REPORT
2022.05.30
5月22日、昭和女子大学 人見記念講堂にて、声優アーティスト・Machicoによるワンマンライブ“Machico 10th Annivesary Live ~Trajectory~”が開催。ライブ翌日にデビュー10周年当日を控えるなかでの記念すべきライブは、時系列順に並びつつ自身のターニングポイントごとにブロックを分けたセットリストはもちろん、セットやロゴも含めて、生バンド“まちこ隊”とともに10年間の集大成を見せるものとなった。
開演前の客入れBGMには、ソロ曲やアニメ主題歌はもちろんキャラクターソングも織り交ぜられており、前述のコンセプトを開演前から提示する。そしてinterludeが流れ、リズムに合わせたファンのクラップが会場に響くなか、ステージ中央・2階ステージにMachicoが登場。デビュー曲「Magical Happy Show!」から、この10年間の軌跡を辿る旅がスタートする。
甘さとハイトーンさを兼ね備えた歌声でポップでキュートなナンバーを彩れば、コール部分の声はまちこ隊が担い、ファンはライブグッズ“にぎやかな電気棒(※マラカスライト)”に彼女のパーソナルカラー・赤を灯して高まりと喜びを示す。それを受けてMachicoも、間奏部分ではファンへのエールを贈り、最後まで振付含めキュートに届けきると、メインステージへ降りて「青春オーバードライブ」の披露へ。今度は爽快なロックチューンに乗せて、気持ち良く突き抜けていくような歌声を楽しそうに響かせていく。しかも曲に合わせた身振り手振りや、拳を振ってのファンの先導なども織り交ぜているにもかかわらず、歌声のブレが非常に少ないところもまた、確固たる歌唱力の証拠の1つのように感じた。さらにもう1曲、シリアスなロックナンバー「thread a needle」では序盤は歌声に重さや圧力を強めに付加し、サビではサウンドに合わせて開放感を与えてくれる。雰囲気は変わっても、歌声の安定感は抜群だ。
そうしてかっこよくキメた直後、MCに入った瞬間にテンションが切り替わり、少々ゆるっとした雰囲気に。そのうえで「全曲生バンドで20曲以上あるので、どんどん歌っていきます!」と宣言し、「この10年の軌跡を辿るうえで、やっぱりカバーは外せない」とカバー曲を4曲メドレー形式で披露する。
かつてリリースしたアニソンカバーアルバムのタイトルになぞらえ「COLORSメドレー」と称したこのメドレー、まずはメタル風のアレンジの「恋しさと せつなさと 心強さと」をかっこ良く乗りこなしてキメると、一転キュートに軽く振付も交えながら、「ハッピー☆マテリアル」を甘めな歌声でポップに歌唱。さらに「オレンジ」ではそのキュートさを残しつつ、曲に合わせて歌声にキュンとくる要素をプラス。落ちサビでの想いを絞り出すような歌声も、またたまらない。そしてラストを飾る「INVOKE」では再びかっこ良さを感じさせたばかりでなく、歌唱を通じて滾らせた想いからくるパワフルさも全開に。色の違う曲を4曲並べたことで、Machicoの歴史の1ページを辿るだけではなく、今の彼女が持つスキルの高さも改めて感じることのできるメドレーになっていたように思う。
メドレー後には、キュートな歌声とパフォーマンスで魅せる「星屑プリンス」を披露。事前にTwitterに振付動画を載せていたサビの部分ではファンと一緒になって踊りつつ、愛らしいこの曲のヒロイン像を生歌でも見事に表現する。そこからガラッと雰囲気を変えたバラード「花音」では、一人ライトに照らされしっとりと歌い始めると、徐々にクレッシェンドしていきサビではガンと圧さえ感じさせるボーカルワークをみせる。ここまで5曲とは違ったスケールの大きさ感じさせる歌声で、会場を包み込んでくれた。その大きさもあってか、か細く尻下がりに消えていく2サビ最後の歌声は、たまらない切なさを聴く者に与えていた。
ここでMachicoは一旦降壇し、ステージ奥のスクリーンにこれまでと未来について語るインタビュー映像を上映。それから衣装チェンジしたMachicoが再登場して最初に歌ったのは「fantastic dreamer」。初めてソロで担当したアニメ主題歌であり、彼女のシンガーとしての大事なターニングポイントの1つとなったこの曲を、ライブでも大事な転換点に置いてきた。サビ後半でのクラップが生み出す一体感も、やはりキラーチューンならではのものだったのではないだろうか。ここでも爽快感ある歌声を響かせていくMachico。その表情は、歌える喜びと楽しさに溢れているようだった。そのハッピーさや明るさは、続く「1ミリ Symphony」にも満載。実はMachico、後のMCで自ら語ってもいたが、2ブロック目では序盤から足が吊つりかけていたという。だがこの2曲の間、音程がブレたりリズムが取れなかったりという歌声の面での違和感は皆無。アクシデントがあったうえでのその安定ぶりは、逆に彼女のすごさを際立たせてくれたのではないだろうか。
