2021年3月にスタートした「青春」×「アカペラ」純度100%の最強ボイスエンターテインメント「アオペラ -aoppella!?-」(以下、「アオペラ」)。プロジェクトのスタートから素晴らしいハーモニーを聴かせてきたリルハピ、 FYA’M’という2グループに、2022年は新たなグループ・VadLipが加わってパワーアップし、今後の展開へ期待高まる「アオペラ」からFYA’M’のボイスパーカッションを担う深海ふかみ役・仲村宗悟を直撃。ボイスパーカッションとの出会いから、新たなJ-POPカバーソング「シュガーソングとビターステップ」や3月にリリースされる新曲について話を聞く。
■「アオペラ」濱野大輝 撮りおろしインタビューはこちら
■「アオペラ」佐藤拓也 撮りおろしインタビューはこちら
INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
PHOTOGRAPHY BY 小島マサヒロ
——2021年3月4日にプロジェクトがスタートした「アオペラ」ですが、仲村さんにとってボイスパーカッションと出会った今日までという時間はどんなものでしたか?
仲村宗悟 最初から今まで「挑戦」の時間でしたね。走り始めからここまで、これまで僕が生業にしていないボイスパーカッションというところをプロとして聴かせなければいけないという部分ですし、レコーディングの前には必ずレッスンにも入らせてもらっているくらいに毎回挑戦をさせてもらっています。
——最初にボイスパーカッションをやる、と聞いたときにはどんな印象だったのでしょうか。
仲村 僕らの時代は「ハモネプリーグ」という番組の影響もあって中学生の頃にはとてもアカペラが流行っていましたし、日本中をアカペラブームが席捲していたんです。そのときに、趣味ではないですが、テレビに出ている人たちのもの真似をしてみんなでボイスパーカッションをやってみて「なかなかできるもんじゃない?」くらいのレベルで挑戦してはいたんです。それがまさか今になって仕事になるとは思いもしませんでした。初めてお話を聞いたときにはすごくびっくりしました。
——そこから「プロ」の域まで技術を高めなければいけなくなったわけですが、まずはどんなことから着手されたのでしょうか。
仲村 最初は反復練習でした。これがすごく大切なんですね。アカペラグループ・INSPiのボイスパーカッションである渡邉崇文先生から教えていただいているのですが、その場で聴いてやってみても上手くいかないんですよ。パターンは理解できるけれど、口が上手く回らない。でも家で、耳で聴きながらずっと練習していくうちにだんだんできてくるようになるので、何事にも練習が必要なんだなっていうことは「アオペラ」で再認識しました。ほかに繋がるようなこともありますし、練習をより重ねるようになりましたね。
——ことアカペラになるとそれぞれの旋律や楽器の音がバラバラに声で表現されるものになるかと思います。ご自身が楽曲を作る立場でもあるので、そういった構造的なことでのクリエイティブな影響はありましたか?
仲村 ありました。自分が今まで培ってきた耳の感じをフルに使えた現場なんじゃないかなと思います。特にレコーディングが印象的でした。普段の僕の音楽活動では、楽器のレコーディングで立ち会うか、自分の歌録りのレコーディングという2パターンしかなかったのですが、僕の役割としては歌がほとんどなく、基本的にはマイク前でボイスパーカッションをやるというレコーディングなんですね。レコーディングの現場でマイク前に立って歌をうたうのではなく、口の技術を活かしてレコーディングをしていくことは衝撃でした。
——レコーディングを重ねてこられた今、ボイスパーカッションの面白さ、難しさについてそれぞれ教えてください。
仲村 ボイスパーカッションの素人の僕でも、だんだんできることが増えてくることが面白いです。反復練習を繰り返すことによってやれることの幅が増えてきますし、また別のパターンをもらったときに今まではできなかったけれど教わったことを応用してできるようになっていく。階段をあがっていく感じが楽しいです。逆に難しさとしては、BPMです。僕らが生きているリズムってすごく不規則なので、機械のように一定のリズムが流れているわけではないですよね。でもアカペラの難しさは何人かが揃って同じ音楽を奏でることにあるんです。みんな違うリズムで生きているのに、同じリズムの楽曲をみんなで合わせることの難しさはすごくあると思います。特に僕とベースの濱野大輝という土台になる部分がブレてはいけないという難しさがあります。
——ではボイスパーカッションという存在の魅力はどのような部分から感じていらっしゃいますか?
