――改めて「クウフク」の制作についてですが、そもそもヨルマチというコンセプトがはっきりしているユニットのなかで、曲作りはどのように進めていくのですか?
ノラ 楽曲は僕の体験を書くことがかなり多くて。今回の曲も、簡単に言うと「食べても食べても満たされない」というのが一番のテーマになっています。それはご飯のことだけじゃなくて、愛情や恋愛だったり、友情だったり。愛って色々あると思うんですけど、そういうもののことを歌っている曲になっています。そこから、“フルコースだって味がしないようで”というフレーズが自分の中に出てきて。じゃあ、「なんでフルコースでも味がしないんだろう?」みたいなことを考えて、広げていきながら作っていった感じですかね。
――またヨルマチでは全曲がノラとレイラのデュエットとなります。その歌い分けについてはどう作られていくんですか?
ノラ 今回は、最初に僕が何も歌い分けをしていない状態のソロの仮歌音源をVALSHEさんにお送りしました。そこからVALSHEさんが色々と僕に聞いてくださったんですよ。今回の作品を作るにあたって、ヨルマチのコンセプトだったり、今回の曲でノラくんが伝えたいことはどんなもの?とか、すごく詳細に噛み砕いてくださって。一緒にお話しする機会のなかで、VALSHEさんがレイラさんの歌い方、歌い回しの表現の仕方とかをすごくたくさん提案してくださったんです。その提案を受けてパート分けは決めました。
VALSHE ノラくん自身が伝えたいことや、ヨルマチそのものについてというところを掘り下げて。かつ、レイラというキャラクターに自分自身のボーカルが重なるのであれば、色んな情報が欲しいっていうところが純粋にあったし、興味もあった。そのなかで、ノラくんは今まで基本的に実際にコラボレーション相手とお会いして制作をするっていう形を取っていなかったということを聞いたんです。今の時代って、会わなくてもコラボレーションできちゃうじゃないですか。
ノラ 今まではまったくでしたね。それこそリリースするまでチャット以外でお話することがないこともありましたし。今も相手方のお顔を知らない方もいます。
VALSHE もちろん自分自身がノラくんとコラボレーションしたら楽しそうだな、面白そうだなっていうことは別として、自分自身がノラくんに対してノラくんのキャリアにプラスになることって何だろう?って考えて。やっぱり作っている側の熱量をちゃんと伝えて受け取らないと、結局は熱量のあるものって出来ないんだよねっていうところが自分のポリシーとしてあるんです。なので、ノラくんの口から「これはこういうもので、自分はこういうものが作りたくて」っていうところを聞きたかったんですよね。
――なるほど。
VALSHE それを受けて、すごく頑張ろうとしている人の熱量を受けると、じゃあそれを超えるくらいそこに対して負けない熱量で返そうっていう気持ちになるじゃないですか。そういうファーストディスカッションを設けていただいたことで、そこに対してちゃんと気持ちのゴールが見えたのはすごく大きかったんですよね。
――そうした経験もノラさんにとっては新鮮だった?
ノラ 本当に貴重というか。自分自身も宅録ですし、自分は今回も家で録っているんです。宅録で作詞作編曲ミックスまでやって……ってなると本当に1人ですべてやることになるので。そもそもスタジオでVALSHEさんのレコーディングを見せていただくとか、そこで自分が「こういうふうに歌ってほしい」ということ自体が体験したことのなかったことでした。お会いできたことで僕の想いもちゃんと伝わったし、VALSHEさんもすごく熱意を持って応えてくださって。それでボーカルがよりイキイキしたというか、ライブ感の出た音源が今回作れたんじゃないかなと思っています。
――熱量の話でいうと、今回のトラックも各楽器の熱量が増しているように感じました。
ノラ はい。VALSHEさんに歌っていただくので、今までよりも芯の強さの部分はサウンド面にも反映されているのかなと思っています。またこういうコンセプトで始めたヨルマチではあるんですけど、関わるにつれて自分の気持ちもどんどん開放的になっていくというか。狭いところでヘッドホンの中でやっていた音楽を、直接発信したいっていう気持ちに自分自身がなってきていて。きっとそれって登場人物のノラとレイラにも反映されていると思うんですよ。きっとヨルマチも、これからもう少し開放的になっていくだろうし、今回の7曲目の「クウフク」がその転換点になってくると思っています。MIXについても、楽器の空間の広さというのはすごくこだわりました。
――たしかに物語の中では登場人物が成長したり変化したりするのですが、それを音でも感じられる、その過程を聴くことができるというのはこのプロジェクトならではですよね。そうしたなかでVALSHEさんとしてはレコーディングの手応えはいかがでしたか?
VALSHE レコーディングの現場でいうと、いつもの自分のサウンドプロデューサーがいて、ディレクターがいて、ノラくんがいて、っていう、いつもよりも人数の多い賑やかなスタジオだったこともあって(笑)、自分自身もすごく楽しんでレコーディングに臨ませていただきました。
――なるほど(笑)。
VALSHE あと、ノラくんが外に出るということは自分にとってもすごく重要でした。なんでもできちゃうと1人で閉じこもっていても完成しちゃうから、ほかの血を意図的に引っ張って自分から外に出て行かないと、アイデアとかにストップがかかると思うんですよ。今回そういう場所でノラくんが体験したことや体感したことが、自宅に戻ったときに別の形のアウトプットで創作する力になるだろうし。そういう、色んな人たちが色んなものを吸収できたレコーディングだったように感じて、面白かったですね。
――「クウフク」という曲が様々な形で、ノラさんにとってのターニングポイントになりそうですね。そういった点でも、現在のノラさんはヨルマチの今後についてはどう考えていますか?
