INTERVIEW
2022.08.19
トリプルタイアップに合わせて3回の連続インタビューを行ってきたが、その締め括りを飾る今回は、Cygamesコーポレートアニメーションムービーのタイアップ曲「Follow Your Fantasy」。だが、まずはその前に、May’nがコンセプトやストーリーに大きな役割を果たした「あはっててっぺんっ」のMVについてから。そして、ツアーを経てMay’nが辿り着いた、明るい未来の境地について聞いた。
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――「あはっててっぺんっ」のMVは、お笑い芸人のきつねさんが登場し、その1日をとらえる内容になっています。もちろん、鯛焼き屋などでロケをするなど、May’nさんを感じる部分もありますが、May’nさんはどういった部分で関わっていますか?
May’n 今回は私がやりたいことを実現していただきました。ですので、ほぼすべてですね(笑)。どういうMVにするかというところから始まり、色々な仕事を経るなかでお笑い芸人さんが「俺たち売れたな」みたいに思えるストーリーにしたいとお話しさせていただき、芸人さんはきつねさんでお願いしたいというところまで、色々とお伝えさせていただきました。
――どういったテーマをイメージされていましたか?
May’n とにかく2人の仲の良さを切り取っていただきたかったんですよ。歌詞は大石(昌良)さんとの共作でしたが、すごく力を入れて取り組んで書いていて、そのこだわりとしては、お笑い芸人さんが自分を信じる気持ち、相方を信じる気持ち、ファンの人を信じる気持ちを持ちながら「笑顔で頑張ろう!」「もっと前へ進んでいくぞ!」という楽曲にしたい、というのがありました。だから、相方と楽しく頑張り続けて、人気の出てきた方がいいと思ったんです。MVの中できつねさんには、ナジャ(・グランディーバ)さんやBIGBOSS(=新庄剛志)さんとか、まさかネタを全部乗せでやっていただけると思わなかったので、めちゃくちゃ興奮しました。
――きつねさんを見ていて仲がいいと感じたのはどの辺りですか?
May’n 私が好きな芸人さんは自分たちのネタで笑うんですよ。それを見ているだけで幸せになれるというか。もちろん、ネタが細かい芸人さんも好きなんですが。でも、小学生のときにやっていたことをそのまま大人になっても楽しんで、根本は最初にコンビを組んだ学生時代から変わっていないんじゃないか、という芸人さんが好きなんですよね。「好き」が持つパワーというか、とにかく自分が楽しむ、という思いって絶対見ている側にも届くので。きつねさんも、お互いに相手のボケやツッコミに笑うところが素敵ですし、本当に楽曲やMVのコンセプトにピッタリな方に(出演)OKをいただけました!
――MVを観ているとMay’nさんときつねさんの接点はラストだけのようにも見えますが、ロケは同行されましたか?
May’n 同行しました!きつねさんは大好きですし、出演をお願いさせていただいたという責任として撮影にちゃんと立ち会いたいという気持ちがあったので、早めに入ってロケを見学してから自分の撮影に入りました。
――ロケを見ていていかがでしたか?
May’n お二人は小学校1年生から大学までずっと学校が一緒で、ロケ中、カメラが回っていないところでもすごく仲が良くて。そこでも改めて、この楽曲にピッタリの方たちだと思いました。ロケもすごく面白い内容で、MVだから伝わらないのが本当に申し訳なくて……。鯛焼き屋さんでの大喜利対決はスタッフの方々も爆笑していました。それに、やっぱりロケ慣れしているんですよね。通りがかりの人への話し方とか、TVのロケそのままでした。メディアで観る姿そのままで、本当にハッピーな人たちでしたね。
――ラストできつねさんと絡むシーンはそっけない感じでしたが、あれは演出ですか?
