REPORT
2022.10.07
2022年9月17日、夏の名残りを感じさせる虫の声が響く東京・日比谷公園の一角、日比谷野外大音楽堂。台風が近づき天候を心配されながらも晴天となった心地よい空の下、数々のレジェンド・ロックミュージシャンが伝説を築いてきた聖地で「HIGHWAY STAR PARTY 〜GRANRODEO VS LIVE Ramble Scramble〜」が開催された。
「HIGHWAY STAR PARTY」は、メンバーのソロ活動も含めたJAM ProjectやGRANRODEO、玉置成実、ChouCho、nano.RIPEなど、アニソンシーンをメインに活躍する人気アーティストが集うマネジメント&音楽制作会社「HIGHWAY STAR」が、初めて社名をイベントタイトルに掲げて開催した2daysの音楽フェスだ。初日の9月17日は、GRANRODEOが初の2マンライブにチャレンジ。オープニングアクトに今年4月にCDデビューしたばかりの超新人男性2人組ユニット・SUIREN、GRANRODEOの対バンバンドにはあのBLUE ENCOUNTをゲストに迎え、過ぎゆく夏を引き戻すような熱気あふれる演奏を、野外ライブらしい開放感のもと繰り広げた。
開演前の16時半、続々とファンが客席に集まってくる中でステージに一陣の爽やかな風を吹かせたのは、TVアニメ『キングダム』第4シリーズのOPテーマ「黎-ray-」で、今年4月にデビューしたばかりのSUIREN。2020年よりYouTubeを中心に音楽活動を開始した彼らのコンセプトは、“水彩画のように淡く儚い音を描く音楽ユニット”だ。
キーボーディスト/アレンジャーのRen、ボーカルのSuiがステージに登場すると、客席から温かな拍手が湧き上がる。フッと息を吸い込んで1曲目に披露されたのは、インディーズ時代から歌われている「景白-kesiki-」。エモーショナルなRenのキーボードのみの演奏と、繊細な表現力を持つSuiの個性的な美声が、気持ちのいい風に乗って客席へと静かに流れ込んでくる。
彼らにとっては、デビュー前の今年3月、Veats SHIBUYAで行った1stワンマンライブ“SUIREN 1st ONE-MAN LIVE 「Replica0」”以来、人前で生演奏をするのは2度目だ。「SUIRENという名前を覚えて帰っていただけたら」と自己紹介した後、「硬いわ~!緊張する~!」と苦笑いする二人が、とても初々しい。続いて、彼らのデビュー曲である「黎-ray-」をワンコーラス届け、7月にデジタルリリースされた最新曲「アオイナツ」へ。力強くも儚げなSuiのハイトーンとRenのハーモニーが、Renの奏でる情熱的なピアノに絡み、どの楽曲も、重みのあるバンドサウンドでアレンジされていた原曲とはひと味違う、新しい魅力を教えてくれた。彼らが残した「もしかしたら、この後の先輩達のライブ本編で、僕たちのことなんか吹っ飛んでしまうかも知れないけど、また必ず僕たち、今度は自分達の力で、ワンマンで、ここに戻ってきたいと思います」の言葉が実現する日が、とても楽しみになった。
開演時間の17時。いよいよ2マン前半戦を担うBLUE ENCOUNTの登場だ。彼らのファンにはおなじみの入場曲、MISSPRAYの「Break Down The Clock」が流れると同時に一斉に立ち上がるオーディエンス。BLUE ENCOUNTファンがGRANRODEOファンを先導するかのように大きく拳を挙げてクラップを響かせると、ステージ下手から田邊駿一(Vo&Gt)、江口雄也(Gt)、辻村勇太(Ba)、高村佳秀(Dr)の4人が手を振りながら登場し、ポジションに着く。客席を見渡しながら、田邊がギターを掻き鳴らしながら、開口一番「めっちゃいい感じですね、皆さん準備できてる? 野音で初めて、BLUE ENCOUNT始めます、よろしくー!」と叫んでスタートしたのは「ポラリス」だ。江口の軽快なアルペジオが火を吹き、田邊のパワフルな歌声が日比谷の空にこだまする。その熱を保ったまま、高村がカウントを刻み、辻村が野太い声でシャウトして「DAY×DAY」へと繋ぐ。『僕のヒーローアカデミア』『銀魂゜』と、初っ端からアニメファンに馴染み深いヒットチューンを畳みかけ、メンバーが汗だくになりながら、あっという間に空気を我がものにする。
「GRANRODEO先輩の2マンライブ、呼んでいただけて光栄です」と挨拶した田邊。GRANRODEOファンのノリの良さに「アウェイだと思っていたら全然ホームだった」と語り、いつものライブではやったことがないメンバー紹介を始めてメンバーを困惑させていたのも、BLUE ENCOUNTファンには新鮮だったかも知れない。そして、開演前には明確にできなかった疑問をひとつ呈する。「(2マンライブのゲストに)呼んでもらえてすごく嬉しいんだけど、あなたと同じ疑問を僕たちも持ってます。(GRANRODEOは)なんで俺達を呼んでくれたんでしょうか?(笑)」。その答えは後ほど明らかになるのだが、軽妙でフレンドリーな田邊のトークに会場の熱も高まっていく。
