のOPテーマ「Here」はJUNNAさんの1stシングルでしたが、こうして時が経ち、再びOPテーマを担当することへの思いをお聞かせください。
JUNNA 最初にお話を伺ったときには「もう一度、私が歌ってもいいんだ」という嬉しさと、頑張らなきゃいけないなという責任感みたいな気持ちがありました。タイトルも「Here」に続く曲だよと認識してもらえるように、韻を踏む感じで「Dear」になっています。
――作詞が岩里祐穂さん、作曲・編曲が白戸佑輔さんという「Here」と同じコンビですね。
JUNNA 完成した楽曲と歌詞を聴いて、「Here」からどれだけ進化させるか?みたいなお二人の熱い想いを感じて、歌も負けていられないなという気持ちになりました。
――この曲では、歌い出しから何度も出てくる“ダディア バディア”というフレーズが印象的です。
JUNNA これについてプロデューサーさんからは「岩里さんは500通りくらいの言葉を考えたとインタビューで言ってね」と言われているのですが(笑)、500という数字が本当かどうかはともかく、それくらいものすごく悩まれたということだと思っています。意味としては『魔法使いの嫁』の物語のなかで主人公のチセが色んな人と関わっていって、そのなかで信頼できる人が出てくるということでの「バディ」と、エリアスがチセにとってお父さんみたいな役割になっているということでの「ダディ」に「ディア」をくっつけた造語で、それをレコーディングのときにご説明いただいて、1つの言葉にこれだけのストーリーがあるんだ!と感動して。自分も大切に歌わないといけないなと思ったんですけど、あまり頭で考えすぎると口が回らなくなるので、ちょっと呪文を唱えているような感じで、そんなに強く出しすぎず、しゃべっているかのように自然と出る言葉みたいにして歌ってみました。
――ここからは、既存の楽曲も含めアルバムの曲順にお聞きしていきます。2曲目には、作詞・作曲・編曲を梶浦由記さんが手がけシングルリリースされた「海と真珠」が入りましたが、「Dear」から続けて聴くと世界観の広がりがちょうどよくマッチしていますね。
JUNNA 嬉しいです。曲順も私が考えたので、そう言っていただけると自信になります。「Dear」から「海と真珠」の繋がりはどの曲よりもピタっとくるなと思って、ここはあまり迷わず並べた感じですね。
――3曲目の「振レバ、雨傘。」からはグッと大人っぽい雰囲気になります。
JUNNA 「振レバ、雨傘。」はキー合わせや仮歌の状態では一番不安な曲で。「私がこの曲を歌いこなせるのかな?」と思いながら歌っていたんですけど、本番のレコーディングでディレクションをしていただくなかで、どんどん感覚がつかめていく感じがして。最初は全体的に強く歌っていたんですけど、それだと強すぎちゃうなと思って。「すがる」感じというか、弱くなって歌ってみるのも面白いんじゃないかなと思って。特に2AとかDメロのところはそういう歌い方をしてみるのもありなんじゃないかと言っていただいて、だいぶ面白い歌い分けができたんじゃないかなと思います。
――東海テレビ・フジテレビ系全国ネット土ドラ『個人差あります』の主題歌だった「曖昧な2人」が4曲目に来ているのは、ラブソングが続くというのを意識してのことですか?
JUNNA 意図してラブソングを続けようと思ったわけじゃないんですけど、アップテンポが続いてきたなかで、いったんバラードに行くために、ちょっと落ち着かせたいなという。気持ち的に落ち着く楽曲ってどれだろう?と思ったときに、グルーヴィーな感じの「曖昧な2人」がここにハマったらいい流れになるんじゃないかなと思って、入れました。
――次の「あやまち」はJUNNAさんご自身が作詞・作曲されています。
JUNNA 初めてラブソングを書いたので、みんなびっくりするんじゃないかなと。受け入れてもらえるか、心配ではあるんですけど……。
――やっぱり気になるのは、実際にこういう経験をされたのかなということですよね。
JUNNA あはは(笑)。それ、レコーディングでも聞かれたんですよ。オケのレコーディングをしているときに「これって自分の体験談?」って。私はドラマや映画を観るのが好きなんですけど、ちゃんとハッピーエンドで終わるものが多くて、観ていて「それって本当?」って思っちゃうんですよね。友達の話とかを聞くなかでも、みんなが必ずしも幸せな恋愛をしてきているわけじゃないんだなと思って、誰も幸せになっていない感じのラブソングのほうが共感できる人がいるんじゃないかなというところから、この曲を書き始めたという感じですね。
――思い返せば、2020年の誕生日に行われたオンラインライブ(“JUNNA ROCK YOU STREAMING LIVE 2020 〜MOVE ON〜”)でwacciの「別の人の彼女になったよ」をカバーされていたあたりが印象的で、その頃からJUNNAさんには「いつか、こういう切ないラブソングを歌ってほしい」という要望もあったのではないかなと。
JUNNA 実は前々から「ラブソングを作ってほしい」とは言われていたんですよ。そのほうがJUNNAという人間の一部がもうちょっと見えてくる気がする、と言われていて。だから次にアルバムを作るとなったとき、1曲は絶対、自分の作詞・作曲でラブソングを書こうと思って、それで書き始めたところもありました。
「別の人の彼女になったよ」も、ファンの方から「失恋ソングを歌っているJUNNAが新鮮だった」と言ってもらえていたので、「じゃあ、失恋ソングを書いてみようかな」と思ったのもありつつ……レコーディングでは「泣くくらいの勢いの感情で歌ってみよう」というのがテーマだったのですが、ここまで泣きそうなくらいの歌を自分の楽曲で歌ったことがなくて。ワルキューレの楽曲だとあるんですけど、JUNNAという人間として歌ったときにそういうアプローチの仕方をしたことがなかったから、部屋の中を暗くして歌ってみたりして。そうしたら「本当に泣いてた?」と言われるくらいの歌を歌えたので、それがみんなにうまく伝わればいいなと思います。
――6曲目「春の夢」はオリジナルショートアニメ『冬のおくりもの』主題歌。
JUNNA これはアニメと一緒に聴いてもらうことでより感情がわかるというか、みんなに伝わるものがあるので、ぜひアニメを観ていただきたいなと思います。レコーディングのときは自分もぽかぽかした、温かい気持ちを持って歌わせてもらって。いつもだったらもうちょっと歌にリバーブをかけたりするんですけど、「春の夢」はそういうこともほとんどなくて、ほぼ生の声に近い状態で歌うというのがすごく新鮮でした。
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