2004年にシリーズがスタートして以来、熱心なファンを獲得しつづけてきた『蒼穹のファフナー』。2021年に『THE BEYOND』のシリーズで完結した後にも、ファン待望の新作スピンオフ『BEHIND THE LINE』が制作され、1月20日より劇場特別先行上映中だ。主題歌をうたうのはもちろんangelaで、ファフナーに向けた楽曲は「Start again」で34曲目となる。シリーズへの熱い想いや、いつか開催を夢見る『ファフナー』全曲ライブについても語ってもらった。
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INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉
――一昨年に完結した『蒼穹のファフナー』のスピンオフ作品『BEHIND THE LINE』制作決定を耳にされたときの思いをお聞かせください。
atsuko 「ですよね~」って感じです(笑)。『ファフナー』シリーズとしては『THE BEYOND』で完結を迎えましたが、島民(『ファフナー』ファンの呼称)は、いつまでかかってもいいから続けてほしいという願いを持っていたと思いますし、それは私も同じでしたから、それに応えてくれる制作陣にさすがだなと思いました。
KATSU 以前、能戸(隆)監督に「続編はありますか?」と聞いた際に「(THE BEYONDの)“続編”はないです」とお答えされて残念に思っていたので、今回の制作には驚きました。今回は『HEAVEN AND EARTH』と『EXODUS』の間のお話で、ここは確かにファンの皆さんも気になっていた部分のお話ですし、全体が完結したうえで好きなキャラクターたちが元気で笑っている時間軸のお話を見せてくれることには、本当に感謝しかありません。
atsuko 私はこの時間軸になるとはまったく予想だにしていなかったので、「そこがあったのか!」と、正直驚きました。しかも、「平和なスピンオフ」という内容で、聞いたときには「『ファフナー』でそんなお話ができるの!?」と(笑)。
――『BEHIND THE LINE』の物語はおっしゃっていただいた時間軸ですが、映像としては最新の技術で表現されています。ご覧になっていかがでしたか?
KATSU スピンオフですから、もっとライトなエピソードでまとめるのかなと思ったのですが、そんなことはありませんでした。これまでにないカメラアングルも印象的でしたし、背景も非常にきれい。スピンオフの1エピソードというよりも、1シリーズと言っても過言ではないほどの仕上がりで、それについても「ありがとう」という思いでした。
atsuko 背景や動植物も写真と見紛うほどきれいなんです。音楽を付けるダビングの前段階で拝見した時も、私の目からはもう完成しているように見えたのですが、能戸さんは「まだまだブラッシュアップするよ」とおっしゃっていたことが印象に残っています。
――しかも今回は作品として1本のスピンオフですから、より作品に合わせた作りになったかと思います。主題歌「Start again」はどのように作っていかれましたか?
atsuko シリーズ作品ですと、最初から終わりまでキャラクターたちの心情の変化がありますが、今回は短いスパンのお話であるぶん、切り取って書きやすかったことはありますね。
KATSU 制作についてはシナリオと絵コンテをいただいたうえで、能戸さんから「温かいバラードで」とのオーダーがあったのですが、こうした楽曲は作るうえでは意外と難しいんです。というのも、「良い曲風」を狙って作った曲はどこかチープになりがちで、シラケてしまうんです。かといって、今回のオーダーは過去の「ファフソン」のような熱さを求める曲でもない。その匙加減やバランス感覚がなかなか難しかったですね。
――歌詞についてはどんな要素から書かれていきましたか?
atsuko 『ファフナー』は大きな世界観で歌詞を描くことが多いのですが、今回は珍しく個人の目線というか、夜から朝にかけての時間帯でちょっと自分が思ったこととか、こうなっていきたいなとか、そっと胸に秘めている思いを歌詞にしています。そこはストーリーにも沿っている部分があるので、詳しく説明するとネタバレになってしまうんです。作っている最中にどこで流れるかは決まっていなかったのですが、能戸さんと音響監督の三間(雅文)さんがまさに歌詞にピッタリの場所に置いてくださったので、その意味でも『ファフナー』とangelaの18年半の付き合いの総決算みたいな感じだなと思いました。
KATSU 今回、曲が入るところから終わるところまで、すべての歌詞が本編とリンクしていたんですよね。そういう奇跡が起こる作品なんです。『ファフナー』に携わった当初は手探りでしたが、『HEAVEN AND EARTH』のあとくらいから、自然とハマる感じを覚えてきて、自分でも怖いなと(笑)。
atsuko 今回は歌詞もそうですし、もう曲調が曲調なので、すごく優しく歌おうという感じでしたね。KATSUさんが今、曲作りでハマる感覚を話しましたが、私も歌うと『ファフナー』になるんです。作中用語だとクロッシング。それは壮大な曲も、今回のような優しい曲でも。逆に、ほかの作品を歌うときはなるべく『ファフナー』風味が出ないように頑張るという(笑)。
――ベースが『ファフナー』なんですね。
atsuko そう。もう、私がファフナーなんですよね(笑)。激しい曲や悲しいバラードを歌うときもだし、こういう優しいバラードであっても。計算して歌っているとかもなく、本当にストレートに歌詞の世界に入って、『ファフナー』らしい歌詞の歌をうたうと「ファフナーになる」のかなと。様々な取材でも「『ファフナー』はangelaの骨格です」と答えていますし、今回の「Start again」がファフナー関連の楽曲としては34曲目。1つの作品に対して1組のアーティストがこれだけ携わることなんて、おそらくほかに例がないのではと思いますし、その重みを噛み締めつつ、angelaらしく「ファフソン」をこれからも表現していきたいなという思いを新たにしました。人生の一部として本当にありがたいなと思っています。
KATSU 最初に作ったのが第1期放送前のイメージソング「fly me to the sky」で、そのあとすぐ「Shangri-La」です。自分たちの個性とか存在をアピールするものではなく、ファンの人たちに受け入れられるものがアニソンなのだという、ベーシックな部分を教えてくれたのも『ファフナー』なんです。いっときはキャラクターの運命が壮絶な部分を曲で表すことに辛さを覚えたり、レコーディングをしているときも悲しい気持ちになったりしたことはありましたが、冲方(丁)さんのシナリオや能戸監督の作る映像に対して曲を作ることは、この10数年かけてやっと染み込んでいった感覚なので、まだまだ作りたい思いがあります。
――「Start again」というタイトルからもangelaやファンの希望が見えてきます。
atsuko 我々もまだ続きを見たいですし、島民の皆さんも大きな声では言わないけれども、「いつでもまた始めていいですよ」という思いが心の中にあるのではないかと思い、タイトルに込めた部分もありますね。
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