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INTERVIEW

2023.03.02

TVアニメ『ノケモノたちの夜』で初のアニメ主題歌を担当!2ndフルアルバム『Eye』のリリースを控えるHakubiに楽曲への思いを聞く

TVアニメ『ノケモノたちの夜』で初のアニメ主題歌を担当!2ndフルアルバム『Eye』のリリースを控えるHakubiに楽曲への思いを聞く

2017年結成の京都発スリーピースバンド・Hakubi。孤独感を、寂しさを感じながらも希望へと手を伸ばすその世界観と、ライブでの泥臭いほど熱いパフォーマンスは多くの音楽ファンの心を掴み、京都の先輩バンド・10-FEETの「京都大作戦」やROTTENGRAFFTYの「ポルノ超特急」をはじめ、数多くの大型フェスにも出演し話題をさらってきた。そんなHakubiが初めてのTVアニメタイアップ曲となった「Rewrite」を含む全10曲収録のアルバム『Eye』をリリースする。そんなHakubiの名をアニメファンへと知らしめた「Rewrite」の話を中心にバンドのこと、そしてアニメへの想いを、片桐(Vo./Gt.)、ヤスカワアル(Ba.)、マツイユウキ(Dr.)の3人に聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

京都のバンドとして、音楽で京都に恩返しをしたい

――リスアニ!初登場のHakubiですが、2017年の結成から現在に至るまでの時間の中で印象的だった出来事を教えてください。

片桐 今、6年目になるのですが、はじまりはマツイくんとわたしの出会いからでした。大学で出会って、コピーバンドを結成したのですが、コピーバンドからオリジナルバンドになっていこうというところで当時のベースが教職を目指していたので新たなメンバーを探していたときに出会ったのがヤスカワくんでした。そんななかで印象的だったのは、オリジナルバンドとしての最初のライブをどこでやろうか、と迷っていたときにマツイくんがバイトしていた京都MUSEというライブハウスのイベントに出演をさせてもらったことです。初めてのライブを京都MUSEでやらせてもらったのが2017年8月10日なのですが、それから何度も何度も京都MUSEのステージに立たせてもらってきましたし、CDを出すときにも京都MUSEが手伝ってくれましたし、今も変わらずマネジメントとしても関わってくださっているんですね。インディーズの頃からメジャーとなった今も一緒に戦ってくれる人たちと出会えたことはHakubiにとって重要なことですね。京都のバンドとしてちゃんと基盤が作れたし、京都に恩返しをしたい気持ちも大きくなっています。

マツイユウキ 京都でバンドをやっていて、京都のバンドとしていろんなところでやってきていますが、10-FEETさんやROTTENGRAFFTYさんをはじめとした京都のバンド界隈では僕らのようなバンドがこれまでいなかったんですね。10-FEETさんとロットンさん主催のイベントに出られたときが、本当に嬉しかったですし、すごいことだな、と思いました。音楽の違いも大きい分、その垣根を越えて、京都バンドとしてリスペクトをしていることをちゃんと伝えられたことも嬉しかったです。それが印象的というか、嬉しかったことです。

ヤスカワアル 僕は「夢の続き」のMVを出したときです。はじめてMVを出したのですが、いろんな人に見てもらえましたし、そこから僕らの音楽自体がさまざまに広がっていったと思うんです。関係者の方を含めていろいろと関係もできてきたので、そういったバンドの道程に於いて起爆剤となった曲を出せたことが、今に繋がっているかな、と思います。

――リスアニ!はアニメ音楽誌が基盤となっておりますので、皆さんそれぞれの中に深く刻まれた、または忘れられないアニメソングを教えてください。

片桐 カラオケに行ったら必ず涼宮ハルヒの「God knows」は歌います。あと「super driver」も。

ヤスカワ ハルヒばっかりや(笑)。

片桐 カラオケとなると多いかなぁ。あとは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の「みちしるべ」もすごく聴いていました。

ヤスカワ 僕は一番聴いているのが『ひぐらしのなく頃に』の「you」ですね。

マツイ あああああっ‼

片桐 夜中の高速でめっちゃ流すんですよ。

ヤスカワ 聴きながら、『ひぐらしのなく頃に』の聖地である白川郷まで行きましたからね。クソエモかったです。蝉の声の響く中を歩きました。

マツイ 僕が最も“しっかり見た”アニメが『銀魂』なんですけど、OPもEDも全曲好きで。どれを選ぶかで今、迷っています。でもやっぱり最初のOPであるTommy heavenly6の「Pray」ですね。ほかにも「曇天」とか「サムライハート」とか、浮かびますがやっぱりその原点にあるのがこの曲だと思うんです。

片桐 さっき『ハルヒ』の曲を挙げましたが、やっぱりアニメ中で歌っている曲が好きなので、『けいおん!』のキャラソンや化物語の曲も好きです。そういう系統で挙げさせていただくなら『Angel Beats!』のGirls Dead Monsterの「一番の宝物」がすごく好きです。アニメで、病弱でなにもできずに死んでしまったユイちゃんの心情を歌っていて、涙が溢れてきたんです。すごく思い入れのある、印象的な一曲です。

