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REPORT

2023.04.03

5年半のゴールは、輝ける未来への最初の一歩!“Run Girls, Run!FINAL LIVE ~新しい道の先へ~”レポート

5年半のゴールは、輝ける未来への最初の一歩!“Run Girls, Run!FINAL LIVE ~新しい道の先へ~”レポート

3月25日、声優ユニット・Run Girls, Run! が、“Run Girls, Run!FINAL LIVE ~新しい道の先へ~”を山野ホールにて開催。3月31日の解散を控え、ユニットとしては最後となったワンマンライブで、彼女たちはこれまで積み重ねてきたものを全開放。その堂々たるステージングを通じて、この先に待つそれぞれの未来が無限大であることを感じさせてくれた。
本稿では、2回公演のうち夜公演の模様をお届けする。

TEXT BY 須永兼次

“始まり”の曲で、ゴールテープに向かってスタートダッシュ!

まずはOP映像の上映からスタート。3人がこれまでの日々に想いを馳せるかのように目を閉じ、これまでリリースしてきた楽曲のMVを挟みながら“最後の晴れ舞台”に向かって駆け出していくと、ステージの2階部分に3人が登場。ステージから一番後ろの観客も含めて視線を交わしながら、始まりの曲「カケル×カケル」からスタートを切る。約3年ぶりの声出できる単独公演で、ランナー(Run Girls, Run!のファン)から大きな大きな歓声を浴びつつ、今に至るまでの方向性を示すかのようなパワフルなナンバーに乗せて笑顔でエネルギッシュなパフォーマンスを展開すると、続いてはデビューシングル「スライドライド」へ。2曲続けての力強いロックナンバーでありながら、そのステップは実に軽快で、しかもそれぞれが余裕感さえあるような表情もみせる。また歌声の面でも、シリアスさのなかのほのかなオトナ感のある森嶋優花に芯が従来以上にはっきりした厚木那奈美、より確固たる強さを得た林 鼓子と、3人がそれぞれ成長を提示。輪唱のようなDメロではそれを美しく響かせ、勢いだけではなく聴かせる力も発揮していく。

そして今度は、歴代のOPテーマを担当してきたテレビアニメ『キラッとプリ☆チャン』の1st OPテーマ「キラッとスタート」。元気溢れるパフォーマンスという点はそのままに、表情はこの曲らしいキラッキラの笑顔へと一気に変化。観客のコールと一緒に、さらに会場のボルテージを上げていく。また、この曲でも特に落ちサビでのソロの歌声に、個性や表情付けの部分でのリリース時からの進化をみせていく3人。5年半積み重ねてきたものをすべてぶつけて、その最後を飾る新しい思い出にしようという意気込みがビシビシ感じられた。

こうして様々な“始まり”の詰まった3曲からスタートした“FINAL LIVE”。この日最初のMCパートは3人それぞれの挨拶に久々に手拍子ではなく、観客からの声が返って掛け合いが成立。懐かしくもあり、最後の舞台に間に合ったことが嬉しさも生む光景だ。さらに口々に、ステージ上でランナーの熱気の凄さについて語ると、林が「いつもの私たちらしく元気にいっぱいお届けしていきます!」と宣言。コールを煽って一体感を高めると、3曲続けての『プリティーシリーズ』楽曲ゾーンへ。まず、直前に披露した「キラッとスタート」のカップリング曲「プリマ☆ドンナ?メモリアル」では、2サビ明け間奏でのバレエ調のダンス等、ストリングスが彩るサウンドに合わせて、ここまでとはうって変わって麗しさを前面に出していく。そんなこの曲で特に目立っていたのは森嶋。2-Aメロ冒頭のソロ「愛らしいって」のフレーズに、言葉どおりのキュートさをふんだんに乗せたりと、歌声も含めてぐっと心を惹きつけていく。

続く「Go! Up! スターダム!」では、頭サビ明けからランナーからのコールで会場のボルテージが爆上がり。そんな光景を前に、Bメロでは細かい足の振付もこなし、さらに歌声の個性を発揮しながらパフォーマンスしていく3人。2サビの林のソロ、“いつまでも仲間だって”の間、森嶋・厚木が歌唱しない部分も一緒に歌詞をなぞっていた光景は、FINALだからこそよりぐっとくるものだった。

また、随所に盛り込まれた跳ねる振付がキュートさを演出する「キラリスト・ジュエリスト」では、林が1サビで普段以上の表情をつけたり、2-Aメロのソロでは若干ウィスパー気味に歌ったりと、1曲の中での緩急の巧みさも感じさせるボーカルワークを披露。ダンスの面では厚木が2サビ後半で普段以上に高く飛び跳ねたり、直後の間奏ではより体を深く沈ませたりと、大きな動きがテンションのUPを感じさせてくれる。

