声優・歌手・ピアニストとして活動する牧野由依が、10月5日にミニアルバム『あなたとわたしを繋ぐもの』をリリース。オリジナルアルバムとしては約4年半ぶりとなる本作は、長編アニメーション『とつくにの少女』主題歌「Touch of Hope」をはじめ、新曲4曲を含む全7曲を収録。岩井俊二や北川勝利らの縁深いクリエイターから、新居昭乃・さかいゆうといった初タッグを組む作家陣まで揃った多彩な顔ぶれとともに、充実の一作を生み出した。今回は本作の話題を中心に、11月に開催を予定しているライブへの意気込みも語ってもらった。
――まずは本作が完成しての、率直なお気持ちからお聞かせいただけますでしょうか。
牧野由依 ミニアルバムだからこそ出せる一体感みたいなものがある、かなり凝縮した1枚になったなという感じがしています。まるで短編集を味わっていただくような感覚でお楽しみいただけるんじゃないかなと思っています。
――本作のテーマやタイトルは、どんなところから決まったのでしょうか。
牧野 去年の11月に出させていただいた「エスペーロ」というシングルが、そもそものきっかけだったかもしれません。あの曲は、TVシリーズで3作品歌わせていただいた『ARIA』シリーズの劇場三部作最終章の主題歌で。TVシリーズから10年以上を経てまた主題歌を歌わせていただけることって、すごく奇跡みたいなことだなとそのとき思ったんです。しかも、それからも色々な作品を録っていくなかで、ご縁や今までの繋がりを感じる時間がとても多かったんですよね。そんななかで「アルバムのリリースを」となったときに、「人との出会いや縁みたいなものが繋がって、今の私がいる。その私がそれをまた紡ぐことによって、音楽を通じて聴いてくださる皆さんと繋がることができる」ということをテーマにしたいなと思いました。そのあと、作品を作るなかでタイトルが決まり……という流れでした。
――曲順についても、牧野さんからアイデアを出されたのでしょうか?
牧野 曲順も話し合いのなかで決めていきましたけど、「この辺にこの曲、欲しいなぁ」というリクエストを、私からも提案させていただきました。
――特に「Touch of Hope」のあとに「エスペーロ」が続くことで、だんだんと始まっていく感のようなものがすごくありますし。
牧野 そうですね。静かに空気が揺らいでいく感じというか……。
――ではまずその1曲目、「Touch of Hope」のお話からお聞きできればと思います。お話いただいたように、3月に配信リリースされていた曲ではありますが、MVも公開されたので改めてお聞きします。楽曲を最初に聴かれたとき、まずどんなイメージが浮かびました?
牧野 一言で表現すると、“感動”という感じでした。壮大さもありながらメロディ的にはとてもシンプルな曲だと思うんですけど、それでいてぐっと心を掴まれるというのが、自分の中では衝撃的で。楽曲を初めて聴かせていただいたときに「めちゃめちゃ感動しました!」みたいなテンション感で返事を送った覚えがあります(笑)。
――第一印象は“感動”だったんですね。
牧野 はい。この曲は『とつくにの少女』という作品の主題歌なんですけど、岩里祐穂さんからの歌詞なども含めて、まさに作品の世界観に寄り添った楽曲になっていて。冒頭の Siúil A Rún(シューラルーン※アイルランド民謡)もすごく切ない感じなので、原作を読ませていただいて感じたイメージを膨らませて、歌わせていただきました。
――そのなかで、特に大切にされたことはなんでしたか?
牧野 言葉1つ1つを細かく拾っていくよりも、肌で感じてもらう部分を大切にする……特に透明度が高ければ高いほどスッと入っていくように感じたので、透明度というか、無垢な感じというか……“無垢な感じを意識する”というのもどうかとは思うんですけど(笑)、そういう部分や真っ直ぐさというものを、大事にしたいなという気持ちでした。
――『とつくにの少女』の主題歌として生まれた曲ではありますが、このタイトルを持つ曲が1曲目に置かれたことで、ある種アルバム全体を体現するような曲にもなったような印象があります。
牧野 そうですね。そもそもこの曲のタイトルは、『とつくにの少女』という作品の中で“触れる”ことがとても大きなこと……という部分からきたものではあるんですけれども。ただ、今回のミニアルバムは全体的に異国情緒みたいなところのある曲も多いので、そういうストーリーの始まりの予感として、聴いてくださる方にとっての考える余白の部分になるという意味では、1曲目という位置がすごくピッタリなんだと思います。
――そしてこの曲のMVが、アルバムのリリースに先駆けて公開となりました。こちらはまさに異国情緒を感じる、非常に神秘的な部分があるものになっていますね。
牧野 本当に、幻想的ですよね。色合いもそうですし、葉っぱが舞っていく様子とか…。私は元々MVに対して、自分の歌のイメージをより具体的にしながら、観てくださる方にお楽しみいただくために、映像の力をお借りしている、という感覚があるんですよ。それに撮影前にはコンテをいただいてイメージの共有もできていたので、当日は田中(のぞみ)監督のイメージに応えられるように……ということを考えながら、身を委ねるような気持ちで撮影していきました。私からは、今回着ている黒い衣装について「こういうものを着てみたいなぁ」とリクエストしたり、「水とか、そういうものを感じられるといいですよね」というお話をしたくらいでしたね。
――そういった水や自然というところが、より神秘的な世界観を生んだのかもしれませんね。
牧野 たしかに。それに、当日はちょうど良い曇り空で。そこからのちのち色の調整などもしていただき、より森の神秘的な感じなどがクローズアップされるよう仕上げていただけたと思っています。私、MVは森とか海とか河原とか、割と自然の中で撮られがちかもしれません(笑)。
――たしかに、自然の中や水辺が多い印象があります(笑)。
牧野 今回もそういったロケーションだったというのもあって、「自然と融合するようにMVを撮っていただくことも多かったな」と、最近すごく感じています。
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