REPORT
2023.01.31
1月22日、KT Zepp Yokohamaにて“Lyrical Lily 3rd LIVE 「猫の手招き」”が開催。DJをテーマにしたメディアミックスプロジェクト「D4DJ」発のユニット・Lyrical Lily(桜田美夢役:反田葉月、春日春奈役:進藤あまね、白鳥胡桃役:深川瑠華、竹下みいこ役:渡瀬結月)の約1年ぶりのワンマンライブとなった本公演は、2022年の様々な初挑戦への経験を糧にした、“リリリリ”の急成長を感じさせる大満足のライブとなった。本稿では、そのうち夜公演の模様をお届けする。
TEXT BY 須永兼次
PHOTOGRAPHY BY 福岡諒祠(GEKKO)
まずはリリリリ以外の「D4DJ」メインユニット5組のライブがメドレーのように次々と流れ、それをリリリリの4人が観ている……という現在放送中のTVアニメ『D4DJ All Mix』(以下、『All Mix』)へと繋がるオープニング映像が流れ、彼女たちが作中で通学する“有栖川学院”の校門を模したステージセットのもとへメンバーが入場。その『All Mix』のOPテーマ「Maihime」の初披露が、3rdワンマンライブの幕開けを飾る。
この曲のダンスはリリリリらしいキュートさを大事にしながらもしとやかさを感じさせるもので、頭サビの歌詞に合わせてステップを踏むような振付も印象的。ソロパートを中心に可憐な笑顔を咲かせる反田に歌声・表情ともに要所で凛と決める進藤、ただのかわいらしさだけでなく強いあどけなさも併せ持つ歌声の深川と天真爛漫さ溢れるステージングを見せる渡瀬と、1曲目から4人ともキャラクターとしてのステージを見事に提示していく。
こうして見事に幕開けを飾った直後、進藤がオープニング映像になぞらえて「今日は先輩たちに負けない、Lyrical Lilyをお届けいたしますわ!」と春奈として宣言すると、ここからはなんとメドレー形式で一気に11曲連続での披露へ。
まず1曲目は、中原中也の詩「サーカス」の一部をメンバーがリレーするように朗読してから始まった、その詩をモチーフとする「サーカスへようこそ」。メインステージの3人がポンポン跳ねながらかわいくダンスを合わせ、DJブースの進藤もDメロでハートマークとウィンクをバッチリ決めてディグラー(※「D4DJ」ファンの総称)のハートを撃ち抜くと、「Agapë」ではファルセットを用いたサビ高音部などで美しい歌声を披露。続く「月に萌える」は再びキュートさが前面に出た曲でありながら、Aメロやサビなどで頻出する、体の中心を軸にしながら左右の足を入れ替えるという実はテクニカルなステップも盛り込まれたもの。そんなこの曲で、フォーメーション移動やパフォーマンスに滑らかさを非常に感じさせたのが渡瀬。ただダンスするだけでなく笑顔満開で前へ乗り出したりと、またも天真爛漫なステージングで自然と視線を奪っていく。
すると今度は、深川と渡瀬が手で作った扉から、「私をつかまえてみて」のセリフとともに反田が飛び出し「ライム畑でつかまえて」がスタート。ミドルテンポのEDMのリズムに上手く合わせたダンス中の腰の使い方など、彼女の細部での巧みさが際立つ1曲でもあったように感じられた。終盤、反田の「つかまっちゃった」のセリフとともに進藤がエアホーンを6連発。決めゼリフに伴う盛り上げとしても効果的でありながら、キャラクター性を鑑みれば「美夢のかわいい決めゼリフに高まる春奈」という姿が見えるのもまたニクい。その進藤がDJプレイで繋いで突入した「ギミー!レボリューション」が、場内のボルテージをさらに上げる。サビ終盤“今日もS.O.S”のフレーズを彩るキュートな深川の歌声も良好なアクセント。また「ユニバーページ」では1番Aメロ後半で渡瀬が、深川と見合いながら歌うパートでぐいっと覗き込むようなアドリブでさらにディグラーを楽しませれば、MVを背負いながらの披露となった「IFの踊子」ではサビ前の「転調!」のセリフ部ポーズ直後の進藤のDJプレイが、サビのさらなる盛り上がりへと会場を導く。また、次曲「Journey to the West」では、メインステージの3人が振付やフォーメーションチェンジなどで美しく連動して魅せながら、オーディエンスとともに腕上げをして盛り上げていった。
そして深川の「いいんちょ、DJしよ?」(※いいんちょは進藤が演じる春日春奈の通称)のセリフからスタートした「ラブ・ストーリーは突然に」では、その進藤による表情と歌声の両方に切なさを乗せたパフォーマンスが楽曲と絶妙にリンク。また同じく深川による、楽曲のラストを締めくくる「いいんちょ、大好き!」のセリフは、ゲーム「D4DJ Groovy Mix」での直近のイベント「side:origin -Lyrical Lily-」を経た今だからこそ刺さったディグラーも多かったのではないだろうか。