アッパーチューン2曲を経てからの温かなバラード「勇気のつばさ」は、アニメのEDテーマに起用された曲ではあったが、楽曲自体に込められた「ありがとう」の想いをこのとき彼女が持っていた感謝の念と重ねて発信していたようだった。歌声に持ち前の甘さはやや残しつつ、柔らかさや温かさを大事にした表現を通じて聴く者の心に歌声をじんわりと染み込ませていく。
そしてここからは再び、アニメ主題歌に起用されたキャッチーなアッパーチューンが続く。まず「コレカラ」(TVアニメ『りゅうおうのおしごと!』OPテーマ)では、楽曲に込められた前向きさや未来への希望が彼女の歌声と一段と良好にマッチング。真っ直ぐに1つの方向へと向かうパワーを持った歌声が、希望に説得力を与えているように、この場で改めて痛感させられた。そのパワーに高いスキルが組み合わさった姿が見えたのが、続く「TOMORROW」(TVアニメ『この素晴らしい世界に祝福を!2』OPテーマ)。特にそれを強く感じたのはサビで、リズムに合わせて楽しくおてんばに跳ねながら歌っているにもかかわらず音がブレない。それもただ音を当てているわけではなく、曲調にマッチした盛り上がりや爽快感を与える歌声でもある。しかも連続披露の5曲目なのに、跳ねる部分以外でも疲れの色がまったく見えない。生ならではのプラスアルファは多々あれども、マイナスをほぼ感じさせないのだ。それほどまでのパワーとスタミナを併せ持ち、自身も観客もハッピーなステージを形作る。その姿に、まだ折り返し地点にもかかわらず早くも脱帽してしまった。
MCでは前述したように吊りかけた足を治すため、階段に座りながらゆるりとトーク。その間にステージ中央にマイクスタンドが設置されると、次はそれを用いて、『キラキラ☆プリキュアアラモード』岬 あやねのキャラソン「Soul Believer」へ。一瞬の暗転のうちにキャラクターに没入すると、佇まいもセリフもすべてキャラクターのものへとスイッチ。ハイスピードなロックナンバーを歌う姿はここまで歌ったどの曲よりもスタイリッシュで、2コーラス目に入るとマイクを手に持ちステージの最前まで出てさらに熱いパフォーマンスを展開。“声優アーティスト・Machico”としての魅力を、また異なるアングルから提示してくれた。
歌唱後、Machicoは再びステージを降り、バンドタイムを挟んだのち衣装チェンジして三度登場。『プリキュア』シリーズとの出会いの曲「Soul Believer」に続いて初めて担当したテーマ曲「ミラクルっと♥LinkRing!」を歌唱することで、彼女の軌跡の中の『プリキュア』と、『プリキュア』に携わるなかでの軌跡を同時に描く。マイクを手にしてダンスしながらの歌唱でも、歌声は相変わらずかわいさとハッピーさいっぱいの質の高いものに。改めて彼女と『プリキュア』シリーズの出会いが、幸せな出会いであったことを感じさせてくれた。
そしてもう1曲ダンサブルなナンバー「ピンクトルマリン」へ。この曲も事前予告のあった楽曲ということもあり、会場の一体感はさらに増していく。Machico自身のダンスも、動きにメリハリをつけたもので、間奏のダンスタイムは1つの見せ場に。それでいて笑顔を忘れず、楽曲全体のムードもそのままに最後まで魅せきってくれた。
さて、ライブも折り返しを過ぎたということで、今回のセットリストについてMachico自身からの解説が。今回のライブは3ブロック構成となっており、第1ブロックはデビュー当時の楽曲、第2ブロックは自分にとってのターニングポイント「fantastic dreamer」を皮切りにアニメ主題歌で構成。そしてここから本格的に始まる最終ブロックは、ここ最近リリースのゲーム主題歌等を中心に構成したと明かすと、「もっともっと先に進む準備はできてますか!?」と呼びかけ「ソノサキヘ」からライブ再開。終盤に差し掛かるなかでも、ロッキンなアッパーチューンをパワフルかつ爽やかに歌いこなしつつ、間奏では跳ねるなどのパフォーマンスもみせてポジティブなナンバーを様々な形で表現していくと、ハイテンポなスカ調の「It’s so fine!」で、会場のボルテージはますます上昇。とにかくアツく楽しく盛り上げ、さらに「向こう見ずFORWARD」を畳み掛けていく。
この曲ではギターとベースが元々の立ち位置を離れてステージ最前までせり出してきて、人横に並び立つ形での披露に。Machicoも時折両メンバーとも絡みながら、生バンドとともに作り上げるライブを楽しんでいるようだった。この曲も非常にスピードの速い激しいロックナンバーなのだが、Machicoの歌はただ単に音を取れているだけではなく、歌詞が流れずにしっかり言葉として届く。これもまた、歌声を下支えするパワーなしには実現しないもの。10年間の軌跡は、こんなところでも1つ形になっていたのだ。それを最後のロングトーンまで貫き通して歌いきると、振付を交えてポップさ・キュートさ強めの披露となった「Happy Magic」へ。2サビ明け、曲名になぞらえ「みんなといられて、本当にハッピーです!」とMachicoからのシャウトがあったが、きっとファンもこのとき同じことを思っていたのではないだろうか。
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