INTERVIEW
2023.03.10
近未来――飽和状態となったHIPHOPカルチャーから新たなムーブメント“幻影ライブ”が誕生し、華麗なステージに若者は熱狂した。突如復活した伝説のクラブ・CLUB paradoxで開催された「Paradox Live」(以下、パラライ)で激突するBAE、The Cat’s Whiskers、cozmez、悪漢奴等の白熱のステージバトルは世界からの注目を集める。2020年にスタートしたCDシリーズ「Paradox Live」でThe Cat’s Whiskers(TCW)のリーダーである西門直明を演じてきた竹内良太が、その「パラライ」の舞台化作品である「Paradox Live on Stage vol.2」(パラステ)でも西門を演じることが発表され、話題に。そんな竹内にTCW、そしてパラステへの想いを聞く。
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
――2020年からスタートした「Paradox Live」ですが、TCWのメンバーとなってから今日まで過ごされた率直な印象をお聞かせください。
竹内良太 「パラライ」自体はステージバトルを経てチームが成長していく物語でもあるので、同じチームで3年間ずっと一緒に切磋琢磨して、キャスト陣でも話し合いながら成長していける機会はなかなかないなと思っていて。西門さんという立ち位置が、アニメやドラマCDと違って一発でドーン!とお芝居をするのではなく、どんどん積み重ねていって今のTCWとして歌うことができるのは、唯一無二のコンテンツだなと思いながら日々を過ごしています。
――勝ち負けによって、歌う際の心持ちも変わってきますしね。
竹内 それこそこれだけ「勝ちたい」と貪欲になれる作品もなかなかに少ないなと思っていて。ストーリーにも関わってきますし、フックやバースでの言葉の意味合いや熱量も変わってくるし。そう思うと、先がどういう物語になっていくのかが想像できないから楽しくもあり、燃えますよね(笑)。
――新チームが入ってきたことによる新たなステージバトル「Road to Legend」では1Nm8との絡みがあり、西門さんも思うところがある、という発言に繋がっていきました。これまでとはまた違った、新鮮な西門さんが見られたようにも感じます。
竹内 西門さんの燃えるようなセリフはここまでそれほどなくて。みんなを守っていこう、この4人を、居場所であるバーを守っていこうというセリフが多かったぶん、自分が思っていることを初めて熱く言葉として出したのが1Nm8との出会いでしたし、そんなボイスドラマだと思ったので、お芝居もすごく熱くなるし、だんだんと西門と神林匋平というTCWの大人組もどんどん前に出始めて、力強くなってきましたし、より攻撃的に、貪欲に、勝ちにこだわりだしたところは1つの変化として楽しくなってきました。
――初めの頃は闇堂四季、棗 リュウというTCWの年少組が物語を動かしているところもありましたからね。
竹内 子供たちの暗い過去や悲痛な過去を大人組は包み込んで、守って、という家族構成のようになっていましたが、リュウくんの悲痛な過去について1Nm8と出会ったことで知ることができたので。僕は四季が心配だし、匋平はリュウくんを気にかけているところもあって、お互いに大切なところを改めて感じさせてもらいました。これから物語がどうなっていくのか、トーナメントに勝ったり負けたりしたときにどうなっていくのかな、というのは楽しみですね。
――HIP HOPを始めて3年でもあります。歌についてはいかがですか?
竹内 ジャジーなグルーヴ感を大事にするTCWですが、それこそ「Master of Music」からステージバトルの曲を出すにつれて、TCWもメロディアスなところから歌詞も含めてどんどん前に進んできていて。前にしか進まない、むしろ攻撃的にもなってきているというか……そこでの微妙な変化が楽しいです。ほかのチームに比べて一発目の大きなアクションはないのですが、だんだんと燃え上がっていく炎のような、今だからこそトーナメントで一勝できたところでの曲調からも各キャラクターのモチベーションのわかる熱い言葉でラップできているのが個人的には胸アツです。最初は西門さんも静かな感じでゆっくりと言葉を紡いでいたものが、だんだんと言葉にも圧が出ましたし、韻を踏むところでもグッと言葉に力を込めて、仲間のための熱い想いを表に出せるようになってきたのが、僕としては「待ってました!西門さん!」という感覚です。
――クリエイターさんのお話を伺っていると「レコーディングのときにコトノハさんが……」(※西門のMCネーム)といった言葉が出てくるのもあって、TCWというヒップホップチームに楽曲を提供している、という自負が伝わってきます。
竹内 MCネームで呼んでくださるんですよね。歌詞を書いてくださったSIMONさんが実際に来て歌唱指導もしてくださるんですけど、その状態からすでに熱くて。僕たちよりももっと役を理解しているんじゃないかと思うくらいに、言葉の妙だったり、ラップの仕方もそうですし。TCWは“孤高の四天王”と言われるくらい4人のスキルも高いですし、色も個性も違うので、各個性の出し方や歌い方も緻密に「ここは半拍ズラして」など細かいところまで追求してくださるので、僕らはすごく助かりますし、安心して委ねられるんです。みんな「パラライ」のことが好きなんだな、と伝わってきます。
――そんな「パラライ」が舞台に。
竹内 きた!
