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INTERVIEW

2022.11.11

語られてこなかった3年間、その逆境を経て放たれる1stアルバム。今だから言える「幸せ」の真意とは? YURiKAロングインタビュー

語られてこなかった3年間、その逆境を経て放たれる1stアルバム。今だから言える「幸せ」の真意とは? YURiKAロングインタビュー

アニソンシンガー・YURiKAが、デビュー5周年にして念願となる1stアルバム『KiRA☆KiRA』を11月11日にリリースする。2017年の『リトルウィッチアカデミア』から最新作『ロマンティック・キラー』まで、これまで担当してきたアニメ主題歌全曲に加え、自身がファンと公言するGRANRODEOの飯塚昌明や敬愛するゲームブランド・Key所属の折戸伸治らから提供を受けた新曲など、全16曲収録の充実作だ。しかし本作のリリースに至るまでの長い時間、彼女は見えないところで必死にもがき続けていた――。ここではYURiKAとデビュー以来タッグを組む音楽プロデューサー・水野大輔も交え、1万字以上に及ぶロングインタビューを敢行。3年間もの逆境と、それを跳ね返したYURiKAという存在、それらをすべて内包した1stアルバムの新曲について明らかにしていく。

INTERVIEW BY 清水耕司(セブンデイズウォー)
TEXT BY 須永兼次

これまでと異なる体制でのリリースに至った経緯とは?

――今回はYURiKAさんにとって、デビューから5年以上を経ての1stアルバム、しかも、シングル「Le Zoo」(2019年11月20日リリース)からも3年ぶりのリリースということで、並々ならぬ想いが詰まっていると思います。

YURiKA 「ようやく……」というところはすごく強いですね(笑)。ファンの皆さんの中にも「なんでアルバムがこんなに遅くなったの?」と感じてらっしゃる人はいると思うんですけど。

――『リトルウィッチアカデミア』OPテーマの2曲から始まって、『宝石の国』に『はねバド!』、『BEASTARS』の各タイアップ楽曲と、2019年の時点でもアルバムを出すには十分の曲数がありましたからね。

YURiKA 実は、「Le Zoo」をリリースしたあとにもアルバムリリースの話はあったんです。曲順を決めて、「こんな新曲を入れたいね」という話もしていましたし、アルバムを引っさげたツアーの会場も押さえてもらってもいたんですよ。ただ、当時は新たに2曲のアニメ主題歌を歌う予定があったので、そこまでを収録してからアルバムにしよう、というプランだったんですね。ところが、立て続けにタイアップのお話が急になくなってしまって。歌う準備も進めていたし「頑張るぞ!」と意気込んでいたところだったので、正直とても悲しかったですね。そこがちょうど契約満了のタイミングでもあったので、新しい所属レーベルを探すことになり、アルバムリリースが遅れることになりました。ここまで遅れるとは思っていなかったですけど。

水野大輔 そこはYURiKAさんに対して、プロデューサーとしては本当に申し訳なかったです。ちょうどコロナ禍が始まってしまったので、直接ご挨拶に行くような営業が全然できなくなってしまったんですよ。しかも、どこのレーベルにしても先のリリース計画がぐちゃぐちゃになってしまっていて。知人のプロデューサーに話をしても「相談には乗りたいけど、今は非常にタイミングが悪い」という返事をもらってばかりでした。そこで、自分が音楽事業の部門長として所属する音楽制作会社「CREST」で、音楽レーベル機能を作ろうという動きもしていたので、そこからアルバムをリリースするという方向にシフトしました。

――2曲のアニソンタイアップがなくなった段階で、いったんアルバムを出すという選択肢はなかったんですか?

YURiKA そういう話ももちろんありました。ただ、(2021年頃の時点で出す場合の)アルバムに入る最新のアニソンが、2年前の「Le Zoo」になるというのが許せなかったんですよ(笑)。

――そこにノンタイアップの新曲が入ったとしても。

YURiKA それは「私がなりたかったアニソンシンガーではないなぁ」という感覚でした。私はアニソンシンガーであることを軸に、一曲一曲と真剣に向き合っているつもりなので、ノンタイアップだから何か変える……とかはもちろん一切ありません。でも、もし自分がYURiKAのファンだったとしたら、新しいアニメの歌が聴きたい気持ちになるだろうというか、アルバムを出すきっかけはアニメの歌であるべきだと思ったんです。私が思うアニソンシンガーでいるために。

水野 そこに関して言えば、僕も「早く出さないと」という気持ちですごく焦っていました。でも、東宝の担当者から「東宝からリリースすることはもちろんできるけれども、次のステップに進みづらいんじゃないですか?」「YURiKAさんがアニソンを歌い続けたいならば、出せばいいというものではないんじゃないですか?」とも言われ、思い直したんです。東宝には、新しいレーベルを探すことについて了承をいただいていましたし、むしろ全面的に協力するということで、アルバムをリリースするならば既存のタイアップ曲を収録してもいい、とも言ってもらっていました。「次のところへの営業がしやすいだろうから」ということで。これは本当にありがたかったですね。YURiKAさん本人としても、「これまでの曲、歌えなくなっちゃうんですか?」ということをすごく気にしていたので。

YURiKA 今も変わらず応援してくれているので、東宝さんには本当に感謝しています。

――そうすると、今回のアルバムはレーベルの移籍作、という形になるのでしょうか?

YURiKA いえ、あくまでも「今回は」という形ですね。あくまでもレーベルの話で、事務所は東宝芸能のままですし。

水野 契約形態としては専属ではなく、CRESTとしてはYURiKAさんのファンクラブにも携わることになり、複合的なビジネスの1つとしてアーティスト運営に関わる、という立場です。そもそもは、他のアニソンレーベルさんに預けることも考えていたのですが、コロナ禍によって想像以上に厳しい状況が続く中、レーベルを立ち上げるという僕の仕事に絡ませた、というところです。

次ページ:アルバム制作の決め手となった『ロマンティック・キラー』

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