斉藤朱夏が前作「イッパイアッテナ」からは半年ぶり、通算4枚目のシングル「僕らはジーニアス」をリリースした。本作には、自身が声優として出演しているTVアニメ『齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定』のOPテーマとして書き下ろしたエネギッシュなロックナンバーに加え、昨年春のライブツアーに向けて書かれた「はじまりのサイン」と、友達をテーマにした「最強じゃん?」が収録されている。数多くのライブをこなし、“天才”で“ヒーロー”で“最強”と胸を張って歌えるようになった彼女は今、どんなモードなのか。4月からスタートするライブハウスツアーに向けた意気込みも合わせて聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
――「僕らはジーニアス」はTVアニメ『齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定』のOPテーマになってますね。
斉藤朱夏 個人的には、中国で先に配信されているアニメだっていうことを大事にしたかったんですね。中国のアニメファンの方がこのオープニングを聞いたときに、中国版を大切にしてくれてるんだなっていうのを少しでも感じてくれたらいいなと思って。だから、イントロにドラを入れたり、衣装も若干中華っぽくしていて。
――アニメの世界観に寄り添った書き下ろしではありますが、同時に斉藤朱夏らしさも溢れてますよね。
斉藤 そうですね。歌詞を見たときに、まんま私だなと思いました(笑)。“やりたいようにやろうぜ”や、“行きたい方に行こうぜ”“面白そうな未来を見てみたいじゃん”とか。私要素がたくさん散りばめられているなっていうのは感じましたね。
――“胸を張って 意地を張って”も朱夏さんっぽいです。
斉藤 あははは。そうですね。基本的には、胸を張って、意地を張って生きているので。ここに“強がって”が入ったらもう完璧ですね。私は自分を強く見せたいから胸を張ってて。たまに挫けてしまって、弱さを出てしまうこともあるけれど、そんな自分は見せたくないという思いで意地を張ってみたりする。私にぴったりハマる歌詞だなと思いましたし、一番いいなと感じたのは、やっぱりタイトルですよね。「僕らはジーニアス」っていう。
――昨年8月にリリースした1stアルバム『パッチワーク』の収録曲「ワンピース」では“天才なんかじゃないし”と歌っていました。
斉藤 “私は”じゃなく、“僕らは”だからこそ言える言葉じゃないかなって思います。昨年1年間で、応援してくださる皆さんがいるから私っていう人間が存在してるんだなということを感じて。ライブでは努力ではどうもこうもできないことが起きたりもするけれど、みんながいるからなんとかなったというか、みんなに助けられたなと感じた瞬間がたくさんあったんですよ。だから、私は今、“僕らは誰もがジーニアス”と言えるんだろうなって。ちょっと前だったら言えなかったし、1人だったら言えてないですね。
――昨年春のライブハウスツアー“はじまりのサイン”、夏のライブハウスツアー“キミとはだしの青春”、冬のワンマンライブ“くもり空の向こう側”を経て言えるようになった?
斉藤 そうですね。全部のツアーがすごく大きかったです。特に“キミとはだしの青春”は11都市14公演という初めての挑戦をした長いツアーだったので、すごい得るものが大きくて。みんなから本当に自分の中で消化しきれないくらいのパワーをもらいましたし、「温かいな、この居場所」って感じることも多くて。自分が発した言葉で出来上がっているものでもあるので、より言葉に責任を持とうとも思いましたし、もらったものをこの先にどう活かせばいいんだろうっていう、初めての嬉しい困りもありましたね。
――「僕らはジーニアス」は“くもり空の向こう側”のアンコールで初披露していました。
斉藤 レコーディングもツアー中だったんですよ。常に「元気に!」「やんちゃに!」「悪ガキをもっと入れて」っていうオーダーをされたので、ある意味ライブみたいな感じで歌って。ツアーをやってる最中はずっと気を張っているので、歌入れが終わった瞬間に糸が切れたといいますか。すべての力がなくなって、レコーディング後は、疲れすぎてスタジオで寝ていましたね(笑)。
――(笑)。ツアー中だからこその勢いも入っていますよね。サウンド的にもクラップやコール&レスポンスも入ってるので、ライブも見える曲になっています。
斉藤 ツアーをたくさん回っていたし、ライブも積極的にやっているので、やっぱり私はライブでみんなと会話ができる楽曲を増やしたいし、音楽でみんなとコミュニケーションをとりたいんですよね。最近やっと声出しが解禁になってきたので、今まで溜めていたものがそろそろできるんじゃないかなっていうワクワクもあります。まだ色んなルールがあるけれど、未来のための楽しみを作っている感じですよね。声出しの部分をたくさん作っておいて、いざできるよ!ってなったときにどれだけみんなが爆発するかが楽しみです。
