小学館創業100周年を記念して約36年ぶりの最新版が放送中のTVアニメ『うる星やつら』。昭和のモチーフを残しながら作画や声優陣を変更して現代版にアップデートしたこの作品では、2クールにわたりOP/EDテーマをMAISONdes(メゾン・デ)が担当している。
MAISONdesは「どこかにある六畳半アパートの、各部屋の住人の歌」をコンセプトにした音楽プロジェクト。各楽曲にはアパートの部屋番号を示す数字が割り当てられており、毎回異なる「歌い手」と「つくり手」のコラボレーションで制作した楽曲を発表している。ここでは、MAISONdes(メゾン・デ)の音楽について紐解いていく。
TEXT BY 杉山 仁
2021年2月に投稿した部屋番号「101」の「Hello/Hello feat. yama, 泣き虫☔」を皮切りに19曲のオリジナル曲を発表。同年5月に発表して「TikTok流行語大賞」のミュージック部門を受賞した「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」を筆頭に各種SNSでの流行の発信地的な役割も担っており、いちアーティストでありながら音楽ストリーミングサービスのプレイリストのように様々なアーティストを知ることができたり、意外なコラボレーションを楽しむことができたりと、多くのクリエイターが集まる「場所」にもなっているのが特徴だ。
また、音楽面で印象的なのは、様々なジャンルの楽曲を発表しつつも、一貫してどこか「日常の機微」が感じられる楽曲が多いこと。気鋭のクリエイターがMAISONdesというプロジェクトに集まってそれぞれに個性豊かな楽曲を生み出す様子は、まさに色々な場所から集まってきたアパートの住人たちが繰り広げる群像劇のような魅力を感じさせてくれる。
そんなMAISONdesが初めてTVアニメの楽曲を担当したのが、令和に蘇った『うる星やつら』。ここでは2クールにわたってオープニング/エンディングの全4曲を担当。1980年代の名作TVアニメをリブートした作品に寄り添うように、音楽面でその橋渡しをサポートしている。
1981年から1986年まで放送された初代『うる星やつら』のOP/EDテーマは、テクノポップを中心とした80年代の最先端の音楽が取り入れられており、約4年半の間にOP/EDテーマが15曲も用意されていた。これは当時のアニメでは珍しい試みで、「ラムのラブソング」や「宇宙は大ヘンだ!」の松谷祐子、「ラムのラブソング」の作者でもある小林泉美、あがた森魚がボーカルを務めるニューウェイブバンド・ヴァージンVSなど様々な面々が歌唱を担当。あたるとラムの恋模様や、ぶっ飛んでいながらも賑やかな登場人物たちの日常を、当時の刺激的な音楽要素を使って多角的に表現したのが初代『うる星やつら』の音楽だった。
そして、1986年にオリジナル版が放送終了してから約36年ぶりのリブートとなった今回のOP/EDテーマでは、現代の気鋭のミュージシャンたちが集い、令和版ならではの楽曲を作ることで、アニメ史に残る人気作品の魅力を現代に橋渡しする役目を果たしている。
第1期・第1クールのOPテーマは、SAKURAmotiと美波がコラボレーションした「アイウエ feat. 美波, SAKURAmoti」。カッティングギターを活かした人力ダンスミュージックで『うる星やつら』らしい賑やかさを伝えつつも、「ラムのラブソング」などでも描かれた真っ直ぐな恋心が「推し」という現代風の言葉で表現されているのが面白い。美波のボーカルも普段のエモーショナルなものとは大きく雰囲気が違っている。また、初代ではOP/ED映像に登場人物たちのダンスが盛り込まれていたが、今回のオープニングではラムがビルの屋上でTikTokを連想するダンスを披露。令和版『うる星やつら』ならではの映像になっている。
第1期・第1クールのEDテーマ「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜, ツミキ」では、バーチャル・シンガー・花譜の声を使った音楽的同位体「可不」を使用した楽曲「フォニィ」のヒットで知られるツミキと、花譜本人のコラボレーションがオリジナル曲として実現。80年代風味も感じるエレクトロポップをベースに花譜が普段は見せないような早口でキュートなボーカルを披露している。ED映像では冒頭で初代『うる星やつら』のオープニングをオマージュする形でハートが描かれ、それがラムの心臓の鼓動になっているのも印象深い。
一方で、第1期・第2クールのOPテーマ「アイワナムチュー feat. asmi, すりぃ」は、第2クールのOPテーマとしてまだまだ燃え上がるラムの恋心を表現するような直球のラブソング。すりぃとasmiがコラボレーションし、コロコロと音階を転がるようなシンセやエディットされたモダンなダンスポップに仕上げている。この楽曲でも“エナドリにストロー付けたリボン”という現代ならではのフレーズがさらっと入れられていて、時代を超えても普遍的なラムの恋心と、令和ならではの現代的な要素が魅力的な形で1つになっている。
そして第1期・第2クールのEDテーマ「アイタリナイ feat. yama, ニト。」ではyamaとニト。がコラボレーション。同じく第2クールのEDテーマとしてますます燃え上がるラムの気持ちが、モダンなエレクトロポップに乗せて表現されている。4曲ともに令和の作品ならではの新たな要素と、不朽の名作の普遍的な魅力とが1つになっているような雰囲気で、ハチャメチャで楽しい『うる星やつら』の魅力を現代に伝えてくれている。
すべての楽曲に言えるのは、MAISONdesという一組のアーティストが担当しながらも、実際には様々な人々による『うる星やつら』の再解釈になっていること。初代の諸星あたる役・古川登志夫やラム役・平野 文があたるの父とラムの母を演じつつ、同時に新たな声優陣が加わって令和版ならではの魅力を追求した声優陣の演技と同様に、令和に活躍する気鋭のクリエイターが初代をリスペクトしながらもそれぞれのアイデアを加えていく様子は、それ自体が『うる星やつら』の魅力を届けるようでもある。
もちろん、アニメタイアップ以外の楽曲も充実している。最近では、「ヨワネハキ」にも参加した和ぬかとAimerがコラボレーションした「いつのまに feat. Aimer, 和ぬか」や、ラップと歌を自在に乗りこなす令和らしいポップソング「infinite feat. 空音, meiyo」などを発表。『うる星やつら』の楽曲と聴き比べることで音楽性の幅広さが伝わることだろう。また、リミックス企画「Re:MAISONdes」やカバー企画「DIG:MAISONdes」なども用意されており、オリジナル/カバーに限らずさらに様々な楽曲が楽しめるような場所にもなりつつある。
令和版『うる星やつら』の楽曲を聴いて興味を持った方はぜひ、MAISONdesのアパートの住人たちが生み出す、様々な楽曲にも触れてみていただきたい。
●配信情報
「アイワナムチュー feat. asmi, すりぃ」
音源DL / ストリーミングはコチラ
https://MAISONdes.lnk.to/HhIzhIWN
「アイタリナイ feat. yama, ニト。」
音源DL / ストリーミングはコチラ
https://MAISONdes.lnk.to/t3vdFQ1EWN
MAISONdes : Complete Collection(全曲入りプレイリスト)
https://maisondes.lnk.to/CompleteAY
MAISONdes -メゾン・デ-
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