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INTERVIEW

2023.03.28

【連載】テクノロイド 徹底解剖! ~MUSIC LABO~ 最終回:TVアニメ『テクノロイド オーバーマインド』KNoCC 撮りおろしインタビュー

【連載】テクノロイド 徹底解剖! ~MUSIC LABO~ 最終回:TVアニメ『テクノロイド オーバーマインド』KNoCC 撮りおろしインタビュー

ここまで「kokoro」を育ててきたからこそ歌えた楽曲たち

――ゲームをやってきたプレイヤー(ドクター)としては、アニメで色々と新鮮な関係性なども見られていますが、特に印象的なことは「エソラが楽曲を作り始める」ということです。ゲームではSTAND-ALONEの楽曲を作るクリエイターとして描かれてもいましたが、「ここからだったのか!」と。それもあってゲームで歌っている楽曲とも違った印象をアニメで歌う楽曲から感じていらっしゃることと思います。エソラの曲の印象はいかがですか?

峯田 エソラがKNoCCと一緒に見てきた景色や温度感をそのまま投影しているな、と感じられる曲ですよね。その話数ごとに感じたものがあるはずなんですけど、それを元にエソラが感じたまま音楽にしたものをKNoCCが歌うんです。それが1つのパッケージになっている、というイメージがあります。

 エソラ自身の青臭さも曲で表現されているので、だからこそKNoCCの4人もその青臭さと同じ温度感で歌えて、表現ができているというか。意外と掘り下げていくと、歌詞や曲調についてもその辺りを意識していらっしゃると伺って。アニメ放送の回を重ねるごとにエソラとしても作曲者として成長していく部分を感じていただけるのではないかと思いましたね。

峯田 エソラ自身が最初に作ったのは第3話の「願いのチカラ」です。あれもRUCCAさんがおっしゃるには、わざと稚拙にして初めて感を出して作った曲なんだそうです。そういうこともわかりやすくできていますし、話数を重ねていくごとに曲も洗練されていく。第7話の「ELSE」がある種の集大成だけれど、STAND-ALONEに負けてしまって。そういう流れもあって、初めて“負け”を知ったんですよね。

kayto これは僕の想像なのですが、アニメの曲はゲームに比べてサビに「サビ感」がない曲が多いんです。特に第6話の「ライクメッセージ」と、第7話の「ELSE」 はさらっとサビに入る。これってKNoCCやエソラの、アンドロイドと人間の境界線をなくしたい気持ちの表れとして作っているんだとしたら、めちゃめちゃエモいなって思っているんです。もちろん僕がただそう感じているだけですけど。

 kaytoのアーティスト脳の言うことだから。俺は信じる!

峯田 カバーもしてるもんね。

渋谷 エソラ自身がKNoCCと関わって成長しているところが曲の中ですごく表されていますよね。だからこそ歌っている僕らも気持ちが入っていくし、エソラが周囲の状況やKNoCCのことを考えて作ってくれたんだなってことが曲調からもわかったので、感情はもちろんのことエソラへの想いも自然と入っているのではないかなって思います。

峯田 第5話の「So Long&Lomg For」は特に。いつもならライブパートが差し込まれてくるけれど、挿入歌として流れましたから。

渋谷 特殊エンディングでしたからね。物語からさらっと曲が続いて終わったので、あれはすごく良かったです。

峯田 アフレコの(資料)VTRを観たときから、もうダメでした。

kayto 収録前に控室でみんな「ついに第5話だね……」っていう、ちょっと暗い空気が流れていたよね。

 命の在り方みたいなものは「テクノロイド」の物語の中でも大きなフックになっている要素の1つだと思っているので、そこに踏み込んだ話数でもありましたよね。とにかく終盤に進むなかでどんどん物語も動いていきましたし。この記事が公開されているタイミングでは、皆さんクライマックス近くまで見ているんですよね。最終話付近まで見てきて、どう思ったのかが知りたいです。

――そんな10年前の世界でしたが、アニメで歌った楽曲で特に思い入れの強い曲とその理由を教えてください。

渋谷 さっきも出ましたが、第5話のクロムとノラの回で歌った「So Long&Long For」です。『テクノロイド』としてはほぼ初めてのバラード曲でしたし、アンドロイドとして歌うバラードって何だろうなって考えたときに、テクニックだけでは無理なバラードをアンドロイドとして、人間のものとは違うけれど揺らぐ心を表現しつつ歌いました。クロム回はクロムの感情の発露が一番大きい回でもあったし、そのクロムが出した解は「わからない」というものだったので、それを考えたクロムはどう歌うんだろうな……と考えながら歌いましたし、自分の中では思い入れ深い曲になりました。

 僕はやっぱり「LOVE NO HATE」です。OP曲としての存在感もそうですし、なぜこの曲がオープニングなのか、というのが最後まで見るとわかる内容にもなっているんですね。それに彼らの心の底からの叫びというか、訴えかけるものが感情としても歌詞としても乗せられていて。この曲の真の意味を、最後まで見て感じてもらいたいです。ちょうどこのインタビューをご覧の皆さんは、アニメで裏コバルトが出てきている頃かと思うのですが、僕自身そのコバルトを演じることがすごくキツかったんですね。そこが人間とアンドロイドの違いでもあるけど、その先の最終話が本当に好きなので、ぜひ見守ってもらいたいです。

