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INTERVIEW

2022.07.02

【インタビュー】佐々木恵梨が「ふゆびより」「はるのとなり」「ロッホと旅人」を経て描き出す、映画『ゆるキャン△』EDテーマ「ミモザ」――今作ならではの“らしさ”と 『ゆるキャン△』が教えてくれたものとは?

【インタビュー】佐々木恵梨が「ふゆびより」「はるのとなり」「ロッホと旅人」を経て描き出す、映画『ゆるキャン△』EDテーマ「ミモザ」――今作ならではの“らしさ”と 『ゆるキャン△』が教えてくれたものとは?

佐々木恵梨の多様な音楽性が反映されたカップリング曲

――カップリングの2曲はさらに佐々木さんの音楽的な趣味が反映されているのではないかなと。まず「透明散歩」はプログレッシブかつ洗練されたグルーヴが気持ち良いアップチューン。この曲、すごくかっこいいですね。

佐々木 ですよね、自分で言っちゃいますけど(笑)。これは大学のときに組んでいたLatticeというプログレッシブポストロックバンドのメンバーと一緒に作った曲で。

――キーボードの鵜飼大幹さんですよね。

佐々木 そうです。前のアルバム(2ndアルバム『Colon』)にも「Orchis」や「BRITISH ROBOT」といった曲に参加してもらっていて、こういう系の音楽の趣味がすごく合うんですよ。今でも「良いリフができたら送ってよ」みたいな感じでお互いやり取りしていて。この曲も、彼が送ってきてくれたリフに私がメロディを乗せて返して、それに続きを作ってくれたものが戻ってきたので、私がそれを切り刻んで入れ替えたものを返す、みたいな作り方で。完全に遊びでできた曲ですね。

――それで先が読めないような急展開する構成なんですね。でも全体的な印象としてはすごく軽やかなところが素晴らしくて。

佐々木 そうそう、軽いイメージで作ったんです。そのとき、たまたま「スイチャンネル」という、海にダイビングして漁礁を作ったり、ウニを駆除したりするYouTuberの方の動画をよく観ていて。それが水中カメラで一人称の視点で泳いでいる映像なんですけど、この曲もお魚さんの目線で海の中を楽しく泳いで、周りの景色がどんどん変わっていくイメージなんですよ。歌詞の内容も響き優先で作ったので、ほとんど意味はないんですけど(笑)。

――歌詞に“磯にダイブして”や“ブイにタッチして”といったフレーズがあるのは、そういうことだったんですね。

佐々木 ほかにも初めて英語でダジャレみたいな韻を踏んでみたりして。“Sea-cret sight”のところとか。水の中に入ったときのぶくぶくぶくみたいな音とか、お魚がピチャンと跳ねるような音も入っていて。そういう楽しい遊びの曲です。

――歌もクールな爽快感とアクティブな躍動感のメリハリが効いていて、絶妙な温度感ですね。

佐々木 感情を乗せるというよりかは、楽しくリズムに乗って歌う感じ。でも速いから、とにかく必死でした(笑)。速い曲はあまり歌ったことがないし、得意でもないので。

――ちなみにこの曲にはBREIMENの高木祥太さんとSo Kannoさんが演奏で参加していますが、これはどんなご縁で?

佐々木 以前に「Orchis」という曲のレコーディングで、プロデューサーの村上(純)さんが高木さんを呼んでくださって、そのときに初めて知り合ったんですけど、それが最高の演奏だったので今回も「高木さんがいい!」とお願いしました(笑)。この曲は久しぶりに大学生の頃に戻った感じというか、「楽しく音楽を作れるって最高だな!」と思いましたね。

――もう1曲のカップリング曲「Twin Ray」は、ほかの2曲とは装いが変わって、もっと内面の部分に焦点を当てたような曲になっていますね。

佐々木 そうですね。これは曲自体は4~5年くらい前からあって、当時はデタラメ英語でパッと歌って、その録音データだけずっと持っていたんですけど、自分でも良い曲だなと思っていて(笑)。そういう、いつか英語で歌詞を付けて趣味でリリースしたい楽曲のストックがたくさんあるんですけど、そのなかでもこの曲は日本語も合いそうだなーと思っていたので、今回歌詞を付けてちゃんと録りました。

――歌詞のテーマになっている「ツインレイ」というのは、前世で1つだった魂が転生する際に2つに分かれたその片割れを意味する言葉で、いわば同じ魂を持つ「運命の相手」ということらしいですが。

佐々木 そう。そういう考え方があるんですけど、でも結局それって自分なんですよね。私は今までの楽曲の歌詞にも、「自分を愛する」とか「自分を大事にしよう」ということをメッセージに入れることが多くて。この曲もそのうちの1つです。自分への自己愛の曲という感じですね。

――なるほど。歌詞に目を向けると、最初は対人関係を感じさせる部分がありますけど、2番以降はだんだん自分自身を見つめるような内容になっていくので、今のお話を聞いて納得しました。

佐々木 まさにそういう感じの曲ですね。例えば誰かパートナーがいたとしても、大体の人は相手に合わせて自分自身をぶらせてしまうことになるけど、その現象すら引き起こしているのは自分だから、相手を自分の鏡として捉えて、その人を愛する以上に自分を愛したら上手くいく、という考え方があって。私はそういう考え方が好きなので、そういうことを通して自分と向き合う、みたいな曲ですね。

――佐々木さん自身も、他者を通して自分を見つめる機会がよくある?

