スピラ・スピカ(以下、スピスピ)の幹葉が、自身の憧れの人物に直接会いに行き、その人たちから様々な話を聞く対談形式の連載企画「幹葉の森 おしゃべりルーム」がリスアニ!でスタート!持ち前の太陽のような明るさで聴く人の心に寄り添い勇気づける楽曲への共感や、その楽しさとハッピーが溢れるライブが話題となっているスピスピ。新体制となった今はバラエティ方面でも活躍中だ。
様々なフィールドに活躍の場を広げる幹葉にとって“憧れの存在であり、目標であるエンターテイナー”オーイシマサヨシが「幹葉の森 おしゃべりルーム」第1回目のゲスト。ご存知、“アニソン界のおしゃべりクソ眼鏡&おしゃべりクソ娘”コンビである。
それだけに、先輩・後輩という関係性でありながら、ときにはお互いがインタビューイー&インタビュアーとなったり、ボケ・ツッコミにまわったりと、和やかなムードのなかで自然と会話が弾んでいく。2人のルーツや意外な共通点が明らかになるなかで、オーイシが大きな森に旅立つ幹葉に道標を照らしてくれた。
INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ
PHOTOGRAPHY BY 堀内彩香
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──「幹葉の森」は幹葉さんが憧れの方に会いに行くという企画です。記念すべき第1回は、オーイシさんにぜひお話をお伺いしたいと。
幹葉 1回目からあらゆることを吸収し、学びたいと思っております!今日はオーイシさんに聞きたいことがたくさんあって……時間が足りるかどうか。
オーイシマサヨシ 時間は気にしなくていいから、なんでも聞いてよ。でもさ、“憧れの方”って何!?(笑)。大切な連載第1回目に、なんで俺なん?ゲストのチョイス間違ってますよ。まずはそこから話したいんですけど(笑)。
幹葉 いやいや、私の中でオーイシさんは憧れの方なんです!
──ではその理由を探るために、さかのぼってお二人の出会いをお伺いできればと。
オーイシ 覚えてます?
幹葉 私は覚えてます!
オーイシ 実は僕、覚えてないんですよ。
幹葉 ええと、出会いは2019年になります。その年の夏、スピスピが初めて“Animelo Summer Live”(以下、アニサマ)に出演させてもらったんです。出演日が一緒だったのでそこでもお会いしているのですが、その前に、オーイシさんがMCを務められていた「アニソンラバーズ」(アニソンバラエティ番組)のアニサマ特集でインタビューをしていただいたのが最初です。さらに「アニソンラバーズ」の収録にもお邪魔させていただき、MCの芹澤 優(i☆Ris)さんとDIALOGUE+のメンバーのお二人とゲームをするっていう。
オーイシ うわ、懐かしい!最初に会ったときに「とんでもないやつがアニソン界にきたな」と思った。最近は「アニソン界のおしゃべりクソ娘」だもんね。
幹葉 はい!ファンの方が呼んでくださっていて。
オーイシ この間、地上波でも使ってたでしょ?(笑)。
幹葉 あ、バレてました?(笑)。
オーイシ うん(笑)。嬉しいですよ。出会った当時から元気なイメージと、しゃべりだしたら止まらないイメージがあったので。それこそ「アニソンラバーズ」にゲストで来ていただいたときも「どこまでいくねん、この子は」と。それくらい元気な子がきたと思ったんです、けど。
幹葉 えっ、けど!?
オーイシ 後日、繊細なところも持っている子なんだなと思ったんですよね。その二面性に気づいたのは、“アニサマ”当日。舞台裏での幹葉ちゃんが、すごく暗かったんです。「え、あの元気ないん!?」「もしかして作られたタイプのおしゃべり、ケミカルやったん!?」と一瞬思って。
幹葉 ケミカル!(爆笑)。あのときはめちゃくちゃ緊張していたんです。
オーイシ そう。実際「とにかくすごく緊張している」と言っていて。さいたまスーパーアリーナという大きな舞台、しかも“アニサマ”。何を言おうか、どんなパフォーマンスをすればいいか、ずっと頭の中で反芻している様子で、ほかの人としゃべっている余裕がないんだろうなと。それで、この子はド天然の、人間くさい女の子なんだなと思ったんですよね。それでめちゃくちゃ好きになったんです。
幹葉 ありがとうございます。あのときは本当にガチガチになっていて(苦笑)。今でこそイベント会場で「久しぶり」と言える友達が増えてきたんですけど、当時は私たちのことを知っている人が誰もいない状態での出演だったので、気軽に話せる人がまだあまりいなくて。そんな私たちにオーイシさんが話しかけてくれて、その日の支えになりました。
オーイシ しかもその日のステージが素晴らしかったんですよ。アニソンファンにも刺さっていたと思うし、ツイートでも「おしゃべりクソメガネの後釜がきた」という意見を散見しました。で、好きだけど、急にライバル心が……(笑)。
幹葉 ライバルに思っていただけるのはすごく光栄です!(笑)
オーイシ そういう意味でも良き後輩という感じがしています。
幹葉 会ったときから、とても頼りにさせてもらっている大先輩です。もうそれは憧れてしまいますよ。だから1回目に会いに来ました!
