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INTERVIEW

2022.11.25

『チェンソーマン』第7話“ゲロチュー”回に捧げる奇跡のEDテーマ。anoが語る「ちゅ、多様性。」かわいい×カオスの突破力

『チェンソーマン』第7話“ゲロチュー”回に捧げる奇跡のEDテーマ。anoが語る「ちゅ、多様性。」かわいい×カオスの突破力

第7話の衝撃シーンを踏まえて「完全に振り切った」楽曲に

――『チェンソーマン』と、anoさんが発信してきた死生観は、お互い近いものがあるという印象を受けました。デンジなどの登場人物の生き様は、anoさんにどう映っていますか?

ano 『チェンソーマン』で描かれている「生きていれば何回でも蘇ってやり直せる」というところは、僕も昔から感じてる部分ではあって。自分の欲望に真っ直ぐ突き進みながら生きるのはかっこいいと思うし、自分もそうやって生きてるつもりだけど、もっともっといつ死んでもいいように生きたいなと思いました。あと『チェンソーマン』のみんなを見ていると、あらためて「僕たちはいつ死んでもおかしくない状況に身を置いているんだな」と思うんです。

――そうですね。たまたまデンジがそこを通り掛かったから助かった人もいるし、あと1秒動き出すのが遅かったら銃の悪魔に襲われることもなかった、という人もいたり。

ano マンガやアニメは味方や主人公側のキャラクターをできる限り生かすし、もし死んじゃったとしてもそれをドラマチックに描くことが多いと思うんです。でも『チェンソーマン』はどんなキャラクターもあっけなく死んでいく。あっけなさすぎるなと思うけど、アニメやマンガだからそう思うだけで、僕たちが生きてる生活ではそれが普通だとも思う。だから「僕らがこんなふうに殺し合ったら、そりゃ簡単に死んじゃうよね」ってすごく納得して。

――死は必ず誰しもに訪れるものですしね。

ano そうですね。死のシーンはショックで一瞬絶句するんだけど、でもそうだよな、死なないなんて絶対ないしな、ってすぐ腑に落ちる。すごくマンガやアニメらしい表現もたくさんあるんだけど、そういう部分がすごくリアルで、他人事ではないなという気持ちにさせられました。僕も普段の曲作りで死生観は大事にしているので、『チェンソーマン』を観ていると色々と考えたり感じてしまって。そのうえですごく面白い作品だと思っています。

――「ちゅ、多様性。」は元・相対性理論の真部脩一さんとのタッグで制作されています。こちらはどのような経緯で実現したのでしょう?

ano それこそ最初はチェンソーが想像できるギッタギタの曲を作りたいと思ったんですけど、12アーティストのラインナップを見たら、そういうものを最大限かっこよく表現できる方々が揃っているなと思ったんです。だから「自分にしかできないことをしよう」「もうちょっとファニーで、かわいくてポップだけどカオスなことをしたい」と考えました。それを一緒に実現してくれそうなのは、僕の中でまず真部さんだったんです。ダメ元でオファーをしたら、真部さんも僕と一緒にやってみたかったとお返事をいただいて。そこからすごくとんとん拍子に進みました。

――制作はどのような手順で進めていったのでしょうか。

ano 僕が歌詞を書き始めるタイミングで真部さんも曲を作り始めて、真部さんから送ってもらったメロディに僕が歌詞を書いていきました。真部さんから届くデモには仮歌詞が乗っていて。真部さんの言葉の世界観も好きなので、崩したくないなー……と思いつつ、やっぱり僕の言葉で書きたかったので結構崩しちゃいました。「この言葉は絶対入れたい」というイメージが固まっちゃってたんですよね。

――具体的にはどういう言葉でしょう?

ano “我爱你 酔いが覚めない”とか、“猛反対 お手お座りでハイ♡報酬”とか、“喉の奥がチクンチクン/僕はドクンドクン/鼓動で孤独消してみせてよ”とか。言葉で遊びたかったんです。7話の物語を踏襲しつつ、それだけじゃないものにしたかったので、それを真部さんがうまく調整してくれました。誰かと共同で作詞をすることがあまりなかったので、すごく新鮮でした。

――作品の物語を知っていると、“Get on chu!”や“Bet on chu!”という言葉の影響もあってデンジと姫野のエピソードとして聴けますが、それ抜きで聴くと“Get”や“Bet”というワードから恋の駆け引きが想像できました。

ano そう感じていただけるのは、落ちサビの3行が影響してるのかも。ちなみにそこは真部さんが書いてくれています。僕が書いていた歌詞は「詩的すぎる」という理由で却下されました(笑)。

――なんとも光栄な却下理由ですね(笑)。第7話は姫野がデンジにキスをした瞬間に嘔吐するという衝撃の内容ですが、どう向き合いましたか?

ano いつも自分が歌詞にしているような死生観と全然違うから、最初は「どうしよう」って思いました(笑)。でも僕にそういう面白さを期待していただけてるのかな、とも思ったんです。だから「じゃあ完全に振り切ってゲロチューのこと歌えばいっか」という気持ちにもなれました。すごくまともだと思っていた姫野が酔うとキス魔になって、デンジにキスした瞬間に吐いちゃうっていう話はかなり衝撃的だったし、普段クールな姫野だけど月に1回は死んでしまったバディのお墓参りに行く優しさがあって、アキに一途なところはかわいくて。デンジも姫野もめちゃくちゃなんだけどピュアで、そんな似た者同士の2人のエピソードが描かれた7話をオファーしてもらえて嬉しかったですね。

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