――そんな皆さんが初めてのTVアニメタイアップをされることとなりました。その際の感想を教えてください。

片桐 めちゃめちゃ嬉しかったです。今回のタイアップ作品である『ノケモノたちの夜』の原作を読ませていただいて、ものすごいスピードで全巻読了したんです。どのキャラクターについても「ここが好き」というところをいくらでもあげられるくらい、キャラクターにハマりながら読ませていただきました。『ノケモノたちの夜』って、世間では正しくないと思われている人たちが、ノケモノにされて孤独感を感じていたり、理解されないことに苦しんだりしているお話なのですが、Hakubiの曲も孤独感を味わっている人に聴いて欲しい曲なんですね。それはどうしてかというと、自分自身が疎外感や孤独感を感じているときに作っている曲が多かったからなんです。そんな自分と原作がリンクするのを感じて、「これはHakubiが楽曲を書いたらぴったりでしょう」と感じました。

――おふたりは原作に対してどのような印象を覚えましたか?

マツイ 僕はふたり(片桐とヤスカワ)に比べてアニメや漫画に疎いタイプなのですが、お話をいただいたことで久々に読んだマンガだったんです。でもマンガ初心者にもすごく読みやすくて、内容もスッと入ってきました。でもタイアップをやるんだ、という実感はなかなか湧かなかったんです。最近になってアニメを見て、放送で流れている楽曲を聴いたことでアニメのエンディングになったんだ、ということをようやく実感ができました。

ヤスカワ ファンタジー系だけれど、人と人とのつながりや人間のドラマとして紡がれていく感じは、自分たちの音楽の方向性とも相性がいいな、というのが正直な感想でした。アニメのタイアップは以前からすごくやりたかったですし、本当に嬉しかったです。

終わらない物語を紡ぐキャラクターそれぞれに寄り添う「Rewrite」

――初タイアップとなる「Rewrite」を制作する際にアニメ側からのオーダーで印象的だったキーワードや発注はありますか?

片桐 「このキャラクターに沿って」とか「こういう心情で」といった具体的なテーマを持っての発注があるのかな、と身構えていたのですが、「Hakubiの世界観にぴったりな作品なので、そのまま書いてください」と言われたんです。それもあって、結構自由に書かせてもらいました。バンドの世界観とぴったりだ、とプロデューサーさんや監督さんがおっしゃってくれたこともあって、恵まれた楽曲制作環境でした。自分自身のことも交えて書いていったのですが、それが作品とリンクしていったことはすごくよかったなと思っています。

――予想していたのとは違っていたわけですね。

片桐 作品やキャラクターの心情を描いていくキャラクターソングをたくさん聴いてきたことも大きいかと思います。普段、キャラソンを聴いていて「このタイミングで出てきたこの曲は、あのときこのキャラクターが言っていた言葉そのものじゃないか!」とか、伏線として繋がっていくのを感じては興奮していたリスナーだったので、そういった心情を書くべきなのかな、と思っていたんですね。でもそのあたりは自由に書かせてもらえましたし、Hakubiの、バンドとしての良さも出たし、作品にも寄り添っている楽曲が作れたことがよかったなと思っています。

――エンディング曲であるこの「Rewrite」。曲作りはどのように進行していきましたか?

片桐 作品を読んでから、楽曲のキーワードは浮かんでいたんですね。昨今の世の中の現状も考えながら作っていきました。サウンドとしてはアニメに寄り添うことを大切にしながらも、Hakubiのバンドとしてのサウンドも大事にしたい、という制作方針になっていって。その中でも特に意識したのは、『ノケモノたちの夜』はダークサイドストーリーではあるけれど、それぞれの光が存在していること、ですね。たとえばマルバスにとってのウィステリアやほかのキャラクターにとってもそれぞれが光となる存在があるんですよね。闇の中の光、という要素は大切にしたくて歌詞にも入れましたし、サウンドとしても冒頭でなるギターのハーモニクスのピーンという音は光が差し込む感じやそれを見つけた瞬間に感じられるものはギミックとしてポイントポイントで楽曲に散りばめました。あとはアレンジとして加わっていただいたandropの内澤崇仁さんにもお伝えしました。最初は自分だけで考え込んでいる、ひとりぼっちの様子からはじまりながらどんどん開けていく感じを出して、誰かに手を伸ばす、世界を知る、光を見つけていく、という展開をサウンド的にも作れたのではないかと思っています。

――あのイントロだからこそ、物語からスッと入っていく感があるのかなと感じます。

片桐 ありがとうございます。あの曲は終わり方もいいですよね。

ヤスカワ 確かに。イントロ終わりみたいな感じだしね。

――内澤さんが入られてのアレンジとなりました。ご自身の手癖ではない部分でのアレンジあったのではないかと思いますが、レコーディングではどのようなことを意識されましたか?