May’n 嘘!?そっけなかったですか!?そんなことないですよ(笑)。私はきつねさんの「パオ!!」っていうネタが好きなのですが、きつねさんからは「誰も知らないから言わなくていいです」って言われました。むしろ、私はちゃんと残したいと思っていたのに、きつねさんがノッてくれなくて。だから、MVを観た方はぜひきつねさんの「パオ!!」を調べてほしいです。
――確かに検索しても、May’nさんのコメントくらいしか出てこないですね。きつねさんにまたアップしてもらいましょ。さらに言えば、MVの最後にきつねさんのネタを披露するおまけパートがあるなど、かなりきつねさんに寄ったMVにしています。
May’n そうですね。芸人さんに出演していただくMVにしたいという話をしたとき、今までで一番May’nが出ないMVになってしまうとは言われたんですけど、「いや、むしろいらないくらいです」と話しました。というのも、歌詞を書いているときに、この曲はお笑い芸人さんのストーリーを感じられる楽曲にしたいと思っていて。それは「あはっててっぺんっ」がED主題歌になっている『てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!』の世界観もそうですが、相方を信じて笑顔で未来に向かって頑張る、色々あったけれど信じたからこそ今がある、という「絆」を描きたかったからなんです。それに、ライブやイベントで歌うときには、チームやファンの皆さんと、信じることを再確認できる楽曲になると考えていました。だから、私を入れ込むなら、芸人さんのストーリーの邪魔にならないところにしたくて、この内容にしていただきました。
――それでも、May’nさんが歌って踊って、というパートはさすがのキレで動き回っていました。
May’n 汗だくになりながら、ハアハア言いながら、撮影しました。自由にやってくださいという感じでしたので、カメラを回したら好きに楽しんで終了、みたいな感じでした(笑)。アップが多めのほうがいいかと思ったらそうなるように動いて、全身のわちゃわちゃ感が欲しかったら全身を撮って、2時間くらいで終わりましたね。ポーズでも動きでも、とにかくにぎやかにしたいと思っていました。
――ライブ感覚で動いた感じですか?
May’n かなりライブ感覚でしたね。カメラの向こうの人を笑かしたい、歌を届けたいという気持ちで動きまくりました。最近強く思うのが、誰かの笑顔や頑張っている姿って伝染していくということで。このMVはきつねさんのファンや私のファンだけではなく、たまたま観た人も笑顔にする、「頑張ろう」って思ってもらえるものになっていると思うの
で、たくさんの方に観ていただきたいとすごく思います。
――そして、シングル収録の3曲目「Follow Your Fantasy」についても教えてください。今回は、いわばCygamesコーポレートアニメーションムービーのタイアップ曲を歌ってくださいという形でのオファーでしたか?
May’n そうですね。楽曲と歌詞ができつつあるなかでお話をいただきましたが、その中でキーはご提案させていただきました。先方からご提案頂いたキーで練習していたのですが、サビは少し物足りない気がしたんですね。キーを上げたほうが前のめりなアグレッシブさが出ると気づいたので、家で録ったものを本(番)Recの前に聴いていただいたら「確かに!」ということで今のキーになりました。
――キーが高いほうがいいと感じたのは、サビのパートですか?
May’n やっぱりサビはきついくらいのほうが疾走感が出ると、今までのキャリアから実感していました。冒頭の民謡みたいに歌うパートはミックスボイスや裏声で歌っているのでどんなキーでもいいんです。むしろ高ければ高いほど楽なので、そういう点でもキーを上げたほうがいいと思いました。それによって自分を鼓舞できるし、楽曲の世界観にも合うんじゃないかとも思いましたね。今回はCygamesさんのために作られた楽曲をMay’nが歌う、という形でしたので、ほかの楽曲よりは細かなやり取りは少なかったですけど、アーティストとしてアイデアを少し出させていただきました。
――民謡風のパートからロックなパートに急激な展開を見せますね。
May’n 民謡的に歌うというのは初めてのチャレンジで、独特なリズム感があるのでかなり難しかったです。やっぱり、アップテンポな曲を歌わせていただくことが多いこともあり、拍子に当てていくのは得意なんですよ。普段は「ドラムのここに合わせて」という感じで。でも、この楽曲ではそれを感じないで、と言われてしまって。なるべく“無”になって何も聴かないように、と思ったのですが、「あ、また16(小節)を感じちゃった」とか「シンバルを感じちゃったな」みたいなことになってしまっていました。ただ、リズムを聴かなさすぎてずれてしまうと歌としては成立しないので、そこが難しかったですね。体で感じて心で歌う、みたいな。一拍の中で揺れるような民謡らしさがあって、そこが日本らしさでもあると思うんですけど、私は歩くときもサッサッサッとせっかちに歩くタイプでなかなかスーッと奥ゆかしく歩くようには歌えなくて、いかに自分が男らしく生きてきたかに気づかされました(笑)。
――今までの自分と真逆な楽曲だったんですね。
May’n 私はダンスも習っていたので基本的に16とか32の(ビート)のリズムを感じながら歌っているんです。アップテンポのリズム感がいいと褒められますし、細かく確実に合わせるのは得意なので、ハモリもすごく得意なんです。でも今回はどこに合わせにいけばいいのか難しく。私も割と声を揺らしているほうだと思うのですが、リズムのどこかには当てて揺らしているので、拍で歌うのではなく何にも当てずに揺れる、みたいなのは苦労しましたね。ハモリも、そうやって歌ったものに合わせていくというところで全然合わなくて、何をめがけて歌えばいいのか…という感じでした。なので、今までで一番レコーディングは苦労した楽曲だと思います。
――そこまで苦労するのは久々の経験だったのでは?