――また、この曲中には自分次第でなんにだってなれるというメッセージも込められてます。朱夏さんはどんな自分になりたいですか。
斉藤 女性として、人間として、かっこ良く強くありたいです。最近は、自分1人で立てるようになりたいなって思いますね。みんなと一緒に手を繋いでいくのも大切だけど、まずは、1人でちゃんと立てるようになりたい。
――今は“僕らはジーニアス”と言ってるけど。
斉藤 いつかは“私が”って言えるようになりたいな。まだなれてないのは自分でもわかっているので、強さがどこにあるんだろう?っていう旅をこれからしていくんだろうなと思います。ステージ上に立っていて、どうしても1人だな、孤独だなって感じる瞬間がたくさんあるんです。でもたとえ1人でも、孤独って思った瞬間でも強くありたい。2023年はそこを目指していきたいです。
――アニメの映像についたものを見てどう感じました。
斉藤 いや、すごいですね。やっぱり、あのクレジットを見る瞬間が一番嬉しいです。名前載っとる!みたいな(笑)。もちろん、アニメ自体も楽しみですが、これが見たいがためにアニメも見てるっていう気持ちもある。それに、オープニングってやっぱりいいなって思いましたね。アニメの一番最初に流れるものですし、この楽曲自体も勢いがあるものになって良かったなと思いました。しかも、ちょうどいいところで曲が終わるので、そこから物語に入っていくワクワク感もたまらないっていう。いや~、クレジットは本当に嬉しいです。もう嬉しくて嬉しくて。本当にありがたいなって思います。自分の名前が載ってることに対して本当に感謝しないといけないなと思いますし、毎回毎回、クレジットを見るたびに感動しますね。
――アニメとは別にご自身のMVも公開されています。
斉藤 本当にシュールですよね。一番最初に確認はきていたんですよ。「学生服とヒーロースーツを着ることに対して朱夏さんは大丈夫ですか?」って。私、基本NGはないので、「大丈夫です」って答えて。「イッパイアッテナ」で初めてお会いした監督ともう1回タッグを組ませてもらったので、きっと面白いことをするんだろうなと思っていたら、すべてがシュールすぎて、「何やってんだろう、私……」みたいな。
――(笑)。でも、2019年のデビューミニアルバム『くつひも』の収録曲「ヒーローになりたかった」と歌っていた方が、映像でヒーロースーツを着ているシーンは胸熱でしたよ。天才なんかじゃないし、ヒロインじゃなくヒーローになりたいと言っていた人が、ジーニアスでヒーローになってるっていう。
斉藤 応援してくださる皆さんもそこが刺さっていましたね。「朱夏はヒーローになったんだね」っていう言葉をたくさんいただいて。みんな、どこか安心してくれているようなコメントもあって。私はずっと、みんなから「僕たち私たちにとっては朱夏ちゃんはヒーローです。ひまわりです」って言ってもらっていたのですが、私は「いや、違うから。そんなことないからやめて」って答えていて。それが、ちゃんとイコールになったんですね。やっぱりツアーをやって、この仲間を誰が守るんだろう?と考えたときに、私しかいないなって思ったんですよね。たくさんの仲間が増えたし、私はライブに来てくれる仲間が大切なので、この仲間を傷つける人がいたら私が許さない。それってヒーローがやることだし、「あ、いつの間にか私ってヒーローになってたんだ」って気づいて。みんなはきっと、「いや、朱夏ちゃんはずっと僕たちのヒーローだったよ」って言ってくれると思うんですけど、自分では「ヒーローになりたかった」と言っていたところから、ヒーローになる準備ができたのかなと思っていて。まだ胸を張って「ヒーローです!」とは言えないかもしれないけれど、ヒーロー見習いみたいなところまではやっと階段を上れたんだなって思いますね。
――撮影で印象的な出来事はありましたか?
斉藤 バンドメンバーもいたので、ずっとわちゃわちゃギャーギャー騒ぎながらやっていたので、ライブ感強めだったなと思います。しかも、ワンマンライブ“くもり空の向こう側”が終わって1週間後くらいに撮ったんですよ。だから、ライブが終わったあとも、いつもなら寂しくなって、「早く会いたい」「次はいつ会えるかな?」という気持ちになるんですけど、この時は「すぐに会えるね」って言い合っていて。特に(ギターの)ケイちゃんはずっとキャッキャしていたし、みんな楽しそうにやってましたね。
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