「Tokyo 7th シスターズ」や「D4DJ Groovy Mix」の開発などでも知られる株式会社DONUTSが手がけるスマートフォン向けアプリゲーム「ユアマジェスティ」(以下、ユアマジェ)。「音楽×RPG」をテーマに据え、世界のピンチに現われた「王」たちと、それを補佐するプレイヤー・小役人の戦いを描くアプリゲーム『ユアマジェスティ』。この作品では、キャラクターそれぞれにCVを担当する声優陣とは別に歌唱担当が用意され、様々な作曲陣が提供したそのキャラクターだけのオリジナルソングが多数用意されている。
第5回目となる今回は、カンタレラ(CV:竹達彩奈/SINGER:星咲花那)のイメージソング「Finale.」と、現在開催中のクリスマスイベント「スノードーム・ファンタジー」の楽曲としてヘレナ(CV:大原さやか/SINGER:藤川千愛)&アンジュー(CV:外石 咲/SINGER:門山葉子)が歌う「スノードームで踊りましょう」の2曲を提供したみきとPに、楽曲の制作過程を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 杉山 仁
■連載一覧はこちら
――まずはみきとPさんが作曲のオファーを受けた際に感じた、「ユアマジェスティ」の魅力などがあれば教えていただけますか?
みきとP 最初にいただいた資料にキャラクターのイラストが載っていたんですけど、そのイラストがすごくきれいで「美しいな」と思いました。まずはその印象が強かったですね。それもあって、「どんな作品なのかな?」と興味を惹かれるような感覚でした。
――「ユアマジェスティ」は「音楽×RPG」がテーマになっていて、キャラクターボイスを担当する声優陣と、ゲーム内楽曲のボーカルを担当するシンガーの方々とのダブルキャスト制を採用しているのがユニークな作品です。
みきとP その辺りからも、「音楽に力を入れているんだな」ということが伝わってきました。そういう作品に抜擢されたという意味で、ちょっと責任感を感じつつ、「頑張らなきゃな」と思っていましたね。あと、実際にボーカルレコーディングのディレクションをさせていただいたときに、初めてリモートではなく現場で開発チームの方々とお会いしたんですが、そのときにみんなテンションが高くて、すごく楽しい雰囲気だったのも印象的でした。いわゆるビジネスライクな感じではない、とても良い雰囲気だったんです。
――なるほど。例えるなら、バンドのレコーディングでスタジオにメンバーが集まってワイワイするような雰囲気……?
みきとP そうですね(笑)。みんなで1つの作品を仕上げていこう、という一体感を感じました。それで僕も、モチベーションを切らせることなく最後まで制作できたと思います。
――では、実際の楽曲制作時のエピソードを教えてください。まず、カンタレラのイメージソングとして制作された「Finale.」は、どんなふうに作っていったのでしょう?
みきとP 制作したのはもう結構前のことになるんですけど、「Finale.」の場合だと、最初に開発チームの皆さんから「いつか滅びる世界に向き合う少女」というテーマをいただいたと思います。それを見て、「退廃的で美しい世界観だな」と思ったのを覚えていて。でも、ダークさや滅びるような雰囲気を全面に出すというよりも、まるで世界の終わりをしっかり見届ける「強さ」が感じられるような、スケールの大きなテーマを意識して考えていきました。
――世界の終わりは来るけれども、それをただ悲観的に描くのではない、ということですね。「かわいい」と「悲しい」が混ざったような雰囲気が、カンタレラというキャラクターや、恐らく元ネタになっただろう歴史上の人物にすごく合っているように感じました。
みきとP その絶妙なラインというか、バランスを取っていくのが最初に考えたことでした。明るいのもおかしいですし、悲しいのもちょっと違うな、というところで、力強さを意識して、楽曲のテンポ感やキックを4つ打ちにして、広がりがあるようなイメージを意識していきました。これまで自分が聴いてきた音楽の中で、「そんなバランスの曲があったかな……?とも少し思い出しながら、全体のイメージを考えていきました。
――ギターロックでありつつも、イントロの部分がアコギで始まっているなど、アレンジ面でもその絶妙なバランスが表現されているように感じます。
みきとP そうですね。「Finale.」は作詞作曲を僕が担当して、アレンジをYK from 有感覚さんにお願いしたので、その辺りは一緒に考えていったんですけど、イントロの部分は「アコギからバンッ!と入る展開がいいな」と思って加えてみたアイデアでした。歌詞についても、「地平線」という言葉を使ったりして、鳥のような、羽ばたいているようなモチーフをイメージしています。そのうえで、サビの最後の“終焉の鐘が鳴り響く 愛すべき人想い抱えて 見届けよう”finale””というところに、言いたいことがすべて詰まっているというか。ここがバシッと決まったことで「これは良いものにできそうだな」という感覚がありましたね。
――開発スタッフの方々とのやり取りのなかでアイデアが広がったことはありますか?
みきとP 「Finale.」に関して言うと、最初に送ったものでほとんどOKをいただいたので、あとは細かい部分で少しやり取りさせていただいた程度でした。オーダーの際に、「こんな雰囲気の曲でお願いします」というリファレンスをもらっていたんですが、その曲とは曲調などは全然違うものにしつつも、その「匂い」だけを表現できるように意識して作曲していきました。歌詞についても、いただいていたイメージやキーワードがあったので、シナリオなどを読みながら作っています。色々な変化を経て紆余曲折あって今の形になったというよりも、「最初から完成形まで真っ直ぐ進んでいって出来たような曲」になったと思います。
――カンタレラの歌唱担当のシンガー・星咲花那さんの歌はいかがでしたか?
みきとP 星咲さんは、歌もめちゃくちゃ良かったですし、楽曲の理解度を高めてきていただいたので、もうほとんどお任せでした。それに僕自身、これまでディレクションをたくさんやってきたなかで、初めは構えて色々とディレクションをしていたんですけど、最近は「シンガーの方が歌いたいように歌ってもらったほうが良いものができる」と思っているので、ボーカルの方向性については基本的にお任せるようになってきているんです。「やりたいようにやってください」と。僕のほうでは、例えば「歌い出しをもうちょっと強くしてみましょう」というような、歌として成立させるための部分だけ伝えています。1点、キーをどうするかを現場で話し合ったりはしましたが、最終的には元々作ったときのキーでレコーディングしました。もちろん、星咲さんの歌なら、どのキーでもいけた気がします。
――星咲さんの歌でいいますと、先程話してくださったサビの終わりの“見届けよう”finale””という部分のボーカルも決まっていましたね。
みきとP そこはもう、バシッと決めていただいたな、と。曲で大事なのって、歌い始めや、一番の終わりやサビの終わりのような聴く時の取っかかりになる部分だと思うんですけど、「Finale.」ではAメロの“平線のブルーが明ける頃 静寂は歌い出す”という部分も、本テイク前の最初のレコーディングのときから「これが星咲さんの歌なんだな」「カンタレラの歌が始まったな」というオーラを感じたのを覚えています。その時点で「今日のレコーディングはいいものになりそうだな」、と。今聴いても、Aメロの星咲さんの歌が曲をリードして引っ張ってくれているような感覚がありますね。
SHARE