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REPORT

2023.03.19

充実のライブと不穏なるIfの行方。「THE IDOLM@STER SHINY COLORS 5thLIVE If I_wings.」DAY1レポート

充実のライブと不穏なるIfの行方。「THE IDOLM@STER SHINY COLORS 5thLIVE If I_wings.」DAY1レポート

アイドルマスター シャイニーカラーズ」のライブイベント「THE IDOLM@STER SHINY COLORS 5thLIVE If I_wings.」DAY1が2023年3月18日、国立代々木競技場 第一体育館+有料生配信にて開催された。

DAY1公演にはイルミネーションスターズより櫻木真乃役の関根瞳、八宮めぐる役の峯田茉優、アンティーカより月岡恋鐘役の礒部花凜、田中摩美々役の菅沼千紗、白瀬咲耶役の八巻アンナ、三峰結華役の希水しお、幽谷霧子役の結名美月、放課後クライマックスガールズより小宮果穂役の河野ひより、園田智代子役の白石晴香、西城樹里役の永井真里子、杜野凛世役の丸岡和佳奈、有栖川夏葉役の涼本あきほ、アルストロメリアより大崎甘奈役の黒木ほの香、大崎甜花役の前川涼子、桑山千雪役の芝崎典子、ストレイライトより芹沢あさひ役の田中有紀、黛冬優子役の幸村恵理、和泉愛依役の北原沙弥香、ノクチルより浅倉透役の和久井優、樋口円香役の土屋李央、福丸小糸役の田嶌紗蘭、市川雛菜役の岡咲美保、シーズより七草にちか役の紫月杏朱彩、緋田美琴役の山根綺が出演した。

TEXT BY 中里キリ

さて、レポートを行なう私たちにとっても難題をつきつけられたようなライブだった。今回のライブはファーストブロックに「一閃は君が導く」「Give me some more…」「Overdrive Emotion」「Catch the Breeze」「浮動性イノセンス」「Bouncy Girl」「イルミネイトコンサート」と、まずは最新の「PANOR@MA WING」シリーズの楽曲を各ユニットから散りばめて、「シャイニーカラーズ」の到達点と言ってもいい最新の姿を見せつけた。

ライブ全体を通してみてもほぼユニット曲オンリーと言ってもいい構成で、各ユニット4曲の披露は過去最多クラス。イルミネーションスターズ、アンティーカ、放課後クライマックスガールズ、アルストロメリア、ストレイライト、ノクチル、シーズ、ついに7つのユニットが揃った「シャイニーカラーズ」の5周年を飾るにふさわしい集大成と言っていいはずのセットリストだ。

中でも特記すべきは新たな挑戦を行なったユニットたち。ストレイライトの「Hide & Attack」ではステージ上段に尺八、三味線、和太鼓からなる和楽器バンドがゲストとして登場。冒頭で能の仮面を投げ捨てるおなじみの演出に合わせたものだと思われるが、ストレイライトのサウンドに、ライブで奏でられる和の響きが絡み合っていくのが尋常でなくかっこいい。ストレイライトの尖った世界観を向こうに回して、唸りを上げる三味線のプレイや突き抜けていく尺八がもう一方の主役として成立しているのは圧巻の一言だった。

シーズの「Fashionable」には、なんと3人の男性ダンサーが登場。バンド・楽器隊という形以外で男性のパフォーマーが「アイドルマスター」のステージに上がるのはかなり異例なことだ。どこかK-POPを思わせるハイクオリティなパフォーマンスだが、裏を返せば練り上げ、進化を続けてきたシーズの表現が、本職の男性ダンサーを舞台の一部として使いこなす領域まで高まっているということだろう。

アンティーカの「Black Reverie」では、八巻アンナが巨大なフラッグを肩にかついで登場。白のゴシック調の衣装と巨大なフラッグのアンバランスさが目を惹く。八巻がステージに突き立てた旗が光の明滅の中はためく様子は、アンティーカここにありと示しているようだった。