オーイシ まとめが上手い(笑)。
──お二人は共通点も多いんですよね?
オーイシ 愛媛、徳島と、お互い四国出身なんだよね。
幹葉 そうなんです。そして、ジュビロ磐田の楽曲をお互い歌っていて。オーイシさんは2003年でしたよね。
オーイシ そう。イメージソングを歌わせてもらっていました。
幹葉 実はほかにもたくさん共通点があるんです。折角の機会なので、私のこともオーイシさんに知っていただきたいなと思って、お話できたらと思うのですが……。
オーイシ なになに?
幹葉 まずはですね、幼少期はお互い四国で育ち、大学で関西に出て、そこでバンドを組んで、インディーズ時代を過ごし……。
オーイシ え、一緒じゃん!
幹葉 そうなの!そうなのよ!
オーイシ 共通点見つけた途端にタメ口!(笑)。いや、全然嬉しいんだけど。当時ってバンド活動は本格的にやってたの?
幹葉 そうですね。関西から機材車に乗って東京にも来ていました。夜に出発して朝に着いて、それまで銭湯とかでみんなで過ごして、雑魚寝して……。
オーイシ え、すごい。いや、僕ならわかるし、女性でもそういう方はいるけども、勝手がまた違うと思うから。想像以上に下積み時代があったんだ。
幹葉 ちゃっかり(笑)。
オーイシ ちゃっかりって(笑)。いや、びっくりした。というのも、アニソン界でのスピスピのデビューって鮮烈なイメージだったから。アニメファンの方の中には「スピラ・スピカの女の子ってオーディションで決まったのかな?」と考えられていた人もいるんじゃないかなと。もしくは、下積みはない状態でのデビューだったのかな、とか。でもちゃんとバンドマン時代があったんだ。僕も下積みが長かったですから。
幹葉 当時は働きながら活動されていたんですよね。
オーイシ そう、アルバイトしてました。
幹葉 ピザ屋ですよね。実は私もピザ屋で4年間働いていたんですよ。
オーイシ そういう共通点もあったとは(笑)。
幹葉 私の場合は就活もして一度就職もしていたんです。だからアニソン界でいくとデビューは遅いほうで。それで「突然現れた」と思ってくださる方が多いのかもしれない。
オーイシ たしかにそうかもしれない。それとインパクトが強かったから。
幹葉 インパクト、ですか?
オーイシ アニソン界にスピラ・スピカという存在が浸透するのがめちゃくちゃ早かった。人気コンテンツの楽曲を歌っていることもあるんだけど、やっぱりキャラクター勝ちしていたから。
幹葉 オーイシさんは最初はロックのフィールドで活躍されて、アニソン界に入っていったわけじゃないですか。そこも一緒なんです。ただ、私はインディーズ時代はかっこつけたがりだったんですよ(苦笑)。
オーイシ え?そうなの?
幹葉 はい。昔はかっこつけたかったのでMCをしなかったんです。
オーイシ こんなにいつも宝物のようなMCをするのに?
幹葉 ありがとうございます。当時はまったくしゃべっていなくて、告知もせず曲名だけ言ってました。あと、女性ボーカルが一度は通るであろう、裸足でのパフォーマンスをしていました。
オーイシ えっ幹葉ちゃんが!?意外!
幹葉 でも意外とステージって裸足で歩くと危なくて(苦笑)。それに気づいてすぐに辞めました。
オーイシ 幹葉ちゃんにもそういう時代があったんだね。
幹葉 だからインディーズ時代は踊るということも考えられなくて。オーイシさんは昔の自分だったら、踊ることって考えられました?