そんな切ない楽曲の雰囲気から一転、イントロのコールからすさまじい盛り上がりをみせたのが「ぼなぺてぃーと♡S」。大サビで歌唱していない間も笑顔を振りまく反田は、その後半にフィーチャーされるとまさに独擅場。一気に歓声と視線を集める。さらにサビ頭の「わーい!」の瞬間に1人ぴょんと高く飛び跳ねた渡瀬が、天真爛漫な竹下みいこ像をさらに具現化。この2曲、ともにカバー曲にもかかわらず、各人のキャラクター性が明確に見える曲となっていた。その盛り上がりを引き継いだ「サクラサク」では、進藤のDJプレイが要所で光る。イントロから間奏・後奏まで随所で観客をしっかり煽り、彼女ならではの魅力をバッチリ発揮し、11曲連続披露を締めくくった。
ここでいったんMCを挿み、事前に予告されていた新曲である、『All Mix』第3話劇中歌「春とショコラ」を披露へ。基本キャラクターとして進行するMCにおいて、「春奈が胡桃の提案とそれに乗った2人に押し切られる」というLyrical Lilyらしい構図を通じて撮影OKも知らせたところで、いよいよ新曲へと突入する。
その「春とショコラ」は琴の音色が映える和のテイストの楽曲。そんなサウンド構成にもリンクした麗しい振付を、アニメ映像をリンクさせて美しく魅せていく。その一方で楽曲序盤での次々にリレーされるソロのラップや、サビ前にはクラブチューンに振り切ったサウンドに乗せたやや激しめのダンスパートがあったりと、歌もダンスもただ麗しい一辺倒で終わらないのがこの曲。だがそれも、キャラクターとしてしっかり乗りこなしていくのがこの4人。特に1番Aメロの深川のラップパートは極めて難解なものだが、キュートさをしっかり持たせたまままっとう。そういった様々な面での挑戦が詰まった新曲を、しっかりとした形で届けてくれた。
ここで4人はいったん降壇し、2022年のLyrical Lilyを振り返る事前収録の映像が上映。舞台など初めての挑戦も多かった盛りだくさんの1年を和やかに振り返ると、衣装チェンジした4人が再登場し、「White Margaret」からライブ後半がスタートする。幕開けを飾るDJプレイをみせた進藤が中心となるこの曲では、頭サビや大サビ前をはじめ散りばめられたセリフを、可憐に真っ直ぐに届けて楽曲のムードをさらに明確に。ピュアさいっぱいの曲だからだろうか、美夢としての反田のステージングもまた映える。そこからシームレスに汽笛が鳴って始まった「銀河鉄道の夜に」では、強めに効いたビートに凛とした表情でしっかりダンスと歌声を乗せていく4人。Dメロ前には、ダンスのジャンプとタイミングを合わせて、進藤がスクラッチを決める。この曲と直後の「創傷イノセンス」「アンダーカバー(TeddyLoid Remix)」の2曲は、力強く芯を持たせた反田の歌声が映える攻撃的なナンバー。ここは表情もキリッとさせ、4人の先頭に立つかのように、スピード感あるロックに負けないパワフルな歌声をぶつけていく。
その雰囲気をガラッと変えたのが「冒険王!」。サウンド自体の雰囲気もさることながら、1番Bメロではステージ上で3人が「だるまさんがころんだ」をしたり、サビではディグラーのペンライトの動きを先導するかのように指をくるくる回したりと振付の面でも再び明るく盛り上げ、ディグラーからのコールもまた大きく響く。それに続く「ねむり姫」はまたリズム細かめの楽曲で、間奏部分での美しいスピンなどダンスも比較的激しめなナンバー。この曲で注目したいのは、やはり渡瀬だろう。前述のダンスもしっかり魅せつつ、彼女がこの曲で担当する通称“なのラップ”をみいことして乗りこなしていく。驚かされたのは、最も長くリズムも複雑な大サビ。楽曲終盤ならではの気持ちの高ぶりからくるエモーショナルさも込め、さらには配信カメラに向けての指差しまで入れるという細部にまで意識を配ったパフォーマンスから、凄みさえ感じた。
その渡瀬と深川がお立ち台に座り、反田がセンターに立ってしとやかに歌い始めたのが「赤いスイートピー」。Aメロの反田のソロの合間には進藤が、DJ台に腰掛けて「L・O・V・E」とハンドサインを作り、ディグラーからのコールとともにエールを送る。続く「プティプランス」はモチーフの小説「星の王子さま」を思わせるような、夜空へ手を振るような振付からスタート。ライブも終盤に近づき、観客の反応もあってボルテージが上がってきたのもあってか、このあたりから深川の手フリのダイナミックさが一段と増していたような印象。1サビ明けのポエトリーパートなどの声での表現にも、音源以上の感情が乗る。さらに今度は反田が、「撲殺天使ドクロちゃん」のAメロでいつも以上にかわいさ全振りの歌声でソロパートを歌唱。メンバー全員で振り回すタオルや、間奏のDJプレイとコールで会場の熱気をさらに高めていく。
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