INTERVIEW
2022.12.27
2021年3月にスタートした「青春」×「アカペラ」純度100%の最強ボイスエンターテインメント「アオペラ -aoppella!?-」(以下、アオペラ)。実力派声優たちが紡ぐ極上のアカペラは多くの人を魅了している。今夏には新ユニット・VadLipも登場し、未来へのさらなる広がりを感じさせる「アオペラ」から新たなJ-POPカバーが誕生した。
UNISON SQUARE GARDENの名曲「シュガーソングとビターステップ」で6人の新たな魅力を放つFYA’M’。今回、猫屋敷由比(Bass)を演じる濱野大輝に話を聞いた。
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INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち
PHOTOGRAPHY BY 小島マサヒロ
――まもなく3年目に突入する「アオペラ」ですが、アカペラを始められてから今日までの時間は濱野さんにとってはどのようなものでしたか?
濱野大輝 本当に無我夢中で駆け抜けてきました。ある意味、作品のコンセプトと同じような部活動的な楽しさもありながら、そのなかで感じるもどかしさや難しさみたいなものを、キャラクターと一緒に経験できたんじゃないかなと感じます。もちろん部活動として自主的に「よし、始めていくぞ」という心持ちと、キャラクターをいただいてお仕事として「やるぞ」という気持ちとでは違う面もありつつも、初めて経験するものに対しての期待感や自分の実力の足りなさも感じながら、それらを1つ1つ解消して、解消したと思ったらまた新たな壁にぶつかって……と繰り返しながら純粋にキャラクターと一緒にアカペラを楽しんでいけた時間だったような気がします。
――課題をクリアするためにはどんなことをしていたのでしょうか。
濱野 本来アカペラって「このラインはこういうふうにやってみよう」と自分たちでアレンジをして、たくさん歌いながらみんなで合わせていくことが醍醐味だと思うのですが、僕らは曲のデモをいただいて、それをいかにキャラクターとして昇華し、自分のモノにしていくかが大事な作業になるんですね。耳コピをするために日々曲を聴きながら、マスクの下や自宅でひたすら自分のラインを歌い、また聴いて歌い、どういうふうに口で演奏したら自分の思うような音が出るのかなと調べていくんです。そういうところはある意味、音楽的なのかなと思います。
――猫屋敷由比としてベースを担当される濱野さん。楽譜で分類していけば、どんな楽曲にもベースパートはありますが、ベースを担当したからこそ音楽の聴き方に変化はありましたか?
濱野 ありますね。元々音楽が好きなので、色んなバンドの楽曲を聴いてはいたんですけど、自由自在に動き回ることも出来るベースラインの中でもこれまではシンプルなものよりもブイブイ動くベースが好きだったんですよ。ただ、アカペラでベースをやらせてもらうようになってから、シンプルが故の難しさを感じられるようになりました。もちろん楽器で演奏するベースとアカペラのベースとでは違うとは思うのですが、ベース本来の役割である「リズム隊として楽曲を支える」という作業がいかに大事なものなのかを再確認できたのは、アカペラに接したからなのかなと思います。普通の楽曲を聴いていても「ここは主張したいのかな」とか思うんですよね。音色を変えているところにこだわりを感じたり、今では楽曲でベースを聴くのが楽しいです。
――アカペラのベースの面白さや難しさ、魅力に思っているところなどを教えてください。
濱野 練習も楽しいですが、動画を見ながら考察するのも楽しいです。YouTubeでもアカペラ動画をあげられている方がたくさんいらっしゃるのですが、そういう方々の動画を見ながら、「アオペラ」の楽曲と照らし合わせて練習もしているんです。楽曲をカバーするときには特に感じるのですが、元々あるベースラインをアカペラとしてどう昇華させられるか。みんなが聴こえるものでなくてはいけないし、指標になるものでなくてはいけないですから、バンドとしてのベースよりもアカペラのベースの方がリズム隊の役割として大きいのかなとも思いました。
――そんななかで共に音を紡いできたFYA’M’に対してどのような想いがありますか?
