INTERVIEW
2022.09.28
『ラブライブ!サンシャイン!!』のスクールアイドルグループ・Aqoursの一員としても活躍する一方で、自身が傾倒する1980年代のシティポップサウンドを前面に打ち出したソロワークでも話題を集める声優・降幡 愛。今年4月には自身初となるカバーミニアルバム『Memories of Romance in Summer』をリリース、山下達郎「RIDE ON TIME」など夏の名曲を彼女らしく歌った好盤となった。
そんな夏を経て早くもリリースされることになったカバーミニアルバム第2弾『Memories of Romance in Driving』では、1980年代の名曲の中からドライブにぴったりな楽曲をコンパイルした、またしても素晴らしい1枚に。彼女が考えるドライブミュージック、その魅力に迫った。
――4月にリリースされたカバーミニアルバム第1弾『Memories of Romance in Summer』は、夏の曲をコンパイルした作品でした。初のカバーアルバムということで、ご自身の中でリリース後の手応えはいかがでしたか?
降幡 愛 最初はカバーミニアルバムを出すイメージが正直なかったのですが、ライブでカバーを披露することも多かったので、ファンの方からの「カバーも出してほしい」という声もあって実現したのが第1弾でした。リリースするにあたって自分の好きな歌を中心にスタッフさんと選曲したのですが、収録曲のうち「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」のMVをたくさんの人に観ていただけたんです。声優・降幡 愛というよりも、“「君たちキウイ」の人”という感じで観てくれた方が多くて、行く先々の現場でも「あの曲のカバー、良かったね」って皆さんすごくキャッチーに受け取ってくれたので、それも相まってとても好感触な作品になりました。そこから間を空けずに第2弾をリリースできることになり、“80’s シティポップ”という大きな軸がある中で、前回のテーマは夏だったので「次はドライブやシティ感があるものが良いのではないか」ということで、今回は“ドライブミュージック”というテーマで6曲セレクトしました。
――5ヵ月くらいのインターバルで、割と早い段階から第2弾を作ろうというふうになったわけですね。
降幡 80’s仲間の武藤彩未ちゃんと、ずっとバックで演奏してくださっているnishi-kenさんと7月に行ったスペシャルライブ「Ai Furihata “Trip to BEACH”」のときにはすでに動いていて、そのライブで初めて今回のカバーミニアルバムに収録の「City Hunter ~愛よ消えないで~」をnishi-kenさんのハモリとともに披露しました。『シティーハンター』の楽曲はアニメソングの王道で知っている方も多いので、すごく良い反応をいただけましたね。
――今回の選曲に関しても、降幡さんのフェティッシュな部分といいますか、色々と探れる部分がありますね。前回は“夏”というわかりやすいテーマでしたが、今回の“ドライブミュージック”は人それぞれの捉えようがあるので、選曲の幅も広くなるのかなと思うのですが。
降幡 そうですね。“ドライブ”と一口に言っても、私としては、夕方から夜にかけてのドライブのイメージが強かったりして。ただスタッフさんと話していくなかで、6曲並べたうえでのバランスを考えて、王道の楽曲も入れたいし、自分らしさが出る楽曲も入れたいし……。
――第1弾と比べてより自分のやりたい方向性が反映できたアルバムになっていますよね。それこそラ・ムーと菊池桃子さんは、ご自身が元々好きでディグっていたアーティストだと公言されているので、ルーツが伺える部分かなと思います。
降幡 本当にそうですね。自分が掘ってきたものや好きなものを6曲選んだ感じなので、私の趣味嗜好がよりわかりやすいと思います。
――ちなみにドライブってされますか?
降幡 免許はもう4年くらい前に取ったんですけど、ペーパードライバーなので都内ではなかなか運転できなくて(苦笑)。本当なら首都高とかをバリバリ走りたかったですし、なんなら現場にもマイカーで通いたいくらいなんですけど……。せっかく(“ドライブ”をテーマにしたカバーミニアルバムを)作ったのに車に乗らないのもなんですし(笑)。
――今回のカバーアルバムシリーズについて、プロデューサーの本間昭光さんとは、どんなやり取りで制作を進めたのですか?
降幡 いつもとは違って、カバー集ということで私は歌詞を書いていないので、サウンドに関しては本間さんにほぼお任せする感じでした。打ち合わせをしていくなかで、本間さんは「前作は割と邦楽寄りのアレンジだったから、今回は洋楽っぽいアレンジをメインにしたい」とおっしゃっていて。出来上がったものを聴くと、グルーヴが強調されていてダンスミュージックっぽくなっているように感じました。特に「プラスティック・ラブ」は(原曲と比べて)テンポも上げていたりしますし。
――まさにそうなんですよね。「City Hunter ~愛よ消えないで~」のイントロも、シンセのフレーズからギターのリフが入るところはジャーニーの「Separate Ways」っぽかったりして、原曲とはアレンジをガラッと変えていますよね。そのイントロが短くて、割とすぐに歌が入りますが、このボーカルが素晴らしい!
