1月25日(水)リリースの、内田真礼14枚目となるシングル「ラウドへイラー」は、1月より放送中のTVアニメ『冰剣の魔術師が世界を統べる』のEDテーマ。ヘビーなサウンドを自分のものとし、激しくも力強い彼女の歌声が突き抜けてくる。カップリングの楽曲含めて、彼女の音楽の幅広さがわかる1枚について、たっぷりと語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 塚越淳一
――今回、プロデューサーの冨田明宏さんとは何かお話をされたのですか?
内田真礼 いつものように、今思っていることを話しましたね。私自身流動的というか、その瞬間に思っていたことを曲に入れることで満足して次に進んでいることが結構あるので、2022年の後半に思ったことや感じたことは、エッセンスとして入っていると思います。とはいっても、制作期間的には3曲目の「ダストテイル」が一番最近作った曲なので、そこに今やりたい音楽が入っているんです。
――「ダストテイル」でも、また新しい“内田真礼”が聴けましたし、3曲それぞれ雰囲気が全然違うシングルになったと思います。まず、1曲目の「ラウドヘイラー」ですが、作詞・作曲が渡辺 翔さん、編曲が白戸佑輔さんという、アニソン界を牽引するお二人による楽曲です。
内田 この曲は、TVアニメ『冰剣の魔術師が世界を統べる』のEDテーマなので、キャラクターの心情がかなり入っていますし、作品を大事にしながら作っていきました。私がそのキャラクターを演じているわけではないものの、キャラクターたちの鬱屈とした気持ちやなかなか踏み出せない焦燥感などは、主人公たちの気持ちになってぶつけたつもりです。
――溜まっているものを吐き出すような、強い歌詞ですよね。
内田 なかなか上手くいかなかったりすることが多いなかで、「悩みながらも進む」とか、「自分と向き合って成長する」みたいなことがテーマになっているのかなと思いました。
――思春期のもがき、みたいな印象を受けました。
内田 そんな感じですよね。特に学生の頃ってできないことも多かったりするけれど、そこからどうやって抜け出したらいいのということに頭を使ったり、大きな声を出して発散してみたり……。その発散の仕方がわからないこともあると思うので、もがいている人に聴いてもらって、叫ぶように歌う私の声で、気持ちを発散させられるような曲になっていたらいいなと思います。
――内田さんは、色んなしがらみを壊してきた人ですしね(笑)。
内田 今の世の中の、まだ閉塞感がある感じをぶっ壊すぞ!と思ってやってきていて、内田真礼の道で言うならば、「いつか雲が晴れたなら」(2020年11月)を歌っていたときから考えると、ちょっとずつ前進していて、そこから、うわー!って殻を破って出てきているような感じまではきていると思うんです。だから今回のレコーディングも、だいぶ喉を開いて歌っていたりするので、エネルギーは乗っかっている感じがします
――ロックな曲調もたくさん歌ってきましたが、すごく似合うようになってきましたよね。
内田 あまりかっこつけていないみたいな。決めないで暴れているような感じはありますよね。仮歌とは違うけれど、歌ってみてハマったら、それが良いねっていう感じになったりするんですよ。
――それは感覚でやっているのですか?
内田 感覚だと思います。その瞬間にブチンとノれるときがたまにあって、その1回だけできて、もう一度やってと言われてもできないようなテイクが使われることもあるんですよ。2番サビなんかは、まさにそういう感じなんですけど。
――衝動的な感じが出ていますよね。
内田 レコーディングには冨田さんと白戸さんがいたんですけど、かっこいいね~!とか言いながら、わいわい楽しく録りました(笑)。
――始まりが「創傷イノセンス」(2014年4月)で、すごくロックな曲調でしたけど、あれから9年近く経って、自分の中でこういう曲に対する意識が変わってきた感触はあるのですか?