オーイシ いや、バリバリのバンドマン時代の自分だったら考えられなかったと思う。
幹葉 でもカタカナ名義のオーイシさんのときは特にエンターテインメントに振り切っている印象があるんですが、すぐに気持ちの切り替えはできたんですか?
オーイシ 切り替えはすぐにできたかな。そもそも今はアニソンが市民権を得て、1つのカルチャーになっているので、ファンの方も裾野が広がっていると思うんですけど、当時はまた違っていて。音楽だけで勝負しているバンドマンに囲まれて育って、そこからアニソンのステージに進むときって難しさもあると思うんだけど……でも気持ちの切り替えは早かった。そもそもシンガーソングライターをやっていた時期は、鳴かず飛ばず感があったんですよ。だからアニソンを歌わせていただくと決まったときは、「生まれ変わるチャンスだ」と思ったし、元々アニメが大好きだったから、モチベーション高くその世界に入れました。ただ、正直に言うと元のファンの方の反応は気になってたかな。10年以上応援していたバンドのボーカルが、私たちが知らないところに舵を切った、遠いところに行っちゃった、といった声が実際に届いてましたから。でもその気持ちもわかるから、僕は名義を分けたんですよ。今までの活動は漢字名義、アニソンやゲームの活動はカタカナ名義。名義分けすることで、自分の中で整合性を保ってきたという感じです。
幹葉 以前、大石昌良名義のライブを観てびっくりしました。
オーイシ アニソンでやっているときとはまた違うもんね。
幹葉 そのときはイベントで、堂島孝平さんと一緒のライブだったんですけど、私からすると「オーイシさーん!」「わーっ!」って慕われている大先輩のオーイシさんしか知らなかったので、後輩・大石昌良さんの姿を見てしまった気がして。
オーイシ かわいかったでしょ?(笑)。結構ね、かわいいところあるのよ!
幹葉 親戚のおばちゃんみたいな気持ちになってしまいました。ステージングはもちろんかっこ良かったんですけど、ライブの作り方がこんなにも違うんだなと驚きました。(エアギターをしながら)ぺんぺんぺんって!
オーイシ アコギをペンペンしていましたね。スラム奏法とかスラップギターとかって言いますけどね(笑)。アニソンと名義を変えているからこそ、別のことをやりたいという気持ちがあるんですよ。もちろんオーイシ名義で作った曲は歌うんですけど、アニソンでは歌っていない曲もやっているので。その辺りで自分のアイデンティティを保っているかな。昔ね、バンドデビューしたときに、周りの人たちに「器用貧乏」ってよく言われてたんです。「なんでもできるけど、なんでもできる止まりやな」って。その自覚もあったの。作詞・作曲・アレンジもするし、歌もギターもできるけど、でも頭一個抜けない。それを解消してくれたのが、僕にとってはアニソンだった。自分の器用さがなぜ貧乏なのかと今考えると、とっちらかってたんだと思う。その器用さをフォルダごとに分けたら、急に貧乏じゃなくなった。その方法を教えてくれたのがTom-H@ckという相方だったんです。
幹葉 そうか、OxTの活動もありますもんね。
オーイシ Tomくんはプロデューサーとしての視点もあるから、なぜ僕が器用貧乏なのかも理解していて。「こういうふうに振り分けたらどうですか」と教えてくれたり、一緒にライブをしながら学んでいったりとかして、今の自分が成り立ってる。
幹葉 器用富豪に……!
オーイシ 器用富豪(笑)。でもそうですね。僕、世の中の器用貧乏の人に伝えたいんですよ。それはすごいアドバンテージだよって。最高の褒め言葉だと思う。ただ、整理をする能力がないだけ。でもその一歩手前まできてる。
幹葉 でも今はその器用さが発揮されているのは音楽面だけではないじゃないですか。バラエティやCM、ドラマ、MC……。
──フォルダがたくさんある。
幹葉 そのフォルダってどうすればできるんですか?購入するんですか?
