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2022.12.27

「治安が悪い」どころじゃない違法DJイベント!? 「電音部」カブキエリアの初イベント“GR Masquerade”レポート

「治安が悪い」どころじゃない違法DJイベント!? 「電音部」カブキエリアの初イベント“GR Masquerade”レポート

りむる新曲も! 病みかわいいカブキエリアの闇と光

続いては、バンダイナムコスタジオ所属のクリエイター、野村渉悟(Shogo Nomura)によるDJ。りむるのソロ曲「ハカハカイプリンセス」のプロデュースおよび作曲・編曲は彼によるもので、ほかにもボカロP/コンポーザーのツミキとボーカルのみきまりあによるユニット、NOMELON NOLEMONのライブサポートを務めるなど、鍵盤奏者としても活躍している。そんな彼のDJはとにかくカラフルでカオティック。ハードテクノ~ドラムンベース~ブレイクコアのようなダンスミュージックがかかったと思いきや、次の瞬間にはプログレやフュージョン的なサウンドになっていたり、ときにはゲーム音楽(個人的に「源平討魔伝」の楽曲には痺れた!)が流れたりと、次の展開がまったく予想できないワンアンドオンリーのスタイルだ。

そんななかに差し込まれる「電音部」楽曲、ハラジュクエリアのユニット曲「Distortion (feat. Yunomi)」や「シロプスα (feat. 安藤啓希)」、大賀ルキア(CV: 星川サラ)「NANAIRO STAGE (Gu^2 Remix)」のセレクトや全体の印象から受けたのは、過剰なかわいさのなかに潜む異物感、あるいは過激な感情。そう、このDJプレイもまた、カブキエリアのとある一面、りむるという存在を表現したものだったのではないだろうか。そこかしこに感じられたアバンギャルドな要素もまた、りむるの邪悪性と承認欲求を表したものだったような気がしてならない。いずれにせよ野村は、この日一番ポップで最高にイカれたDJを届けてくれたように思う。

そしてカブキエリアより3人目のソロステージ、りむる役のをとはが、愛らしいゴスロリ風の衣装で登場。「禁言」のMVでは地毛のショートカット姿だったが、今回はツインテールのウィッグを付けてさらにキャラクタービジュアルに合わせた格好だ。彼女が披露したのはもちろん、りむるのソロ曲「ハカハカイプリンセス」。冒頭の“♡んでくれる?”という歌詞からインパクト大だが、甘い声で暴力的な言葉を吐いていく彼女の“破壊のお姫様”ぶりは凄まじく蠱惑的で、ときに背中の肌が露わになった部分をフロアのほうに向けてオーディンエンスをさらに惑わす。個人でクリエイター/アーティスト活動を行い、“かわいいの権化”とも言えるクリエイティブで「電音部」にも以前からイラストなどで関わっていたをとはが、りむるの危うくも病みかわいい世界観をステージ上で再現してみせた。

をとは(りむる役)

をとは(りむる役)

「電音部」ファンが集ったこの日の客層の好みも意識しつつ、自分らしいアッパーなDJプレイで会場を盛り上げたのが、Repezen Foxxの楽曲制作などで知られるEDMトラックメイカーのKOERU。海外製の最新EDMナンバーやRepezen Foxxほか自身が手がけたクラブバンガーを惜しげもなく投下しつつ、鳳凰火凛(CV:健屋花那)「CHAMPION GIRL」や大賀ルキア(CV:星川サラ)「Be All Right (Prod. Tatsunoshin)」といった「電音部」発のアゲ曲も挿んでガンガンに攻めまくる。

そのほかにもPa’s Lam SystemやYunomiといった「電音部」に所縁のあるクリエイターの楽曲、ボカロ、アイドル、アニメソングまで、新旧の暴力的にカワイイ系ダンスミュージックでオーディエンスのハートをキャッチ。KOERUと同じくRepezen Foxx周りの楽曲を手がけるチバニャンが提供した某曲ではもしかしたらこの日一番の結束力が見られた瞬間だったかもしれない。