仲村 一言でいえば「リズム」ではないでしょうか。音楽の元祖はリズムから始まっているという話を聞いたことがあるんです。和音とか楽器は後々に生まれてくるんだけど、みんなで石や地面を叩いてリズムが生まれて、それが人間の魂に刻まれているんですよね。そのリズムを刻むことは楽しいし、魅力的だと僕は感じていますし、それこそがボイスパーカッションの魅力だと思います。
——仲村さんは非常に練習熱心だと伺っています。練習していて壁にぶつかったり、それを乗り越えたたことはありましたか?
仲村 機械でリズムを出すには数字を上げていくだけで速度がありますし、どれだけ速いリズムでも完璧に刻んでくれますが、口でやると、速いBPMになると回らなくなっていくんです。そういうときにパニックになったことがありますね……FYA’M’での第2弾カバー楽曲であったBUMP OF CHICKENさんの「天体観測」がすごく速かったんですよね。パターンについては練習をすればだんだん身についていきますが、速さはどうしても時間がかかるような気がします。
——そんなボイスパーカッションをFYA’M’で奏でているのが深海ふかみくんです。ふかみを演じる際に意識されているのはどのようなことですか?
仲村 ボイスパーカッションのときにはアグレッシブなんですけど、ふかみ自体はおおらかな人間で。それでも人間の核心を突くような鋭さも持っているけれど、しゃべり方はとても柔らかくて、人にストレスを与えない雰囲気や中身を持っているんです。その柔らかな人間がボイスパーカッションをするときには「本当にこの人がやっているの?」というくらいアグレッシブな音を奏でるという明確なキャラクター作りを意識しました。
—―FYA’M’についてはどのような印象がありますか?
仲村 FYA’M’はそれぞれ個性がすごく強いですが、とても調和がとれていますよね。
——特に相方でもあるベース・猫屋敷由比くんとCVを務める濱野大輝さんについてはどのような想いがありますか?
仲村 彼の出す音は本当に特殊ですよね。ベースの音を出せる人がすでに特殊なのですが、人によって限界のある音域においてあれだけ低い音が出せること自体が才能ですし、そのなかでもかなりきれいなベースラインを奏でてくれるのが濱野なので、土台組として僕もしっかり音を出したいと思うんです。僕自身、音にすごくこだわっていて。濱野のきれいな音に僕もきれいなリズムと音でミックスさせて、みんながそのうえで自由に楽しくコーラスワークを乗せられるように、ということを意識しています。
——お二人で「アオペラ」の話をすることはありますか?
仲村 ありますが、レコーディング自体はバラバラにやりますしなかなか「アオペラ」の現場では会えていなかったんです。この間の収録で初めて濱野と僕とで合わせたんですが、ずっと聴いているぶんスムーズとまではいかずともお互いの空気感はわかるんですよね。意思の疎通ができた気がします。とはいえ、彼と一緒にいるのももう長いですから。
——どちらかが先にレコーディングをしているというパターンになるかと思いますが、濱野さんが先に録られているのとご自身が先に録っているのとで心持ちの違いはありますか?
仲村 濱野が先に録っていることが多いですが、濱野からしたら僕から先に録ってほしいというところがあるんじゃないかなと(笑)。ドラムのリズムがあったうえでベースがあるパターンのほうが彼は録りやすいんじゃないかなとは思います。僕的にはモチベーションの違いはそこにはないですね。キメのときだけもらったりはします。そこがズレるとグループのハーモニーのズレに繋がってしまうので。そこは特に意識しながら、濱野の音と合わせます。
SHARE