――一方で岡嶋かな多さんプロデュースによる「HELLO」は、R&B調の大人っぽい曲です。
鈴木 私は昔からダンスも好きなので、ライブツアーでもダンサーさんを引き連れてよく踊っているんですけど、基本は歌100パーセントで制作した楽曲にダンスを加えている形なので、ライブで披露するときに歌とダンスを合わせて100パーセントになる曲を作ってみたくて。そういうお話をしたときに、スタッフさんから岡嶋かな多さんの名前を挙げてくださって、「えっ!逆にいいんですか?」ってなりました(笑)。
――歌詞では自信満々な女性像が描かれていて、今の鈴木さんの年齢だからこそ歌える大人な世界観を感じました。
鈴木 たしかにこれまでのダンス曲は背伸びして歌っていた記憶があるんですけど、この曲は割と等身大に感じていますね。ディレクションも岡嶋さんにしていただいて、エンジニアさんも含め完全に岡嶋さんのチームと初めてご一緒させていただいたんですけど、「自信たっぷりに歌いましょう!」と言っていただきました。
――その自信たっぷりな感じが、『ULTRA FLASH』の“輝きたい”というテーマにリンクしているなと思って。
鈴木 そうですね。実は元々この曲を「FLASH」というタイトルにしようかと思っていたくらい、自分の中ではかなりアルバムのテーマにシンクロする、メッセージ的には裏表題曲的な意味合いがある曲です。
――歌声にも艶やかさが感じられる瞬間があったり、ブレスを使った表現も多く、あらゆる面で成長を感じました。
鈴木 ありがとうございます!普段とは違うブレッシ―な歌い方をしていたり、吐息がポイントになっていて。あと、この曲はライブでさらにすごいことになると思います。元々「こういうダンスがしたいです!」というイメージが先にあって作っていただいた楽曲なので、ダンサーさんとも「次はこんなことがしたいんだけど、どう思う?」みたいにキャッキャッと打ち合わせという名のお茶会をして(笑)。すごくライブ映えすると思います。
――続く「PROUD STARS」は、シングル曲「Missing Promise」でご一緒されたhotaruさん(作詞)と半田 翼さん(作曲・編曲)による壮大なバラード。アニメ『真・一騎当千』の主題歌となっています。
鈴木 制作の前に作品のシナリオを読ませていただいたんですけど、登場する戦士たちの気持ちに自分と重ねられるところがすごくあって。それこそ現代人も今はみんな頑張っているし、戦士だよなあって思うんですよ、自分に限らず。私は作品の中で戦士たちが「何のために戦うのか?」と問われるシーンが印象に残ったんです。強くなれるのが楽しい戦闘狂のような人もいれば、主を守る忠誠心のために頑張る人や、まだ理由は見つけられていないけどやるしかない人もいて。本当に様々なんだけど、みんな己の誇りのために戦っているところは共通していたんですね。私も自分で自分を誇れるために、自分を応援してくれるみんなが誇ってくれたらという想いで、そういうプライドのために戦っているところが大きいので、その気持ちをhotaruさんに赤裸々に託して歌詞を書いていただきました。
――そういった戦いの日々の中で育んだ自身の価値観や尊厳、人としての成熟のようなものも感じられます。
鈴木 「Missing Promise」はすごく少女性があって、まだ何もわからず感情がおもむくまま動いているからこその狂気性みたいなものを秘めているイメージがあって。「PROUD STARS」はすべてをわかったうえで「私は戦う!」と言っている人のイメージがあるので、精神年齢は少し上がって聴こえるんじゃないかと思います。1人だけで凛と立っているイメージというか。
――歌も聴いていると背筋が伸びるような凛々しさがあって。かつ、個人を超えた人の想いと言いますか、意志が引き継がれていくような、大きな流れも感じられました。
