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INTERVIEW

2023.04.08

ついに語られる“最終話OP”の秘密─『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』3人のキーパーソンと紐解く「Heaven’s falling down」

ついに語られる“最終話OP”の秘密─『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』3人のキーパーソンと紐解く「Heaven’s falling down」

アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』の最終章となる第25話~最終話第38話が、Netflixでの全世界独占先行配信を経てとうとうTVでも放送を終えた。2012年の放送開始から10年以上に渡り続いてきた『ジョジョの奇妙な冒険』アニメーションシリーズの長い道のりも、ひとまずの終着点に辿り着いた形だ。今回はこれを記念して、第25話からのOPテーマ「Heaven’s falling down」ボーカリストのsana (sajou no hana)、作曲・編曲の菅野祐悟を迎えたスペシャル対談の完結編を公開する。

当OPにおいては、最終話第38話で披露されたスペシャル演出も大きな見どころに。空条徐倫たちの宿敵=エンリコ・プッチのスタンドの最終形態「メイド・イン・ヘブン」がもたらす“時の加速”と、100年以上に及ぶジョースター家とDIOの因縁の決着──それらを象徴するかのように、OPアニメーションの後半には新規カットが加わり、楽曲そのものにも新たなアレンジが加えられていた。本稿では、楽曲やこれらの演出に込められた思いについて、ワーナー ブラザース ジャパンの土肥範子プロデューサーから届いたコメントも併せて掲載。『ジョジョ』と運命を共にし、戦い抜いた人たちの言葉を受け取ってほしい。

INTERVIEW & TEXT BY 前田 久

▼sana (sajou no hana)×菅野祐悟 スペシャル対談インタビューの第1回はこちら

物語は終局へ─『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』新OPが目指した世界観とは? sana (sajou no hana)×菅野祐悟 スペシャル対談

「これまで継承してきたすべての集大成」という意味合いを持つ楽曲

sana (sajou no hana)、菅野祐悟

──前回の取材で、sanaさんは「レコーディングのとき、ぎりぎりまで原作第6部の最終巻をずっと読んでいた」とおっしゃっていましたが、アニメの『ストーンオーシャン』を最終話まで観ると、改めて納得します。空条徐倫と仲間たちの思い、そして、『ジョジョ』というシリーズの過去と未来が一気に繋がるラストの展開と、楽曲の歌詞で描かれていたものがまさに繋がっていくような気持ちがして……。

sana すごい内容の歌詞ですよね。歌っていても、包み込まれるような感覚がありました。一つ一つのフレーズに徐倫の覚悟がにじみ出ていて、どこをとっても全部胸がきゅっとなる。

──そんな歌詞の中で、特に「これは!」という部分を選ぶとすると?

sana 全部好きなので難しいですが……あえて選ぶなら、2番の「Stay with me 共に行こう」ですかね。この歌の前半では徐倫の自分に向けた感情を歌っているんですが、ここからは、仲間たちに向けた感情が出てくる。自分だけじゃなくて、仲間たちとともに希望に向かっていこう……と。そこに胸が熱くなるというか、グッときますね。ただ力だけの強さじゃなくて、精神的なものだったり、柔軟性みたいな形での強さが表現されているように感じて、胸を打たれます。

──ちなみに楽曲の制作過程で、スタッフ間で歌詞に関してやりとりされたことも?

菅野祐悟 (作詞を手がけた)藤林聖子さんの方では、他のスタッフからの「ここを直してください」という指示を受けてというより、ご自身でのリテイクが多かった印象ですね。一度提出した後に「やっぱり、ここはもっとこうしたい」と。楽曲の制作期間が長く取れたことも影響していたのかもしれませんけど、レコーディング直前のぎりぎりまで試行錯誤されていた気がします。

──なるほど。だからこその歌詞の熱量なのかもしれません。

sana ラスサビのフレーズもやばいですよね。「受け継がれる 星は深い」。受け継がれてきたものすべての集大成。ここから最後の「命の煌めき」までの歌詞を読んだとき、心の中でスタンディングオベーションでした。

主題歌も劇伴も…最終話まで目が離せない『ジョジョ』らしさ

──今回はアニメ全話放送を終えたタイミングのインタビューということで、最終話第38話での「Heaven’s falling down」に起きた変化についても伺えればと思います。

sana 私もぜひ菅野さんにお聞きしたかったんです。最終話バージョンの曲の後半でオケが変わるところは、あのためだけにまた別にレコーディングされたんですか?