そしてここでまさかのサプライズ!りむる役のをとはが再びステージに姿を現し、KOERUが提供したという未発表曲(タイトル不明)を世界初披露したのだ。曲調としてはハードコアテクノ的な熱狂が渦巻く、とにかくアッパー極まりないアゲアゲナンバー。をとはが途中でステージに寝転がって歌う場面もあり、なかなかに酔狂な楽曲だった。

をとは(りむる役)

をとは(りむる役)

時計の針が深夜4時を回った頃、「禁言」を手がけたS.L.N.Mのメンバー、Shin WadaによるDJがスタートする。まずは深く厳かなサウンドに谷川俊太郎の詩「闇は光の母」の女性による朗読が重ねられ、会場は愛すべき闇の世界へと沈んでいく。そんな導入を経て叩きつけられたのは、ハードコア、ガバ、シュランツといった硬質で暴力的なサウンドの嵐。しかもWadaは楽曲をミックスしてプレイするのではなく、1曲終わるごとに少しの空白期間を設けて次の楽曲に移行する、それぞれの楽曲を最後までしっかりと聴かせるスタイル。そのストイック極まりない姿勢と選曲に、「電音部」目当てでやってきた観衆は戸惑いながらも、やがてダークな音の波に身を浸していく。

空気を震わせるほどの重低音とキックの乱打がヒプノティックな空間を生み出していくなかで、S.L.N.Mの先鋭的なラップ曲もプレイされ、ここで「禁言」との繋がりが薄っすらとながら見えてくる。最後はダークアンビエントから光が浮上していくような感覚とその残響が会場を満たすなか、Wadaが静かに立ち去り、代わりにりむる役のをとはが登場。りむるの声音で「今日のイベントはこれでかいさーん」「私もさっさと帰って寝よ」と告げて、まるでキツネにつままれたようなあっけなさと共に“GR Masquerade”は幕を閉じた。

正直「電音部」のイベントであることを忘れてしまう瞬間が多々あったほど、コアな音楽に溢れていたが、ラストのShin WadaのDJもまた、カブキエリアの闇の部分(とその闇が孕んでいる光の要素)を示していたように思うし、彼がイベント後にSoundCloudにアップしたミックス音源を聴くことで、その意図をさらに深く理解できるはずだ。カブキエリアとは、キャラソン文化とは接続しづらいアンダーグラウンドな音楽にも光を当ててほかに類を見ない音楽を生み出す、「電音部」というコンテンツの新たな挑戦であり、“GR Masquerade”とは彼女たちの音楽的コンセプトを1つのパーティを通じて表現する場だったのだろう。彼女たちの「闇」が今後の「電音部」にどんな刺激をもたらすのか、俄然楽しみになる一夜だった。

そして、後日リスアニ!にて大神 纏役・吉田凜音、安倍=シャクジ=摩耶役・SONOTA、りむる役・をとはのインタビューを掲載予定。ぜひ楽しみにしていてほしい。


●ライブ情報
電音部 AREA MEETING -HARAJUKU-
2023年3月5日(日)開催

会場:中野サンプラザ (東京都中野区中野4丁目1−1)
開催時間:
『起』の部…開場11:30/開演12:30
『承』の部…開場17:00/開演18:00
※公演時間は3時間程度を予定しております。

■出演者
▼『起』の部
小坂井祐莉絵(桜乃美々兎LIVEset)
大森日雅(水上 雛LIVEset)
長谷川玲奈(犬吠埼紫杏LIVEset)
picco
Moe Shop
and more…

▼『承』の部
小坂井祐莉絵(桜乃美々兎LIVEset)
大森日雅(水上 雛LIVEset)
長谷川玲奈(犬吠埼紫杏LIVEset)
Neko Hacker
Yunomi
and more…

※出演者は予告なく変更になる可能性がございます。

■チケット料金
『起』の部…¥7,200(指定席/税込)
『承』の部…¥7,200(指定席/税込)
通しチケット…¥14,400(指定席/税込)

▼詳細はこちら
https://denonbu.jp/event/hrjkmtg

関連リンク

電音部公式サイト
http://denonbu.jp

電音部公式Twitter
https://twitter.com/denonbu

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