鈴木 テーマ自体もすごく大きいので、歌も波の満ち引きじゃないですけど、割と大きく取って歌いましたし、すごく丁寧に録っていきました。いまだにどの拍で入ればいいのかよくわからないですけど(笑)。難しいですけど、すごくいい曲を書いていただきました。
――そして6月10日公開の劇場版『異世界かるてっと~あなざーわーるど~』の主題歌「メロディックロードムービー」は、伊東歌詞太郎さんとのコラボによるデュエット曲。
鈴木 この曲も作品の世界観に寄り添って制作していきました。今回の『異世界かるてっと』は、みんな同じゴールに向かっているけど、その向かう理由はそれぞれ違う人たち、というイメージがあって。で、私と歌詞太郎さんもお互い歌を大事にしている意味では、多分ゴールは同じ同士なんですけど、お互いやり方も進め方も違う。そこが作品ともリンクするねと話しながら進んでいきました。
――それぞれの価値観を持った人たちが、交差したりすれ違いながらも、自分の道を信じて進んでいくような勇ましさがあって。しかも鈴木さんと伊東さんが掛け合うことで、歌詞の内容と相まってすごくエモーショナルに響くという。
鈴木 そうですよね!この曲、私が先攻だったので、私が完成版を聴いたのはトラックダウンのタイミングだったんですけど、上手い具合に重なり合って高め合っている感じになっていて感動しました。それとやっぱり、色んな人と歌うのは楽しいなと思いました。今回は自分が先攻だったので伸び伸びやらせてもらえたんですけど、歌詞太郎さんは歌の立ち上がりが速かったり、私とは同じ音の到達点にいくまでのタイム感が少し違うことに気付いて。いい経験をさせていただきました。
――音源だと鈴木さんと伊東さんがお互いを高め合う関係性が浮かびますが、きっとライブだと鈴木さんとファンの関係性にも捉えられそうだなと思って。みんながライブの現場で1つになって、またお互いそれぞれの生活に戻っていくっていう。
鈴木 たしかに!お互いに良いパワーを与えあいながら、お互いの道をひたすら信じて進んでいくっていう。私の中でこの曲は総集編みたいなイメージがあって。お互い今までの足跡がある人たちが、それぞれ同じゴールに向かったり、ときどき離れていったり、また近づいていったり。なのでこの曲はアルバムの後半に置きました。
――そのあと、アルバムの最後を飾る楽曲が、鈴木さんが自分で作詞した「Ordinary Wish」です。これがまた泣ける曲になっていて。
鈴木 ありがとうございます!私、自分で作った曲は、自信満々で「ドヤ!」とは言えなくて……(苦笑)。なので、そう言ってもらえるとすごく自信になります。でも、この曲を書くのは照れ臭かったですね。
――たしかに、だいぶ本心を吐露しているように感じました。ファンの方や周りの人々に対する気持ちがしっかりと乗っていて。
鈴木 そうですね。元々は、最近冷ためのバラードが多かったので、アルバムでは温かみのあるバラードを入れたいという話から始まって。これはすごく苦い思い出なんですけど、実はこの2年半の中で、自分で歌詞を書きたかったけど納得のいくものができなかった曲があって、そのことがめちゃくちゃ悔しかったんです。なので今回は絶対に書き切ろう!と思って、内心燃えていました(笑)。
――それで生まれたのが「Ordinary Wish」、いわばみんなとの普通の日々こそが特別という想いを形にした曲だったと。
鈴木 この10年のことを振り返ると、もちろん色々な経験をしてきたんですけど、結局一番記憶に残っているのは、あのときあの人がこういう顔をしていて嬉しかったなあ、ということなんですね。今でもすごく思い出すのが、シングルコレクションのライブ( 2020年10月9日に東京・LINE CUBE SHIBUYAで開催された“鈴木このみ Live 2020 ~Single Collection~”)で、手術でしばらく休養することを発表したときのみんなの不安そうな顔で。あの光景は本当に一生忘れないと思います。「私のひと言でこんなに泣いてくれるんだ」というのが、自分の中ではすごく衝撃的で。だって、私はその人にとって、毎日会える人でもないし、私に最大限できるのは歌で返すことでしかなくて。けど、こんなにみんなは自分のことを心配してくれるんだって、そのときにすごく感じたんです。そのことをふと思い出して書いたのが、2Aの歌詞で。