降幡 「City Hunter ~愛よ消えないで~」のレコーディングでは、本間さんから「良い意味で声優さんっぽくない、アーティスト寄りの歌い方で」というディレクションをいただいて。今回の作品の中では一番最初にレコーディングした楽曲というのもあって、結構難しいなって感じた思い出があります。
――たしかに、オリジナルの小比類巻かほるさんの歌い方にも迫力がありますし。個人的にピンときたポイントとしては、Aメロの“朝になればCity Light”辺りの歌い回しが素敵です。色々と試行錯誤をしたんじゃないですか?
降幡 (1曲を通して)何回転調するんだろう?って思いながら歌っていました。ラストの“愛よ消えないで”の部分なんて、「もうずっと(キーが)上がっていくじゃん!」と思って(笑)。でも、1曲目でこんなにも華やかな曲を歌えて良かったです。
――まさに“シティ感”もありますし、『シティーハンター』のオープニングアニメの映像にも通じますが、車のライトがサーッと流れるような、降幡さんがイメージしていた夜の都会感がありますよね。ちなみにライブで歌ってみてどうでしたか?
降幡 nishi-kenさんにハモっていただいたのもあると思うんですけど、めちゃくちゃ気持ち良く歌えました!おっしゃる通りAメロの部分も情景が思い浮かぶグッとくる歌詞で、麻生圭子さんが書かれた歌詞も大人になった気分でとても爽快に歌えました。
――原曲を子供の頃にリアルタイムで聴いていた人たちが感じていた、 “大人びた世界への憧れ”みたいなものが、降幡さんのカバーにもすごく感じられると思います。さあ、続いてがラ・ムーの「愛は心の仕事です」でございます。いやあ、ついにカバーされましたね!
降幡 はい!大好きな曲なので、こんなに早く歌うことができて嬉しいです。
――ちなみに降幡さんはどのような流れでラ・ムーの音楽と出会ったのですか?菊池桃子さんの関連作をアナログ盤でディグっていく流れからの(菊池がボーカルを務める)ラ・ムーみたいな?
降幡 いえ、私は最初の頃、ラ・ムーがバンドなのかすらもわかっていなくて、ただ単純に曲だけを聴いてすごく世界観がいいなと思っていたんですよ。多分、売野雅勇さんや林 哲司さん辺りの作品を聴いた流れで辿り着いたと思うんですけど。だから菊池さんから入った感じではなかった気がします。
――ラ・ムーって当時は結構異端な存在でしたけど、今聴くと音がめちゃくちゃかっこいいじゃないですか。今回の本間さんのアレンジも、オリジナルの洋楽っぽい部分を踏襲している感じで。降幡さんはどう感じられて歌いましたか?
降幡 いやあ、もう、すごくノリノリで歌いました(笑)。サビももちろんですけど、途中で英語が入る部分はちょっとこだわりたかったので、かわいかったり大人っぽかったりする言い回しを何パターンか録らせていただいて。結果的にかわいい台詞っぽい言い回しが採用されました。
――先行でアップされたMVのアニメーション感も相まって、この英語のパートの部分は特に降幡さんらしさが押し出されているなと思います。これがきっかけでまた、ラ・ムー再評価に繋がってくれたら。
降幡 もしそうなったら、本当に嬉しい限りですね。さっきもレコード屋さんに行ってきたんですけど、ラ・ムーのアルバム(1988年の『Thanks Giving』のリイシュー版)が売り切れて再入荷待ちになっていて。いやあ、すごいなと思いました。
――そして3曲目が角松敏生さんの「AIRPORT LADY」のカバー。これもすごくドライブミュージック的な、いわゆる疾走感も含めたうえでバチッとコンセプトにハマったアレンジとボーカルです。前回のアルバムでも角松敏生さん作詞・作曲の「You’re My Only Shinin’ Star」をカバーされましたが、今回の「AIRPORT LADY」も降幡さんのセレクトで?
降幡 そうです。角松さんは友達に教えてもらったのですが、「AIRPORT LADY」が特に好きで。ドライブのときに聴いたら絶対に最高だなと思って、今回カバーしてみました。
――今回のアレンジは爽やかな気持ち良さが感じられますが、歌ってみてどうでしたか?
降幡 (歌声に)リバーブがかかっている、あのフワッとした感じに角松さんらしさがあると思うので、力を抜いて歌おうと思いつつも、この曲のサビはすごく力強い歌詞だなと思っていたので、あえて力強く歌いました。なので、角松さんとはまた全然違うアプローチのカバーになったかなとは思います。でも、男性アーティストさんの楽曲のカバーは毎回難しいなと思いますね。
――角松さんの歌詞もお洒落ですよね。
降幡 ですよね!“黄昏をいろどるターミナル”とかは本当に素敵だなって思います。さらに勉強になった1曲ですね。
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