峯田 僕は「インヴィジブル -one heart-」です。今、浦くんが話をした最終話で、この曲も大きな意味を果たすと思うんです。ずっと流れてきたエンディングだけど、物語と一緒に育ってきていると思うんです。最後の最後に押し寄せるその意味を受け取ってもらいたいですし、注目しながら聴いてもらいたいです。

kayto 僕は「IDempty」ですね。ゲームとアニメ、どちらでも歌われていますし、ある意味『テクノロイド』のロードマップ的な曲になっているような印象もあって。特に2番の歌詞が、アニメやYouTubeで聴ける部分のあとのところにすごく想いが込められているような気がするんです。KNoCCのボルテージも、この曲はすごく特殊な気がしていて。この曲を録った頃の僕らのKNoCCへの理解度はまだ歩き始めたばかりだったんですよね。4声あって3人はハモりパートみたいな感じですが、当時の不慣れな感じで歌っているのがアンドロイドという設定とリンクしていますし、奇跡的なバランスで完成されていてすごく好きです。

考えさせられた人間とアンドロイドの境界線

――そういった楽曲と共に紡いできたエピソードでしたが、皆さんにとって印象的なエピソードを教えてください。

kayto 第8話で「Can you beat that」を歌ったときって、KNoCCが4人以外の存在と初めて音を奏でて、リッツ9号たちとセッションという形で歌うんです。これって第7話までに色んな人と出会って成長していなければ、そうしなかったであろう彼らの成長の集大成的なものとして生まれている気がして。個人的に台本を読んで、映像を見たときにすごく感動して……「ここまで歩いてきたんだな」と感じました。

峯田 やっぱり第10話です。ここで(エソラの父である芝浦)白秋のエゴみたいなものが鬼のように出てきて、人間の醜さや何かを成し遂げたいという気持ちが合わさっていく様子は印象に深く残っています。

 やっぱりあれは人間の業だよね。人間じゃなければ抱かなかった感情だろうし。

渋谷 天才がああなってしまったらもう止められないよね。力があるから全部できてしまうしね。

峯田 そこは自分としても心が震えた回でした。

渋谷 それでいくと僕にとっても第10話です。人間の頃のKNoCCが出てきて、白秋に集められた彼らはエソラを育てている、という話で。元々僕たちはアンドロイドとしてお芝居をしてきたわけですけど、そこには元となる人間がいて、アンドロイドは彼らのコピーだった。オリジナルとアンドロイドとで、変わらないけれど絶対に違うところはあるわけで。そこを考えてお芝居をしたのですが、人間のみんなが出てきた回は思い入れ深いです。

 僕は話数でいうと「ELSE」を歌った第7話です。アフレコの素材をもらったときから「これはとんでもない回になるな」というのは感じていて。素材の状態でもだいぶ暴力的だし、虐げられるシーンが結構生々しく描かれていたからこそ、僕もよりリアルにコバルトの感情を演じることができたんです。しかもどうにかしたいけどどうにもできない状況、というのが本当にもどかしくて。でも、それは結局彼らを人と同等と捉えているからこそ生まれる感情でもあって。例えば、路傍の石など買い替えればいいものといった自分にとって価値のないものに対してはそこまでの感情を抱かないと思うんです。彼らはアンドロイドとして生きてきて、それを大切だと思っているからこそあの感情は生まれて、そこに僕らも共感できるからこそできた芝居だった。あの回が一番「人間とアンドロイドの違いってなんだろう」と心の在り方も存在としても、どこからが境界線なのかをすごく考えました。僕らは彼らアンドロイドを人と同等と捉えて見ていたけれど、あの瞬間に「人ではないし、同等でもない」と現実として突きつけられました。問題提起ではないですが、人の心に訴えかける内容だったと思います。

――いよいよ最終回。期待してほしいことや意気込みをお聞かせください。

峯田  今、ぐちゃぐちゃの感情を抱いていらっしゃる方は少なくないと思います。でも、その感情の先にまた違う感情が攻めてくると思います。ぐちゃぐちゃを全部失くすくらいの新たな衝撃がありますし、期待してもらって大丈夫だと自負しております。

渋谷 最終話は本当に濃密なものになっています。1秒たりとも見逃さずに楽しんでもらいたいです。ここまでの時間があってこその第12話です。ぜひそこは見てもらいたいです。

kayto 第11話までで抱えてきた「どうなるんだろう」という色々な感情が渦巻いている状況をリセットせずに、1本の線として見ていただきたいです。みんなも1本の線としての物語の上を歩いているので、その目線で受け取ってもらえたら、ちゃんと答えに辿り着くと思います。

 ちなみに僕は、受け取ったアフレコ素材を見ただけで泣きました。

峯田 そしてエソラ役の睦心さんは僕たちに会っただけで泣きました。

一同 (爆笑)。

 「(最終話のアフレコは)もう終わったの?」って言いながら泣いていました。

kayto 箱ティッシュみたいなものを持ってブースに入っていかれました(笑)。

峯田 それくらいの大きな想いを感じて、嬉しかったよね。

アニメで出会ってまだゲームが未着手なら、絶対に“やったほうがいい”!

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