――“ねぇ たった一言で その瞳が揺れて いつも驚かされているんだ”の部分ですね。
鈴木 だから誰かが何かをしてくれて嬉しかったことのほうが、自分の中ですごく記憶に残っている10年だなと思っていて。紆余曲折はありましたけど、でもその度に、色んな人から色んなものをもらってきましたし、多分これから出会う人もそうだと思っていて。特別な日に思うのは、意外と普通のことだなって。だから正直、今もまだ10周年の実感が湧いていないんです。ありがとうという気持ちとか、これからも続いたらいいなあとか、本当にそういう普通のことだけなんだなって感じたので、普遍的なメッセージになりました。
――そういった心からの想いをシンプルな言葉で伝えているところがすごくいいなあと思って。この曲の歌詞に“格好つけない 言葉にしよう”とありますけど、きっと鈴木さんは「自分をこう見せたい!」というよりも、相手に素直な想いを伝えたい気持ちが先にくるんだと思うんですよ。だからこそ、誰かがいることが、鈴木さんにとっては大切なことなんだろうなと。
鈴木 本当にそうかもしれないですね。それこそデビュー前は母がすごく応援してくれて、当初は母がずっと衣装を作ってくれていましたし……今はそれが高じて服屋さんをやっているんですけど(笑)。歌のレッスンに通っていた時期にトラブルがあったときも、助けてくれた先生たちがいて。15歳でデビューしたにも関わらず普通に伸び伸び暮らしていけたのは、友だちに恵まれていたんだろうなとも思いますし、デビューしてから出会った人たちもいい人ばかりで。だからずっと人と一緒に歩んできた感覚はあります。
――なおかつそれは、アルバム全体のテーマである“輝いている自分を見ていてほしい”という想いにも繋がりますよね。その輝きは誰かが見ることで初めて意味が生まれるものなので。
鈴木 ああー、そうかもしれない。ちゃんと書けて良かったー。総じていいアルバムが出来た気がします(笑)。
――個人的には、そういった素直で温かな想いを書きつつ、最後は“何度でも 伝えるから 見つめ返して”と歌っているところが、すごくグッときたポイントですね。
鈴木 本当ですか!? そこは(編曲を担当したyuxuki)wagaさんにも同じことを言っていただきました(笑)。ここは何の計算もなく、自然と書いたんですけど。やっぱり私は、歌に関しては自信があると思うんですけど、自分に対しては正直、自信がないほうだと思うので。でも輝きたいっていう。矛盾はいっぱいあるんですけど、すごく等身大なアルバムになったと思います。
――そういう部分もひっくるめて、今の鈴木さんの輝きが詰め込まれた作品になったのではないかと思います。ご自身としてはどんなアルバムになったと感じますか?
鈴木 ひと言で表すならどでかい、タイトルに恥じないウルトラなアルバムになりました!自分や自分を作ってくれているスタッフさん、お世話になっている作家さん、応援してくれているみんな、色んな人のパワーが感じられる作品になったので、ぜひこのアルバムを聴いて、「明日、頑張れるかも!」と思ってもらえたら幸せです。
――そして6月には全国ツアー“鈴木このみ 10th Anniversary LIVE TOUR ~ULTRA HYPER FLASH~”も決定しています。
鈴木 ツアータイトルに“ハイパー”まで付けてしまったので、さらに気合いを入れて頑張りたいです(笑)。ダンスはもちろん、楽曲にも色んな仕掛けがバンバン入ってくると思いますし、レコーディングしながらライブステージのことも考えていたので、いい流れでライブができるんじゃないかと思います!
INTERVIEW & TEXT BY 北野創(リスアニ!)