ノラ とりあえず、変わらず曲はどんどん書いていきたくて。これからもコラボから偶発的に生まれるものもあるし、もちろん努力して作り出すものもあると思うんですけど、そういった世界を楽しみにしたいので、物語を続けていこうと思っています。そのなかでもある程度の大枠は自分の中でなんとなくの構想があるんですけど、細かいところは全然決めていないんですよね。なので、この「クウフク」を受けて今度自分が何か思ったことがきっと次の作品に繋がっていくと思います。そうやって音楽が物語を導いてくれるんじゃないかなと。今は自分の心も、ノラとレイラの2人も、外に発信する方向に進んでいっているので。今年は自分も、ヘッドホンの中の音楽だけではなく、例えばライブみたいにスピーカーから外に向かって出していく音楽をやっていきたいという気持ちがありますね。
●楽曲情報
読売テレビ・日本テレビ系全国ネット土曜よる6:00放送「名探偵コナン」エンディングテーマ
今夜、あの街から
「クウフク(starring VALSHE)」
2月18日(土)放送回よりオンエア
[配信]
今夜、あの街から 7th デジタルシングル
『クウフク (starring VALSHE)』
2023年2月18日(土)ストリーミング&ダウンロードスタート
https://yorumachi.lnk.to/kufuku
作詞/作曲/編曲/MIX:ノラ
歌唱:ノラ、レイラstarring VALSHE
ジャケットイラスト:ぜんさい
■mora
通常/配信リンクはこちら
[CD]
今夜、あの街から
『クウフク (starring VALSHE)』名探偵コナン盤(完全生産限定)
2023年4月12日(水)リリース
<収録曲>
1,『クウフク (starring VALSHE)』
2,『クウフク (ANIME EDIT version)』
3,『クウフク (VOCALOID version)』
4,『クウフク (INSTRUMENTAL version)』
仕様:「工藤新一&宮野志保」オリジナル描き下ろしジャケット&アクリルスタンド封入
価格:¥2,000+税
品番:JBCZ-6124
<今夜、あの街から profile>
ボカロPノラを中心に結成されたネット発の音楽ユニット。毎作品ごとに女性ボーカリストを迎え、ノラと共に歌い上げていく。2021年6月立ち上げ。略称ヨルマチ。閉塞感漂う日々からいつか脱出して世界を変えたいと願う男女(ノラとレイラ)の物語を描いていく。最新作は配信シングル「レジリエンス」。
[about ノラ] 高校時代からネットシーンを中心に活動。自身もオリジナル作品を世に残したいという思いから、作詞作曲を始める。2021年にボカロPを名乗り、未完成モノローグへの「ハイド&シークレット」楽曲提供を経て、同年12月シングル「アイ独リ論」を初配信。TikTokで踊ってみた動画が多数UPされるなど話題に。
<VALSHE profile>
2010年9⽉にコンセプトミニアルバム「storyteller」でメジャーデビュー。少年のような中性的なハスキーボイスを持つデジタルロックシンガー。主にアニメファン層やネットユーザーを中⼼に⼈気を獲得し現在に⾄る。
デビューから2013年までは、CD ジャケット等はアーティストイメージイラストのみであり、本⼈露出をはじめとして積極的なメディアへのアプローチはしていなかったが、2013年11⽉27⽇に発売され、国⺠的アニメ「名探偵コナン」のオープニングテーマに抜擢された6枚⽬のシングル「Butterfly Core」通常盤ジャケットで、初の顔出し・実写ジャケットを採⽤。その後、⾃⾝初のライブイベントを⾏い、そのベールを脱いだ。「名探偵コナン」ではその後「君への嘘」でもエンディングテーマとして採⽤。その他、「JESTER」(PSP⽤ソフト「官能昔話」テーマソング)や「MONTAGE」(TVアニメ「信⻑の忍び」主題歌)などテレビ番組、アニメ、ゲームなど多くのタイアップ楽曲を持つ。また、ニンテンドー3DS⽤ソフト「ファイアーエムブレムif」ツクヨミ役、TVアニメ「信⻑の忍び」服部半蔵役などをはじめとして、声優としても多数の作品に参加。2018年からはファッションブランド「KINGLYMASK」とのコラボレーションを開始、翌2019年には舞台「ピオフィオーレの晩鐘〜運命の⽩百合〜」にエミリオ役として初出演を果たすなど、シンガー・アーティストとしての枠を超えた活躍は、ジャンルを問わず多岐に渡る。
現在では、作詞・作曲を始め、アートワークに到るまでのほぼ全てをセルフ・プロデュース。本⼈ビジュアルとアーティストイメージイラストによる作品をコンスタントに発表し続けているほか、ライブツアーの開催やフェス等へのゲスト参加、イベント出演も積極的に⾏っている。最新作は3/1(水)リリースのミニアルバム「SAGAS」。
TVアニメ『名探偵コナン』公式サイト
https://www.ytv.co.jp/conan/
今夜、あの街からオフィシャルサイト
https://yorumachi-nora.com
VALSHEオフィシャルサイト
https://valshe.jp
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