そして「今日という日をとてつもない物語にしたいと思います!」の言葉に続いて放たれたのは、ライブの定番曲「NEVER ENDING STORY」と夏気分全開の「SUMMER DIVE」。4ピースならではのストレートなギターロックチューン。ステージ狭しと踊り回る田邊の「もっともっと!」の声に合わせて、オーディエンスもタオルを思い切り回して応えた。
「みんなすごいな」と感心しながら、切れた息を整えた田邊。「せっかくだから、スペシャルコラボレーションさせていただきたい」と、GRANRODEOの二人=KISHOW(Vo)とe-ZUKA(Gt)をステージへと呼び込むと、真っ先に駆け込んできたe-ZUKAは超ハイテンションで指ハートを飛ばして走り回る。普段と違うはしゃぎ方をしているe-ZUKAを観て、相方のKISHOWが爆笑。田邊を筆頭に、BLUE ENCOUNTのメンバーも困惑しながら笑っている。そしてここで、ついに田邊の“なぜBLUE ENCOUNTがGRANRODEOの2マンライブのゲスト呼ばれたのか?”という疑問にも回答が! KISHOWいわく「うちのスタッフがBLUE ENCOUNTの大ファンで、ヤツの職権乱用です」。意外な答えに、客席から笑い声と共に拍手が送られていた。
そしてKISHOWが「一緒に歌いたい曲があったのよ……俺、出てんなって(笑)」と言って、2組が初のコラボレーション。その楽曲は、KISHOWが声優として“トビ”こと夏目健二役で出演したTVアニメ『あひるの空』のOPテーマ「ハミングバード」! KISHOWと田邊が歌声を重ね、e-ZUKAと江口が向き合ってギターを奏でる姿に観客も熱狂する。2番に登場する“それでも自分なりに必死でやってんだよ”のフレーズを、KISHOWが“トビ”になりきって、“それでも自分なりに必死でやっとるんじゃ!”と広島弁で叫ぶと、KISHOWと田邊が顔を合わせてガッツポーズ。GRANRODEOが去った後も「トビがおった! 幸せ!」と、メンバーは大喜びだった。
そんなBLUE ENCOUNTにとって、日比谷野外大音楽堂は初めてのライブステージ。「(GRANRODEO)先輩に連れてきていただいたおかげで、ここが特別な場所になりました。ジャンルは違うけど、こんなにも一緒になれるのは音楽の力です」と語り、ライブハウスたたき上げのBLUE ENCOUNTとGRANRODEOとは歩んできた歴史は全く違うが、「今日の景色がGRANRODEOの歴史の中で一番の歴史にしたいんです!」と言って歌い上げたのは、GRANRODEOも主題歌アーティストとして名を連ねていたTVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のOPテーマ「Survivor」。すっかり薄暗くなってきた日比谷の空に、田邊の力のこもった歌声が響き渡り、彼らの代表曲のひとつ「VS」へと熱狂を繋ぐ。「日比谷行けるかー! 踊ろうぜ!」と放たれた「バッドパラドックス」の「さぁ、日比谷荒ぶれー!」の叫びに、オーディエンスが一体となって跳ね回り、田邊が足を振り上げる。
「GRANRODEOめっちゃカッコいい。でも俺達の曲も負けてないくらいカッコ良かっただろ? これを俺達は高校の時から続けてきたし、これからも続けていく。最後の曲をこれから歌うけど、何のタイアップもついてない。これからも全力でいろんな物語の主題歌を作っていくけど、単純に他でもない、あなたの物語の主題歌を書いていきたい。これからも、あなたの主題歌を作らせてください!」
田邊の熱いメッセージと共に届けられたラストナンバーは「青」。彼らのルーツにあるメロディックなパンクサウンドを詰め込んだこの曲は、2023年2月11日の日本武道館公演を最後に海外に活動拠点を移す辻村を応援する楽曲であり、全てのリスナーに向けた、今を自分らしく生き、チャレンジする背中を押すポジティブなメッセージが込められている。BLUE ENCOUNTらしい熱のこもったステージは、どの楽曲も彼らの内面から湧き上がる意志の強さとタフさに満ちあふれていた。そんな彼らの意気に呼応するように「青」の演奏中、GRANRODEOファンがペンライトをブルーに灯していた美しい景色も、とても印象的だった。