●リリース情報
『ULTRA FLASH』
5月25日発売
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【初回限定盤(BD+CD)】
価格:¥6,600(税込)
品番:ZMCZ-15571
仕様:アーティストフォトジャケット
※歌詞ブックレット(24P)
※特製スリーブ
※撮りおろしULTRAフォトブック(36P)
【通常盤(CD)】
価格:¥3,300(税込)
品番:ZMCZ-15572
仕様:アーティストフォトジャケット
※歌詞ブックレット(24P)
<CD>
1「Bursty Greedy Spider」(TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」後期OPテーマ)
作詞・作曲:草野華余子 編曲:草野華余子、岸田(岸田教団&THE明星ロケッツ)
2「ULTRA FLASH」
作詞:草野華余子 作曲:鈴木このみ、草野華余子 編曲:草野華余子、BRADIO、EFFY
3「ダメージ小でした」
作詞:野性爆弾くっきー! 作編曲:篠崎あやと・橘亮祐
4「Missing Promise」(TVアニメ「ひぐらしのなく頃に卒」EDテーマ)
作詞:hotaru 作編曲:半田翼
5「Glorious Day」(ゲーム「プラオレ!~SMLE PRINCESS~」主題歌)
作詞:鈴木このみ 作曲:鈴木このみ、今井了介 編曲:前田佑
6「HELLO」
作詞:Kanata Okajima 作曲:Kanata Okajima、Teje 編曲:Teje
7「PROUD STARS」(アニメ「真・一騎当千」主題歌)
作詞:hotaru 作編曲:半田翼
8「舞い降りてきた雪」(TVアニメ「恋とプロデューサー ~EVOL×LOVE~ 」EDテーマ)
歌:恋とプロデューサーfeaturing Konomi Suzuki
作詞・作曲:中島卓偉 編曲:荒幡亮平
9「Theater of Life」(TVアニメ「デカダンス」OPテーマ)
作詞・作編曲:ANCHOR
10「命の灯火」(TVアニメ「ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド」OPテーマ)
作詞・作曲:草野華余子 編曲:草野華余子、eba、岸田(岸田教団&THE明星ロケッツ)
11「Realize」(TVアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」2nd season 前期OPテーマ)
作詞・作編曲:篠崎あやと、橘亮祐
12「メロディックロードムービー」(劇場版「異世界かるてっと~あなざーわーるど~」主題歌)
歌:鈴木このみfeaturing 伊東歌詞太郎
作詞・作編曲:ヒゲドライバー
13「Ordinary Wish」
作詞:鈴木このみ 作曲:伊藤聴太 編曲:yuxuki waga
<Blu-ray>
「Konomi Suzuki Live Selection 2021」ストリングスを含めた特別編成によるビルボードライブ「Premium Acoustic Live」全編と2021年春ツアー「Bursty Monster」東京公演の一部を収録
●ライブ情報
10th Anniversary LIVE TOUR ~ULTRA HYPER FLASH~
2022年6月1日(水)
会場:大阪・Zepp Osaka Bayside
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ:キョードーインフォメーション0570-200-888
2022年6月2日(木)
会場:愛知・Zepp Nagoya
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ:ズームエンタープライズ052-290-0909
2022年6月6日(月)
会場:東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ:ディスクガレージ050-5533-0888
チケット料金
HYPERチケット前売¥10,000(税込)※限定グッズ付き(10th Anniversaryトートバッグ&缶バッジ)
通常チケット前売¥6,500(税込)
全席指定お一人様1公演につき計4枚まで
※別途ドリンク代が必要
※3歳以上チケット必要
※HYPERチケットの限定グッズは現地会場でのお渡しになります。会場にお越しになれない方にはお渡しできないことをご了承ください。
※1公演につきHYPERチケットと通常チケットを合計4枚お申込みされた場合でも、片方の券種のみが落選することはございません。
鈴木このみオフィシャルサイト
https://www.konomi-suzuki.net/
ライブツアー特設ページ
https://www.konomi-suzuki.net/pages/ULTRA_HYPER_FLASH
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