マツイ アニメのエンディングを担当する、ということでアニメを見たほとんどの方がHakubiの音楽に初めて触れると思うんです。ここでHakubiを知って、僕らの音楽にたどり着いてライブに来てくれる人もいるかと思うんですね。でも音源で聴く音とライブの音は少し違いがあると思うんです。そこで大きく音が乖離してしまうと、ライブじゃなくて音源で楽しもうと言う人が出てきてしまうだろうし、そうなったらとても悲しい。レコーディングのときには自分の持っていない機材を借りることもあるのですが、今回は極力ライブで使っている機材を使って、ライブとの違和感がなくなるようにドラムやシンバルの音を意識してレコーディングをしました。それでライブを見て「いいな」と感じてもらえると嬉しいです。

ヤスカワ アニメのエンディングはしっとりしたサウンド感が多いような印象があるのですが、バンドとしての音を追求していくというところでは、いいベースを使っています。ビンテージの楽器でバキバキのいい音を響かせて、Bメロでは内澤さんのアイディアで和音も入れてのレコーディングでした。楽曲としていいバランスになったと思います。楽曲としてもこれまでのサウンドとは違って、シーケンスの入っている領域が少ないので、バンドとしての音をより極めていった印象です。

――歌詞については、どういった視点で描こうと思われたのでしょうか。

片桐 全体にウィステリアとマルバスの気持ちを書こう、ということは頭の中にあったのですが、「そうあるべき」という強い意識では全然なくて。『ノケモノたちの夜』を見た上で感じたものを持って作品づくりに入れた感があります。この曲を聴いて、どのお話も思い出せるようなものにしたかったですし、どのお話に対しても締めくくれるような楽曲にしたいと思っていたので、キャラクターの心情はもちろん考えてはいましたが自分自身が同じような場所にいたなら、自分もこういうことがあったよなと思い返しながら作りました。

――アニメのエンディング曲なので、89秒で完結するもの。その先の世界観については、音源を購入した人たちが堪能できるものとなります。89秒という時間で世界観を作る作業はいかがでしたか?

片桐 フルバージョンの楽曲の一番ではまだ孤独の中で、一人寂しい夜を抜け出せるかどうか、というところで終わっていますが、89秒尺ではちょっと光が見えて、手を伸ばしてもいいだろうか、というところで終わっているんです。アニメの最後はちょっと暖かい気持ちで終わらせたかったんです。次の話を見ていくことが楽しみになるような、まだ続いていく物語の楽曲として作りたいと思ったので、89秒にちゃんと収まって、「Rewrite」をギュッとできたなと思っています。このエンディングを聴いて、もっと聴いてみたいと思ってくださった方はぜひ一曲まるまる通して聴いてもらいたいです。そうすることでHakubiの表現する楽曲と『ノケモノたちの夜』がさらに深まると思います。

――皆さんが思う、アニメのエンディング曲とは。

マツイ その週の話の余韻に浸る時間がエンディング曲の流れている時間だと思います。次回予告までの、今話に浸る時間ですね。

ヤスカワ まとめ役ではないですが、ジャイアンツで言えば上原浩治。タイガースでいうと藤川球児。そういう立ち位置と、先の話に渡すバトンという感じです。つまりは“抑え”です。

片桐 「見てよかった」と思う瞬間だと思います。マツイくんに同じく、余韻に浸る時間。「このシーンがよかったな」とか「これからどうなるんだろう」と思うとき。

――実際に放送されたエンディング映像をご覧になっていかがでしたか?

マツイ PVじゃないアニメの映像で使われていることが感慨深かったです。家で見ていて、思わず「うわぁ!」と声が出ました。自分たちの曲だけど「すごい!」となりました。

ヤスカワ 自分たちのコンテンツ以外で映像と一緒に自分たちの曲が鳴っているのを見るのが初めてだったので、感動しました。

片桐 エンディング映像で、それぞれの光となる存在と一緒にいる、というテーマが絵にあったと感じたので、一話一話、みんなの想いと重なってくれるのかなって思いました。あとはバンドの名前や自分たちの名前がクレジットとして映像に重なっているのを見たときに「うぉー!」となりました。それはアニメ好きとして感動しました。自分たちもこれまで、アニメのクレジットでバンド名やアーティスト名を知った存在もいましたし、今度は自分たちが89秒尺の中で見てくださっている人たちと出会えるんだ、ということが嬉しかったです。そして作品の一部になれた、と改めて感じました。いつもは3人で、そしてHakubiチームで音楽を作っていますが、そこにアニメの制作チームの 皆さんがいる。一つの作品を作るチームに入れていただけたことが嬉しかったです。

次ページ:アニメを描くことは出来ないけれど、自分たちの作る音楽で関わっていきたい

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