内田 歌いやすくはなってきています。私の活動の中で、100%自分でいられる瞬間って少ないと思っていて、こうやって音楽活動をしていても結局本人のやりたいこと100なわけではないじゃないですか。「創傷イノセンス」のときも、内田真礼のイメージって何だろうねって考えると、『中二病でも恋がしたい!』で演じた小鳥遊六花だったりする。そうなるとかわいさが絶対的に必要で、歌うときに一番出しやすい音ではなく、ちょっとかわいさを乗せるための歌い直しとかもあったりしたんです。それを考えると、今は一番出しやすい音を出しても、誰もそれに対して何も言わなくなったから、すごく歌いやすいんですよ。喉を締めなくていいし、キャラクターソングに近くなくてもいいので。
――自由に歌えるようになってきているんですね。
内田 それまでが嫌だったわけでもちろんなくて、みんなが求めてくれるものを作ることは、私自身も賛成派なんです。ただ、活動も8年経って周りも変わってきたので、今だからできることが出ている感じがします。鎖国が開けたみたいな(笑)。それに、オーディションで女の子をやることが多かったのが、今は男の子をやらせてもらえるようになったり。これまでは「内田真礼さんってこういうキャラクターで、こういう性格の人だよね」って思われていて、私もそれに合わせるのが楽しかったけれど、今はもっと素直にらしくいれるというか。だからこの曲でも、心からの叫びを音にしている感じがするし、きれいな音ではないかもしれないけど、それでいいでしょ!っていう覚悟が出ている感じがします。
――パブリックなイメージってどうしてもあるし、それに寄り添って活動はしていきますからね。
内田 ただそれって、私の一面でしかなくて、私はR・O・Nさんの作る曲が好きだったので「創傷イノセンス」を作曲してもらったんですけど、ELLEGARDENさんのようなロックバンドも好きだし、そういうところと、みんなの思う内田真礼像とをかけ合わせて、当時の内田真礼像ができていたんです。それが自分らしくないとかではないし、それを創り上げていたのは私自身なんだけど、今はもっと解き放たれている感じというか。そもそも、ぶっ壊すぶっ壊すって言ってきちゃったので、色々固めて作ってきたものの上に、それを破って、つるるんとした本当の私が出てきている感じです(笑)。
――だから“似合っている”と感じたんですね。
内田 そうだと思います。最初は声をしっかり作っていたから、声も出しづらかったし、レコーディングの声とライブの声が違いすぎるなと思うことがあって。「ギミー!レボリューション」(2014年10月)とかは、めちゃめちゃかわいい声で歌っていたし……。だから、ライブで歌っても、声が辛くならない曲を作ろうというのが、ここ数年のテーマでした(笑)。
――ライブでは、“内田真礼”で歌っていますよね?
内田 今はそうですね。繰り返し繰り返し、修行のような田淵智也楽曲を歌い続けたことで、難しい曲も歌えるようになってきましたから(笑)。歌えるかも?って勘違いから、この曲も歌えるね!これもできるねってなり、今の内田真礼が出来上がってきたので。20代をそうやって捧げてきて、みんなに認めてもらえたところはあると思うので、それを経ての30代はもっと自由に生きていこうと思っています。2024年には10周年になるし、ここからどうなっていくのか、自分でも楽しみです。ジャケットでパンツも解禁したし!
――パンツ初めてだったんですね!ジャケット、すごくかっこ良かったです。
内田 最初はもっと足を広げていたんですよ(笑)。殿!みたいな感じになっていたんですけど、それはさすがにやりすぎだと思ってやめました。
――ロックな曲調だからって黒でないところがいいなと思って。
内田 そう!あえてのピンク、みたいな。私がアニメで演じているキャラクターのキャロル=キャロラインのカラーがピンクというのはあるんですけど、ロックっぽいゴシックな感じでなく。実は今回の服はお腹とかも出ているんです。ちょっとスポーティな感じがあったり、透けていたりする。今の自分らしさと、攻めたかっこ良さ、みたいなところを考え、自分に似合う服を選んでいます。
――そして、工場夜景をバックに歌うMVもクールでした。
内田 川崎の工場地帯で撮影したんですけど、夜景がすごくきれいでした!緑のサテンっぽいスーツを着ているんですけど、それも新しい感じですよね。歌の吐き出すような感じが、映像からも伝わってくると思います。この曲は「c.o.s.m.o.s」のMVを撮ってくれた監督で、いつも素敵なMVを撮ってくださるんですけど、今回も映像の色味もすごくきれいで、とてもかっこいいMVになったと思います。
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