オーイシ 富豪ってそういう意味じゃないから!(笑)。でもその質問に応えるとしたら……幹葉ちゃんも一緒だと思うんだけど、知らない世界に飛び込む勇気を持つと、世界も仕事も広がっていくじゃない。幹葉ちゃんはバラエティ番組のアシスタントをしたり、ラジオをしたりと、色々なことをやっていて。僕は自分自身のそういう未来は想像してなかった。ただ、お声がけいただいたことに対して、一生懸命勉強してやっていたら、仕事の幅が広がっていって。だから自分的には、飛び込む勇気と誠実ささえあれば、いくらでも広がっていくんじゃないかなと。
幹葉 私はオーイシさんが番組にいらっしゃると安心感がすごいんです。「なんとかしてくれる」、しかも「面白くしてくれるだろう」っていう安心感があるけん。だからオーイシさんの番組に出たいなと思うし、憧れます。私に限らず、皆さんそうだと思います。
オーイシ そんなふうに思われてるんだ。頑張らないと。でもさ、幹葉ちゃんも一緒じゃないかな。幹葉ちゃんがいるから、ゲストに来たいと思うような人も多いと思う。
幹葉 いや、私はまだまだで、今はまだ先輩方のお力を借りています。バラエティ番組はまだアシスタントの、ちょこんとした存在です。でもゆくゆくはまわしていける人になりたいですし、オーイシさんのように、ゲストの方が幸せな気持ちで帰れるような空間を作っていきたい。だから本当は今日も、そういう場所にしたいんです。オーイシさんにも「楽しかったなぁ」って思われるような……。
オーイシ 楽しかったなぁ、と思ってるよ。まだ終わってはないけど(笑)。
幹葉 まだまだ続きます!(笑)でも、どうやったらオーイシさんのように、相手を幸せな気持ちにさせられるんだろうなって。
オーイシ なるほど。例えばラジオ番組にゲストの方を迎えるときって、幹葉ちゃんはどんなことを心がけているの?
幹葉 ゲストの方について事前にめちゃくちゃ勉強して。そしてファンの方と同じ目線で、気になったことなどを聞いていくんですけども。
オーイシ 偉い!それは伸びるよ。伸びしろしかない。
──先ほどオーイシさんがおっしゃった誠実さをまさに感じると言うか。
オーイシ うん、誠実だなぁと思います。でもその先もっと忙しくなると、時間がなくなってくると思うのね。逆に知らないことも武器にして良いのかなと、個人的には思うけどね。知ったかぶらずに、話を引き出していけたらいいのかなと。あとは話の間も大切。往年のMCの方がそうなんだけども、自分が喋っていない時間のほうが長いんだよね。声が入らないように相槌だけを打っている方も中にはいらっしゃる。すごく上手いなぁと思う。だから間を楽しめるようになったら良いのかなと。僕もあるんだけど、無音状態って怖くない?
幹葉 そうなんです。ライブのMCで「おしゃべりだね」と言われるようになった理由の1つに、間が怖いから、というのがあるんです。とにかくしゃべらないと!ってやっているうちにそれを楽しんでもらえるようになったんです。
オーイシ そのドタバタ感が幹葉スタイルだと思うし、それは良さかもしれないね。でも疲れるよね。だってMCが休憩じゃないじゃない?もう1曲分くらいのエネルギーがある。僕も「次の曲いきます」ってときにはゼエゼエしてることも(笑)。でもお客さんはおしゃべりで畳み掛けなくても、意外と許してくれるんだよね。信頼を寄せると余裕が生まれるというか、息が詰まらないかも。
幹葉 私の場合、MCは方言に助けられているのかもしれません。時々「おばあちゃんを思い出す」って言われるんですよ(笑)。オーイシさんは方言が出ることはないですか?
オーイシ これが出ないんですよ。
幹葉 “まーくん”になっても?
オーイシ 実家でも出ない(笑)。みんなチャキチャキの愛媛弁だけどね。一度関西に出てるから、関西弁に染まってた時期があって、瞬発力のある言葉はMCで出ることがあるけど。でも普段は標準語っぽく喋ってると思う。
幹葉 標準語は難しい……!
オーイシ いや、標準語の幹葉なんて聞きたない!
一同 (笑)。
幹葉 この間、ラジオドラマに出演させてもらったんです。私は標準語でしゃべっているつもりだったんですけど、イントネーションが絶妙に違うんですよね。標準語にすることに一番時間が掛かってしまいました。
オーイシ そういうこともやってるんだね。声優さんと同じようなことというか。
幹葉 声を使える場所があるなら、なんでも挑戦していきたいなと思っていて。バンドが1人体制になったので、身軽に何にでも挑戦できる環境になって。それもオーイシさんと近い状況だと思っています。だから、目指すはオーイシさんなんです!
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