ナナヲアカリが7月7日、東京・EX THEATER ROPPONGIでライブ“ナナヲアカリPresentsライブ&パーティー 第十一話 ―770の日―”を開催した。“770の日”とは、当然彼女の名前にかかっている。さらに七夕と言えば、織姫と彦星が1年に一度だけ会える空想的で甘美な日。このライブは“770の日”にナナヲと彼女にまつわるスペシャルゲストが共演する、まさにナナヲアカリならではの七夕ライブ。ゲストは玉屋2060%(Wienners)、000(おれそ)、澤田 空海理、TAKU INOUEの豪華4組。一体どのようなライブだったのだろうか?
会場に着くと場内には笹が展示されており、えんじぇるズ(※バックバンドの呼称)やナナヲが書いた短冊が飾られていた。ちなみにナナヲの書いた願い事は「えんじぇるズがアンコールでパジャマを着てくれますように」。フロアに足を踏み入れると、幅広い世代の男女で賑わっていた。ステージ上のスクリーンには“770の日”とデカデカと映し出されている。
開演時間になり、ギターを背負ったナナヲはタイヘイ(ds)、かのーつよし(b)、カトリーヌ(g)、野良いぬ(VJ)のバンドメンバーを従えてステージに登場し、「んなわけないけど」で幕を開けた。「まずは1組のゲストを紹介してもよろしいでしょうか?」と、玉屋2060%がステージに招かれる。「もちろんやるのはこの曲です!」と発し、2020年に玉屋がプロデュースした「完全放棄宣言」を披露。ナナヲはハンドマイクに切り替え、カトリーヌと野良いぬはお立ち台に上がり観客を煽って、高速なパーティチューンの勢いをさらに加速させていく。観客もそれに応えるように全員でジャンプし、てんやわんやの状況。「登場から最高にかっこいいですね!」とナナヲが玉屋に言うと、「いやあ、皆さん素晴らしいっす!」と笑みを浮かべた。
「ナナヲは6月にもライブを2本やっていたんですけど、隠しておいた曲がありまして。今日、この日のためにとっておきました」という紹介から、玉屋とともに「全部ホントで全部ウソ」を演奏。もはやイントロからアウトロまで、すべてのパートが聴く者の体を揺らす構成になっており、音符が目の前で飛んでいるかのよう。なにより“全部ホントで全部ウソ”というフレーズを重ねるごとに、どんどんと高揚感を高めていく。ナナヲの求心力ももちろんだが、彼女の声質やポテンシャルを最大限に生かした、玉屋のソングライティングが光っている。
その後は、再びバンドメンバーと「人類殲滅のテーマ」「オトナのピーターパン」をパフォーマンス。6曲目でナユタン星人の楽曲「コスモポップファンクラブ(feat. ナナヲアカリ & 000)」のイントロが流れると、シースルーのシフォンスカートというガーリーな衣装を着た000(おれそ)がステージに現れた。前半のロックサウンド色の強い雰囲気とは違い、2人の声が相まってエレクトロで煌びやかなポップさが魅力的だ。「玉屋さんからのおれそちゃんという、もはや温度差で風邪をひきそうな並びをしているんですけど」と言うと、000がハハハと笑う。
「(「コスモポップファンクラブ」は)ナユタン星人さん書き下ろしで、おれそちゃんと歌ったんだけど、この楽曲は2人で別々にレコーディングしたから会ってないのよ。だから、おれそちゃんが青い髪のときしか知らなかったけど、今日はリハに来てビックリした」「地毛?伸びた?って話をしてね。(ナナヲを見て)……今日もかわいいねぇ」「(000を見て)かわいいねぇ」。まるで映画「櫻の園」のようなピンクな空気に観客が思わず拍手。「今日はかわいい子を連れてきたんでね!いつもは1人ぼっちで歌っているこの曲を、おれそちゃんと一緒に歌わせていただきます」と、「インスタントヘヴン(feat. Eve)」が流れると、フロアから「おお!」と歓声が漏れる。テンポ感の速い歌唱の応酬。それでいてエモーショナルに歌い上げるのではなく、一定の温度で歌うため、かなり難しい楽曲でありながら2人は飄々と振付を入れながら歌唱。MCのゆるさとは違って、ボーカリストとしてお互いの実力を魅せつけるステージだった。
ここで場内が暗転し、明かりが点くとステージはナナヲ1人に。「みんないなくなってしまった。……ということは、しっとりゾーンに入るってことですね」、そう言うと、ステージ中央に鍵盤が運び込まれ、3人目のゲスト・澤田 空海理が姿を見せた。「今から空海理さんと一緒にやる『陽傘』という曲が本当に好きなんですよ!普段は自分の曲が出来てもあまり聴かないんです。やっぱり恥ずかしいから。だけど『陽傘』だけは1日50回くらい聴いてる。思春期な感じを嫌らしくもなく、恩着せがましくもなく、きれいに表現してる曲。本当に美しい曲なんです」という曲紹介から新曲「陽傘」へ。澤田のしっとりしたピアノの演奏が始まると、天井のスポットライトが消えて、背後に夕日のような柔らかいオレンジの照明が点った。若者特有のデリケートな心の葛藤を表す歌詞が、美しいピアノの旋律とともに紡がれていく。ナナヲも感情を込めるあまりに、自分の胸をぎゅっと掴んで、時々苦しそうな表情を浮かべていた。ラストで“思い出すのは夏のこと。”と宙を見上げたとき、彼女は恍惚の顔をして、いつかのあの日に思いを馳せていた。
続いて、澤田のピアノに合わせてバンドの楽器も重なり「二度目の花火」を披露。冒頭で静かに演奏している際、背景には線香の花火の映像が流れており、サビで力強い演奏に変わると綺麗な打ち上げた花火に変わった。楽曲本来の魅力やナナヲの歌唱、VJの映像を含めて前半戦のハイライトだったと思う。
ここでメンバー全員が袖へはけて、スクリーンに映像が投影された。リハーサルスタジオでナナヲがカメラを回し、笑いたっぷりでバンドメンバー紹介をする映像を流すと、再びメンバーが戻ってきて後半戦に。ナナヲのエッジの効いたギターリフ、カトリーヌのテクニカルなギターソロが魅力のアグレッシブな「ハノ」で会場の熱気を創出した。
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