MyGO!!!!!が9月10日、東京・飛行船シアターにて“MyGO!!!!! 2nd LIVE「そのままを抱きしめて」”を開催した。
メディアミックスプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」より、今年4月に誕生したMyGO!!!!!。あくまで同ライブ時点での話だが、彼女たちの特徴はキャラクターを演じるキャストの正体が明かされていないこと。ステージでは、スポットライトを照らさない、あるいはフロアから見て逆光となるような照明演出を用いることで、彼女たちのシルエットにキャラクター性を纏わせていたが、“現実(リアル)”と“仮想(キャラクター)”が同期するライブの全貌とはいかに。
改めて説明すると、MyGO!!!!!は、“迷子でもいい、前へ進め。”をキャッチコピーに、ボーカルの燈(ともり)、サイドギターの愛音(あのん)、リードギターの楽奈(らーな)、ベースのそよ、ドラムの立希(たき)の5名で構成されるガールズバンド。現時点で、よく言われる“謎に包まれた”という言葉が、これほど似合う集団もいないことだろう。
後述する音楽性も含めて、Poppin’PartyやRoseliaといった、既存のリアルバンドとは良い意味で同じコンテンツに属しているとは思えず、当日の会場における雰囲気も異様な緊張感に包まれていたのをよく覚えている。まるで、MyGO!!!!!を知っている人だけが行ける空間に導かれたような感覚。我々もあの場では、何らかの迷子だったのかもしれない。そう思わされる没入感が、そこにはあった。
ライブ本編は、オリジナル曲「迷星叫」(まよいうた)で開幕。「バンドリ!」には、これまでも過去の経験に思い悩み、音楽を通して自身のコンプレックスに向き合うキャラクターは存在してきたが、MyGO!!!!!ほどアイデンティティに苦しむものではなかった。燈の歌声は、無垢な想いが傷つき、生きるうえで感じた矛盾に苛まれ、こちら側の自意識に訴えかけるような、10代の“瞬間的なセンチメンタル”を体現したものだった。
そうした“痛み”と、そこからの解放を表現する燈の歌声は、ほぼ確実に“あの音楽”との親和性が高いだろう。ボーカロイド楽曲である。そう考えていた矢先に続けて披露されたのが、3曲目以降の一二三「猛独が襲う」、DECO*27「二息歩行 (Reloaded)」、カンザキイオリ feat. 初音ミク「君の神様になりたい。」だった。
ライブ序盤での緊張か、あるいは何らかの悲しみか。時にわざと裏返したような歌声が無垢な心を描く“踊るロック”の「猛独が襲う」、“僕は無力だ 僕は無力だ 僕は無力だ 僕は無力だ 僕は無力だ”と、自分自身を責める様子を息着く間もなく聴き手にぶつけ、若干の怖さすら抱かせる「君の神様になりたい。」など、ラウドなバンド演奏とともに鬼気迫る迫力を浴びせられる。こうした同じフレーズをリフレインする楽曲は、原曲の下手なモノマネでは寒く聞こえてしまうものだが、MyGO!!!!!の演奏はただのカバーの範疇に収まらないものであったし、燈が曲中で見せたロングトーンのブレなさに脱帽しかなかった。
燈のほか、特に驚かされたメンバーが、ドラムの立希。今年7月開催の“MyGO!!!!! 1st LIVE「僕たちはここで叫ぶ」”では、諸般の事情により出演キャンセルと告知されていたが、ライブ終盤の数曲のみサプライズ登場した彼女。今回は、燈がライブ序盤のMCで「立希ちゃんが最初からいてくれるのが嬉しくて」と、ほっこりする言葉で語った通り、ライブ全編にフル出演……したのだが。
あれほど鮮烈な才能を発掘したことに、改めて「バンドリ!」制作陣のキャスティング力の強さを伺い知らされた。彼女の奏でるドラムは、“パワフル”という言葉では役不足なところで、2曲目「イニシャル」では、自身の左右を瞬時に逆サイドにスライドさせるような難しいリズムさえ叩きこなしていた。今回のライブで最も唸らされたかもしれない。
もちろん、まだ2nd LIVEにも関わらず、“フェス慣れ”したバンドマンかのようなノリ方で演奏に身を委ねていたリードギターの楽奈、縁の下の力持ちとして、細かな場面でメンバーとコンタクトを取っていたサイドギターの愛音、指弾き/ピック弾きを場面に応じて使い分けていたそよと、バンドメンバー全員の演奏にいちいち注目させられたとも記しておこう。
ライブ中盤には「Time Lapse」「ティアドロップス」と、Poppin’Partyのカバー曲を続けて披露。「Time Lapse」では、流れるようなメロディながらも、“トメハネ”をしっかりと心得た楽奈のギターソロのキレが輝く。そこから、楽曲終盤に全員でアカペラ歌唱する際には、フロアの集中力も特に感じられたところ。
その後、04 Limited Sazabys「swim」のカバーでも印象的だったのだが、この日に集まったのは本当に熱量の高い、少数精鋭なファンばかりだったのだろう。「swim」でのクラップの一体感には思わずハッとさせられた。何を言っても、MyGO!!!!!はライブ時点でシングル未発売、YouTubeの登録者数も約1.2万人という、いわば“駆け出し”の状態である。やはり世の中、どんな物事、どんなコンテンツにおいてもアーリーアダプターたちの“面白いもの”に対する嗅覚の鋭さとは共通なのだろう。
SHARE