こうして『プリティーシリーズ』ブロックは終了。直後のMCでは「キラリスト・ジュエリスト」について、「ジャンプが多いから実は体力を使う曲だけど、皆さんの前で披露する機会が少なかったので、今回は思い切って踊ろうと臨んだ」と林が裏話を明かすなど、楽曲にまつわるトークを展開し、林の「ここからは、私たちのちょっとオトナな姿も……」との前フリから、いわゆる“四季曲”のゾーンへ。この“四季曲”はアニメ等のタイアップ曲ではないものの、カップリングやアルバム曲として生み出された、季節の流れとともにせつない恋心を描く、ランナー人気の高い楽曲群だ。まずは春を連想する「サクラジェラート」から、弾むビートに上手く乗ったダンスとともに披露。サビ前のフレーズに儚さを醸し出したりと、細部にまでこだわって表現していく。

季節が春から夏に移っての「水着とスイカ」は、イントロ中に観客席を照らすの照明のなか微笑みながら客席側を振り返る森嶋の表情が、この曲の世界観とベストマッチの表現。逆にこの曲からややアンニュイな表情のパフォーマンスとなった林からも、楽曲やこのブロックへの一層の没入を感じさせる。それが歌声となって非常によく効いてきたのが、続く「秋いろツイード」だろう。真っ直ぐさはありながらもほかの曲のようにグイグイ押すわけではなく、無垢ゆえの真っ直ぐさを表現したサビのソロは絶品だった。またこの曲、ミドルテンポのEDMながらもサビの振付が非常に速く細かいもの。それをリズムから外れずに、それでいて硬質なものではなく滑らかさも残していくパフォーマンスもまた、サウンドと楽曲の世界観を両立させる素晴らしいものだったのではないだろうか。そして「スノウ・グライダー」でステージ上の物語は冬を迎え、3人ともスーッと美しい歌声を響かせていく。そのうえで、Dメロで徐々に感情を膨らませながらソロパートをリレーしていき、それを最後に厚木が爆発させてからダンスタイムへと突入し魅せていく……という表現は、彼女たちが積み上げてきた表現や技術を凝縮したシーンの1つであり、ライブ前半ラストを飾るにふさわしいものだったように思う。

ソロでも3人でも! もっと観ていたくなる多彩な表現

ここで一旦3人は降壇し幕間映像が上映。「青春アルゴリズム」のインストバージョンをバックにした映像に乗せて、各メンバーがランナーへの想いや未来を見据えての決意などをしたためた、手書きのメッセージが映し出されていく。

その映像が終わると、衣装チェンジした3人が再登場して「蒼穹のBlue Grandia」からライブ後半戦スタート。抜けるような青空に向かって伸びる光の筋のような、ピンと張った歌声を響かせていく。その一方でパフォーマンスに目を向ければ、再びどこか余裕感さえ醸し出した堂々たるものに。デジタルチューンに巧みに乗り、スタイリッシュなダンスで魅せていく。それに続くは、同じく青の似合うナンバー「Break the Blue!!」。I’ve Soundから提供を受けた硬質なサウンドのデジタルチューンと、森嶋の歌声の相性はやはり良好。それもあってか、彼女の表情には盛り上がる観客を前にこの曲を歌える楽しさが滲んでいるよう。恒例となっている、林による2-Aメロラストのロングトーンのシャウトも、青い炎のように場内のボルテージを上げていく。

そして今度は、そこにダークさという要素の加わる「Share the light」。ミステリアスさを演出するコーラスワークや、動き出しや加減速、ストップのタイミングをピタリと合わせる必要のあるダンスなど高いテクニック要求される難曲も、きっちり乗りこなしていく。そのなかで、ここでも林の歌声が、夜に射し込む月明かりのように映える。また、この3曲を通じて、厚木の低音域の歌声において、下支えするような力強さがぐんと向上していたことも、改めてここに記しておきたい。

3曲歌ってのMCパートでは、チェンジした衣装や楽曲についての話題に。前述した「Break the Blue!!」の林のロングトーンについて「当時はロングトーンが厳しかったので、『ピッチが外れるぐらいならシャウトするしかない』と思ってやったら、反応が良かったのでこの形にした」と明かすなど、披露した楽曲の裏話も飛び出した。