――実際にSTAGEをご覧になった感想をお聞かせください。
竹内 実は実際のステージは拝見できなかったのですが、Blu-rayで「on Stage」と「THE LIVE」を観させてもらいました。今度アニメがスタートするものの、僕らはボイスドラマでしかお芝居をする機会はなかったのですが、舞台ではキャラクターが実際に立ち上がっているところを目の当たりにすることになって。特に幻影ライブで、あのキャラクターが立体的に動くと手の動きや表情はこんなふうに見えているんだな、という目線で見てしまいました。すごく自分の役が深まっていくというか。声優の技術的な面で処理してきたものを、身振り手振り、誰かと目線を合わせる、といった基本的なお芝居の中で見ると、とても素敵なステージだなって感じました。
――ご自身がCDシリーズで演じている西門を、そんな動きを持ってのお芝居で見せることとなりました。出演が決まった際のお気持ちをお聞かせください。
竹内 竹内、正直驚きました(笑)。本当に僕でいいの?というのが本音で。2回目の「Dope Show」のときに制作の方が観に来てくださって、「西門さんは竹内さんでしょう」というお話からオファーがありまして。お話は嬉しかったのですが、自分は20年くらい舞台を踏んでいなくて、声優をやってきているぶん芝居で動けるのだろうか、と驚きと共に不安の
ほうが強くて。「on Stage」で出来上がっているカンパニーの中に新しく入るときに、パラステの世界を崩したくないと緊張も強かったのですが、「Dope Show」を見て僕に決めてくださるということは、それだけショーの中で竹内の演じる西門さんを感じていただけたということなので、その期待に応えられるように頑張っていこう、と今に至ります。キャストの皆さまはみんな本当に良い人たちで。とても良くしていただきながら、ああでもない、こうでもないと稽古期間をずっと同じメンバーで過ごして、だんだんとチームとしてのTCWもできてきて、それにつれて緊張も楽しみに変わっていって。今はひたすらに本番が楽しみだなという気持ちです。
――声優さんの中には朗読劇やライブパフォーマンスの機会になると、声のお芝居だけではなく、役を憑依させるようにパフォーマンスされる方もいらっしゃいます。竹内さんはそういったタイプであるという印象なので、舞台に立たれたときにそれほど違和がないのではないかと思うのですが。
竹内 そうかぁ、なるほど。竹内の中では「Dope Show」もそうですが、西門さんと同時に脚色をしようとする竹内が半々くらいの割合でいるんです。来てくれたヘッズの皆さまを盛り上げたい竹内と、やはりTCWだからと西門さんでいようとする自分とがせめぎ合っているところが結構あって。今回のパラステに関しては、「パラライ」の世界しかないから、そこに竹内がいてはいけない!と思うんです。時々稽古中でも、自分の歌入りのときにどうしてもお客さんを盛り上げたくて竹内が出てきてしまうんです(笑)。この身振りは竹内だ!西門さんはやらないだろう、という葛藤みたいなものが竹内の中にすごくあって。だんだんと盛り上がっていくと、“楽しみたい竹内”が出てきちゃうから、ぐっと抑えるのに最近はすごく苦労しています。「出ていけ!竹内!」みたいになっていますね(笑)。西門さんで立ちたいから、その竹内を抑えながら立っています。西門さんは竹内とは性格だったり、生き方だったりも違っていて、似ているところも少ないですから。本番ではずっと西門さんでいられたらいいな、と思いながら日々の稽古に勤しんでいます。
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