菅野 あれは、元々あったオケにアレンジを加えた感じですね。最初は(制作サイドから)「テンポを上げたい」という趣旨で話をいただいたんですけど、それは無理なので、単純に算数的な発想で、リズムを倍にしたんです。つまり、同じ長さの時間の中に、詰まっている音符の数を倍に増やすと、テンポが倍になったように感じられるということですね。具体的には、映像が逆回転的になるところで、実際に音楽を逆から再生するパートを入れて、そこからリズムを倍にしています。自分でも意外だったのが、リズムを倍にしても曲調に合う。何だったらこのアレンジの方がかっこいいんじゃないか?という感じすらしました(笑)。

sana 本当にかっこよかったです。もちろん、元々の曲も素敵なんですけど。最終話を観た方の中に「あのバージョンの音源を聴きたい!」って人がいて、「わかる〜!」って思ってました(笑)。

──「Heaven’s falling down」の最終話スペシャルバージョンは音源リリースの予定があるそうなので、じっくり聴けるのが楽しみですね。そんな特殊OPのお話も含めて、アニメ『ジョジョ』では主題歌や劇伴音楽にある連続性が興味深くて。劇伴の参加ミュージシャンについても、ハセガワダイスケさんのように複数のシリーズで、様々な形で参加される方がいますよね。

菅野 それに関しては『ジョジョ』に限らず、僕が一緒に仕事をしたいと思う、大好きなミュージシャンが割と決まってるんですよ。ちょっとつまらない答えになってしまうけど、いつも僕の中のベストメンバーにお願いしてレコーディングしているわけです。その上で、ハセガワさんに関しては、『ジョジョ』のカラーに馴染んでいる部分もあるので、そういう意識でお願いしたところもあります。『ジョジョ』を観てきた人たちにとって聞き覚えのある、耳なじみのある声として、コーラスに参加をお願いしたというか。シリーズの音楽としてのマーキング的な感覚といったらいいのかな。

sana (「Heaven’s falling down」で)私が歌をレコーディングしたときにはコーラスは入っていなかったので、完成した音源が届いたとき、ハセガワさんのコーラスが聴こえてきたのは嬉しかったですね。一気に曲の『ジョジョ』みが増して、引き締まった感じがしたというか。「来たーっ!」と思いました。

──sanaさんも、今回の「Heaven’s falling down」を通じて、もし今後なんらかの形で『ジョジョ』に関わったとき、「来たーっ!」と思われる存在になっていますよ、きっと。

sana だといいんですが……(笑)。めちゃくちゃ私事なんですけど、私、身長がちょっと高めで172cmあるんです。アニメではなかなかこういうキャラには出会えないんですけど、徐倫の身長は174㎝で結構近くて。内面はもちろんですけど、そんなところにも、勝手に親近感を感じていました。荒木飛呂彦先生には「こんなにかっこいい女性を描いてくれて、ありがとうございます!」と何度でもお礼をお伝えしたいですね。

菅野 ちょっと出来レースっぽい言い方になってしまうんですけど、sanaさんの持っているギャップというか……見た目の印象と、歌声と、あと、しゃべっているときの雰囲気。その柔らかさ、しなやかな強さと、力強さみたいなものが合わさっている雰囲気は、徐倫的だと思いますよ。

sana ありがとうございます(笑)。繰り返しになってしまいますが、こうしてシリーズの集大成になる作品にボーカルとして関わらせていただけて、深い感謝の気持ちでいっぱいです。そして、ずっと温めてきた曲がこうして世に出て、放送も終わって……「出ちゃうと一瞬だな」と、今は喪失感も感じています。なので、長い間温めてきたエネルギーみたいなものを、これからも感じ続けていただけたら嬉しいです。キャラクターたちの思い、覚悟を受け取って、その熱量を自分なりに歌にぶつけたつもりなので、これからも長く楽しんでいただけたら。

菅野 僕としては、sanaさんの歌声の魅力を、歌い方の表情や息遣いも含めて、なるべく損なわないように瞬間冷凍保存、じゃないですけど、鮮度高くパッケージさせてもらったつもりです。「Heaven’s falling down」においてはsanaさんイコール徐倫だと思っているので、言ってしまえばこの歌は徐倫の魂の叫び。そんな思いの強さを歌から感じ取って、アニメと合わせて楽しんでいただけたら嬉しいですね。楽曲も日本語版と英語版の両方で配信されているわけですし、世界中の人に届くことを願っています。

次ページ:【スペシャルコメント】アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』最終話放送によせて

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