――3曲目の「もうひとくち」は作詞を楠木さん、作曲・編曲をササノマリイさんが担当した共作曲です。楠木さんの熱望により実現したとのことですが。
楠木 ササノさんとは「プロセカ(プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク)」の現場で初めてご一緒したのですが、私はササノさんがねこぼーろ名義でボカロPとして活動されていた頃から、楽曲が好きでたくさん聴いていたんです。ボカロっぽいと言っていいのかわからないですけど、リズミカルで心地良い曲にしたかったので、ササノさんならピッタリなものを書いてくださると思って、そのことをお伝えしたら快諾していただけました。
――それこそ楠木さんは「プロセカ」で「自傷無色」のカバーも歌っていますが、ササノさんの音楽のどんなところに魅力を感じますか?
楠木 すごく繊細な方という印象があるのですが、そういう部分が楽曲にも少し出ているというか、暗すぎないけど影も知っているような優しさがあって、でも、心地良さやお洒落感もある。そのバランスがすごく好きです。少し陰を感じるところは自分とも似ているなと思っていて。そういうところも含めて勝手に共感していたのですが、「プロセカ」でご一緒してから、ササノさんからも熱いメッセージをいただいて。お互いがお互いのファンみたいな感じだったので、素敵な機会になりました。
――今のお話から察するに、この曲は歌詞が先にできていたということですか?
楠木 はい。歌詞は先にできていて、曲も自分で作ろうと思っていたんですけど、いつもみたいに上手くいかなくて。リズミカルで、歌詞とリズムが同期していて、明るすぎないんだけどちょっとかわいらしい感じ……という設計図まではできていたんですけど、自分の理想に追いつけるメロが全然できなかったんです。そんなときにササノさんの曲を聴いて、「もしかしたら(イメージに)合うかも?」と思いまして。歌詞は韻を踏むこととリズムの組みやすさを意識して書いたのですが、ササノさんにも「(楽曲が)書きやすかったです」と言っていただけたので、良かったです。
――たしかに曲調としては、自然と体を揺らしてしまうような心地良いグルーヴ感があります。一方で歌詞の内容は、恋人同士の関係にある2人の情景が描かれているのように感じました。
楠木 この曲は「眺めの空」(2020年のEP「ハミダシモノ」収録曲)に登場する男女2人のことを描いていて。「眺めの空」は女の子に振り回される男の子の気持ちを描いた曲だったのですが、今回はその逆で、女の子視点で男の子にどうにか気に入ってもらいたいいじらしさを書きました。というのも、スタッフさんが、「眺めの空」の女の子はあざとい性格だと思っていたことが発覚しまして。
――ハハハ(笑)。楠木さんとしては、そんなつもりはなかったと。
楠木 そうなんですよ。私の中ではすごくいじらしい女の子のつもりだったんですけど、スタッフさんは「男を振り回すあざとい女の子」だと思っていたのが軽くショックでした(笑)。ですのでこの曲では、その子の心の中身をちゃんと描いてあげようと思ったんです。平気なふりをしているけど、実はこの子自身もドキドキしながらなんとか勇気を振り絞って(男の子に)アプローチしていることを描きたくて。ちょっとかわいい曲にしてみました。設定としては、女の子のほうが雨宿りがてら、カフェに頑張って誘ったところがスタートになっていて。
――「頑張って」誘ったというのがポイントですね。
楠木 そうなんです!でも、そのカフェがお洒落すぎて、初々しい自分たちにはちょっと馴染まないっていう。伴奏も、雨が窓に弾かれるような跳ねたリズムにしていただいたり、カフェのお洒落な雰囲気をイメージしてジャジーなコードを使っていただいたりしていて。いじらしい感じと大人っぽいムードが逆にすれ違うような感じになればいいなと思って、色々と相談させていただきました。
――歌うときは、その女の子視点で歌ったのでしょうか?
楠木 聴いてもらっている間はあまり登場人物にフォーカスが当たらないほうがいいなと思っているので、女の子らしく歌おうとは考えなかったのですが、「眺めの空」がかなりロックに歌っていたので、この曲は控えめに歌うことでいじらしさが出るようには意識しました。それとササノさんが、あえて音程のミックスを曖昧にしてくださっていて、よく聴くとちょっと(音程を)外している部分もあるんですけど、その曖昧さが逆に心地良く聴こえるように調整していただきました。
――その女の子と男の子の関係性自体も、まだ曖昧なところがあるということですよね。
楠木 そうなんです。サビでササノさんにコーラスを入れていただいたんですけど、これは私の歌録りのときに、たまたまササノさんの仮歌を一緒に流してみたらすごく良かったので、改めて歌を録っていただいたんです。でも、ササノさんはミックスの段階まで「絶対に僕の声はいらないと思うんですけど……」とおっしゃっていて(笑)。すごく控えめな方でした。
――でも、ササノさんの歌声が入ることで、楽曲の世界観がさらに伝わってきます。
楠木 そうですよね。もしかしたら男の子も同じ気持ちだったらいいなあとか、想像が広がればいいなと思います。私にしては珍しくキュンキュンする曲になりました(笑)。
――本EPの締め括りとなる4曲目「alive」は、ややローファイ感のあるトラックが印象的なスロウナンバー。幕開けはメランコリーな曲調ですが、歌が始まると、途端に陽が射したような温かさが感じられます。
楠木 この曲はトラックコンペを行いまして、20曲近くのインストの中から自分で選んで、それに歌詞とメロを付けていく作り方でした。今回のEPはどしゃ降りの激しい雨(「遣らずの雨」)から始まるので、最後の曲は雨上がりをイメージした温かな空気感のものにしたくて。それでコンペをしたなかで、一番理想的だったのがこの曲でした。歌がなくてもトラックだけで完成されているような雰囲気があったので、逆に「この曲は歌がメインじゃなくてもいいのでは?」という考えに至りまして、歌詞の分量も少なくしました。
――短いなかにも愛情を感じる歌詞ですが、どんな想いを込めたのでしょうか?