ノクチルの「今しかない瞬間を」は、制服姿に着替えた4人の放課後の何気ない風景の朗読からスタート。和久井優が掃除用のほうきをギターのように鮮烈に構えると、岡咲美保は机をドラムセットに見立てて物差しで叩く。つまらなそうにスマホを見ていた土屋は、和久井に渡されたほうきをベースに見立てて演奏スタート。土屋が見守る中、勉強していた田嶌紗蘭もピアノを奏でるように机に指を滑らせ始めた。放課後の教室でふざけあっている情景をそのまま切り取ったようでありながら、ほうきや定規を手にしたエアバンド姿が本当に絵になるのはノクチルというユニットならではだった。

そうしたライブの名シーンの光景を紡いでいけば、質量ともに素晴らしい5周年の集大成と呼ぶにふさわしいライブとだけレポートすることもできたかもしれない。だがDAY1を見終えた今、真に記録に残すべきは、やはりライブ全体に散りばめられた不穏さ、不安に心臓をつかまれるような落ち着かない不思議な感覚についてだと思う。

アイドルたちの台詞に散りばめられた“終焉”のイメージ

“異変”は、開演と共に始まった。協賛企業紹介を行なった後は、事務員からプロデューサーに向けたメッセージとライブの諸注意というのが「アイドルマスター」のライブの型だ。だが今回はスクリーンに283プロの社長室らしき部屋が映し出されると、天井努社長と事務員七草はづきの“ライブ前夜”の会話が流れ始めた。疲れきった様子の天井にはづきがかけたのは、「全部が、終わるわけじゃないです。最後まで目に焼き付けましょう。光を」という言葉だった。“終わり”“最後”という言葉の不穏さに、会場全体がざわつく。白い世界に舞う羽根をモチーフにしたオープニング映像では、白く光る羽根と影の羽根が絡み合うように咲き乱れた。

DAY1のライブは全体を通して、完成度の高いライブと不穏なキャラクターMC(朗読)の二重構造だったように思う。最初の7曲が終わった後の全体MCでも、まるでこれが各ユニットの最後のライブであるかのような痛切で、それでも強く笑顔であろうとするようなキャラクター挨拶と、にっこり笑顔で自己紹介する演者挨拶が分離しているように感じられた。終わりを予感させる演技について、演者の挨拶側がほとんど触れることがない(テンションはやや引っ張られている)ことに一番違和感が大きく、観る者の情緒がかき乱される。これは、明らかに意図的に仕組まれた違和感だ。

アルストロメリアの「Anniversary」の曲前朗読では、かつて語った“幸せだと思うこと”を思い出す3人の会話とともに、甘奈の「甘奈、やっぱりおしまいにしたくないよ……」の言葉に、千雪が「大丈夫、アルストロメリアは終わらない……少しずつ、変わっていくだけ。ね?」、甜花が「このステージのあとも、ずっと一緒」と返した。アンティーカの「Black Reverie」の曲前朗読では、咲耶の「いいかい、これがアンティーカの最後じゃない」の言葉に、メンバー全員が最高で最強のライブにすることを誓い合った。ノクチルの「アスファルトを鳴らして」前には、彼女たちの決して成功とは言えなかった初ステージを描いたゲーム内イベントコミュ「天塵」を思い出させる回想が行なわれると、小糸が「でも、ずっと一緒にはいられない……いられない」と呟いた。「OH MY GOD」でのにちかの悲痛な独白。アルストロメリアの「ダブル・イフェクト」前には、千雪が「最後だから笑おう」とふたりの背中を押した。

拾っていくときりがないが、キャラクターMCや曲前朗読に共通しているのはユニットとしての最後、区切りを迎えたアイドルたちの言葉であることだ。ライブ本編は全員がステージに揃っての輝かしい「Resonance+」で締めくくられたが、ライブに散りばめられた不可思議な感覚について、DAY1の中で説明や言及が行われることは無かった。

DAY1に限定すれば、観客を突き放して終わったと言ってもいいぐらい謎に満ちたDAY1の演出。その意図を考えるうえで補助線になるかもしれないのは、「THE IDOLM@STER SHINY COLORS 5thLIVE If I_wings.」というライブタイトルだろう。「アイドルマスター」のタイトル類には驚くほどの情報量が込められていることが多く、“If I_wings.”のアンダーバー部分にもなんらかの意味があるのではないだろうか。たとえばそこに“lost”といった喪失を意味する単語をあてはめれば、ユニットとしての活動を終えようとするDAY1のアイドルたちの演技に符合するような気がする。

