――そんな始まりから今までの3年間を、音楽面から詰め込んだアルバム『神蕾-シン・ライ-』が、このたびリリースとなります。
加藤 最初にタイトルを聞いたとき、すごく「燐舞曲っぽいなぁ」って思って。初めて聞いたけど、なんだか「そうだよね!」って変に納得できるところがあった。
つんこ タイトルもだし、アルバムジャケットも「燐舞曲っぽい!わかる!」ってなったよね。
大塚 あと「シンライ」っていう読みは「信頼」とも同じだから、そういうふうにダブルミーニングとしても取れるところも、私は結構好きですね。
加藤 それに、さっきお話ししたように1stライブで不安を感じていたからこそ、こうしてアルバムという形になったときに曲の並びだけを見ても「これだけの強い楽曲たちを出せるところまできたのか」って感慨深くて。自分たちの自信にも確実に繋がったような気がします。個人的には、1曲目に「BLACK LOTUS」っていうのがアツいんですよ。
つんこ ライブでパフォーマンスするときに、最後にきがちな曲だからね。
ももの うん。ライブだったら「カレンデュラ」が最初にきそうな感じが……。
加藤 そうそう!ライブ通りでも時系列順でもない並びなんです。
つんこ だから皆さんには、曲順に込められた意図も考えてほしいんですよ。プロデューサーさんが制作中から「『神蕾-シン・ライ-』は2曲目だと決めてるから」と言っていたので、きっと曲順にも意味が込められているはずなので。
ももの それぞれの曲にも物語があって、その1つ1つの物語の集大成とこれからを描いたのが「神蕾-シン・ライ-」という曲だと思うんです、だから“蕾(つぼみ)”なんだなと。
歌詞を見て、落とし込みながら楽曲を聴くと、また違った見方ができたり、見えなかったものが見えてくるんじゃないでしょうか。
つんこ eMPIRE SOUND SYSTeMSさんがTwitterでそれぞれの曲に込めた想いとか設定も書いていたりするから、それも歌詞カードと一緒に見ながら聴いてほしいよね。
ももの あと今回、タイトルが“神”の“蕾”ということで。今まで「BLACK LOTUS」と「クライノイド」、「カレンデュラ」と「群青のフローセカ」と4曲“花の歌”として歌わせていただいていて、今回が“蕾”なんです。でも……これは私の勝手な憶測なんですけど、普通だったら蕾から花という流れのほうがしっくりくる気がするので、“花”から“蕾”というところにどんな意味があるのかを読み解いてほしいです。
加藤 たしかに!
大塚 いや、すごい!
ももの しかもその4つの蕾って、私たち4人を例えたものでもあるそうなんです。「ただの蕾じゃなくて“神”がついているから、『これからどう咲き誇るか』という期待値もあるんだよ」と言っていただいて、嬉しいけど「その覚悟はちゃんと持ってね」というプレッシャーもしっかり与えられました(笑)。
大塚 “神”のプレッシャー、重たっ(笑)。
――そんな「神蕾-シン・ライ-」という楽曲、初めて聴かれたときには皆さんどんな印象を持たれましたか?
加藤 この曲には、ラスサビの歌詞の“ここまで来て着いておいで この舞台に”というフレーズがあり、今までの椿では決して歌えなかったような言葉が使われていて。それが勝手に自分の中でも「椿……言わなかったよね?」とリミッターのように感じていた部分だったので、神蕾では新たな燐舞曲の姿を見せられるようになったんだなと思いました。
――きっとそれは、3年間キャラクターとともに歩まれてきた今だからこそ歌える曲なのかもしれませんね。
加藤 そういうキャラクターの成長というのも踏まえて楽曲は作られているんだろうな……というのはすごく感じます。
つんこ しかも、現場で歌いながらも曲を作っていくというか、どんどん変わっていく部分が必ずあって。
大塚 eMPIRE SOUND SYSTeMSさんはチームでコライトしていくような楽曲制作のスタイルなので、レコーディング現場もプリプロ的な感覚で制作を進めている部分があって、ブラッシュアップのためには時間はいとわないという感じなんです。メンバーがいても良い意味でお構いなしで、ギリギリまで歌詞やメロ、ハモのラインやリズムまで変わったりするんですよ。
ももの 歌うパートについても、燐舞曲の場合はほかの声優ユニットさんの曲と違って最初から明確にわかっている部分が多くて。プラスアルファで「さらにこうしたい」という部分の追加があったりするんですよね。それこそ移動の電車の中で「事前に言っていた以外の、ここのパートも歌ってもらうかも」って連絡をいただいたりもしますし(笑)。
つんこ でも必ず、そういうところがライブパフォーマンスですごく活きたりとかするんだよね。
ももの そう。椿が歌っている間に、プロデューサーさんにはどんどん先の絵が見えていて。それで「ここまでのものが見たい」とハードルがどんどん上がっていくんですよね。
加藤 でも私は割と「言われたことはやらなきゃ!」って全部覚えてきちゃうタイプなので、あらかじめ送られてきたもので落とし込みきっちゃうと、レコーディングではその通りにしか初めは歌えなくて……。
大塚 その割に、Twitterに変な顔の動画めっちゃ上げてるよね?(笑)
つんこ しかも最近、合成したり画像を切り抜く技術のレベルがどんどん上がってきて、「この短時間でこの画像を?」みたいになってきてる(笑)。
加藤 いや、レコーディングって歌唱に対してガッと詰められっぱなしの部分があるので、違うところで現実逃避というか気分転換は必要だなというか……(笑)。そのぶん、歌うときには相当に集中しています。
――メリハリもつけて気分転換もしつつ、徹底的にこだわられているわけですね。
大塚 いや、本当にテイク数尋常じゃないよね(笑)。普通のキャラソンだと、順調ならテストと本番、保険でもう1本を録って1時間半くらいしかかからないんです。でも燐舞曲の場合、12時間とかザラにかかるから……それは椿が一番大変だと思うんですけど。普通に合計で300テイクとかいくので。
加藤 燐舞曲は「こうしたかった」で終わることが絶対になくて、私たちも200%までやり切ったうえで終われるんですよ。
つんこ うん。絶対に妥協で終わることがないのっていいよね。
大塚 だから私は結構このスタイルが好きで。色んな条件を全部取っ払ってここまでこだわってくれる熱量のあるチームって、本当に稀有な存在だと思うんですよ。
つんこ 愛情を感じるよね。
ももの ね。感じる。
大塚 時々へこたれるときもありますけど(笑)、でもそういった現場を見られることは、作品に対しても心から幸せだと感じています。
加藤 そういう作り方をしているというのもありますし、いただく楽曲自体が毎回毎回強いので好きな楽曲がどんどん変わっていっちゃうんですよ(笑)。だから今回の収録曲の中だと、やっぱり新曲でありこのアルバムの代表となる「神蕾-シン・ライ-」が一番好きだし、皆さんに聴いてほしいなぁと思いますね。
SHARE