楠木 暗喩で隠してはいるんですけど、実は自分が昨年の12月に行ったワンマンライブ“Reunion of Sparks”で見た景色のことを書いています。タイトルも「alive」なんですけど、「a live」とも取れるようにしていて。(歌詞にある)“一面に咲く綺麗な花”というのは聴いてくださっている皆さん、“表情を変える陽の光”は照明やライト、“想い出を閉じ込めた箱庭”というのはライブのことを象徴しています。
――なるほど。ライブで受け取った想いから生まれた曲だったんですね。
楠木 有観客では久々のワンマンライブだったのですが、すごく楽しかったし、皆さんの表情もマスク越しからでも伝わってきて、その景色が忘れられなかったんです。「alive」には“生きる”という意味もありますし、端的に言えば「みんなに生きていてほしい」という想いがあって。たくさんの方と色んな思い出を作っていきたいから、この先どうなるかわからないけど、また生きて会おうね、一緒にライブの時間を楽しもうね、っていう約束を込めた曲になります。
――しかもそれが雨上がり、いわば色々な苦難が晴れたあとの状況を表現した楽曲でもあって……完璧な構成すぎてぐうの音も出ないのですが(笑)。
楠木 しかも今回のEPの初回生産限定盤には、そのときのライブ映像が全て収録されるんです。ぜひそちらも合わせて楽しんでほしいです!
――取材のたびに思うのですが、楠木さんの作品はとにかく考察のし甲斐があるんですよね。
楠木 ありがとうございます!やっぱりそういうものを作るのが好きなんですよね。もちろんこういったインタビューも読んでいただきたいなと思いつつ、それが正解というわけではなくて。聴く人によって感じ方が変わるのが音楽の魅力だと思いますし、ただ聴くだけではなく、考えて聴いて更に楽しんでもらえる曲になればいいなと、いつも思っています。
――さて、早くもメジャー4作目のEPとなりましたが、楠木さん的には今どんな手ごたえを感じていますか?
楠木 以前と比べて、1つの作品としてまとまりが出てきた気がします。そのなかでも、今回は初めてトラックコンペをしてみたり、作曲をほかの方にお願いした部分もあって。自分ですべてをやりきるのではなく、ほかの方の考え方や感じ方を採り入れさせていただきながら作ることで、また違った魅力が生まれることも体感できましたし、その意味では、まだまだ初めてのことにも挑戦していきたいです。
――それこそ先ほどのアルトゥン・ギュンの話もそうですけど、ご自身の音楽の趣味が広がることで、音楽の幅や曲想もさらに広がっていきそうですよね。個人的には、前作「narrow」のテーマが“冬”、今作のテーマは“雨”だったので、今度はもっと「夏!フェス!陽キャ!」みたいな曲を聴いてみたいかもしれないです。
楠木 今はチャイナポップみたいな曲をやりたいなと思っていて。独特の世界観があって、サウンドはチャイナっぽいけどそこに行き過ぎていない。そういうポップな曲を書いてみたいなと思っています。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
●応募期間
2022年6月2日(木)~2022年6月9日(木)23:59
●応募方法
1:リスアニ!編集部の公式アカウント(@Lis_Ani)をフォローする
2:該当ツイートをRTする
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4th EP「遣らずの雨」を
リリースした楠木ともりさんの
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〆切:6/9(水)23:59まで▼詳細はこちら🖊https://t.co/gVlzv7wrNt https://t.co/u6Bi9igGlh
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●リリース情報
「遣らずの雨」
発売中
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【初回生産限定盤A(CD+BD)】
価格:¥6000+税
品番:VVCL-2046~7
【初回生産限定盤B(CD+DVD)】
価格:¥6000+税
品番:VVCL-2048~9
【フォトブック盤(CD+フォトブック)】
価格:¥2400+税
品番:VVCL-2050~2
【通常盤(CD)】
価格:¥1500+税
品番:VVCL~2052
<CD>
01. 遣らずの雨
02. 山荷葉
03. もうひとくち
04. alive
05. 遣らずの雨 -Instrumental-
06. 山荷葉 -Instrumental-
07. もうひとくち -Instrumental-
08. alive -Instrumental-
<Blu-ray・DVD>
01. 遣らずの雨 -Music Video-
02. 山荷葉 -Lyric Video-
03. もうひとくち -Lyric Video-
04. alive -Lyric Video-
Kusunoki Tomori Birthday Live 2021『Reunion of Sparks』
01. アカトキ
02. ハミダシモノ
03. 眺めの空
04. よりみち
05. sketchbook
06. 未来(cover)
07. くちなしの言葉(cover)
08. Forced Shutdown
09. ロマンロン
10. 熾火
11. バニラ
12. narrow
13. タルヒ
14. 僕の見る世界、君の見る世界
●ライブ情報
楠木ともり Zepp TOUR 2022
7月31日(日) 大阪 Zepp Namba open 17:00 / start 18:00
8月11日(木・祝) 福岡 Zepp Fukuoka open 17:00 / start 18:00
8月13日(土) 東京 Zepp DiverCity open 17:00 / start 18:00
8月21日(日) 名古屋 Zepp Nagoya open 17:00 / start 18:00
楠木ともり オフィシャルサイト
https://www.kusunokitomori.com/
楠木ともり オフィシャルTwitter
https://twitter.com/tomori_kusunoki
楠木ともり オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCYU-61cZHXE0P48ZCxvs4cQ
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