――歌詞に対して、早見さんご自身の「光となる音楽を届ける」というテーマと重なっている部分はありましたか?
早見 この曲で歌っている部分や表現の仕方は、光が見えなくてもいい、基本、闇でいいなと思ってて。「視紅」というタイトルもそうですけど、真っ暗にいるから、見えてくるものがあるというか。それでも進める細い何か……そこの中で生まれる生命力がある、みたいな。それは、私が2022年にリリースしてきた楽曲の中で歌ってきたものとすごく通ずるところがあって。別にずっと明るくなくていいし、ずっと希望に満ちあふれている曲を歌っているわけではない。決して希望がないときでも、それも含めて、生きていけるような楽曲にしたかったので、暗い中に感じられる光の気配みたいなものをイメージしていましたね。
――“モノクロなら身を任せ/ゆっくり光浴び色を慣らす”というフレーズはどう捉えましたか。
早見 明るくない中にある、光の気配のようなものを感じていて。色がない世界でも、どこかから感じる光に自分が少しずつ染まっていくことができるし、それを感じながら歩んでいくことはできる。暗い中にいても進んでいけるわずかなエネルギー、というイメージで歌いました。
――「視紅」とは、目の中にある光を感じる物質のことなんですよね。
早見 はい。正確に説明するのは少し難しい言葉なんですけど(笑)、それがあるから色を見られたりとか、光を見られたりするものであって。色々な候補から話し合って決めたタイトルですけど、色のない世界で色を見つけられる、まさに「視紅」的な要素をこの楽曲が持ってくれているといいなっていうのもありますし、物語では結構、流血もしますし……。
――赤い血が流れて、目が見えなくなっているような描写もあります。
早見 それでも進んでいくっていう。プラス、ベルくんの瞳は赤いし、その赤い瞳を見ながら進んでいくっていうのもあって。物語の中で色んな赤が出てくるので、二重三重に意識したタイトルになっています。
――また、楽曲自体はとても激しくて、とても繊細で、ダイナミズムのあるものになってますよね。フリージャズのようでもあるし、プログレのようでもあるし。
早見 渡辺拓也さんのアレンジが入って、その要素が強くなりました。例えば間奏のところの動き続けるピアノやギターで、拓也さんのカラーを出していただいて。デモよりだいぶロックな感じになりましたし、楽器にも厚みが出て。その分、オープニングらしさも足されていますけど、歌をどれくらいそこに寄せていくかが考えどころでした。元気すぎない方が合うかなと思ったので、ボーカル自体もバック(演奏)の圧に対してそこまで出していないんです。歌い方は「低温で燃えている」ような感じを意識していましたね。
――静かに熱く、のような。
早見 タイトルは赤なんですけど、真っ赤な炎というよりは、すごい熱いけど、ちょっと冷めたところのある青い炎のようなイメージです。それも最初、プリプロでキー合わせや雰囲気を決めるときに、チームのみんなと話し合って。色々試していたんです。歌いまくるバージョンとか、囁くように歌うバージョンとか、ちょっと張ってるバージョンとか。でも、基本は、仮歌のイメージがあまり張っていなかったし、「ちょっと締めた、苦しい感じで歌ってほしい」という翔さんのイメージは崩さないようにして。やっぱりガツンって出すと、抜けが良くなって、生命力が出てしまうので。
――まだ奈落の底にいるから。
早見 そうなんですよ。だから、割とウィスパーな感じで歌ってたり、本当だったらもっと張ってもいいところを張り切らない。その辺りで、もうぼろぼろな感じを出したいなと。「どうしよう?」と迷っていたところもあったんですが、チームのメンバーから「1回、エログロなイメージで歌ってみて」というキーワードが出てきて。それが正解はどうかはわからないんですけど、その感じを頭の片隅に置いて歌ったデモのテイクが結構良くなったんですよ。そういう、ちょっと妖しい感じ、正攻法じゃない感じというのは意識していました。
――楽曲が完成し、OPアニメーションとともにご覧になってどう感じましたか。
早見 オープニングの映像ではバトルのシーンもそうですけど、リューさんにとって大事な存在の人たちとかがふわっと描かれていたりして。今回、物語の中で欠かせないキーパーソンが何人かいるんですけど。リューさんの過去にまつわる人たちは、リューさんが前に進むきっかけにもなるし、アニメーションでも印象的に描かれていて。だから、私はすごく絶望感にあふれたものを歌っていたけど、こうして絵と合わさったものを聴くと、そこが希望みたいにも見えてくるのが面白いなと思いました。やっぱり映像の力って大きいなと感じましたね。
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