会場を取り囲む木々からの虫の声も賑やかに、すっかり夜を迎えた日比谷野外大音楽堂。BLUE ENCOUNTの熱いパフォーマンスから約30分の転換時間を挟んだ18時半、いよいよ本日のホストバンド・GRANRODEOのターンがやってきた。ステージが暗転し、ライトが交錯する中でミニアルバム『僕たちの群像』収録の軽快なインストゥルメンタルナンバー「18SDGs」が流れると、GRANRODEOファンが一斉にペンライトを赤く灯して振り上げる。サポートメンバーの瀧田イサム(Ba)、SHiN(Dr)がポジションに着くと、真っ赤なライトに照らされた舞台中央に、e-ZUKAとKISHOWが歩みを進める。オーディエンスの抑えきれないクラップを断ち切るように「18SDGs」が止み、軽やかなカッティングギターから始まったオープニングナンバーは、ギターロックの痛快さとピアノロックのエモさを併せ持つ「Question Time」だ。客席にカラフルなペンライトが跳ね、KISHOWがパワフルな歌声を投げかけると、e-ZUKAが左右に軽やかなステップを踏む。
「Question Time」から一転、2曲目はブルージーな色をのせた「日常ホライズン」。KISHOWの歌声はますます力を増し、e-ZUKAがギターとユニゾンするスキャットが、どこか懐かしい切なさを運んでくる。そんなノスタルジックな気分から、ファンキーなブラスサウンドがギミカルな「Punky Funky Love」が一気に陽気な気持ちに引き戻してくれる。KISHOWが歌詞を歌い替えた「未来の良し悪しは 日比谷が決めろー!」の煽りとジャンプに応えて、オーディエンスが弾けるように飛び跳ねる。
開放的なギターロックを思う存分聴かせてくれたBLUE ENCOUNTからのバトンを受け取るかのように、軽快な楽曲から始まったGRANRODEOのステージだが、そこから先は1曲ごとに、曲調と色調を変えていく。田邊の思いの丈を楽曲と共に紡ぎながら、1編の小説を描き出していくようなBLUE ENCOUNTのステージとは対照的に、GRANRODEOのライブは舞台や登場人物を時々で変え、技巧を凝らして描かれていくバラエティに富んだ短編集のようだ。そんなバンドごとの表現の違いをはっきりと感じられるのも、2マンライブならではだろう。
改めて挨拶をし、SUIREN、BLUE ENCOUNTと各アーティストのファンへの感謝の言葉を告げるKISHOWとe-ZUKA。大きな声で鳴いているスズムシをいじりながら、e-ZUKAが突然、童謡「虫のこえ」を歌い出したり、「久々の野音で嬉しいですよ。しかもブルエンの皆さんも今日、初野音。彼らは野音でやるたびに思い出しますよ、一番最初の野音はGRANRODEOと一緒だったって、僕らが亡くなっても(笑)。SUIRENもそうです。彼らのことだから『ミュージックステーション』に出ても言ってくれると思いますよ(笑)」と、フリーダムなトークで笑わせてくれるのもGRANRODEOらしさだ。
そんなゆるっとした空気に楔を打つように、KISHOWが「最後まで楽しんでってちょーだい!日比谷ダーリン!」とシャウトして、グラマラスなラブソング「Darlin’」へ。突き刺さるビートを刻む豪快な「チキン・ヒーロー」、チャイナとジャパニーズが融合し重いグルーヴを叩き込む「カミモホトケモ」で“らしさ”を見せつけた後に放たれたのは、BLUE ENCOUNTの「Survivor」へのレスポンスともいえる『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』EDテーマ「少年の果て」。KISHOWの雄々しい歌声がドラマティックなe-ZUKAのギターと響き合い、エモーショナルな空間を創り出した。
ここでサポートメンバーの紹介に移るのだが、やっぱり話題は“虫”。SHiNが「少年の果て」の演奏中にハイハットに羽虫が止まったという話をすれば、瀧田は以前の野音ライブで舞台に集まってきたセミの話を思い出し、それぞれにe-ZUKAとKISHOWがツッコミを入れて笑いを起こす。だが、まるでお笑い番組を観ているようなコミカルな掛け合いは束の間の休息に過ぎなかった。
「じゃあここから、立て続けにゴキゲンなナンバーをやっていきますんで、最後までよろしく日比谷!」
KISHOWの声をきっかけに、三度、GRANRODEOのステージは燃えたぎる炎をぶち上げる。怒涛の後半戦のスタートを飾ったのはは、ゴシックなイントロから始まった重量級の「0-GRAVITY」。真っ赤なライティングの中、久々に演奏されたこの曲にGRANRODEOファンからウワッ!と声が挙がる。激しく振られるペンライトに、KISHOWが噛み付くようなロングシャウトを放つ。ストリート感あふれるラップをギミックに推進力の高いビートを叩きつけた「RIMFIRE」でさらにギアを踏み込んだバンドは、KISHOWの「最高だぜ!もっとアガっていくぜ、日比谷野音! 野音を熱狂の渦のハコに変えていくぜ!」の言葉に後押しされるように、SHiNのツーバスとKISHOWのシャウトが怒号となって響き渡るヘヴィロックナンバー「NO PLACE LIKE A STAGE」で熱狂の渦のど真ん中へとオーディエンスをたたき落とし、GRANRODEOの疾走するロックンロールなライブアンセムの1曲「modern strange cowboy」で、全ての汗を飛び散らせた。