さて、ここからは各メンバーがソロ曲2曲をメドレー形式で披露していくコーナー。まずは「みんな、まだまだ騒ぎ足りないんじゃないですか?」と森嶋が、ランナーを煽りソロ曲の「Darling Darling」からスタート。「I love you…」の歌い方にたまらないラブリーさをいっぱいに込めた頭サビだけで、完全に場の空気を自分色に染めてしまう。以降も豊かな表情とそれに連動したキュートさ全開の歌声でランナーを魅了すると、続く「感情にダッシュ!」ではコール部で観客にマイクを向けたり、サビ直前に「行くよ?」と合図して盛り上がりを先導したりとさらに場内の温度を爆上げ。最後に2階ステージ中央でポーズを決めてソロパートを締め括った。この巻き込む力は、表現者として今後も大きな武器となることだろう。

その余韻残るなか、ブルーにステージが染まり「逆さまのガウディ」のイントロが流れると、ステージに登場した厚木に手を振りバトンタッチ。ダンスが得意という彼女の個性を活かしたダンサブルなナンバーに乗せて、クラップで場内を1つにまとめながらランナーを踊らせていくと、さらにややスローなナンバー「拝啓ディアナイト」へ。ここでは歌声に優しさ・暖かさを込めつつ、指でハートを描いてカメラにアピールしたり、ラップ風のBメロでは歌いながら歌詞に合わせてちょっと賑やかめに動いたりと魅せ方にも細部にまで工夫が。サビの最後にも指ハートを盛り込んで、歌とダンスの両面からランナーへの愛を込めたミドルナンバー2曲を、微笑みとともに届けきった。

その直後、「りんごの木」の歌い出しと同時に、林の姿がスポットライトに照らされ浮かび上がる。彼女のソロ曲は自身が好むロックナンバーで、特にこの曲はダンス皆無のステージング。2階ステージの中央に立ち、堂々と歌声を叩きつけていく。大歓声響くなか歌声一本で真正面から勝負というのも、とても彼女らしい。さらにもう1曲熱く歌い上げる「点とミライ」ではメインステージへと降り、力強く、同時に心から気持ち良さそうに歌っていく。メロラップ調のBメロでは時折ランナーを指さしたりもして、自らの身振りでも歌声の持つ熱量をさらに高めながら、この場で生まれた感情を惜しげもなく乗せて会場のボルテージを上げていった。

その熱さを引き継いで、「RADIANT」から森嶋、厚木も合流して3人揃ってのステージが再開。ハードなロックナンバーではあるものの、目まぐるしいフォーメーションチェンジも織り交ぜるなど、改めて視覚面でも全力全開で魅せてくる。そしてこの曲でも、直前からボルテージ上がりっぱなしだった林の歌声が立っており、手を伸ばしながらの大サビ前でのセリフには「一緒に未来へと進もう」というエールも込められていたように感じられた。また、後奏部の冒頭で顔を見合わせた3人は、直前までのキリッとした表情から笑顔に。声出しライブでの初披露がかなったこととランナーの反応の良好さが生んだ、3人にしか感じ得ない達成感が生んだ表情だったのだろう。

そんなボルテージ最高潮のランナーたちを前に、「次の曲は、みんなと1つになりたい曲」と森嶋が紹介した「Believer Switch」から、ライブはいよいよクライマックスへ。とりわけこの曲を楽しみ尽くしていた印象が強かったのが、その森嶋。3人とも歌唱していない部分では指さし等を通じてファンとのコミュニケーションを交えていたのだが、Aメロ等でギリギリまでそれを行なっていたことでほかの2人へ慌てて合流する場面があったり、サビに入る瞬間にはランナーとともにジャンプしたりと良い意味で遊び尽くす。しかもただ楽しむだけではなく、ユニゾンで目立つほど歌声の表情付けが豊かだったりと、パフォーマンスにもさらなるプラスをもたらしていた。

そして林の「ここにいる全員が、『無限大ランナー』だー!」のシャウトに続いて、このライブの副題を歌詞に持つ「無限大ランナー」が、本編ラストナンバーとしてスタート。サビでは腕振り等も行なって、一体感さらに強く盛り上がるこの曲。前述したように歌声の面でいっそうの強さを感じさせた厚木は、2-Aメロ冒頭のソロパートを力強く歌唱。最後にまた、歌い手としての成長もはっきりとみせる。2サビでは3人がステージいっぱいに広がるなど会場中のランナーと向き合って、彼女ら・彼らを象徴する1曲を満開の笑顔で形にしたのだった。

ランナーの声が生んだ、最高の“ゴール”と“スタート”

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