2012年10月のTV放送開始から10年以上に渡り続く『ジョジョの奇妙な冒険』アニメーションシリーズ。その最新作『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』の最終章となる第25話~最終話第38話が、Netflixでの全世界独占先行配信を経ていよいよTVでも放送をスタートした。これを記念して、第25話からの新OPテーマ「Heaven’s falling down」について、ボーカリストのsana (sajou no hana)と、作曲・編曲を手がけた菅野祐悟によるスペシャル対談を掲載する。
リスアニ!では、アニメ『ジョジョ』の歴代主題歌を徹底取材した1冊として「リスアニ!『ジョジョの奇妙な冒険 The Animation』音楽大全」を2022年夏に刊行しているが、その時点では語り尽くせなかった内容の補完という意味でも必見のインタビュー。『ジョジョ』の音楽の現場ならではの、運命を繋ぐ熱気を受け取ってほしい!!
INTERVIEW & TEXT BY 前田 久
――今回は、『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』でお二人が手がけられた後期OPテーマ「Heaven’s falling down」を中心にお話を伺えればと思っています。ちなみに、お二人がこうしてお会いするのは、レコーディング以来ですか?
sana そうですね。
菅野祐悟 日本語バージョンと英語バージョン(「Heaven’s falling down」配信シングルにいずれも収録)、それぞれのレコーディングで1回ずつ会ったきりですね。ただ、後者は結構最近だったので、それほど間隔は空いていないかと。
sana 日本語バージョンは夏でしたっけ?
菅野 多分……(笑)。この曲は制作からレコーディング、そして曲が発表されるまでに、めちゃめちゃ長く時間がかかっているので。ちょっと時間の感覚がおかしくなってるんですよ。
sana かかってますよね。本来、2021年にレコーディングする予定だったのが、2022年になって。だから私としても、ずいぶん長く曲に関わっていた気がします。
――すると、sanaさん的には、お話が決まってから待ちわびて、じりじりすることも多かったんじゃないですか?
sana 早くレコーディングもしたいけど、緊張もするし……みたいな、ずっとドキドキしている状態でした。
菅野 僕としても「やっと出た!」って感じですよ(笑)。
――『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』から劇伴を手がけ続けている菅野さんにとっても『ジョジョ』は大切なタイトルですものね。一方でsanaさんは「Heaven’s falling down」がシリーズ初参加になると思いますが、『ジョジョ』という作品について、元々どんなイメージをお持ちでしたか?
sana 絵がめちゃくちゃカッコいいというイメージはずっとあって、荒木飛呂彦先生のことを現代のピカソのように感じてました。世界観にずっと興味はあったけど、勝手に難しそうだなと思ってたんですが、主題歌のお話をいただいてから、原作を第1部からしっかり読み込んで……改めて、とてつもない作品だと思いました。
――『ストーンオーシャン』の原作にあたる第6部ではなく、第1部から読まれたんですね。
sana はい。第6部の主題歌を担当するということはわかっていたんですけど、いきなりそこから読むのは違うなと思ったんです。結果、読みながら「なんでもっと早く読んでおかなかったんだろう?」と思いました。完成された世界観から、びっくり箱のように多彩な要素が飛び出してくる。衝撃でしたね。
――アニメ『ジョジョ』は、これまでの主題歌も作品の熱量を受け止める強烈なものばかりでした。
sana そうですね。主題歌のオファーをいただいたときに、瞬間的に思い浮かんだのはやはり「ジョジョ~その血の運命(さだめ)~」(『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』OPテーマ)でした。本当に『ジョジョ』のためだけに作られた特別感と、過剰なほどの迫力ある歌い方、曲全体の持っている殴りかかるようなパワー。あのとてつもなさは知っていたからこそ、最初はどうこの作品の主題歌に向き合ったらいいんだろう? と不安も感じました。
――「Heaven’s falling down」について、菅野さんへの主題歌のオファーはどのようなものだったんですか?
菅野 ずいぶん前のことだから少し記憶が薄れているのですが……劇伴の打ち合わせのときに、合わせて話があったはずですね。いつも『ジョジョ』の主題歌は劇伴と並行して作っている印象があるので。
――先ほどのお話だと、決まってから曲を完成させるまでの時間が長かったと。
菅野 今回の曲は、これまでで一番時間をかけていますね。
sana おおー!
菅野 アレンジもメロディも、何度も書き直しました。プロデューサー陣と「もうちょっとこうしたい」というやり取りを何度も重ねて、このシリーズらしいこだわりも込めながら、今の形になった感じですね。『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』もそうでしたが(両シリーズとも後期OPテーマの作曲・編曲は菅野祐悟によるもの)、基本的にはあくまで劇伴を頼まれていて、その流れで主題歌の話も来ているんだと思うんです。
――というと?
菅野 『ジョジョ』の音楽の世界観を僕が作っている、その流れでOPテーマも作らせたら面白いかもね……みたいなことなんじゃないかなと(笑)。それもあって『ダイヤモンドは砕けない』『黄金の風』のOPテーマ(「Great Days」「裏切り者のレクイエム」)には劇伴曲の要素も混ぜていましたが、今回僕の方ではそういうことはやっていないんです。
sana 青木カレンさんの書かれた英語詞では、ちょっとだけ入れてくださっていたんですよね。
――サビの“The sky is breaking down”は、「Great Days」の“Break Down!”というフレーズからの流れを踏まえた作詞だとTwitterに投稿されていましたね。菅野さんが今回のメロディやアレンジに劇伴の要素を入れなかったのは、何か理由が?
菅野 大きな理由があるわけではないんですけど、今回はプロデューサー陣と僕の中で、割と明確なゴールがあったんです。それを形にするのに、今回は劇伴の要素を入れる感じではなかった。先ほどsanaさんもおっしゃられていましたけど、世界観を表現しているという意味では、やはり田中公平さんの作られた「ジョジョ~その血の運命~」が『ジョジョ』を代表する楽曲だと思うんですよ。でも空条徐倫という主人公と、『ストーンオーシャン』の世界観にはそれとは違ったニュアンスが必要だ……そんな認識を僕も、プロデューサー陣も、それからアニメの監督陣も持っていたんです。歌う方はもちろん、メロディ、トラックといった部分も含めて、お洒落でカッコいい、だけど『ジョジョ』らしい力強さもある曲にしなければならない、と。結果的には、自分にとって理想的な楽曲が作れたと思っています。
sana たしかに、劇伴の要素が明確には入っていないんですけど、作品からは独立していない……ちゃんとストーリーの中に、この作品の世界観の中に存在するような楽曲だなと、受け取ったときには感じました。最初はインストバージョンを聴かせていただいたんですけど、その時点でもう、最後の戦いの壮大な雰囲気が一気に頭の中に広がって、本当に感動しました。いい意味で90年代っぽい哀愁みたいなものもあって。このスケール感は、劇伴を手がけられている作曲家さんだからこそ作れるものなんだろうなと思いましたね。
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