「僕らは大体、アニサマで“夏が終わったー!”と感じるんですが、9月になってこういう機会をいただけて嬉しく思います。SUIRENの二人とBLUE ENCOUNTという素晴らしいアーティストと一緒に(ライブが)できて、嬉しく思います。スズムシもありがとう!(笑)」とe-ZUKAが語り、KISHOWが「本格的に秋がやってきますけど、最後の最後に、この暑い中、野外でみんなで盛り上がったことを忘れないように」と言って、GRANRODEOステージのラストを飾ったのは、切なくメロディックなラテンロックナンバー「エンドレスサマー」だった。オーディエンスの全員が、高く手を掲げてワイプ。夏の終わりのひとときを、熱く燃え上がらせた。
拍手が鳴り響いたアンコール。サポートメンバーと共にステージに戻ってきたGRANRODEO。その姿をよく見るとKISHOWとe-ZUKAは、映画『E.T.』とBLUE ENCOUNTがコラボした夏フェスTシャツを着込んでいる。そしてKISHOWが「さっき僕たちはBLUE ENCOUNTの曲をやらせてもらったんで」と言って田邊を呼び込む。二人が着ているTシャツを見て、田邊が「僕らのコラボTシャツじゃないですか!」と小芝居をすると、e-ZUKAが「嘘でしょ? 今日来る時にしまむらで買ってきたんですよ!」とボケて、「なんで僕とe-ZUKAさん集まったら漫才みたいになるの!?」と田邊。その横では、「いや、ずっと(二人の漫才を)見てたいね」とKISHOWが笑う。今日が初の対バンだというのにトークの相性も抜群だ。
そんな2組が、正真正銘のラストに選んだコラボナンバーは、GRANRODEOの「Can Do」。田邊が“息が止まるほどの大逆転シュート決めたら”と歌えば、KISHOWが隣でジャンプシュートをマイム。田邊と肩を組んだe-ZUKAは、満面の笑顔でギターを弾きまくり、翌日に出番を控えたJAM Projectにもリスペクトを込めて、KISHOWが「MOTTO!MOTTO!!」と観客を煽って、全員でジャンプを決めた。
「HIGHWAY STAR PARTY」の名にふさわしく、ラストは出演者全員がステージに揃って今日の楽しいパーティを振り返る。e-ZUKAが「今度は僕らがブルエンのライブに!」と言えば、田邊も「またGRANRODEOとの2マンを実現させたいと思います!」とオーディエンスに約束。アニソンフェスでもなかなか実現しない、レアな顔合わせによる熱狂の夜のエンディングは、割れんばかりの拍手に包まれた――。
TEXT BY 阿部美香
「HIGHWAY STAR PARTY 〜GRANRODEO VS LIVE Ramble Scramble〜」
2022年9月17日(土) 日比谷野外音楽堂
出演アーティスト:GRANRODEO /BLUE ENCOUNT
OpeningP Act:SUIREN
<DAY1>SET LIST
【SUIREN(OpeningP Act)】
SE.Entrance
01 景白-kesiki-
02 黎-ray (TV Anime Size)
03 アオイナツ
【BLUE ENCOUNT】
Opening SE
01 ポラリス
02 DAY×DAY
03 NEVER ENDING STORY
04 SUMMER DIVE
05 ハミングバード (with GRANRODEO)
06 Survivor
07 VS
08 バッドパラドックス
09 青
【GRANRODEO】
01 Question Time
02 日常ホライズン
03 Punky Funky Love
04 Darlin’
05 チキン・ヒーロー
06 カミモホトケモ
07 少年の果て
08 0-GRAVITY
09 RIMFIRE
10 NO PLACE LIKE A STAGE
11 modern strange cowboy
12 エンドレスサマー
EN Can Do (with BLUE ENCOUNT・田邊駿一)
GRANRODEOオフィシャルサイト
https://granrodeo.net/
BLUE ENCOUNTオフィシャルサイト
https://blueencount.jp/
SUIRENオフィシャルサイト
https://suiren-official.com/
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