声優アーティスト・梶原岳人が9月28日(水)に2nd ミニアルバム『ロードムービー』をリリースする。本作は「一人一人が主人公で、人生という旅をしていく中で起こる色んなシチュエーションに寄り添える楽曲」がコンセプト。自身が作詞作曲を手がけた楽曲2曲を含む新録全5曲がパッケージされている。
2020年、デビューシングル「A Walk」でアーティストとしての道を歩み出した梶原。少しずつ周りの景色が変わっていくなかで生まれた感情、変わらない想いと変わりたくない想い、忘れたくない大切な思い出……この『ロードムービー』は、彼のリアリティをシティポップテイストで彩ったドキュメントでもある。そこには、音楽をこよなく愛する梶原だからこそのこだわりも詰め込まれていた。
――今作は「一人一人が主人公で、人生という旅をしていく中で起こる色んなシチュエーションに寄り添える楽曲」がコンセプトとのこと。そのタイトルが『ロードムービー』というのが梶原さんらしいなと思いました。
梶原岳人 今回は5曲入りのミニアルバムなのですが、すべての曲が完成したあとにタイトルを考えたんです。5曲に共通するものを考えたときに、これまでの経験だったり、生きてきたなかで実際に使ってきたセリフがあったり……自分の人生に基づいた感覚で曲が成り立っているのかなと感じました。それを映画に例えるならなんだろう?と考えたときに、ロードムービーという言葉が浮かびました。
――聴いた人それぞれに寄り添う曲でありながらも、梶原さんのドキュメンタリーでもあるように感じています。
梶原 そうですね。自分が生きてきた道のりを辿るような、リアルなものになったと思います。ほかの作品に関してもそういうものが基盤にあるので、“改めて”というところではあるんですけど。自分の作詞・作曲した曲も、自分の身から滲み出てくるものを大事にしました。
――「ぼくらのメロディ」「わすれないように」は梶原さんの手によるもの。前作の2nd シングル「色違いの糸束」のインタビューのときに梶原さんの楽曲制作に対するこだわりを教えていただきました。今作にも梶原さんならではのこだわりを感じますが、作品全体を通して梶原さんが特にこだわったところというと?
梶原 言葉選びですね。作詞・作曲した曲以外はコンペで選ばせてもらったんですけども、どれも「自分らしい曲だな」と思っていました。狙ってそうなったわけではないんですけど、自分が耳に残る曲というのは、自分が歌いそうなもの、自分が出しそうな言葉が使われていることが多くて。それと、僕がシティ・ポップ系の曲が好きなので、今回はそのテイストを感じる曲を中心にチョイスさせてもらいました。
――昔からお好きなジャンルだったんですか?
梶原 親が聴いていたこともあって、松任谷由実さんや山下達郎さんの音楽が好きなんです。世界的にシティポップがブームになっていることもあって、ラジオなどで聴く機会が増えて。改めて「良いなぁ」と感じていました。そこをテーマにしてみるのも面白いかもしれないなと。同業の方でやられている方も少ないかもしれないなとも思いました。
――どの曲が最初に完成されたんでしょうか。
梶原 1曲目の「海のエンドロール」だと記憶しています。エンドロールとは言っていますけど、寂しい終わりというよりは、次に向けての始まりのような意味合いを感じたので、オープニングにふさわしいんじゃないかなと。
――初っ端からエンドロールというのが面白いですよね。
梶原 そうなんですよね。いただいた段階でこのタイトルも決まっていて、アルバムタイトルにもハマっていて良いなって。
――「海のエンドロール」は、始まりが“ドォント ドォント ドォント セイ グッバイ”と、あえてカタカナなのも特徴的で。
梶原 最初は英語表記だったんですけど、自分からカタカナにしたいとお願いしたんです。カタカナのほうが目を引くかなと思って。あと歌ったときに……英語だとあまり自分が言わなさそうだなと思ったんです。
――でも梶原さん、帰国子女でもありますよね?
梶原 一応英語圏にはいました(笑)。でも普段からそういう言葉は使おうとは思わないですし、自分だったらカタカナを使ってしゃべるかなってイメージで。
――表記と言えば……梶原さんのこれまでの曲の中にも“忘れない”という言葉がありましたが、梶原さんが手がけられたもう一方の曲「わすれないで」の表記はひらがな。これにも意味があるのかなと。
梶原 ああ、実は「わすれないで」は大学生のときに作った曲なんですよ。タイトル表記がその時すでにひらがな表記だったということもあって。映画学科にいたんですけど、課題で同級生の仲間と映画を作ったんです。僕は出る側として携わっていたのですが、監督の子から「歌もうたってほしい」と言われて。だから、その映画にまつわる曲として作ったものなんです。
――へえ!どんな映画だったんです?
梶原 犬と人間の物語です。主人公の女の子が飼っていた犬が亡くなってしまって、でも犬のことを忘れられず、今でもいるかのように生活を送ってしまう。そうしたなかで周りの助けがあって、現実を受け入れていく……という物語でした。ときには辛い思い出を忘れることも必要な場合もあると思うんです。でも、なくしたくない記憶もあって。辛い現実に直面したことすらも忘れずに大事にしたいというか……そういった想いを込めてこのタイトルをつけました。
――“うたいつづける”など、歌詞にもひらがな表記がこの曲は多い印象がありました。
梶原 犬との温かい話だったからこそ、強い言葉というよりは優しい言葉にしたくて。それでひらがなにしたのかなと思っています。
――犬はデビューシングルのカップリング「橙」にも登場しますよね。「橙」にまさに“忘れない”という言葉がありましたけど、「橙」よりも前にこの曲があったとは。
梶原 自分も犬を飼っているので、映画のことだけじゃなく、その犬のこと、家族に対する想いも込めました。今思えば、学生時代は決して親孝行をしたとは言えなくて。でも家族は変わらずにずっと応援してくれたり、何があっても味方でいてくれたりする。時折実家に帰ったときに……「ああ、こんなに年月が経ってしまったんだ」と感じるんですよね。
――ああ、わかります。
梶原 大切な人たちと過ごす一瞬一瞬を過ごしていきたいなと思っています。時間の記憶を大切にしていきたいなと改めて思いながら作った曲です。
――「時間を大切にしたい」「記憶を大切にしたい」といった想いは、一貫しているような気がします。
梶原 そうですね、常々思っていることではあります。
――ところで、歌詞は当時のままなんですか?
梶原 1番の歌詞までできていたので、2番以降を今回作り直しました。
――1番には“国道を越えたあたり”という具体的な景色が出てきて。それこそ「橙」に“遊歩道”という言葉もありましたが、なんだか懐かしい気持ちになりました。
梶原 ああ、わかります。大学が埼玉にあったので付近の景色をイメージしていたんですけど不思議と懐かしい気持ちになりますよね。
――今回のジャケ写、「otona」のMVに登場する電話ボックスにも同じことが言えると思うんですが、梶原さんは電話ボックスって世代的に使っていました?
梶原 結構皆さんにそれを聞かれるんですよ(笑)。小学生のときに使っていました。携帯を持っていなかったので学校の公衆電話を使うことも。
――テレホンカードとかで?
梶原 そうです。おばあちゃんがストックしてたので「あげる」って言われて(笑)。中3くらいからは携帯を持ってましたけど。
――そういう意味では、梶原さんの中で電話ボックスは“懐かしさ”の象徴でもあるのでしょうか。
梶原 そうですね。昔を思い起こさせるものではありますね。
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