ゲームとしての「アイドルマスター」は、繰り返しながら上昇していく、らせんのような構造を持った物語だ。「シャイニーカラーズ」のゲームをはじめてプレイした人は“W.I.N.G.”という大会に出場し、一度は敗れ、いつか彼女たちを頂点に連れていくことを誓う。それ自体がゲームの原体験となるように設計されている。DAY1で描かれたアイドルたちの姿は、夢の途上で敗れた彼女たちのIFでもあるのではないだろうか。

もちろん、これらはすべて推測に過ぎない。DAY2を見てみれば、まったく的外れになっている可能性も高いだろう。DAY2ではこの光景の続きが描かれるのかもしれないし、それとは違う光のIF、別の単語がアンダーバーに置き換えられるのかもしれない。

様々なことにまっさらな気持ちで思いをめぐらせられるのは、DAY2が開演するまでのわずか10数時間の限られた間しかない。その時間をライブの提供側も特別なものとして考えていることは、これまでに例がなかった当日視聴可能な“最速版アーカイブ”の提供からも感じ取れる。この不穏で不安で、「シャイニーカラーズ」のことしか考えられない時間と思索の夜を提供することが目的のひとつだとすれば、これまでになかったライブ体験だと言える気がする。

アンコールでは、揃いの純白でシンプルな衣装に着替えた全メンバーが「いつか Shiny Days」を披露。優しい笑顔をかわしながらの歌唱。想いを込めた落ちサビは関根瞳と峯田茉優がロングソロを担当した。最後のMCではメンバーから、5周年を迎えた感慨と感謝が伝えられていた。

そしてDAY1を締めくくるラストナンバーは、「Multicolored Sky」。万色の空の歌を、純白に身を包んだアイドルたちが歌う。楽しかった時間は終わってしまうけど、また明日輝きにめぐりあえる、約束の歌。今日のコンセプトのライブの終わりに歌うことで、また違う感情をかきたてる楽曲になっているように感じた。「ラララ」の大合唱の中、順番にステージを降りていくアイドルたち。ステージには最後にイルミネーションスターズが残り、歌声が途切れるとともに、誰もいなくなった。スクリーンには影羽根と光の羽根がふわりと舞い落ち、やがて影の羽根は水面に溶け込むように消えた。

謎に満ちた演出と、最高のパフォーマンスで彩られたライブ。その真の意図は、DAY2の向こうに見えるのだろうか。「シャイニーカラーズ」について考えることは喜びである。

THE IDOLM@STER SHINY COLORS 5thLIVE If I_wings. DAY1
2023.03.18 国立代々木競技場 第一体育館

<セットリスト>
M01:一閃は君が導く(放課後クライマックスガールズ)
M02:Give me some more…(アルストロメリア)
M03:Overdrive Emotion(ストレイライト)
M04:Catch the Breeze(ノクチル)
M05:浮動性イノセンス(アンティーカ)
M06:Bouncy Girl(シーズ)
M07:イルミネイトコンサート(イルミネーションスターズ)
M08:バベルシティ・グレイス(アンティーカ)
M09:Hide & Attack(ストレイライト)
M10:キャットスクワッド(放課後クライマックスガールズ)
M11:Fashionable(シーズ)
M12:いつだって僕らは(ノクチル)
M13:Anniversary(アルストロメリア)
M14:拝啓タイムカプセル(放課後クライマックスガールズ)
M15:FELICE(イルミネーションスターズ)
M16:Black Reverie(アンティーカ)
M17:PRISISM(イルミネーションスターズ)
M18:Tracing Defender(ストレイライト)
M19:Fly and Fly(シーズ)
M20:VERY BERRY LOVE(アルストロメリア)
M21:今しかない瞬間を(ノクチル)
M22:アスファルトを鳴らして(ノクチル)
M23:夢咲きAfter school(放課後クライマックスガールズ)
M24:愚者の独白(アンティーカ)
M25:OH MY GOD(シーズ)
M26:Wandering Dream Chaser(ストレイライト)
M27:ダブル・イフェクト(アルストロメリア)
M28:Twinkle way(イルミネーションスターズ)
M29:Resonance+(シャイニ―カラーズ)
M30:いつか Shiny Days(シャイニーカラーズ)
M31:Multicolored Sky(シャイニーカラーズ)

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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