佐々木 もちろんです。自分は今どう思っているのか、どこにしこりがあるのか、何か変な思い込みはないか。あらゆることを通して、そういうことに気付けるように、いつも目を向けるようにしています。

――そういった姿勢は意識していないとなかなか身に付かないことだと思うのですが、何かそういう考え方に至るきっかけがあったのでしょうか。

佐々木 私は10代の頃からパニック障害を抱えていた時期があって、自分のケアをやらざるを得ない状況だったので、そういった本をたくさん読んで、色んなやり方を実践してきたんですよ。そのなかで、今お話ししたような考え方がしっくりきて、すごく生きやすくなったんです。

――そうだったんですね。そのお話を聞くと、Dメロの歌詞にある“逃げ出した後に 対峙するのは 「私自身」だ”というフレーズも、より実感のこもった言葉に感じられます。

佐々木 そこがこの曲で一番言いたいところなので。なのでこの曲の歌詞は、私が普段考えていることに近いですね。

――一方で曲調はフォーキーなブルースといいますか、アコギをバックに歌をじっくりと聴かせる構成になっていますね。

佐々木 私はこういう曲調も昔から大好きなんですよね。R&Bやジャズ、ヒップホップとかもよく聴くし、京都に住んでいた大学生の頃は、ジャズの有名な人たちがよく出演するライブハウスでバイトしていたこともあって。そのお店にFried Prideさんがよく出ていて、そういう影響は受けていると思います。

――なるほど、たしかにFried Prideに通じる雰囲気はありますね。ジャジーなギターと歌のみで勝負するっていう。

佐々木 当時、Shihoさん(Fried Prideのボーカリスト)が「歌やってるんだね、頑張ってね」みたいに声をかけてくださって。めちゃめちゃかっこよくて優しい方でした。いつかまたお会いしてお話してみたいですね。

『ゆるキャン△』との出会いが教えてくれたもの

――カップリングを含め、今回も佐々木さんの多彩な音楽性が反映されたシングルになりましたね。

佐々木 そうですね。まあ、毎回バラバラの曲を作りすぎかなとは思っているんですけど(笑)。でも、まあいいっしょっていう。

――(笑)。「ミモザ」の制作話でも「曲を書くときはあまり脳みそを使っていない」とお話されていましたけど、佐々木さんはあまり考え過ぎず、直感的にクリエイティブするタイプなんですか?

佐々木 昔はすごく考えながら作っていたんですけど、考え過ぎていいことは1つもなかったので。考え過ぎると、自分を狭いところに押し込めてしまうから、生きるうえでもあまり良くないと思うんですよ。だから私はあるときから考えるのを止めました(笑)。

――その「あるとき」というのは、いつ頃のことですか?

佐々木 デビューしてからもしばらくはものすごく考えていましたけど、それこそ『ゆるキャン△』以降からかな?「ふゆびより」は本当に何も考えずに作った曲で、それが上手くいったのが良かったのかなと思っていて。もちろんヒットしたのは『ゆるキャン△』のおかげなんですけど、初めて自分の中でたくさんこねくることなく作った曲が、YouTubeで何百万回も再生されるほどたくさんの人に聴いてもらえたことで、「あれ?そんなに考え過ぎなくてもいいんだ」「しんどい思いをしながらモノづくりをする必要はないんだ」ということに気付くことができて。

――ときにはゆるい気持ちでいることの大切さを、『ゆるキャン△』から学んだわけですね。

佐々木 そう。その意味でも『ゆるキャン△』に出会うことができて良かったです。『ゆるキャン△』のおかげで、それまで続けていたバイトを辞めることもできたので(笑)。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)


●リリース情報
佐々木恵梨
「ミモザ」
6月29日(水)発売

■mora
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【アニメ盤(CD+DVD)】

品番:USSW-0352
価格:¥2,420(税込)

【通常盤(CD)】

品番:USSW-0353
価格:¥1,760(税込)

<CD>
01. ミモザ(映画『ゆるキャン△』EDテーマ)
02. 透明散歩
03. Twin Ray
04. ミモザ -off vocal-
05. 透明散歩 -off vocal-
06. Twin Ray -off vocal-

<DVD>
01. 「ミモザ」Music Video
02. 「ミモザ 」メイキング映像

●作品情報
映画『ゆるキャン△』
2022年7月1日(金)より全国ロードショー

【STAFF】
原作:あfろ(芳文社「COMIC FUZ」掲載)
監督:京極義昭
脚本:田中 仁 伊藤睦美
キャラクターデザイン:佐々木睦美
プロップデザイン:井本美穂 堤谷典子
メカデザイン:遠藤大輔 丸尾 一
色彩設計:水野多恵子(スタジオ・ロード)
美術監督:海野よしみ(プロダクション・アイ)
撮影監督:田中博章(スタジオトゥインクル)
デジタルワーク:C-Station digital
CGワーク:平川典史(M.S.C)
音響監督:高寺たけし
音響制作:HALF H・P STUDIO
音楽:立山秋航
音楽制作:MAGES.
アニメーション制作:C-Station
配給:松竹

【CAST】
各務原なでしこ:花守ゆみり
志摩リン:東山奈央
大垣千明:原 紗友里
犬山あおい:豊崎愛生
斉藤恵那:高橋李依

オープニングテーマ   亜咲花「Sun Is Coming Up」
エンディングテーマ   佐々木恵梨「ミモザ」

©あfろ・芳文社/野外活動委員会

関連リンク

佐々木恵梨オフィシャルサイト
https://erisasaki.net/

映画『ゆるキャン△』公式サイト
https://yurucamp.jp/

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