濱野 FYA’M’の面々は、最初はチグハグなところから描かれていたんですよね。キャラクター性もみんな違いますし。特に僕が演じさせていただいている由比くんはカタブツなところがあり、武士めいた部分が個性であり良いところでもあって。ただそれが故に融通が利かないところもあったのですが、徐々に周りのメンバーに充てられて楽しむことを覚えてきましたし、周りと接するときに「自分はこうだから」ということよりもみんなの良さを理解して、それぞれの個性と共存していこうとするようなところがストーリーでも見えてきました。そういう変化って、すごく部活的でもあるなと感じてもいます。演じさせていただいている僕らも、お会いしたことのある方ばかりだったのでやりやすさもすごくあったのですが、なかでもアカペラという改めて一体感を求められるコンテンツに触れているからこそ、違う場所でお会いするとより親密度が増した感覚があるんです。共通の話題もそうですし、同じ壁に向かってみんなで取り組んでいるので絆が増したんじゃないかなと感じることが増えました。
――FYA’M’サウンドの下支えとして相方である深海ふかみくんとCVを担当される仲村宗悟さんへの想いもお聞かせいただきたいです。
濱野 ふかみくんのパーカッションに向かう姿勢に影響されて、どんどんレベルアップしていかなきゃと思えますね。お互いに切磋琢磨している環境だと猫屋敷くんも言っていますが、ライバルということではなく同じメンバーだからこそ一緒に上昇していきたい、というのが2人の関係性ですよね。直接2人で「ここはこうしよう」と話し合っている描写は少ないですが、「相手がこう持ってきたなら、こうしよう」というのは部室や声を合わせる場面でお互いに意識し合いながら、アカペラに向き合っているんだろうなと感じます。どちらが先に録っているかは毎回違いますが、どちらが先になっても「ここでこういうふうに重なってくるんだな」と相手の声に対して思うんですよね。最初のカバー曲のときにはお互いにわからない部分が多かったのですが、ディレクションをしていただきながら徐々にFYA’M’の音ってこうだよね」というイメージがリズム隊の中でも掴めてきている気がします。「阿吽」とまではいかないですが、その感覚や印象を重ねれば重なるほど音楽的に気持ち良いと感じられるようになっていく。そういう場所は今後もっと増えていって、楽曲としてより厚みが増すのかなと思います。
――仲村さんと「アオペラ」やFYA’M’についてお話をすることはありますか?
濱野 イベントなど、アオペラに触れているときはもちろんですが、プライベートで会ったときや連絡を取り合っている際にも「今回の曲も難しいね」という会話から始まって、「どういうふうにやった?」とか「収録したときのディレクションはどういう感じだった?」とか話しますね。パーカッションは色んな音が出るのがすごく面白いところだと思うので「あそこはどんなふうに練習したの?」と聞くこともありますし、どんどん進化していることを会話からも感じて「負けないように頑張らなきゃな」と思う気持ちは、キャラクターたちよりも僕個人としての方が強いかもしれないです(笑)。宗悟は音楽的な才能やセンスもある人なので、そんな宗悟とリンクできるようなベースにできたらいいなといつも思っています。
――その「アオペラ」にはリルハピと、ニューカマーのVadLipもいます。彼らの印象を教えてください。
濱野 最初から一貫して変わらないのは「アオペラ」というコンテンツの中で王道をいく、メインストリームを進んでいくのがリルハピだなっていうことですね。「アオペラ」らしさや爽やかさ、主人公感はリルハピのカラーとして変わることなく感じています。そんななかでリルハピがどんどん成長してきて、チグハグだったメンバーにどんどんまとまりが出てきているのを見て、FYA’M’も刺激されてより高みを目指すことができている。お互いにのし上がっていこうといったライバル関係は興味深く見守っています。そして、そんななかでVadLipという第三のグループが出てきましたね。キャラクターとの関係性はまだまだこれからわかっていくことが多いと思うのですが、楽曲を聴いただけでグッと掴まれるような感覚がありました。途中参加でやってきたとは思えない完成度というか……「本当にアカペラは初めてですか?」と言いたくなるようなメンバーもいますし(笑)。自分のパートもあって、どうしてもベースやパーカッションの部分に目がいきますけどね。各々が主役になれる強い色を持ったグループが入ってきたので、物語も楽曲もかき乱しながら「アオペラ」を盛り上げてくれるんじゃないかなっていうのは、VadLipに期待している部分でもあり、ちょっと危機感を覚えるところでもあります。「負けてられないね」というのを宗悟とか浦田(わたる)くんと話したことを覚えています。
――VadLip登場での「踊」と「怪物」の衝撃は大きかったですよね。
濱野 武内(駿輔)くんの音から始まる「踊」は入りから衝撃的でしたね。グッとレベルが上がったと感じましたし、仕掛けてきたなぁというか殴り込んできたなってほうが正しいくらいの衝撃でした。あのチームのコンセプトに合うような楽曲を引っ提げて勝負を賭けに来たようなところがあったので、そのお披露目となったイベントのときには、会場にいらしていた皆さんと同じくらいの衝撃で僕らも楽しんでいました。
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