May’n 久々でした。「自由に揺れて」と言われると私のせっかちな細かさが出てしまって、揺れられないんでしょうね(笑)。それに、この楽曲には民謡っぽい柔らかさや美しさはありつつも、強い部分もやっぱりあるので。ただ柔らかくてきれいなだけでもないからこそ、声の調整と言いますか、歌い方という点では今までにないすごく大きなチャレンジだったと思います。でも、今まで色々と歌ってきたからこそ越えられた壁だとも思っています。確かレコーディングは“『マクロスF ギャラクシーライブ 2021[リベンジ]”の幕張公演と神戸公演の間で。ミュージカルだと「ジャック・ザ・リッパー」が終わって「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」の稽古が始まっていた頃なので、それも影響していたかもしれませんね。
――そのとてつもなく忙しい間に。しかもマクロスFライブの間という。
May’n そう聞くと確かに、よくこの曲をレコーディングできたと思いますね(笑)。でも、ちょうどレコーディングが“リスアニ!LIVE 2022”のパンフレット撮影後で。その現場でアーティストモードに入ったからこそ歌えたのかもしれないです(笑)。あと、あの頃はマクロスFライブもそうですが、直前の「ジャック・ザ・リッパー」では、ミュージカルの各現場にいてくださるボイトレの先生からお腹やのどの使い方を教わっていた時期でした。ポップスとは全然違うアプローチに試行錯誤することで引き出しが増えましたし、(「Follow Your Fantasy」のレコーディングで)「今までの経験が繋がった」とすごく感じたことを覚えています。
――ツアーで歌ってみた感想はいかがでしたか?
May’n 不思議なことに、あんなに苦労していたのにここ一番で自分が整う曲になったんですよ。ツアーでは声出しをするときに歌う曲になっていました。自分の耳も声も体も整う楽曲というのがいくつかあって、それを歌って声を調整してから本番に臨むんですね。歌いやすいとか歌いにくいとかだけではなく、上手く説明できない感覚なのですが。でも、(「Follow Your Fantasy」を)歌いながら、「のどが開いた」「完璧に整った」と本番前に思っていました。
――ストレッチみたいな曲になっていたんですね。
May’n そうですね。多分、魅せる曲でありながら「オリャー!」って力も入れられるからでしょうね。ありがたいことに私の楽曲は、シェリルのような世界観もあれば、「Belief」みたいな力強い曲もあるので。そこを一気に発散できるというか、歌っていても楽しいですね。
――新しい武器が増えましたね。
May’n ライブでも盛り上がるナンバーになってきたので、よりたくさんの方に聴いてもらいたいと思っています。実は、Cygamesさんの社内にMay’nのことをすごく推してくださった方がいたらしいんです。会議で、Cygamesを海外にも展開していくためのコーポレートムービーならば海外でも活躍しているシンガーがいいという話になったみたいなのですが、その方が「May’nがいい」と熱弁を振るってくださったおかげで決まったと聞いて、これまで歌い続けたキャリアがあったからこそ辿り着けたことあるんだと思いました。そういう意味でもすごく大切な1曲ですね。
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