音楽ダウンロードサービス「mora ~WALKMAN®公式ミュージックストア~」において、2022年に最もダウンロードされた楽曲・アルバムをランキング形式で発表する「mora 年間ダウンロードランキングTOP100」(集計期間:2021年12月1日~2022年11月30日)が先日公開された。
今回、リスアニ!での執筆および配信番組のMCを数多く務める青木佑磨、音楽プロデューサー・音楽評論家の冨田明宏、そしてリスアニ!編集長の馬嶋 亮の3名によるアニメ音楽座談会を実施!「リスアニ!RADIO」でもお馴染みのメンバーと、今年1年のアニメ音楽をmoraのアニソンランキングとともに振り返ってみよう。
TEXT BY 河瀬タツヤ
▼mora 2022年間ダウンロードランキング アニソン部門
https://mora.jp/special/animesong_ranking2022
冨田明宏 年末らしい対談企画「mora×リスアニ!スペシャル座談会」。まずmoraのアニメ部門の2022年年間ダウンロードランキング総合1位は、Aimerの「残響散歌」でした。色々なところで話題になっていたし、Billboard Japanの2022年年間チャートでも総合1位を獲得しているのですが、これはやっぱり『鬼滅の刃』の作品としての強さと、Aimerのこれまでの10年以上の活動が実を結んだのでしょうね。
青木佑磨 『鬼滅の刃』は劇場版(『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』)から少し間が空いてからのTVアニメ2期の放送だったのに、全然熱が冷めていませんでしたね。
冨田 それこそ主題歌アーティストが発表された当初は「LiSAからAimerになるんだ!」というざわつきもありましたけど、蓋を開けてみたら、1年かけてこの結果になったという。
馬嶋 亮 今年のmoraのトップ10は、この時代のアニソンシーンを象徴しているよね。
青木 そうですね。一般アーティストによるアニメタイアップが一気に増加した90年代を経て、再び一般アーティストによるアニソンが盛り上がっている印象があります。
冨田 今年は特に顕著じゃないですか?
青木 昔からアニメ作品に寄り添った曲を作ってくれる一般アーティストもいましたけど、現在はそれが増えましたよね。アニメタイアップには真剣に取り組むべき、という常識も広がったんでしょうけど。
馬嶋 なんだか時代が変わったね。
冨田 実際、アニメ/アニソンに対する理解度みたいなものもだいぶ深まったんじゃないかな?どの楽曲もアニメ作品の主題歌としての役割をまっとうできるくらいの熱量を持っていて、しかも、現在の日本のトップアーティストと呼ばれるようなバンドやシンガーソングライターがそれを担っているという。これは裏を返せば、アニメという文化が日本のメインストリームになってきたことの証左なのかもしれない。
冨田 今年は劇場版の大作が多くて、そのなかの1つが『ONE PIECE FILM RED』。Adoの『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』はアルバムランキングで1位になっていて、アルバム、タイアップ、コラボレーションすべてで世の中を席巻しましたね。『ONE PIECE FILM RED』は海外でもヒットして、この楽曲はそのまま海外でも使われている。そして今年の11月に、Adoが(アメリカの老舗音楽レーベルの)ゲフィンレコードとパートナーシップを結びました。
馬嶋 それびっくりした!
冨田 だから、日本のアニメ/アニソンと海外の繋がりがすごく見えた。Adoはボカロや歌い手のカルチャーから出てきた、とても日本的なアーティストじゃないですか。
青木 海外の人が想像する「アニメ大国・日本」の象徴みたいですね。
馬嶋 やっぱり良くも悪くも顔を出してないというのは、ある意味、色んなところに受け入れられる汎用性があるだろうからね。ほかにも色んな要素がハマったんだろうけど、特に海外の好みに寄せようとせず、ローカライズしないで海外に受け入れられたのが嬉しいよね。
冨田 「海外に寄せなくても、日本の音楽のままでいいんだ」という視点だと、『チェンソーマン』もそうだと思う。OP・EDテーマの各担当アーティストは、まさに日本屈指の実力派アーティストたち。『チェンソーマン』という船に乗って、そのまま海外に行くという感じがするじゃないですか。
青木 マキシマム ザ ホルモンが代表的ですけど、褒め言葉としてJ-ROCKをしっかり感じるじゃないですか。洋楽にかぶれすぎていないというか、邦楽感がちゃんとあっていいですよね。
馬嶋 やっぱり、こういうランキングで時代が見えるね。
冨田 『劇場版 呪術廻戦0』や『SPY×FAMILY』といった話題作の楽曲もランキングに入っていますね。
馬嶋 作品が大ブレイクしたものはちゃんとランキングにも紐づいているし、楽曲も良いものね。『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(以下、『水星の魔女』)は秋クールのアニメなのに、OPテーマのYOASOBI「祝福」が3位に入ってくるのはすごいね。
冨田 YOASOBIの人気はもちろん、『水星の魔女』のブレイクの仕方もあるだろうね。
青木 『水星の魔女』は『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』のように、オタク以外の一般の人もみんな観ている感じはあまりしないですけど、ちゃんといい作品だし盛り上がっている。YOASOBIといえば、『BEASTARS』2期のOPテーマ「怪物」がアニソンだということを、どのくらいの人が今覚えているんだろう(笑)。鈴木雅之さんがカバーしていたり、結構独り歩きしているじゃないですか。
馬嶋 そういう“楽曲としてのパワー”が、J-POPのアーティストにはあるよね。アニソンアーティストはタイアップが付かないとセールスが落ちることが多いし。
青木 しかもこのmoraのダウンロードランキングはCDというグッズ感がなくなるわけじゃないですか。だからこれは“曲を欲した人たちのランキング”だし、しかもハイレゾがあるということは、より高音質で聴きたい人たちが集まってきている結果だと思うんですよ。
馬嶋 でも、アルバムチャートを見てみるとガラッと景色が変わるじゃない? こっちには「俺たちのアニソン感」がちょっとあって。
冨田 ありますね。そのなかでも今年忘れちゃいけないのが『パリピ孔明』。音楽アニメは企画力が勝負じゃないですか。OP・EDテーマに「チキチキバンバン」や「気分上々↑↑」といったカバー曲を採用するとか、OPテーマを歌う企画ユニットのQUEENDOMとか、2022年にこれを当ててくるのは結構難しいセンスだと思いますよ。
青木 たしかに、数ミリずれただけでボケすぎてスベっていることになりますものね (笑)。『パリピ孔明』がアルバムランキングの3位に入っているということは、まとめて音楽を聴きたい人の需要がしっかりあったということで。
冨田 あと今年の話題作でいうと、夏クールのアニメで1番盛り上がっていた『リコリス・リコイル』。EDテーマのさユり「花の塔」がシングル11位、OPテーマのClariS「ALIVE」がシングル14位に入っています。
青木 変な言い方ですけど、『リコリス・リコイル』は嬉しい売れ方だったんだよなあ。作品がちゃんと面白くて、曲が作品に寄り添っていて誠実で、何かが独り歩きせずに全部まとめて盛り上がっていた感じがある。
馬嶋 「俺たちのアニソン」という言葉で片付けるのもよくないんだけど、往年のアニメ好きもちゃんと反応していて、かつ好きだという反応がすごく多かったよね。
冨田 女の子のバディものという意味で、『リコリス・リコイル』から『水星の魔女』という流れもあるし、それは『水星の魔女』がここまで注目された理由の1つでもあるんじゃないかな?
青木 そうですね。オタクたちの身体が百合を欲しているタイミングでしたから(笑)。
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